滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４６７：央都猪蟹屋プレオープン、無人工房にて

　結局けっきょく、子供こどもらの手前てまえ、おれまで自分じぶんの部屋へやに戻もどる羽目はめになった。
　せめて最後さいごに、使つかいかけの食材しょくざいで――

「お前まえさまの夜食やしょくに大皿おおざら４。みんなの酒さけのつまみに、小鉢こばちを５種類しゅるい。こんなもんで――」
　足りるかぁ？
　ふぉん♪
『イオノ＞たぶーん、大丈夫だいじょうぶぅーん』
　そう言ってるから、気兼きがねなく部屋へやに戻もどった。

　　　§

「さて、無人工房むじんこうぼうへ行くぞ」
　おれは寝床ねどこを持ち上げた。

「（決まった時間じかんになれば、おにぎりと天てんぷら号ごうが来るからそれまでに、工房こうぼうの隅すみでレア装備そうびの修繕強化しゅうぜんきょうかをしてしまおうぜ）」
　ありゃ？　返事へんじがねぇ。

　おれは猪蟹屋ししがにやから隣となりの倉庫そうこへ渡わたる、地下通路ちかつうろへ飛びこんだ。

「やい迅雷ジンライ、どこ行った？」
　まさか、レイダが持って行っちまったか？
　ふぉん♪
『シガミー＞迅雷、まさかレイダに持ってかれちまってたか？』

　ふぉん♪
『＞そのまさかです』
　ふぉん♪
『シガミー＞子供たちは、そろそろ寝たか？
　ふぉん♪
『＞ラプトル王女の夜会ドレスについて、議論を白熱させています』

　猪蟹屋うちのみせにはとても、似つかわしくない程ほどの――
　しゃらあしゃらの極み・・だったからな。
　大方おおかた、コントゥル家名代けみょうだいが来てることで――
　本当ほんとうの王女付おうじょつきの侍女メイドたちが、勘違かんちがいでもして――
　本気ほんきを出したんだろうぜ。

　ふぉふぉん♪
『シガミー＞じゃあ、もう少し子供たちに付き合ってやれや。
　　　　　　おれは先に無人工房に行ってる』
　ふぉん♪
『＞了解しました』

　　　§

　大剣たいけんが１１、細剣ほそけんが３。
　小剣しょうけんが１８で、盾たてが３２。
　大盾おおだてが３に、槍やりが９。
　魔法杖まほうつえと外套ローブが、ひのふの……全部ぜんぶで１０人分にんぶんくらいと――
　あとは、そこまでレアじゃない防具防具が、ひのふの……それなりにあるな。

「結構けっこう、有ったなー」
　しかも中なかには、コントゥル家家宝けかほうに匹敵ひってきするようなのまで混ざってやがる。

　じゃあ、さっそく――
　そこまで強力きょうりょくじゃねぇ、小ちいせぇ武器ぶきからやってくぞ。
　もし早はやめに済ませられたら――
　王女おうじょへ届とどける〝軍用全天球レンズつぶらなひとみ〟を一個いっこでもいいから作つくろう。

　ヴヴッ――――ビビビビッ♪
　収納魔法しゅうのうまほうから取り出そうとしたら――｛The affected storage could not be mounted due to a DLP policy violation.／ＤＬＰポリシー違反により、該当ストレージをマウントすることが出来ませんでした。｝
　なんか赤あかい文字もじが出やがった。

　ふぉん♪
『ヒント＞収納魔法具箱へのアクセスは、接触もしくは、
　　　　　イオノファラー御神体か、ＩＮＴタレット経由での操作が必要です』
　は？　こんなの今いままで、出たことないだろうが？

　おにぎりが背負せおってる、収納魔法具しゅうのうまほうぐ箱ばこに入れてあるからか？
「じゃぁ、しゃあねぇか。おにぎりを呼びに……」
　リオに見つかると、怒おこられるな。
　仕方しかたねぇ、もう少すこし待つか。

　おれは無人工房むじんこうぼうの階段かいだんをあがり、一階いっかいの倉庫部分そうこぶぶんへ出た。
　月明つきあかりがあるここの方ほうが、真後まうしろも見える目玉レンズを作つくり――
　その出来映できばえをみるのに、都合つごうが良いのだ。

　倉庫そうこは央都猪蟹屋おうとししがにやと比くらべると、奥行おくゆきが有ってそうとう広ひろい。
　高たかく積まれた木箱きばこの間あいだは広ひろく取られ、高窓たかまどからさし込む月明つきあかかりが通路つうろを照らしている。

「凄すさまじい量りょうの商品しょうひんだが、ほとんど捌はけちまうからなぁ」
　ありがたいことではある。
　やりがいもあるし、何なにより性しょうに合ってる。
　魔物相手まものあいての大立おおたち回まわりも、魔王まおうって言う生き物ものが死んじまったから――
　本当ほんとうに倒たおさねぇといけねぇ相手てきってのは――
　変異種へんいしゅくらいのもんだ。

　前世ぜんせの全すべてをついやした――七天抜刀しちてんばっとう根術こんじゅつは、なんでかスキルとして持ち越せたし。
　日ひの本もとの獲物えものが獲れる、惑星ほしまで付いてきた。
　言うことはない。

　せいぜい面白おもしろおかしく、この来世らいせを謳歌おうかしろという――
　飯めしのおかわりが生きがいの美の女神めがみさまと、小商こあきないが生きがいの土地神ほしがみさま。
　あいつらの、思おぼし召しだろうしな♪

　ゴトリ。
　む？　耳栓いやほんに付いた動体検知モーショントラッカーは簡易的かんいてきだが、反応はんのうするはず。
　相当そうとうな手練てだれか、サキラテ家みたいな隠形おんぎょうのスキル持ちが――
　倉庫そうこの中なかに居る。
　息いきを殺ころせ、おれぁ何なにをしてやがる。

　おれが死んじまったら、あのいつも腹はらを空かせた美の女神いおのはら（笑わらい）さまに――
　だれが飯めしを作つくってやるってんだぜ！
　いや、星神ほしがみが居るか。
　姿形すがたは瓜二うりふたつ、おれよかよっぽど人ひとの世に馴染んでるし――

　たたととと。
　音おともなく背後はいごを取った。
　
　月明つきあかりが、さし込む木箱きばこと木箱きばこの間あいだ。
　それは、そこに居た。

　月影つきのひかりに照らされる、小ちいさな人影かげ。
　いや、その小柄こがらな体躯たいくから伸びる――赤黒あかぐろい影かげ。
　人ひとではない、化生けしょうの身の気配けはい。

「お前まえさん、ゲール……いやゲイルか？」
　それは、ガムラン町最寄ちょうもよりの火山かざんにて討伐とうばつされた、火龍かりゅうゲイルだった。
　現在げんざいは猪蟹屋三号店かりゅうのねどこ店長てんちょう（就任予定しゅうにんよてい）として、我が軍門ぐんもんに降くだっている身で危険きけんはない。

「ぬぅ、誰ダレも居おらず途方トホウに暮れていたのだ。店主殿マスターよ」
　火龍かりゅうゲートルブが人ひとの姿すがたを取った者もの、それがゲイル少年しょうねんだ。
　五百乃大角いおのはらが名付なづけた〝ゲール・・・〟という愛称あざなで呼んでいたが――
　居あわせることが多おおかったニゲル・・・青年せいねんと、響ひびきが似てて紛まぎらわしいって言うんで――
　ゲ・イ・ルと発音はつおんするのが、定着ていちゃくして今いまに至いたる。
　五百乃大角いおのはらが言うには、どっちでも〝強い風・・・〟という意味いみに違ちがいはないそうだ。

「何なんだお前まえさん、雌めすだったのか？」
　雄おすの火龍かりゅうであるゲイルが、化けた子供こどもの姿すがた。
　子供こどもがぎりぎり抱かかえられるくらいの――
　巨大きょだいな卵たまごを、彼かれは抱かかえていた。

ーーー
ＤＬＰ／機密情報の持ち出しを禁止するためのソリューション。