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4:龍撃の学院

505:王城地下三階、赤いのと黒いのと

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「ヴュザッ――聞こえてるだろっ、いまこそ使つかえ! 猪蟹屋ししがにや標準規格ひょうじゅんきかくのメイドふくさえ着りゃ、なにが起きても耐えられる――」
 蜂の顔をした魔人リオレイニアかおに貼りつけているのは、本式・・の〝白狐びゃっこめん〟その複製品レプリカだ。
 猪蟹屋通信ししがにやつうしんプロトコルに準拠じゅんきょした、あのかがみ眼鏡めがね
 裏側うらがわには一行文字ティッカーにより、こちらの状況説明じょうきょうせつめいながれており――
 おれやレイダのこえも、彼女リオにだけ聞こえている。

 〝魔眼殺まがんごろVerバージョン2〟をはずせば、ふうじられている美の権化・・・・としてのスキル〝魅了みりょう神眼しんがん〟が発動はつどうする。
 そしておれの・・・頭上ずじょうには、祭神さいじんである美の女神いおのはら御神体ごしんたいさまが乗っかってる。
 〝女神めがみ加護かご〟も〝女神めがみ祝福しゅくふく〟も、御利益ごりやくをフルに発揮はっきするだろう。

 あんな小役人こやくにんなど、ひとひねりだ。
 とりこにしたらしたで、またべつ危険きけんしょうじるかもしれんが――

 ふぉん♪
『>手首に巻いた、猪蟹屋標準支給ウェアラブルデバイスSSWー01LRを作動させてください』
 あの場むこうには、迅雷ジンライが居る。

 ふぉん♪
『ヒント>文字盤に表示されたガイダンスに従ってください』
 ヴォン♪
『セーフティーカバーを
  下方向へ押し開き、
  内部のスイッチを
  押してください』
 ヒントや腕時計うでどけい表示ひょうじされた文字もじしたがう、リオレイニア。

 シュボッと、手首てくびひかる。
 カシカシカシと、その全身ぜんしんが、ひかり奔流ほんりゅう縁取ふちどられていく。
 
 それは一瞬いっしゅん、チキピピッ♪
 刹那せつな着替きがええが、完了かんりょうした。
 ルガ蜂魔神ばちまじんメイドが――黒頭巾・・・メイドへと早変わりした・・・・・・

「ヴヴュザッ――あ、あやしい!――」
「ヴュザッ――レーニアおばさん、ちょうあやしい!――」
 おい、黒頭巾くろずきんに変わってんじゃんか!
 ふぉん♪
『>装備リスト変更と設定更新をしていませんでした』

「おのれ、やっぱりあやしいやつっ!」
 やべぇ――――迅雷ジンライいますぐたすけにはいれ!

   §

「――ドガガガガッガガァァァァン――――ギュバッゴォォォォォォンッ!――」
 舞う噴煙ふんえんくずれ落ちる壁天井かべてんじょう
 衛兵えいへいたちのさけびが、大講堂こっちとどろいた。

「ああああぁぁー、やっぱり!」
 たたたたと窓際まどぎわへ駆けていく、ビビビー。
 おれもあとを追う。

「ありゃぁ、リオが居る王城おうじょうほうだぜ?」
 騒音そうおん黒板こくばんに貼り付けた映像えいぞうから、だけじゃなくて・・・・・・・――
 王城側そとからも、聞こえてきた。

 やがやややや!?
 わざわわわざ!?
 おれたちに遅れて、まどに張りつく学者方がくしゃかたたち。

 こぉぉぉぉぉん。
 なんか、そんなおと……いや、こえが聞こえた気がするぞ?

 チュチュィィィィィィンッ――――――――――――――――!!
 大女神像だいめがみぞうまわりにある、よっつのとうのうちのひとつ。
 それがしたからうえまで、ぼぼぼぼんと。
 ちいさな白煙けむりを吐いた、とおもったときには――
 すでにとうは、くずはじめていた。

 「あくまで参考人さんこうにんとして、王城こちら滞在たいざいしていただくことになりますらららぁぁん」
 なんていう建前たてまえも、王城おうじょうぶっ壊しちまったら・・・・・・・・・とおらんだろうなぁー。

「ヴュザザッ――このわたくしのレーニアに、指一本ゆびいっぽんでも触れてごごらんなさいっ! 相手あいてだれでも――」
 颯爽さっそうあらわれる、〝赤いの・・・〟。
 そのカムラン随一ずいいちの、男らしさ・・・・は――
 そう、ぼう令嬢れいじょうだった。

 ガムラン名物めいぶつ受付嬢うけつけじょうの、あばれがちなほう
 その背後せなかまもるように寄り添う、〝黒いの・・・〟は――

「――リカルルさま? どういうことだい? ボク聞いてないんだけど? だれこのあやしい……メイドさんかな?――」
 なんて、いつもの覇気の無い声・・・・・・はっした。

 ああもう、駄目だめだっぜ!
 央都おうと兵力へいりょくを、いや下手へたしたら……大陸全土たいりくぜんどからひとあつめても――

「あの三人さんにんに、かなうのなんて――!」
 うるせぇ子供レイダ、もう余計よけいなことを言うなよ。
「シガミーちゃんくらいの、ものじゃないの――!?」
 ビビビーも、やかましい。

「ばか言えやっ! おれでも、とてもかなわねぇーぞっ!?」
 なんせおれやおにぎりに肉薄にくはくする、一堂いちどうかいしてやがる。

 ふぉん♪
『>ご安心下さい。私は無事、リオレイニアの手に渡りました』
 この世にとっては全然ぜんぜん無事ぶじじゃねーんだよ!

 赤いのリカルルには、赤い甲冑かほうのよつあし
 ふぉん♪
『朱狐シリーズ【多目的機動戦闘四足歩行車両】
 古より伝わる最古のアーティファクト』

 子細しさいわからんが、たしか15ふん時間じかんあたえると、攻撃力ATKが倍になる。
 あれを着た姫さんリカルル出会であったら、まず死ぬ。


 黒いのニゲルには、くろ制服せいふく冒険者用ぼうけんしゃよう安物やすもの革鎧かわよろいと――
 ふぉふぉん♪
『鍵剣セキュア【安物】
 攻撃力34。参考価格は2ヘクク。
 >セキュリティー重視の試作品。
 装備条件/揚げ芋』

 子細しさいややこしいが、あの筋肉きんにくお化けの工房長ノヴァドですら根を上げた、おもけん
 得物あれがひとたび抜かれ、かれすすめたなら、やっぱり死ぬ。


 白いのリオレイニアには、白い前掛けエプロン猪蟹屋装備ししがにやそうびのためなみ甲冑かっちゅうより頑丈がんじょうで、限定的げんていてきながら簡易かんいパワーアシストが使用可能しようかのう)。

 彼女リオが手にした白金はっきんぼう
 そのながさはせいぜい、はんシガミーだが――
 ふぉふぉん♪
『INTタレット迅雷【形式ナンバーINTTRTT01】
 美の女神イオノファラーの眷属にして、
 高負荷演算が可能な最新のアーティファクト』

 子細しさい棒本人ぼうほんにんに聞いたほうはやいが、魔法杖まほうつえとして使つかった場合ばあい――
 あれ以上いじょう魔導伝導率・・・・・ほこ物質ぼうは、たしか無かったはず。
 つまり、死ぬ。

 まったくもって、末世まっせだぜ。
 せめててきじゃねぇのがすくいだった。

ーーー
末世/この世の終り。人の道が廃れた時代。
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