滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４８９：ネネルド村奇譚、ゆで蛸合戦

「すっすぅ――が、ごぉおっぉおっ!?　けへけへっ!!!!!!!!」
　深呼吸いきをすれば、焼けた喉のどが嘔吐えずく！
　ふぉん♪
『シガミー＞この蛸野郎っ！　なんで塩なんざ吐きやがるんだぜ！』
　畜生ちくしょうめっ！　蛸たこまでの距離まあいわぁ――

　ふぉん♪
『＞礿Ｓ氵於、叫〆～ｈ几ど中。〝恿め仰〟ヒ弋５去、鈞ケ占ザ舌乚乍ま、氵於～♪』
　馬鹿野郎ばかやろう、読めねぇっ！
　たぶん計はかった、間合まあいを伝つたえてきたんだろーがぁ！

「ま、待ってろ今いますぐ、横一文字まよこに薙ぎ払はらってやる――けへかへ！」
　仕込しこみの直刀かたなで〝滅めつの太刀たち〟を放はなつ！
　万一当まんいちあたっても、基本的きほんてきにアーティファクトは壊こわれねぇ。
　拙まずけりゃ、どうにか避けてくれやぁ！
　ガキリッ――錫杖しゃくじょうの柄頭つかを捻ねじり、直刀かたなを開ける・・・。

『▼▲►ピピピッ♪』
　動体検知モーショントラッカーが敵てきの接近せっきんを、知らせてきたが――どっちだ!?
　画面モニタが歪ゆがみやがるぜ!?
　塗れた耳栓イヤホンから伸びた、機械腕きかいうで（小しょう）の先端せんたん。
　この画面がめんわぁ、水みずに弱よえぇのか？
　これまで雨あめに濡れても、困こまるこたぁなかったがぁ？
　あ、神域しんいきの川底かわぞこで、文字もじが歪ゆがんだことがあったっけ。

「んぎっ!?」
　したたる水みずが、目に染みる！
　閉じたら死ぬ……かもしれん。
　閉じるな、見ろ――上うえには何なにも居ねぇ！
　なら真下ましたか背中側せなかがわから、何なにか来てる！

「ッチィェェェェイ――――！」
　背後はいごを薙ぎ払はらいつつ、迅雷おおだこ側がわへ力ちからの限かぎりに飛んだ！
　――ッシュッカァァァァン、ゾッ――ぶぎゅるりっ!?
　うぐぅぅうっ!?
　気色悪きしょくわりぃ――――感触かんしょく。
　滴したたっていた水みずが払はらわれ、画面がめんの歪ゆがみが消えた！

『＞約８シガミー、１１・４メートルです。〝魚の卵〟とやらを、釣り上げましたよ、シガミー♪』
　さっき読めなかった一行表示ティッカーが、こんどは読めた。

　馬鹿野郎ばかやろうめ、そいつぁ蛸たこだぜ、蛸たこぉ！
　それに釣られた・・・・のは、お前まえの方ほうだろぉ――――!?

　ふぉん♪
『＞水滴中の塩分濃度により、結像距離に誤差が生じています』
　わからぁん！

　ぎゅりゅりゅりゅっりゅりゅっ――――背後はいごで蛸たこが叫さけぶ。
　うるせぇ、おれを狙った太腕うでだか、太脚あしだかが――
　ぶぅぅうぅぉぉぉぉぉおんっ――！
　千切れて・・・・桟橋さんばしに、ずどがぁぁぁん！

　蛸たこを切ると・・・桟橋さんばしに、すっ飛んでいくぞ？
　一体いったい、どーなってごぼげば――――ばっしゃぁぁぁんっ！

　ごぼぼっぼぉぉぉぉん――――ふたたび水中すいちゅうへ。
　泳およげるとわかったから、もう慌あわてることもない。
　ひとまず水中したが暗くらくて、まるで見えんから――
「ひかかりりひかののたたまひひりたたまぁやぁ――――！」
　光の球あかりのまほうを、４０個放こはなってやる！

　カカカカカカカカッ、ぼごぅわぁ――――――――ま、まぶっし、あと、茹ゆだる!?

　呪文じゅもんを、重ね間違えた・・・・・・らしい。
　〝ひかりのたま〟だけじゃなくて、〝ひのたま〟まで出しちまった。
　水中すいちゅうは灯火ともしびと火種ひだねで、キラキラと温あたためられた。

　　　§

　ぶぎゅばぁぴゃーずざざざぁ！
　蛸たこのとがった口器くちから、大量たいりょうの水みずと白砂しろすなが吐き出されていく。

「あー、もう。シガミーが余計よけいなことするからぁ、湖みずうみがぁまぁすまぁす塩しょっぱくなっちゃうじゃないのさぁぁっ！・」
　根菜いおのはらめ、文句もんくを言うんじゃねぇ。

「馬鹿野郎ばかやろう。迅雷ジンライとおれが、こうして戻もどってきただけでも上等じょうとうだろうがっ！」
　横よこを見りゃ、じたばたぶぎゅりゅると、蛸足たこあしがもんどり打ってる・・・・・・・・。
　太ふとく赤黒あかぐろい蛸足その数かずは、計三本・・・。
　蛸本体たこほんたいはこっちを追ってくるわけでもなく、ただ砂すな……塩しおを吐き、辺あたりを警戒けいかいしている。

　ちゃぽちゃぷん♪
　おれは丸盆まるぼんに座すわり、水面すいめんに浮いていた。
　レイダ材ざいは、船ふねにも使つかえるな。

「レイダ材ざいわぁ、お船にもなる・・・・・・んですのぉねぇー♪・」
　茅の姫ねえさまが、計算魔法具けいさんまほうぐをばちばちばちばちっ――
　だから、皮算用かわざんようはやめろ。

　ばちばちばちばちぃ――んぅ？
　もう一人弾ひとりはじいてる奴やつが居るぞ？

「温泉おんせんなどの配管はいかんに、超使ちょうつかえますね♪」
　白眼鏡リオレイニアの口元くちもとが、「ふふふ」と笑わらった。

「シガミーそれ、何なにを持ってるの？」
　レイダ材ざいでおなじみのレイダが、また余計よけいなことに気づきやがる。

「ああ、そうだぜ！　何なにがぁ〝蛸たこは大根だいこんで殴なぐれ〟だ!?　まるで効かなかったぞ！」
　そう、大蛸あのやろうはおれの滅めつの太刀たちを、口くちから吐く塩しおで防ふせぎやがった！
　悔くやしまぎれに水面すいめんを漂ただよってた紫色の大根マンドラゴーラで、頭あたまをどついてやったが何処吹どこふく風かぜでよっ！
　おれは折れた大根その残のこりを、ぽいと星神あねさまに放ほうった。

「大根だいこんで殴なぐるぅ――それってぇ？」
　伯爵夫人ルリーロは、何なにかを知ってるらしい。

「茅野姫カヤノヒメちゃぁん。〝お大根だいこんで殴なぐる〟って攻略法こうりゃくほうわぁー、どぉこぉでぇ見たのぉー？・」
　伯爵夫人はくしゃくふじんの髪かみを伝つたい、スルスルと降りてくる美の根菜いおのはらー。

　茅の姫ほしがみは、計算魔法具けいさんまほうぐを仕舞うすぽん。
　そして次つぎに取りだした黒板タブレットに――とある映像けしきを映うつしだした。

「――まず塩茹しおゆでした蛸たこの足あしを根元ねもとから切ります。皮かわが厚あつい所ところがあれば削そぎ切りにしてください。そのあと半分はんぶんに切った大根だいこんの皮かわを剥き、蛸たこを大根それで５分程叩ふんほどたたいてください。平ひらたくなるように念入ねんいりに叩たたいていくと、筋繊維きんせんいの塊かたまりである蛸たこの固かたさが解ほぐれていきます。――」
　それは随分ずいぶんと立派りっぱな板場いたばで、仕事しごとをする料理人いたまえの姿すがただった。

「はぁ？　何なにこの映像えいぞう？・」
　いぶかしがる根菜メガミ。

「男前おとこまえの板前いたまえさんですねぇー？　ちょっと、ウチの旦那だんなさまに似てるぅー♡」
　顔かおを赤あからめる妖怪狐ルリーロ。
　ふぉん♪
『人物ＤＢ＞ラウラル・ジーン・コントゥル辺境伯爵
　　　　　　コントゥル家現当主』

「――こちらに約やく５分叩ふんたたいた物ものを、ご用意よういしております。――」
「うぉをぉ!?　一瞬いっしゅんじゃんか、おれ並みの調理ちょうりスキル持ちだぜ！」

　わいわいわい、がやがやがやや。
　俺おれにも見せろ、なんですか、この魔法具まほうぐは。
　工房長ノヴァドも頭突き女モゼルも、やってきた。

　がやややわや、むぎゅぎゅむぎゅ――ぽっきゅら♪
　さらに押しよせた村人むらびとたちが、次々つぎつぎと尻尾に絡みついてくる・・・・・・・・・・から――
　「遊あそぶの？　遊あそんでくれるの？」とでも、思おもったのかも知れない。
　でかい子馬こうまが「ひひひひひひひひひぃぃぃぃぃぃん？」と、駆け出した。
「にゃみゃぎゃにゃやーぁ♪」
　追うおにぎりを、さらに追いかけ始はじめる子供こどもたち。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「まてまてまてーぇ♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　ネネルド村むらの子供こどもたちも引きつれ、大所帯おおじょたいな鬼ごっこ・・・・が始はじまった。

「こんなの・・・・視てたらぁ、なんだか蛸たこさんがぁ食ぁべぇたぁくぅなってぇきたわねぇーん♪　ね、シガミー？・」
　じゅるるりっ♪・

「そう言ってもよぉ、おれの手習てならいの奥義・・は効かんし、件くだんの大根だいこんも折れちまったしよぉ！」
　泣き言ごとを言ってみる。轟雷ごうらいを着込ここんでいくのも、面倒めんどうになっちまったし。
「じゅるるりっ？・」
　根菜メガミの顔かおが湖上たこさんへ向かって、縫い付けられた・・・・・・・。
　あー、こうなっちまうと、梃てこでも動うごかねぇからなぁ。

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蛸を大根で殴る／蛸を食する地域において、少なからず伝承される蛸の調理法。傷を付けず筋繊維の方向を一方向にし、なおかつ消化酵素ジアスターゼによる効果も見込める。