505 / 739
4:龍撃の学院
505:王城地下三階、赤いのと黒いのと
しおりを挟む
「ヴュザッ――聞こえてるだろっ、いまこそ使え! 猪蟹屋標準規格のメイド服さえ着りゃ、何が起きても耐えられる――」
蜂の顔をした魔人が顔に貼りつけているのは、本式の〝白狐の面〟その複製品だ。
猪蟹屋通信プロトコルに準拠した、あの鏡の眼鏡。
裏側には一行文字により、こちらの状況説明が流れており――
おれやレイダの声も、彼女にだけ聞こえている。
〝魔眼殺しVer2〟を外せば、封じられている美の権化としてのスキル〝魅了の神眼〟が発動する。
そしておれの頭上には、祭神である美の女神御神体さまが乗っかってる。
〝女神の加護〟も〝女神の祝福〟も、御利益をフルに発揮するだろう。
あんな小役人など、ひと捻りだ。
虜にしたらしたで、また別の危険が生じるかもしれんが――
ふぉん♪
『>手首に巻いた、猪蟹屋標準支給ウェアラブルデバイスSSWー01LRを作動させてください』
あの場には、迅雷が居る。
ふぉん♪
『ヒント>文字盤に表示されたガイダンスに従ってください』
ヴォン♪
『セーフティーカバーを
下方向へ押し開き、
内部のスイッチを
押してください』
ヒントや腕時計に表示された文字に従う、リオレイニア。
シュボッと、手首が光る。
カシカシカシと、その全身が、光の奔流で縁取られていく。
それは一瞬、チキピピッ♪
刹那で着替えが、完了した。
ルガ蜂魔神メイドが――黒頭巾メイドへと早変わりした。
「ヴヴュザッ――あ、あやしい!――」
「ヴュザッ――レーニアおばさん、超あやしい!――」
おい、黒頭巾に変わってんじゃんか!
ふぉん♪
『>装備リスト変更と設定更新をしていませんでした』
「おのれ、やっぱり怪しい奴っ!」
やべぇ――――迅雷、今すぐ助けに入れ!
§
「――ドガガガガッガガァァァァン――――ギュバッゴォォォォォォンッ!――」
舞う噴煙、崩れ落ちる壁天井。
衛兵たちの叫びが、大講堂に轟いた。
「ああああぁぁー、やっぱり!」
たたたたと窓際へ駆けていく、ビビビー。
おれも後を追う。
「ありゃぁ、リオが居る王城の方だぜ?」
騒音は黒板に貼り付けた映像から、だけじゃなくて――
王城側からも、聞こえてきた。
やがやややや!?
わざわわわざ!?
おれたちに遅れて、窓に張りつく学者方たち。
こぉぉぉぉぉん。
なんか、そんな音……いや、声が聞こえた気がするぞ?
チュチュィィィィィィンッ――――――――――――――――!!
大女神像の周りにある、四つの塔のうちの一つ。
それが下から上まで、ぼぼぼぼんと。
小さな白煙を吐いた、と思ったときには――
すでに塔は、崩れ始めていた。
「あくまで参考人として、王城へ滞在して頂くことになりますらららぁぁん」
なんていう建前も、王城をぶっ壊しちまったら、通らんだろうなぁー。
「ヴュザザッ――この私のレーニアに、指一本でも触れてご覧なさいっ! 相手が誰でも――」
颯爽と現れる、〝赤いの〟。
そのカムラン随一の、男らしさは――
そう、某ご令嬢だった。
ガムラン名物受付嬢の、暴れがちな方。
その背後を守るように寄り添う、〝黒いの〟は――
「――リカルルさま? どういうことだい? ボク聞いてないんだけど? だれこの怪しい……メイドさんかな?――」
なんて、いつもの覇気の無い声を発した。
ああもう、駄目だっぜ!
央都の兵力を、いや下手したら……大陸全土から人を集めても――
「あの三人に、敵うのなんて――!」
うるせぇ子供、もう余計なことを言うなよ。
「シガミーちゃんくらいの、ものじゃないの――!?」
ビビビーも、やかましい。
「ばか言えやっ! おれでも、とても敵わねぇーぞっ!?」
なんせおれやおにぎりに肉薄する、赤と黒と白が一堂に会してやがる。
ふぉん♪
『>ご安心下さい。私は無事、リオレイニアの手に渡りました』
この世にとっては全然、無事じゃねーんだよ!
赤いのには、赤い甲冑。
ふぉん♪
『朱狐シリーズ【多目的機動戦闘四足歩行車両】
古より伝わる最古のアーティファクト』
子細わからんが、確か15分の時間を与えると、攻撃力が倍になる。
あれを着た姫さんに出会ったら、まず死ぬ。
黒いのには、黒い制服に冒険者用の安物の革鎧と――
ふぉふぉん♪
『鍵剣セキュア【安物】
攻撃力34。参考価格は2ヘクク。
>セキュリティー重視の試作品。
装備条件/揚げ芋』
子細ややこしいが、あの筋肉お化けの工房長ですら根を上げた、重い剣。
得物がひとたび抜かれ、彼が歩を進めたなら、やっぱり死ぬ。
白いのには、白い前掛け(猪蟹屋装備のため並の甲冑より頑丈で、限定的ながら簡易パワーアシストが使用可能)。
彼女が手にした白金の棒。
その長さはせいぜい、半シガミーだが――
ふぉふぉん♪
『INTタレット迅雷【形式ナンバーINTTRTT01】
美の女神イオノファラーの眷属にして、
高負荷演算が可能な最新のアーティファクト』
子細は棒本人に聞いた方が早いが、魔法杖として使った場合――
あれ以上の魔導伝導率を誇る物質は、確か無かったはず。
つまり、死ぬ。
まったくもって、末世だぜ。
せめて敵じゃねぇのが救いだった。
ーーー
末世/この世の終り。人の道が廃れた時代。
蜂の顔をした魔人が顔に貼りつけているのは、本式の〝白狐の面〟その複製品だ。
猪蟹屋通信プロトコルに準拠した、あの鏡の眼鏡。
裏側には一行文字により、こちらの状況説明が流れており――
おれやレイダの声も、彼女にだけ聞こえている。
〝魔眼殺しVer2〟を外せば、封じられている美の権化としてのスキル〝魅了の神眼〟が発動する。
そしておれの頭上には、祭神である美の女神御神体さまが乗っかってる。
〝女神の加護〟も〝女神の祝福〟も、御利益をフルに発揮するだろう。
あんな小役人など、ひと捻りだ。
虜にしたらしたで、また別の危険が生じるかもしれんが――
ふぉん♪
『>手首に巻いた、猪蟹屋標準支給ウェアラブルデバイスSSWー01LRを作動させてください』
あの場には、迅雷が居る。
ふぉん♪
『ヒント>文字盤に表示されたガイダンスに従ってください』
ヴォン♪
『セーフティーカバーを
下方向へ押し開き、
内部のスイッチを
押してください』
ヒントや腕時計に表示された文字に従う、リオレイニア。
シュボッと、手首が光る。
カシカシカシと、その全身が、光の奔流で縁取られていく。
それは一瞬、チキピピッ♪
刹那で着替えが、完了した。
ルガ蜂魔神メイドが――黒頭巾メイドへと早変わりした。
「ヴヴュザッ――あ、あやしい!――」
「ヴュザッ――レーニアおばさん、超あやしい!――」
おい、黒頭巾に変わってんじゃんか!
ふぉん♪
『>装備リスト変更と設定更新をしていませんでした』
「おのれ、やっぱり怪しい奴っ!」
やべぇ――――迅雷、今すぐ助けに入れ!
§
「――ドガガガガッガガァァァァン――――ギュバッゴォォォォォォンッ!――」
舞う噴煙、崩れ落ちる壁天井。
衛兵たちの叫びが、大講堂に轟いた。
「ああああぁぁー、やっぱり!」
たたたたと窓際へ駆けていく、ビビビー。
おれも後を追う。
「ありゃぁ、リオが居る王城の方だぜ?」
騒音は黒板に貼り付けた映像から、だけじゃなくて――
王城側からも、聞こえてきた。
やがやややや!?
わざわわわざ!?
おれたちに遅れて、窓に張りつく学者方たち。
こぉぉぉぉぉん。
なんか、そんな音……いや、声が聞こえた気がするぞ?
チュチュィィィィィィンッ――――――――――――――――!!
大女神像の周りにある、四つの塔のうちの一つ。
それが下から上まで、ぼぼぼぼんと。
小さな白煙を吐いた、と思ったときには――
すでに塔は、崩れ始めていた。
「あくまで参考人として、王城へ滞在して頂くことになりますらららぁぁん」
なんていう建前も、王城をぶっ壊しちまったら、通らんだろうなぁー。
「ヴュザザッ――この私のレーニアに、指一本でも触れてご覧なさいっ! 相手が誰でも――」
颯爽と現れる、〝赤いの〟。
そのカムラン随一の、男らしさは――
そう、某ご令嬢だった。
ガムラン名物受付嬢の、暴れがちな方。
その背後を守るように寄り添う、〝黒いの〟は――
「――リカルルさま? どういうことだい? ボク聞いてないんだけど? だれこの怪しい……メイドさんかな?――」
なんて、いつもの覇気の無い声を発した。
ああもう、駄目だっぜ!
央都の兵力を、いや下手したら……大陸全土から人を集めても――
「あの三人に、敵うのなんて――!」
うるせぇ子供、もう余計なことを言うなよ。
「シガミーちゃんくらいの、ものじゃないの――!?」
ビビビーも、やかましい。
「ばか言えやっ! おれでも、とても敵わねぇーぞっ!?」
なんせおれやおにぎりに肉薄する、赤と黒と白が一堂に会してやがる。
ふぉん♪
『>ご安心下さい。私は無事、リオレイニアの手に渡りました』
この世にとっては全然、無事じゃねーんだよ!
赤いのには、赤い甲冑。
ふぉん♪
『朱狐シリーズ【多目的機動戦闘四足歩行車両】
古より伝わる最古のアーティファクト』
子細わからんが、確か15分の時間を与えると、攻撃力が倍になる。
あれを着た姫さんに出会ったら、まず死ぬ。
黒いのには、黒い制服に冒険者用の安物の革鎧と――
ふぉふぉん♪
『鍵剣セキュア【安物】
攻撃力34。参考価格は2ヘクク。
>セキュリティー重視の試作品。
装備条件/揚げ芋』
子細ややこしいが、あの筋肉お化けの工房長ですら根を上げた、重い剣。
得物がひとたび抜かれ、彼が歩を進めたなら、やっぱり死ぬ。
白いのには、白い前掛け(猪蟹屋装備のため並の甲冑より頑丈で、限定的ながら簡易パワーアシストが使用可能)。
彼女が手にした白金の棒。
その長さはせいぜい、半シガミーだが――
ふぉふぉん♪
『INTタレット迅雷【形式ナンバーINTTRTT01】
美の女神イオノファラーの眷属にして、
高負荷演算が可能な最新のアーティファクト』
子細は棒本人に聞いた方が早いが、魔法杖として使った場合――
あれ以上の魔導伝導率を誇る物質は、確か無かったはず。
つまり、死ぬ。
まったくもって、末世だぜ。
せめて敵じゃねぇのが救いだった。
ーーー
末世/この世の終り。人の道が廃れた時代。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~
やみのよからす
ファンタジー
病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。
時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。
べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。
月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ?
カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。
書き溜めは100話越えてます…
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜
田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。
謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった!
異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?
地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。
冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる