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4:龍撃の学院
504:王城地下三階、容疑者はリオレイニア?
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「うぉっほん♪ 規則ですので正直にーぃ、お答え下され。ええと……リオレ、イニア嬢?」
やや横柄な態度の男性が、訥々と言葉を発する。
「はい、もちろんです」
背筋を伸ばし、はきはきと答える怪しげなメイド。
やや大きめなガラス窓の向こうには男女2名ずつ、フル装備の衛兵が待機している。
ここは央都の大女神像がある、王城の一画。
儀式にも使用される、地下祭儀室とやらだが――
とても殺風景で、おおよそ賓客が通されるような場所ではない。
「えっへぇん♪ アナタはぁ、コントゥル辺境伯名代ルリーロさまが飛翔中の空路へぇー、巨大焼夷弾がぁー撃ちぃ込まぁれた際、どちらにぃ、居られましたかなぁ?」
ふっへへぇん♪
やはり気のせいではない。相当に横柄な、その態度。
ヴォヴォゥン♪
迅雷が送ってくる、向こうの映像が揺らめく。
万能の空飛ぶ棒を今使わないで、いつ使うんだってことで――
地下の様子を探らせているのだ。
§
「おい、あの衛兵わぁ、彼女が誰だかわかってねぇんじゃぁねぇーのかぁ!?」
コントゥル辺境伯は、央都の最高権力者である王族と比べた場合。
さほどの優劣は無い、と聞いている。
ならば、コントゥル家に長年仕えてきた貴族家である、サキラテ家令嬢に――
あんな態度を一役人が、そうそう取れるものではないはずだ。
「お、お恥ずかしー限りですららぁぁん!」
大講堂の長机に突っ伏し、平伏する第一王女殿下。
いや、そもそも王様や女王さまに次いで、お偉いはずの王女さまが――
「どぅしてぇ、這いつくばってるっんだぜぇ?」
王女さま直々に、この事態を解決してくれりゃぁすむだろうがっ!
おれたちが居るのは、魔導騎士団の宿泊施設だ。
一番大きな大講堂に、ほぼ全員が詰めていた。
「じ、実わぁー王家直轄の〝召喚の塔〟が壊滅して以来、わが央都の官僚の中に〝王政不要論〟を提唱する者たちが台頭しましてぇ――」
よりにも寄って、祭り事かっ!
そうなるとリオは、反対勢力の手中に落ちてると考えた方が良いか?
「安全のため」とネネルド村へなだれ込んできた、見覚えの無い護衛たち。
アイツらに任せて置いたら、まさかのこんな事態。
装備からすると管轄は、魔導騎士団だろう。
じろりと、睨みつけてやったら――
顧問氏や秘書も、王女に並んで這いつくばった。
やや涙目の王女を、まるで庇うように――「ひっひひひぃぃぃぃぃんっ――!?」
どがぁん――王女が座る長机に体当たりし、身を乗り上げ「ひひひひひぃぃぃぃんっ!?」
「ぎゃっ――!」
黄緑色のでかい子馬に――
「ギャミャァ――!」
翻弄される顧問氏や――
「キャアァァ――!」
秘書たち。
「ららぁぁん――!?」
「ふっるぅん――!?」
そして王族たちも、スパコーンと弾き飛ばされた。
あーぁ、あれ大丈夫か?
ふぉん♪
『>問題は無いと思われ。彼の馬は他ならぬ、ラプトル第一王女が作成したゴーレムですので』
うん、責任の所在は明確だな。
放っとこうぜ、今はソレどころじゃねぇ。
こうして迅雷はリオレイニアの近く(おそらく天井)に張りついていながら、こっちの様子を知ることも出来る。
万能の便利棒は、その名の通りに便利だった。
なんせ高等魔術や特殊な魔法具を使って忍び込んだら、向こうに居る魔術師に一発でバレるらしいからな。
「こらっ! 今は遊んでる場合じゃないのよ!」
そう気を吐くのは侍女リオレイニアの部下、少女メイド・タターだ。
普段は子馬の尻尾にカフスを引っかけられては、そのへんを引き回されている彼女だったが。
「リオレイニア元侍女長が、大変なことになっているんだからっ!」
給仕や家事の師でもある彼女の一大事に、発憤したのか――
「テンプーラゴウ、お座りぃぃぃぃぃぃぃ――っ!」
天風羅睺! 天かける風が如く、日月を喰らう天馬。
そんな名前《なまえ》だが――
ふぉん♪
『人物DB/天ぷら号
中央都市ラスクトール自治領第一王女
ラプトル・ラスクトールの手による、
自律型四足歩行駄馬』
本当は、猪蟹屋謹製自律型の〝おにぎり〟にちなんで名付けられた、食い物の名前だったりする。
天ぷら号は少女メイドに、引っかかった尻尾を吊り上げられ――どずずぅん!
軽々と召し捕られた。
ふぉん♪
『シガミー>なんだ今の?』
天ぷら号は、王女殿下の魔導工学がみっしりと詰まってるから、ソコソコ重くて子供の力じゃとても持ち上がらねぇはず。
ふぉん♪
『イオノ>あー、タターちゃんを始め、ココに居るメイドちゃんたちにわぁ、〝猪蟹屋のメイド服〟に着替えてもらったからねぇん♪』
なんだと!?
ありゃ試運転……試着がてらってんで、リオにしか渡してなかったんだぞ!?
「にゃっみゃぎゃにゃにゃぁー♪」
遊んでいるとでも思ったのか――手近な王子殿下《サウルース》をひょいと、つまみ上げる猫の魔物。
おにぎりまで一緒になって、王女のまわりを転げまわりはじめた。
「らっらららぁん!?」
「ふっふふるるぅん!?」
翻弄される、王家に連なる者たち。
「馬鹿野郎、危ねぇだろうがっ!」
あーぁ、あれは大丈夫じゃねぇやつだ!
ふぉん♪
『人物DB/試作個体名おにぎり一号
極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型
ケットーシィなる猫の魔物に酷似』
ふぉん♪
『>はい。猪蟹屋謹製の軽車両扱い。つまり猪蟹屋備品ですので、シガミーもしくはイオノファラーに』
うん、責任の所在は明確だな。
放っとくわけにはいかんな。今はソレどころじゃねぇってのに!
猫の魔物から、王子殿下を引っぺがしてると――
「――猪蟹屋……央都猪蟹屋の地下設備である、対魔王結界の中に居ました――」
容疑者リオレイニアの言葉に、大講堂に居る全員がピタリと止まり――固唾を呑む。
「――た、対魔王結界!? それはぁ、自白と考えてよろしいか!?――」
大講堂の黒板に張りつく、映像の中。
馬鹿を言い出す、横柄な役人。
「ああもう、この守護所勤めの、この衛兵め――!!」
王子殿下を床に降ろし、おれは憤慨した。
「ちょっと、シガミー黙ってて、向こうの様子が聞こえないでしょ!」
ばかやろう、もとはといやぁ、お前が余計なときに余計なことを言いやがるからこんなややこしいことになっちまったんじゃんか!
「あらら、これは――ものすごく困ったことになるよ?」
ビビビーの顔が真っ白だぜ。
レーニアおばさんが、心配なんだろうが。
「なんだぜ? 困ったことってのわぁ?」
これ以上、どう困るって言うんだぜ?
「だって、あのリオレイニアさんが、ルリーロさまを攻撃した容疑で、お城に軟禁されているんだよ?」
ますます、顔面は蒼白に。
「おう、大変だが伯爵さまも奥方さまも、「一時的の措置で、すぐに釈放される」って言ってたじゃんか?」
確かにリオがかわいそうだが、どういう風に話がこじれようと――
コントゥル辺境伯と名代が、そう請け負った以上、本気で心配する必要は無い。
あの小役人のせいで、長引くことくらいはあるかもしれんが。
戻ってきたら何かうまい物でも作って、食わせてやろう。
「ふぅ――ぅむむむむぅ。間に合えば……良いんだけど?」
ビビビーの心配は、それでも止まらない。
「間に合えばだぁ? 何だかわからんが良く聞け。そもそもの話、リオは自分が仕える奥方さまを狙うような奴には、見えんだろうが――」
ヴュザザッ――質素な机。
両手は革ベルトで縛られ、机に繋がれていた。
その顔は、ルガ蜂の顔に瓜二つ。
遠目で見ると、まるで魔神のようだっだ。
「みえる――な」
ルガ蜂の顔を持つ彼女なら、やりかねないと思えなくもない。
やや横柄な態度の男性が、訥々と言葉を発する。
「はい、もちろんです」
背筋を伸ばし、はきはきと答える怪しげなメイド。
やや大きめなガラス窓の向こうには男女2名ずつ、フル装備の衛兵が待機している。
ここは央都の大女神像がある、王城の一画。
儀式にも使用される、地下祭儀室とやらだが――
とても殺風景で、おおよそ賓客が通されるような場所ではない。
「えっへぇん♪ アナタはぁ、コントゥル辺境伯名代ルリーロさまが飛翔中の空路へぇー、巨大焼夷弾がぁー撃ちぃ込まぁれた際、どちらにぃ、居られましたかなぁ?」
ふっへへぇん♪
やはり気のせいではない。相当に横柄な、その態度。
ヴォヴォゥン♪
迅雷が送ってくる、向こうの映像が揺らめく。
万能の空飛ぶ棒を今使わないで、いつ使うんだってことで――
地下の様子を探らせているのだ。
§
「おい、あの衛兵わぁ、彼女が誰だかわかってねぇんじゃぁねぇーのかぁ!?」
コントゥル辺境伯は、央都の最高権力者である王族と比べた場合。
さほどの優劣は無い、と聞いている。
ならば、コントゥル家に長年仕えてきた貴族家である、サキラテ家令嬢に――
あんな態度を一役人が、そうそう取れるものではないはずだ。
「お、お恥ずかしー限りですららぁぁん!」
大講堂の長机に突っ伏し、平伏する第一王女殿下。
いや、そもそも王様や女王さまに次いで、お偉いはずの王女さまが――
「どぅしてぇ、這いつくばってるっんだぜぇ?」
王女さま直々に、この事態を解決してくれりゃぁすむだろうがっ!
おれたちが居るのは、魔導騎士団の宿泊施設だ。
一番大きな大講堂に、ほぼ全員が詰めていた。
「じ、実わぁー王家直轄の〝召喚の塔〟が壊滅して以来、わが央都の官僚の中に〝王政不要論〟を提唱する者たちが台頭しましてぇ――」
よりにも寄って、祭り事かっ!
そうなるとリオは、反対勢力の手中に落ちてると考えた方が良いか?
「安全のため」とネネルド村へなだれ込んできた、見覚えの無い護衛たち。
アイツらに任せて置いたら、まさかのこんな事態。
装備からすると管轄は、魔導騎士団だろう。
じろりと、睨みつけてやったら――
顧問氏や秘書も、王女に並んで這いつくばった。
やや涙目の王女を、まるで庇うように――「ひっひひひぃぃぃぃぃんっ――!?」
どがぁん――王女が座る長机に体当たりし、身を乗り上げ「ひひひひひぃぃぃぃんっ!?」
「ぎゃっ――!」
黄緑色のでかい子馬に――
「ギャミャァ――!」
翻弄される顧問氏や――
「キャアァァ――!」
秘書たち。
「ららぁぁん――!?」
「ふっるぅん――!?」
そして王族たちも、スパコーンと弾き飛ばされた。
あーぁ、あれ大丈夫か?
ふぉん♪
『>問題は無いと思われ。彼の馬は他ならぬ、ラプトル第一王女が作成したゴーレムですので』
うん、責任の所在は明確だな。
放っとこうぜ、今はソレどころじゃねぇ。
こうして迅雷はリオレイニアの近く(おそらく天井)に張りついていながら、こっちの様子を知ることも出来る。
万能の便利棒は、その名の通りに便利だった。
なんせ高等魔術や特殊な魔法具を使って忍び込んだら、向こうに居る魔術師に一発でバレるらしいからな。
「こらっ! 今は遊んでる場合じゃないのよ!」
そう気を吐くのは侍女リオレイニアの部下、少女メイド・タターだ。
普段は子馬の尻尾にカフスを引っかけられては、そのへんを引き回されている彼女だったが。
「リオレイニア元侍女長が、大変なことになっているんだからっ!」
給仕や家事の師でもある彼女の一大事に、発憤したのか――
「テンプーラゴウ、お座りぃぃぃぃぃぃぃ――っ!」
天風羅睺! 天かける風が如く、日月を喰らう天馬。
そんな名前《なまえ》だが――
ふぉん♪
『人物DB/天ぷら号
中央都市ラスクトール自治領第一王女
ラプトル・ラスクトールの手による、
自律型四足歩行駄馬』
本当は、猪蟹屋謹製自律型の〝おにぎり〟にちなんで名付けられた、食い物の名前だったりする。
天ぷら号は少女メイドに、引っかかった尻尾を吊り上げられ――どずずぅん!
軽々と召し捕られた。
ふぉん♪
『シガミー>なんだ今の?』
天ぷら号は、王女殿下の魔導工学がみっしりと詰まってるから、ソコソコ重くて子供の力じゃとても持ち上がらねぇはず。
ふぉん♪
『イオノ>あー、タターちゃんを始め、ココに居るメイドちゃんたちにわぁ、〝猪蟹屋のメイド服〟に着替えてもらったからねぇん♪』
なんだと!?
ありゃ試運転……試着がてらってんで、リオにしか渡してなかったんだぞ!?
「にゃっみゃぎゃにゃにゃぁー♪」
遊んでいるとでも思ったのか――手近な王子殿下《サウルース》をひょいと、つまみ上げる猫の魔物。
おにぎりまで一緒になって、王女のまわりを転げまわりはじめた。
「らっらららぁん!?」
「ふっふふるるぅん!?」
翻弄される、王家に連なる者たち。
「馬鹿野郎、危ねぇだろうがっ!」
あーぁ、あれは大丈夫じゃねぇやつだ!
ふぉん♪
『人物DB/試作個体名おにぎり一号
極所作業用汎用強化服シシガニャン自律型
ケットーシィなる猫の魔物に酷似』
ふぉん♪
『>はい。猪蟹屋謹製の軽車両扱い。つまり猪蟹屋備品ですので、シガミーもしくはイオノファラーに』
うん、責任の所在は明確だな。
放っとくわけにはいかんな。今はソレどころじゃねぇってのに!
猫の魔物から、王子殿下を引っぺがしてると――
「――猪蟹屋……央都猪蟹屋の地下設備である、対魔王結界の中に居ました――」
容疑者リオレイニアの言葉に、大講堂に居る全員がピタリと止まり――固唾を呑む。
「――た、対魔王結界!? それはぁ、自白と考えてよろしいか!?――」
大講堂の黒板に張りつく、映像の中。
馬鹿を言い出す、横柄な役人。
「ああもう、この守護所勤めの、この衛兵め――!!」
王子殿下を床に降ろし、おれは憤慨した。
「ちょっと、シガミー黙ってて、向こうの様子が聞こえないでしょ!」
ばかやろう、もとはといやぁ、お前が余計なときに余計なことを言いやがるからこんなややこしいことになっちまったんじゃんか!
「あらら、これは――ものすごく困ったことになるよ?」
ビビビーの顔が真っ白だぜ。
レーニアおばさんが、心配なんだろうが。
「なんだぜ? 困ったことってのわぁ?」
これ以上、どう困るって言うんだぜ?
「だって、あのリオレイニアさんが、ルリーロさまを攻撃した容疑で、お城に軟禁されているんだよ?」
ますます、顔面は蒼白に。
「おう、大変だが伯爵さまも奥方さまも、「一時的の措置で、すぐに釈放される」って言ってたじゃんか?」
確かにリオがかわいそうだが、どういう風に話がこじれようと――
コントゥル辺境伯と名代が、そう請け負った以上、本気で心配する必要は無い。
あの小役人のせいで、長引くことくらいはあるかもしれんが。
戻ってきたら何かうまい物でも作って、食わせてやろう。
「ふぅ――ぅむむむむぅ。間に合えば……良いんだけど?」
ビビビーの心配は、それでも止まらない。
「間に合えばだぁ? 何だかわからんが良く聞け。そもそもの話、リオは自分が仕える奥方さまを狙うような奴には、見えんだろうが――」
ヴュザザッ――質素な机。
両手は革ベルトで縛られ、机に繋がれていた。
その顔は、ルガ蜂の顔に瓜二つ。
遠目で見ると、まるで魔神のようだっだ。
「みえる――な」
ルガ蜂の顔を持つ彼女なら、やりかねないと思えなくもない。
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