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4:龍撃の学院

530:旧パラベラム冒険者専用訓練ダンジョン、まさかのSSSR

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「まったくもう! ちいさな冒険者ぼうけんしゃさんたちが居るのだ・か・らっ、お手本に・・・・な・ら・な・く・て・は――ね?」
 ニコリとわらいパタリと、魔法杖ハリセンを閉じる。

 フッカはは革鎧かわよろい魔法杖ハリセンに、とがった帽子ぼうし
 ちといさましいが、魔術師まじゅつしたちの服装ふくに似てる。

 かたや長椅子ながいすに突き刺さるフッカ父おっさんは、肘当ひじあてと膝当ひざあ以外いがいろく装備そうびを付けていない。
 いろがふんだんに使つかわれた、上下じょうげそろいのふくだけだ。

 かたちとしては猪蟹屋ししがにや二号店店長にごうてんてんちょうニゲルのふくと、そう変わらない。
 ニゲルむこうくろずくめ。
 おっさんこっち魔物まものに見つけてくれと言わんばかりの――
 赤青黄緑紫たくさんのいろに、白黒しろくろ縞模様しまもよう
 このちぐはぐさ・・・・・は、おれの強化服10号改シシガニャンかいつうじるものがある。

 冒険者ぼうけんしゃのする格好かっこうじゃねぇが――それでも生き延びてきた・・・・・・・んだから、馬鹿ばかにしたもんじゃねぇ……かもしれん。

「それデは、解錠かいジょうしマ
 細腕ほそうでを伸ばし、長持ながもちに付いた鉄鍵てつかぎあなへ――カチャ♪
 本体ほんたいぼうごと――ガッシャカチリと半回転はんかいてん
 鉄鍵てつかぎは、すんなりとはずれた。
 わながあるってはなしだったが?

 ふぉん♪
『>はい。通常ではあり得ない、二通りの起動スイッチが仕込まれていました。そのうち、ひとつ目を避け、ふたつ目は念のため解除してから解錠する必要がありました』
 じゃあ、おっさんは命拾いのちびろいしたってわけだな。

「開っけてっ! はやくぅー、ひらけゴマぁ――
 はしゃぐな美の女神めがみ護摩壇ごまだん用意とういはしてねぇ。
 祈祷きとうなんぞしなくても、わな迅雷ジンライはずしてくれたぜ。
「(はい。金具かなぐが錆び付き、おもいかもしれませんが)」
 ガゴォン、大丈夫だいじょうぶだ――ギギーィ♪
 顧問秘書こもんひしょ手伝てつだってくれる――バコーン!

 おれは、ぴょんと跳びはねてなかを見た。
「こいつぁ――?」
 なかはいっていたのは、やぐらを組みはじめたばかりのぼうみたいな。
 よこたわる角棒かくぼうさき二股ふたまたちいさい角棒でっぱりが、取り付けられている。
 ただし、ぼういろは――かがみのようなぎんに、あかがねのような光沢こうたくが混じっていた。

「まさかっ、アダマンタイト!?」
 顧問秘書こもんひしょかたが跳ね、目のいろが変わった。

「「「「うひゃぁ!?」」」」
 大人おとなたちの何人なんにんかが――尻餅しりもちをついた。
 うひゃぁ・・・・とか、言いやがったぞ?
 貴重レアではあるが、そこまでめずらしくもねぇだろう?

 あまりにもかたくて、ノヴァドでさえひねが折れると言って――
 ふぉん♪
『>炉の火力を増すためにノヴァドは、リオレイニアへ依頼をしていましたね』
 あの青白い炎・・・・なぁ。
 狐火きつねび人魂ひとだまのようにいのちを食らう、冷てぇ炎・・・・とはまったくの別物べつもの
 近寄ちかよっただけで耐熱たいねつ革手袋かわてぶくろが、消しずみになっちまうほどのほのお
 おもい出しても、身震みぶるいするぜ。

 ガムランちょうでは、おな希少金属きしょうきんぞくのオリハルコンも、日頃ひごろからかみなりよけに使つかってるし。
 おれだってアダマンタイトを採取さいしゅ取引とりひき討伐報酬とうばつほうしゅうで、何個なんこか持ってるくらいだ。
 ここまで、ひょろ長く・・・・・は無かったけど。

「こ、これは――議会ぎかい招集しょうしゅうしなければ!」
 ツツィア子爵領縁ししゃくりょうゆかり女性冒険者じょせいぼうけんしゃは、通路奥つうろおくはしって行っちまった。
 どうしたんだぜ?
 突き当たりに有るのは、ちいさめの女神像めがみぞうだけだが。

「あらん、あちらどなたぁん? すっごいイケメンくんじゃん
 おれのかた生えた・・・丸茸まるきのこがぁ……飯以外めしいがいのことに興味きょうみを持つのはめずらしいな。
馬鹿野郎ばかやろー、あいつぁおんなだぜ?」

 ふぉん♪
『人物DB/レフォール・ツツィア
      ツツィア子爵領次期当主
      冒険者としての資質は未知数』
 けんを持つ姿すがたも、まるでなっちゃいなかったしよ。
 LVレベル38てぇのも、なんかの間違まちがいだろ。

「ふふぅん? けど男子だんしなのは間違まちがいありません。恋愛相談所れんあいそうだんじょ所長しょちょうのこのあたくしさまがぁ、性別せいべつ見間違みまちえることなどまんひとつもありませんのぉでぇー、キッパリッ
 言い切りやがった。

 ふぉん♪
『イオノ>まったくもう、隅に置けーなーいーわーねー。シガミーったらもー、ウケケケ♪』
 まんがいちあいつがおとこだって言うんなら、気色きしょくわりいことに……ならんなぁ。
 いささいさましいが、あのドレスのような甲冑かっちゅうは、とても似合にあっていたし――
 ガムランうち姫さんリカルルが四つあしけもの彷彿ほうふつとさせ、実際じっさいに駆け回るような荒くれ・・・なら。
 さっきのあいつぁ、とりだ。たおやかで、水面すいめん優雅ゆうがおそかんじの。
 どこか、かわいげがあった。

 いやいやっ、冷静れいせいかんがえりゃ――おれぁ、いまおんなだし。
 あいつぁ、五百乃大角いおのはら見立て・・・じゃ――おとこなんだろぉ……ん?
 とく問題もんだいねぇ……のかぁ?
 僧正そうじょう大名だいみょうなかにゃぁ、そういうやつも居たし――?
 あーぁ? なんだか随分ずいぶんと、ややこしくね?

「わ、はははは……わぜ?」
 男女だんじょのことわぁ、そうじて――わらって誤魔化ごまかしてとくにかぎらぁ。

   §

「アダマンタイトは、長けりゃ長いほど・・・・・・・・――たかいだとぉ?」
 初耳はつみみだがなぁ。
 シュカンッ――よっと!
 迅雷ジンライを伸ばし、片足かたあしを掛けた。
 一本足ジンライ釣り合いバランスを取り、背伸せのびをする。

 長持ながもちおさまったそれは、たしかに随分ずいぶんなげぇが。
 ふぉん♪
『>はい、約1・5シガミー。2メートル11センチあります』

「はい。これだけのながさだと――相当そうとうがくにな……ります」
 目を見開みひらいた顧問秘書マルチヴィルが、カタカタとふるえている。

「それは、おいくらパケタになるのかしら、うふふふ
 スッと、計算魔法具けいさんまほうぐを取り出す、小商こあきないの権化ごんげ

「ちょっと待て、しめしめうっひっひ♪」
 おれはわりつらをして、値踏ねぶみをした――チーン♪

 かねおとが鳴り、画面がめんなか各種かくしゅアイコンが、すみに退かされる。

 ふぉん♪
『超特選アダマンタイト鉱石【レア度10】/
 非常に希少かつ長大な、アダマンタイトの角棒。
 龍脈形成の熟成期に採れ、硬質過程で破損することが多い。
 これ以上の魔導伝導率を持つ鉱物は、存在しない。
 価格/24500000パケタ』

 真んなかあらわれた鑑定結果かんていけっかには、8けたもの数字すうじが書かれていた。
 ガムランちょう超女神像ちょうめがみぞうに使われた〝マナ宝石ほうせき超特選ちょうとくせん】〟
 あっちはガムランちょう年間予算ねんかんよさん一割10%……たしか3,150まんパケタだったか。

 そして、『存在しない』とか言われてもこまるぜ。
 魔導伝導率まどうでんどうりつ理論上最大りろんじょうさいだいの、迅雷ジンライが居るだろが。
 なんでもわかる上級鑑定じょうきゅうかんていでも、間違まちがうことはあるようだ。

「プークス
 目のいろを変えた星神ほしがみさまが、計算魔法具けいさんまほうぐを差し出した。
 パチポチペチリと、入力してやると――

「うふ、うふ、うふ、うふ、クス……クス? ププークス!?
 市場価格しじょうかかく2450まんパケタ。
 それを確認かくにんした星神茅野姫ほしがみかやのひめが、卒倒したたおれた

   §

「フッカよぉ。そろそろ、いろいろちゃんと説明せつめいしてくれなぃ?」
 わからんことがおおすぎて、もう限界げんかいだった。

 子供こどもらは長持ながもち、いや宝箱たからばこによじのぼり。
 めずしいらしい中身なかみを、ベタベタとさわりまくっている。 

「えーっと、そのぉーっ、わたしにもくわしいことは、わかりかねるわ……家地下いえちかのダンジョンのことよね?」
 なにを訊き、訊かれているのか。
 それすら、わからないような状況じょうきょうだ。

「あふぅん、ひょっと・し・て・ぇ? やっぱりおれっちの……パパっちのぉおはなし、ふふん♪ 聞きたくなっちゃったぁー?」
 せわしないとりのようにくびうごめかし、身を乗り出したおっちゃんパパっち
 フッカ撓垂しなだれ掛かり、うざがられている。
 『話したい♪』とかおに書き、満面まんめんの笑みをたたえてやがる。

「ねぇねぇねぇねぇーん♪ そこんとこさぁー、どぉうなぁのぉーん?」
 あまりにも、ウザかったから――

「いやぁ? まったもっ興味きょうみは、ねぇーぜっ!」
 全力ぜんりょくことわった。

「ふぅ、うちのひとはすぐ脱線だっせんするから、説明せつめい一週間いっしゅうかんはかかってしまいますわ」
 革鎧かわよろいを脱ぎ、平手ひらて旦那おっさんしりをひっぱたくよめさん。

「ぅわはふひっ――――♪」
 よめが脱ぎ捨てた革鎧かわよろいを、ひろあつめるおっさん。
 これはこれで、とてもなかが良いのだ……たぶん。

「ですので、ここはわたくしが――あら、あなた・・・? こんなところにいたのね♪」
 魔女帽子まじょぼうしを取ったフッカははが、帽子ぼうしなかはさまるなにかをみつけた。
 くるんと帽子ぼうしをひっくりかえして、それ・・を落っことす。
 ぼとん、チャッ!

「「「「「ぎゃっ――あら!?」」」」」
 おどろ大人おとなたち!
 落ちたなにか。そのいろあざやかな青色あおいろで。

「みゃにゃあ゛ぁぁーん?」
 寝ていたところを、たたき起こされたような――不機嫌ふきげんこえ
 おれの住んでた御山おやま香味庵こうみあんまわりにも、時々居ときどきいアレ ・・だ。

 我が物顔ものがおで、へいうえみちばたをあるく。
 四つあしみょうながくて、にゃぁと鳴く。
 猫頭ねこあたまでもなく、ねこ魔物まものでもなく。

 ソレ・・宝箱ながもちを見るやいなや飛び乗り、お宝アダマンタイトを見つけた。
「ぅなぁあーぁん♪」
 ねこは背を伸ばし、二本足にほんあしで立ち上がった――ヴッ♪
 首輪くびわひからせたとおもったら、気づけば外套ローブ魔法使いのとがった帽子ぼうしを着ている。

 ふぉん♪
『>あの首輪には、われわれの最新の収納魔法具である、腕時計と同等の機能が備わっているようです』
 ああ、首輪くびわから取り出した・・・・・ふくに、一瞬いっしゅん着替きがえやがったぞ。

 見た目はまるで猫耳族ねこみみぞく赤子あかごのようだが――
 からだつきはひとのソレとは、まるでちがっていて――
 やっぱり、どうみても普通ふつうねこだった。

「にゃみゃーん
 ぽきゅぽきゅむーん♪
 戸口とぐちから猫の魔物おにぎりはいってきて――

「みゃにゃぎゃにゃぎゃぎゃやー
 すっくと立つねこに、かおを寄せる。

「に゛ゃぁーん
 突き出される、ちいさな肉球にくきゅう――ぺたし♪
 強化服自律型シシガニャンじりつがたおにぎりが――ねこひたい小突こづかれた。
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