上 下
466 / 732
4:龍撃の学院

466:央都猪蟹屋プレオープン、深夜の部

しおりを挟む
「まぁ、なんでも良いけどぉお、シガミーちゃぁぁん♪ 天狗てんぐ野郎やろうさまをいますぐ、呼・ん・でぇ・くれるのでしょぉ? クツクツクツクツケェーッタケタケタッ♪」
 檜舞台ぶたいうえうつし出された、『天狗対てんぐたいリカルルせん』を見つめる辺境伯夫人コントゥルふじん
 月影つきかげひとみに、無数むすうクローズドサーキットレーザーが散りばめられる!

今日きょうところ勘弁かんべんしてくれ。暗闇くらやみなかがけを降りたりのぼったりするのは、ほねが折れらぁな」
 そういや、天狗てんぐたちの棲み家ねじろけわしいのは――
 おいそれと、たずねねて行けねぇようにするためだった。

がけぇ!? なんでぇ、そんなところに――っていうかあの野郎やろうさまわぁ、たしかにいつもふか山奥やまおくに居たわねぇー。ちっ、夜襲やしゅうが掛けづらいですわ」
 何故なぜ危険きけん場所ばしょきょかまえるのかと言われれば――襲撃者しゅうげきしゃがいるから。
 はは、うってつけの良い、言い訳・・・出来できたぜ。

天狗テェーングさまとの立ち会いは、どうするのですか?」
 リオレイニアは、コントゥル家につかえる家系かけいだ。
 冒険者ぼうけんしゃパーティー『シガミー御一行様ごいっこうさま』にぞくしていても、目のまえの辺境伯へんきょうはく名代みょうだいがわに付くのは当然とうぜんだ。

「わかった。明日あしたにでも聞いてみるよ」
 レイダざいふたつに出来できたのは、ルリーロだけだ。
 約束やくそく約束やくそくだ。一応真面目いちおうまじめかんがえる。

「(どうおも迅雷ジンライ?)」
 ふぉん♪
『>私が天狗装束でリカルルと渡り合えたのは、
  新規作成した家宝〝『亥の目シリーズ一式【片喰・蹄】〟と、
  〝蹄のロッド【全属性・片喰】〟の性能に寄る所が大きいです』
 そうだな。そうかんがえると姫さんリカルル甲冑よつあしは、〝あぶねえ〟が過ぎるぜ。

 ふぉん♪
『>妖狐ルリーロ・イナリィ・コントゥルと尋常に立ち会った場合。
  激闘の末にふたたび神域惑星もしくは未知の惑星へ飛ばされるか、
  シガミーが滅モードを使用することになると思われます』
 そうだな。そうかんがえると奥方さまルリーロ魔法杖さんさいたばも、〝あぶねえ〟が過ぎるぜ。

「(辺境伯名代ルリーロさまにはもうわけねぇが天狗てんぐには、また用事ようじつくって引っ込んでてもらうしかねぇよなぁー)」
 烏天狗からすてんぐ装備修理そうびしゅうり仕事しごともあるし、しばらくのあいだ手元てもとに置いときてぇから――
「(わるいけど迅雷ジンライ明日あしたにでも天狗装束てんぐしょうぞく旅立たびだってくれ)」
 ふぉん♪
『>了解しました』

   §

「ららぁん♪ あおいですらぁん?」
 王女ラプトルがやってきた。
 なんでも「さきほど、工房こうぼう女神像宛めがみぞうあてにイオノファラーさまから、夜会やかいへのおさそいがありましたので――」
 夜会やかいだぁ?
 そんな大層たいそうなもんじゃねぇやい。

 どうりで、あたまうえからつまさきまで、きらびやかなわけだ。

「らっしゃい、王女おうじょさま! わりぃな、うちのかみさんが無理言むりいったみたいでよ、へへっ♪」
 せいぜい愛想あいそを良くしておく。
 なんせ、このままだと――明日納品分あしたのうひんぶん軍用ぐんよう全天球ぜんてんきゅうレンズを、つくってるひまがねぇからだ。

「「おうじょさま、こんばんわっ! すっごく、お綺麗きれいっ!」」
 子供たちがきどもが来た。
 はしるなあぶねぇ。

「うふふふふっ――そーでしょぉー?」
 自慢じまんげな少女しょうじょメイド・タター。

 彼女かのじょ所属しょぞくは、あくまでコントゥル家侍女隊けじじょたいである。
 猪蟹屋ししがにや従業員じゅうぎょういんでも、王女付おうじょつきの専属せんぞくメイドでもない。
 それでも、さまざま経緯けいい懇意こんいによって――
 普段ふだんからメイドをともなわない王女おうじょのお世話せわを、少女タターみずから買って出ているのだ。

 ヴォ――洞窟めし処どうくつパブかべに、おおきく表示ひょうじされる現在時刻げんざいじこくは『22:13』。

 タターは半分仕事はんぶんしごとだから、もうすこ王女おうじょに付かせて置いても良いが――
 レイダとビビビーは、そろそろ寝かしつけねぇと。

「ではそろそろ、ラストオーダーにしますか? わたくしだけでも、お料理りょうりまわせますけど、うふふ
 でかいなべ細腕ほそうでかついできたかやひめが、まったいらなちからこぶをみせつける。
 星神ほしがみのあのからだは、おれがあの世・・・から持ってかえってきた特別製とくべつせいだ。

 迅雷ジンライ金剛力パワーアシストがなくても、それ以上いじょうに飛びまわれるようになったいまのおれにはかなうまいが――
 並みの人間にんげんなら相手あいてにならんほどの、速さAGI強さSTR硬さDEFそなえている。
 体力的たいりょくてきには心配要しんぱいいらんが、全部任ぜんぶまかせちまえるほどは――
 信用しんようできないところもあるし、なによりもうわけない。
 一応いちおう、この土地とちつかさどかみだしな。

「「らすとオーガー?」」
本日ほんじつは、店じまい・・・・と言うことでーすー」
 リオレイニアがうしろから、子供たちがきども首根くびねっこを押さえた。

「良いじゃないっ、どーせ明日明後日あしたあさっては、学院がくいんもおやすみだし!」
「そーよ、そーよ! シガミーちゃんだけズルい!」
「おれは厨房ちゅうぼうはいらねぇと、いけねぇだろうが――!」

 がはっははははははははははっ――――♪
 うな大杯ジョッキ
 追加ついかあめさけにげさけつくれるだけつくっといたから、あさまでは持つだろうが――
 酒の肴つまみを出してやらんとならん。

「「じゃぁ、あと30ぷんだけっ!」」
 ちょうど天狗対てんぐたいリカルルせんの、再々さいさい映像えいぞうはじまったから――
「あれが、終わるくらいまでだからな?」
 王女おうじょも来たばかりだし、もうすこしだけ好きにさせてやることにする。

 あの新旧しんきゅうのコントゥル家家宝けかほうによる試し斬り勝負・・・・・・は、実際じっさい時間じかんは10ぷんにも満たない。
 けど、迅雷ジンライによる見世物みせものとしてのあおりと、くわしい解説かいせつなんかをまじえると――
 やく30ぷん映像えいぞうになるのだ。

「「ははーい♪ おうじょさま、こっちこっち!」」
 子供こどもたちが、王女おうじょを引っぱって――
 通称つうしょう黄緑席きみどりせきまで案内あんないする。

 おにぎりとてんぷらごうが、大人おとなしく食事しょくじをし――
 ときおり注文ちゅうもんかさなったときに、ちょっとだけ配膳はいぜん手伝てつだってくれる。
 そんなひがらかなんだか、せわしないんだかよくわからん――
 大人おとなたちの喧騒けんそうからすこはなれた、めし処みせすみっこ。

「まずは、デザートでも出してやるか――」
 いま時間じかんだと、夕飯ゆうめしは食っただろうし。
 厨房ちゅうぼうへの階段かいだんを降り――

王女おうじょさまっ! これ見てこれっ!」
 ごとん♪
 あ、レイダめ。
 いきなり、メインの・・・・酒の肴・・・を出しやがった!

「シガミーちゃんとレイダちゃんと迅雷ジンライが、つくったんだよ♪」
 あのあと何体なんたいつくらされた、レイダ材製ざいせい人形にんぎょう
 それをならべていく、ビビビーじょう

「かわいい、あおい! それにかたい?」
 ココココン?
「まってまって、いたいたぁい。ラプトルひめさま。これはあたくし、あたくしさまでしたぁー
 人形にんぎょうに混じる根菜いおのはらが、たのしそうにしてる。

 ふぉん♪
『>シガミー。そろそろ烏天狗が受けた、修繕仕事を始めないと』
 ああ、わかってる。
 明日あす朝一あさいちからレア武器ぶきを受け取りに、小隊長しょうたいちょうクラスの兵隊へいたいさんたちがみせに来るからな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

鬼神の刃──かつて世を震撼させた殺人鬼は、スキルが全ての世界で『無能者』へと転生させられるが、前世の記憶を使ってスキル無しで無双する──

ノリオ
ファンタジー
かつて、刀技だけで世界を破滅寸前まで追い込んだ、史上最悪にして最強の殺人鬼がいた。 魔法も特異体質も数多く存在したその世界で、彼は刀1つで数多の強敵たちと渡り合い、何百何千…………何万何十万と屍の山を築いてきた。 その凶悪で残虐な所業は、正に『鬼』。 その超絶で無双の強さは、正に『神』。 だからこそ、後に人々は彼を『鬼神』と呼び、恐怖に支配されながら生きてきた。 しかし、 そんな彼でも、当時の英雄と呼ばれる人間たちに殺され、この世を去ることになる。 ………………コレは、そんな男が、前世の記憶を持ったまま、異世界へと転生した物語。 当初は『無能者』として不遇な毎日を送るも、死に間際に前世の記憶を思い出した男が、神と世界に向けて、革命と戦乱を巻き起こす復讐譚────。 いずれ男が『魔王』として魔物たちの王に君臨する────『人類殲滅記』である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...