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4:龍撃の学院

500:ネネルド村奇譚、猪蟹屋標準規格制定

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「なぁ、リオレイニア?」
「なんでしょうか、シガミー?」
 たとえ頭陀袋姿ずだぶくろすがたでも、彼女リオはとてもしとやかだ。

聖剣切りの閃光ヴォルトカッターとしてクエストに出かけたときも、いまおな装備そうびだったのか?」
 すくなくとも見た目は、魔王城まおうじょうに出かけたときと変わってない。

基本的きほんてきにはおなじですが……あぁ、このコントゥル家から支給しきゅうされる給仕服メイドふくは、なかなかのすぐれものなんですよ。駆け出し冒険者ぼうけんしゃ装備そうびより、よほど頑丈がんじょうですし♪」
 どうも、「基本的きほんてきおなじ」ってのは、そのままの意味いみらしいぞ?

 ふぉん♪
『>そのようですね。口ぶりから察するに、タターたち一般の侍女へ支給されたのと同等の物を着て、クエストに望んでいたと思われます』
 〝ひかりのたて〟でてき一切いっさい、寄せ付けなかったんだとしても――
 コントゥル家の家宝かほう一式いっしきつくってみたいま感覚かんかくからすると――

「もうすこし……ぶつぶつ……頑丈がんじょうにしたいなぁ」
 おれは絵で板エディタを、立ち上げた。

   §

「ここで良いのですか?」
 集会所しゅうかいじょすみに立つ頭陀袋嬢リオレイニア

「ハい。そノままうゴかないでクださ
 ヴォヴォォォゥン♪
 メイドさんの周囲しゅういを、くるんと一周ひとまわり

 ヴォォォン。
 いま彼女リオが着てる給仕服メイドふくを、ざっと取り込んだスキャンした
迅雷ジンライぃー、どうだぁー?」
「スキャニング終了しゅウりょうしまシた。リオレイニアノ身体しんタいデータヲ保存ほぞンしまスか
 んー、そりゃ有ったほうが良いんじゃ?

 すっぽこ――こぉん♪
 てちり――おれの頭上ずじょうへ降りたつ、美の女神いおのはら

「こらっ! 乙女おとめ秘密ひみつ軽々かるがるしく、DB化データベースかするんじゃないわよ。なにしてんのまったく……衣類作成いるいさくせいぃー?」
 とすとすとすん――足踏あしぶみをするな!
 いたくはねぇが、ちょううぜぇ!

 ふぉん♪
『>リオレイニアの給仕服が殊の外、低スペックだったので、改良を試みています』
 迅雷ジンライ説明せつめいする。

「えぇー? それじゃーあーぁ、必要ひつよう部分ぶぶんだけ残《のこ》してぇ、全削除ぜんさくじょなさぁい――これわぁ厳命げんめいですのでぇ、おかわり・・・・
 素っ頓狂とんきょうこえが、ねんを押してきた。

「わ、わかったぜ」
 わからんが、わかった。
了解りょうかイでス。イオノファー」
「それは、どういうコトでしょうか? イオノファラーさま?」
 おれたちのやり取りに、くびかしげる頭陀袋リオレイニア

「えっとねぇー、リオレイニアちゃんの……ぶっふぉっ、強盗ごうとう! じゃなくってぇー、あ、あとで説明せつめいしてあげるけど――」
 ふぉふぉん♪
『イオノ>シガミー! その布袋だけでも、何とかしてあげて!
     そうね、天狗の黒頭巾で良いから、今すぐ取りかえてっ!」
 頭陀袋ずだぶくろ天狗てんぐ頭巾ずきんおなじ、かく蓑製みのせいだから、おやすいごようだが。

「リオ、ちょっと引っぱるぞ?」
 おれはイスにのぼり、頭陀袋ずだぶくろすそを持ち上げて――ギュッと下ろした。
 一瞬いっしゅんで黒頭巾くろずきん早変はやがわり――ぱさり。

「きゃっ、真っくら!?」
 とうぜん目の部分ぶぶんに空いてた丸穴・・は、閉じられた。

「すグにヘッドセット……耳栓みみせンやシシガニャンのヨうな画面表示がめんひょウじガ出ますノ
 間近まぢかで見ると、黒地くろじ白目玉しろめだま筆書ふでがきは――
 ふぉん♪
『シガミー>不気味じゃね?』

「えっ、不気味ぶきみって、なんのことですか!?」
 よし、黒頭巾くろずきん裏側に・・・画面表示がめんひょうじが出たな。
 おれの一行表示ひとことを見て取りみだす、頭陀袋嬢リオレイニアあらた黒頭巾嬢リオレイニア
 あ、けどさっきまでよりかは、マシな気もしないでもない。

「ほっ、安心あんしんしてリオレイニアちゃん。さっきまでのふくろよりは大分だいぶマシになったから――じゃぁ、あたくしさまは、たこ串揚くしあ改良かいりょう余念よねんが無いので行きますねー――どろん
 すぽん♪
 あたまうえから、根菜の重さいおのはらが消えた。

 頭巾ずきんを押さえ、えがかれた目のかおゆがめる黒頭巾くろずきんメイド。
「デは、こちラを使つカっテ確認かくニんしてくダさ
 ヴッ――ゴトトン。
 迅雷ジンライが置いたのは、全身ぜんしんうつ姿見かがみだ。

「あらこれっ、テェーングさまやカラテェーの――――意外いがい素敵すてきでは、ありませんか?」
 うふふふふっ♪

 気に入ったみたいで……なによりだぜ。
 ということで、〝魔眼殺まがんごろし〟の眼鏡めがねは、あとまわしにする。

「(じゃぁ、ふくかたちはそのままで……頑丈がんじょう丈夫じょうぶにして、着心地きごこちを良くするぞ)」

   §

 隠れ蓑じょうぶなぬのに〝よくすべる色や形ゲタスベール〟の変わり種・・・・を、塗ったやつがあったろ?
 おれっていうか烏天狗からすてんぐが、かぜに乗るときに使つかってる外套ローブ――
 あれでリオレイニアのメイドふくを、縫えるか?

 ふぉん♪
『>可能です。エプロン部分に極小のプロダクトアームを仕込めば、並みの甲冑の数倍頑丈で刃物を通さなくできますが』
 ものためしだ、そいつ・・・つくるぞ。

 ふぉん♪
『>ニゲルの装備を修繕した際に追加した、快適性はどうしますか?』
 裏地うらじ肌触はだざわりとかか……全部入りで・・・・・やってくれ。

 絵で板エディタなかに、出来上がっていく・・・・・・・・給仕服メイドふく
 その構造こうぞう子細しさいしるした、べつページのたばが――
 『100』ページを越えたとき、それは完成かんせいした。

「なかなかじゃね?」
 黒頭巾メイドリオレイニア姿見かがみのまえで、クルクルまわってた5分程度ふんていど
 その時間じかんで、これだけ出来できたら自画自賛じがじさんもすらぁな。

「はイ今後こんゴ猪蟹屋ししがニや従業員じゅうぎょういん支給しキゅうすル制服せいフくスべテ、この試作品プロトタイプ準拠じゅんキょすることにしまシょう
 ヴォヴォヴォヴォォォンッ♪
 良い仕事しごと出来できりゃぁ、女神めがみ眷属けんぞくだって浮かれらぁ。

「どうせなら、もうひと手間・・・・・・いっとくか」
 リカルルやルリーロの家宝装備かほうそうび
 その一式いっしきおさめる収納魔法具しゅうのうまほうぐ
 あれ・・に付けた、修繕と着衣のための・・・・・・・・・機能きのう
 あれ・・を、もっと小さく・・・・・・出来できるか?

 ふぉん♪
『>【地球大百科辞典】に、最適な製品データが複数存在しています』
 わからんが、見せて見ろ。

 ヴォォォンッ♪
 画面モニタあらわれたのはちいさな……腕輪うでわか?
 ふぉん♪
『>2080年頃流行った医療用スマートウォッチです。手前にあるセーフティーカバーを開くと、中にスイッチがあります』
 わからん。
 スイッチ……てのは牡丹ボタンだな。
 家宝かほう収納魔法具しゅうのうまほうぐは取っ手を、力一杯押して・・・・・・やらんといけなかったが?

 ふぉん♪
『>腕に付ける収納魔法具のため、自動的に神力を生成することが可能です』
 んぅ? リオレイニアは、よくはたらくからな。
 腕の動きで・・・・・神力しんりょくくらい、まかなえるってことか――すげぇなリオは。

 ふぉん♪
『シガミー>普段は手首に巻き、着替えるときや解れた所を直すときに押すんだな?』

 ふぉん♪
『>そうなります。各種バイタルや精神状態の簡易計測。3つまでの別天体標準時を表示し、衛星の満ち欠けや、潮汐力による影響をリアルタイムに算出。当時、流行していた造血インプラント』
 まてまてや――わからん。

「シガミー、これはなんですか?」
 黒頭巾不気味メイドはたらきものが指ししめしたのは、いま相談そうだんしてた腕輪うでわ……腕時計うでどけいってやつだ。
 彼女リオには、おれたちの画面がめん見えてる・・・・んだったぜ。
 またやっちまったが、説明せつめいするのが難儀なんぎなだけで――
 別段べつだん、見られてもこまるものではない。

「あー、この腕輪うでわが有りゃ、リカルルさまの甲冑かっちゅうみたいに、給仕服きゅうじふく一瞬いっしゅんつくろえたり――一瞬いっしゅんで着たり脱いだり、出来できるぞ」

「あらそれは、素敵すてきですね♡」
 を? 良い感触かんしょくだな。
 ものためしだ。
 この腕輪うでわおなかたちで、家宝かほう甲冑入かっちゅういれとおな機能きのう
 よしつくれ。

 ふぉん♪
『>30秒後に最寄りの搬出口から、ロールアウトされます』
 最寄もより?
 いまおれぁ、強化服きょうかふく轟雷ごうらいも着てねぇ。

「むぎゃぎゃにゃー!?
 屋台やたい手伝てつだいをしてた猫の魔物おにぎりが、奇声きせいはっした。
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