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4:龍撃の学院
462:央都猪蟹屋プレオープン、強い酒とレイダの人形
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「これ、いただいても、よろしいでしょうか?」
おっちゃんが、そんなことを言いだした。
「そりゃ、さっき菓子に使った、やたらと甘い酒っていうか――燃やすために作った油みてぇなもんで、人が飲むもんじゃねぇやな、がはは♪」
「えー? 58度のリキュールなら、割れば普通に飲めるでしょ?」
「悪とは?」
小首をかしげつつも、根菜のまえに空の杯を置く、おっちゃん。
「迅雷、何かぁ飲みやすいカクテルをみつくろって、二人分……いーえ三人分出してよん♪」
自分の分の杯を――ヴッ、コトン。
「まてい。おれでさえひと舐めで、喉をやられたくらいだぞ? 五百乃大角が酒に強くねぇのを、おれぁ知ってるからな」
五百乃大角が出した方を――仕舞う♪
ふぉん♪
『イオノ>ふーんだ。これでも歴とした成人女性(扱い)なんですからね。
牛霊正路御前大学大学非常勤講師としての立場が、
シンシナティック・ニューロネイション内でも適応されています』
わからんわからん。
根菜さまが、じつは子供なのは知ってるが――
そこを突くのは野暮ってもんだ。
おれがこの来世でも酒が飲める頃になったら、いくらでも付き合ってやるから、それまで我慢しとけ。
首を振る根菜――ヴッ、コトン。
また杯を出しやがった。
今日は頑だな。おっちゃんという飲み仲間が出来て、我慢が出来ないのはわからんでもないが――
おれだって、我慢してるんだぞ。
「デは、うすメのバニラ・パンチヲ三杯作りまシょう」
ガラララッラン、カッシャカシャ♪
甘くて強い酒と、その元になった果実酒と――
「リオレイニア、両手一杯程度の氷をいただけませンか?」
氷くれぇ、おれが出してや……いや加減が、まだうまく出来ねぇかもしれん。
見あげるほどの巨大な氷柱なら、いくらでも出せるが。
「氷ですか? どうぞ」
迅雷が細腕で抱える、ジンライ鋼製の深い器。
そこへ入れられたのは、こぶし大の丸氷。
機械腕から飛び出す、鋭利な棘が丸氷を粉砕。
薬草が数枚と砂糖が足され――ガポンと蓋をする。
「でハ20秒ほド、オ待チ下サい――」
ガッシャガッシャガギャシャ、ガッシャン♪
小気味良いような、うるせぇような。
集まる子供たち。
「これは酒だから、おまえらにはまだ早ぇ!」
蹴散らした隙間に、グワラララン♪
魔法杖を鳴らし、男性教師が躍り出た。
すっかり忘れてたな。
「いやぁ♪ ただ酒と聞いちゃ、無下にも出来なーいよねー?」
どうやら、ずっと子供たちを見張って……見守っててくれたらしい。
酒を欲しがる者。
まだ縦だか横だかわからねぇ、分厚い肉を啄む者。
コロコロロッ♪
「1、2、3、4、5――♪」
「わっ、負けちゃう!?」
双六に興じる者。
「これなぁにぃ?」「魔法具かな?」
「猫の絵?」「おにぎりちゃん?」
「こっちは、シガミーちゃんの肖像画が描いてあるよ?」
猪蟹屋の売り物を見て、首を傾げる者。
「最初はどうなるかと思ったが、なかなか盛況で良いんじゃぁねーかぁ♪」
ただ、五百乃大角。
おまえ酒は、ほんと舐める程度にしといてくれ。
おれがガムラン町に落ちてきたばかりの頃みたいに、酔うそばから神々の世界に帰れるわけじゃねーんだからよ。
「(わかったわよーだっ! けどシガミーは、そんなに気を抜いてて良いのぉーん?」
何がだ?
「(辺境伯家からの依頼がぁー、まぁだ残ってるのおぉー、おぉ忘れぇでぇわぁあー? ウケケケケケケッ♪)」
ああ残ってるし、忘れてねぇーぞ。
今晩にでも全部、仕上げちまうつもりだしな。
ヴッ――――木の塊を取り出した。
それを短刀で、ゴリゴリと削っていく。
「「「それ、なぁーにー?」」」
「にゃみゃがぁー?」
レイダとビビビーとおにぎりが、寄ってきた。
子馬が居ねぇけど、どっか行ったか?
「こいつぁー、そうだな……レイダにするか♪」
「えっ、私ぃ!?」
〝初級造形〟と〝木工彫刻〟のスキルがあるから、考えたとおりに削れる。
「(シガミーは対外的には、造形や彫刻のスキルを所持していません。あまりにも良い出来の物を簡単に作ってしまうと、不自然では?)」
あ、いけね。忘れてた。
っていっても、温泉街の建物とか、ずいぶんと豪奢な調度品を作っちまったぞ?
「(五百乃大角の持つエディタを使用したことにすれば、大抵のことは誤魔化せますが)」
直接、小刀や鑿を使って、細かな細工をするのは――
シガミー姿のときには、控えた方が良さそうだぜ。
じゃぁ――すぽん♪
絵で板で、続きをする。
ふぉふぉ――ぽん♪
現れる光の格子。
その端の項目を辿って、『贔/マルチプル・ビュー』を選ぶ。
こうすると、おれや迅雷以外にも、この格子が見えるようになる。
ヴォヴォォォン♪
五百乃大角の御神体。
それを作ったときの形を、呼び出した。
「わきゃ!? なんですのこれ?」
跳ねるビビビー。
「これわねぇー。シガミーやイオノファラーさまが使う、絵が描ける魔法具だよね」
案の定、寄ってきた。
「そうだ♪ ちょっと見てろよ」
御神体の元になった〝ねがみめんど〟とかいう人形。
その根菜のような姿――タラーン♪
それに似せて、人形を完成させた。
ソレには台座があり――
丸太から削り出した、置物のような仕上がり。
ぐぐぐっ――すぽん♪
ごとん。
取りだした木工細工は――しゅばっ!
「これ、本当に私!?」
一瞬でレイダに奪われた。
「かわいい! イオノファラーさまみたい!」
「みぎゃみゃぎゃぁー♪」
レイダとビビビーとおにぎりの声に、ほかの子供たちまで寄ってきた。
おれは甘くて強い酒を、猪口に少しだけもらった。
そして、みんなから離れた檜舞台で――口から火を噴いた!
ぱったぱたたたっ♪
首が痛ぇから、こんどは団扇で風を起こした。
小さな種火が踊り、ちりちりと。
ぶすすすすっ、ぼふん♪
真っ黒焦げになる、レイダの人形。
「ぎゃっ、燃えちゃった!?」
泣くレイダ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「シガミーちゃん、ひどいっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「こらぁっ! 即興で芸わしない――ひぃっくぅぃー――お約束でわぁー!? それにぃー燃やしちゃうなんてぇー、ひぃどぉいぃじゃぁなぁいぃでぇすぅかぁー!」
やべぇ、リオが酔っ払ってやがる。
たしかに、この酒は強ぇ――口に入れただけで、おれも相当酔いが回ったくらいだ。
「いやいや、こっからが本題だろうが! レイダこいつを、青い壁で塗ってくれやぁ!」
飛んできた迅雷を、ひっつかむ子供。
魔法杖を一振りすれば――――ギラリィン♪
「どうでぇい、立派になっただろうが♪」
おれはできたソレを、猪蟹屋の売り物が置いてあるテーブルに置いた。
切り株の土台には、『レイダ材見本』と彫り込んだ。
「わわーい♪ すっごく綺麗で、かわいい!」
本人もご満悦だし、こりゃ思ったより見事だぞぉ。
「これ自体、売り物になりますね? くすくすす?」
そんな声に振り向くと――
「がっはははははははっ――――甘い酒だとぉ!? けしからん、もっと出して見ろぉー!」
この声――そして鉄塊のような金槌。
「工房長!? どーしてここに!?」
いや、言うまでもねぇ。
理屈じゃねーんだったぜ。
この小柄で屈強な連中の、酒のにおいを嗅ぎつける鼻は。
けど、動体検知どーした?
階段を誰かが降りてきたら、わかるはずだ。
ふぉん♪
『>猪蟹屋に出入りしていた人物に関しては、
トラッカー表示をオフにしてありました』
「もうそろそろ外が暗くなりますので、生徒さんたちはお家や寮へ帰らせては?」
そう茅の姫が言うから外に出てみたら、本当にうす暗くなってた。
夕闇に立ちのぼる、仄暗い炎。
駆けつける、コントゥル家騎馬隊。
騎馬隊が子供たちを、送ってくれることになり――
央都猪蟹屋は、夜の部に突入した。
おっちゃんが、そんなことを言いだした。
「そりゃ、さっき菓子に使った、やたらと甘い酒っていうか――燃やすために作った油みてぇなもんで、人が飲むもんじゃねぇやな、がはは♪」
「えー? 58度のリキュールなら、割れば普通に飲めるでしょ?」
「悪とは?」
小首をかしげつつも、根菜のまえに空の杯を置く、おっちゃん。
「迅雷、何かぁ飲みやすいカクテルをみつくろって、二人分……いーえ三人分出してよん♪」
自分の分の杯を――ヴッ、コトン。
「まてい。おれでさえひと舐めで、喉をやられたくらいだぞ? 五百乃大角が酒に強くねぇのを、おれぁ知ってるからな」
五百乃大角が出した方を――仕舞う♪
ふぉん♪
『イオノ>ふーんだ。これでも歴とした成人女性(扱い)なんですからね。
牛霊正路御前大学大学非常勤講師としての立場が、
シンシナティック・ニューロネイション内でも適応されています』
わからんわからん。
根菜さまが、じつは子供なのは知ってるが――
そこを突くのは野暮ってもんだ。
おれがこの来世でも酒が飲める頃になったら、いくらでも付き合ってやるから、それまで我慢しとけ。
首を振る根菜――ヴッ、コトン。
また杯を出しやがった。
今日は頑だな。おっちゃんという飲み仲間が出来て、我慢が出来ないのはわからんでもないが――
おれだって、我慢してるんだぞ。
「デは、うすメのバニラ・パンチヲ三杯作りまシょう」
ガラララッラン、カッシャカシャ♪
甘くて強い酒と、その元になった果実酒と――
「リオレイニア、両手一杯程度の氷をいただけませンか?」
氷くれぇ、おれが出してや……いや加減が、まだうまく出来ねぇかもしれん。
見あげるほどの巨大な氷柱なら、いくらでも出せるが。
「氷ですか? どうぞ」
迅雷が細腕で抱える、ジンライ鋼製の深い器。
そこへ入れられたのは、こぶし大の丸氷。
機械腕から飛び出す、鋭利な棘が丸氷を粉砕。
薬草が数枚と砂糖が足され――ガポンと蓋をする。
「でハ20秒ほド、オ待チ下サい――」
ガッシャガッシャガギャシャ、ガッシャン♪
小気味良いような、うるせぇような。
集まる子供たち。
「これは酒だから、おまえらにはまだ早ぇ!」
蹴散らした隙間に、グワラララン♪
魔法杖を鳴らし、男性教師が躍り出た。
すっかり忘れてたな。
「いやぁ♪ ただ酒と聞いちゃ、無下にも出来なーいよねー?」
どうやら、ずっと子供たちを見張って……見守っててくれたらしい。
酒を欲しがる者。
まだ縦だか横だかわからねぇ、分厚い肉を啄む者。
コロコロロッ♪
「1、2、3、4、5――♪」
「わっ、負けちゃう!?」
双六に興じる者。
「これなぁにぃ?」「魔法具かな?」
「猫の絵?」「おにぎりちゃん?」
「こっちは、シガミーちゃんの肖像画が描いてあるよ?」
猪蟹屋の売り物を見て、首を傾げる者。
「最初はどうなるかと思ったが、なかなか盛況で良いんじゃぁねーかぁ♪」
ただ、五百乃大角。
おまえ酒は、ほんと舐める程度にしといてくれ。
おれがガムラン町に落ちてきたばかりの頃みたいに、酔うそばから神々の世界に帰れるわけじゃねーんだからよ。
「(わかったわよーだっ! けどシガミーは、そんなに気を抜いてて良いのぉーん?」
何がだ?
「(辺境伯家からの依頼がぁー、まぁだ残ってるのおぉー、おぉ忘れぇでぇわぁあー? ウケケケケケケッ♪)」
ああ残ってるし、忘れてねぇーぞ。
今晩にでも全部、仕上げちまうつもりだしな。
ヴッ――――木の塊を取り出した。
それを短刀で、ゴリゴリと削っていく。
「「「それ、なぁーにー?」」」
「にゃみゃがぁー?」
レイダとビビビーとおにぎりが、寄ってきた。
子馬が居ねぇけど、どっか行ったか?
「こいつぁー、そうだな……レイダにするか♪」
「えっ、私ぃ!?」
〝初級造形〟と〝木工彫刻〟のスキルがあるから、考えたとおりに削れる。
「(シガミーは対外的には、造形や彫刻のスキルを所持していません。あまりにも良い出来の物を簡単に作ってしまうと、不自然では?)」
あ、いけね。忘れてた。
っていっても、温泉街の建物とか、ずいぶんと豪奢な調度品を作っちまったぞ?
「(五百乃大角の持つエディタを使用したことにすれば、大抵のことは誤魔化せますが)」
直接、小刀や鑿を使って、細かな細工をするのは――
シガミー姿のときには、控えた方が良さそうだぜ。
じゃぁ――すぽん♪
絵で板で、続きをする。
ふぉふぉ――ぽん♪
現れる光の格子。
その端の項目を辿って、『贔/マルチプル・ビュー』を選ぶ。
こうすると、おれや迅雷以外にも、この格子が見えるようになる。
ヴォヴォォォン♪
五百乃大角の御神体。
それを作ったときの形を、呼び出した。
「わきゃ!? なんですのこれ?」
跳ねるビビビー。
「これわねぇー。シガミーやイオノファラーさまが使う、絵が描ける魔法具だよね」
案の定、寄ってきた。
「そうだ♪ ちょっと見てろよ」
御神体の元になった〝ねがみめんど〟とかいう人形。
その根菜のような姿――タラーン♪
それに似せて、人形を完成させた。
ソレには台座があり――
丸太から削り出した、置物のような仕上がり。
ぐぐぐっ――すぽん♪
ごとん。
取りだした木工細工は――しゅばっ!
「これ、本当に私!?」
一瞬でレイダに奪われた。
「かわいい! イオノファラーさまみたい!」
「みぎゃみゃぎゃぁー♪」
レイダとビビビーとおにぎりの声に、ほかの子供たちまで寄ってきた。
おれは甘くて強い酒を、猪口に少しだけもらった。
そして、みんなから離れた檜舞台で――口から火を噴いた!
ぱったぱたたたっ♪
首が痛ぇから、こんどは団扇で風を起こした。
小さな種火が踊り、ちりちりと。
ぶすすすすっ、ぼふん♪
真っ黒焦げになる、レイダの人形。
「ぎゃっ、燃えちゃった!?」
泣くレイダ。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「シガミーちゃん、ひどいっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「こらぁっ! 即興で芸わしない――ひぃっくぅぃー――お約束でわぁー!? それにぃー燃やしちゃうなんてぇー、ひぃどぉいぃじゃぁなぁいぃでぇすぅかぁー!」
やべぇ、リオが酔っ払ってやがる。
たしかに、この酒は強ぇ――口に入れただけで、おれも相当酔いが回ったくらいだ。
「いやいや、こっからが本題だろうが! レイダこいつを、青い壁で塗ってくれやぁ!」
飛んできた迅雷を、ひっつかむ子供。
魔法杖を一振りすれば――――ギラリィン♪
「どうでぇい、立派になっただろうが♪」
おれはできたソレを、猪蟹屋の売り物が置いてあるテーブルに置いた。
切り株の土台には、『レイダ材見本』と彫り込んだ。
「わわーい♪ すっごく綺麗で、かわいい!」
本人もご満悦だし、こりゃ思ったより見事だぞぉ。
「これ自体、売り物になりますね? くすくすす?」
そんな声に振り向くと――
「がっはははははははっ――――甘い酒だとぉ!? けしからん、もっと出して見ろぉー!」
この声――そして鉄塊のような金槌。
「工房長!? どーしてここに!?」
いや、言うまでもねぇ。
理屈じゃねーんだったぜ。
この小柄で屈強な連中の、酒のにおいを嗅ぎつける鼻は。
けど、動体検知どーした?
階段を誰かが降りてきたら、わかるはずだ。
ふぉん♪
『>猪蟹屋に出入りしていた人物に関しては、
トラッカー表示をオフにしてありました』
「もうそろそろ外が暗くなりますので、生徒さんたちはお家や寮へ帰らせては?」
そう茅の姫が言うから外に出てみたら、本当にうす暗くなってた。
夕闇に立ちのぼる、仄暗い炎。
駆けつける、コントゥル家騎馬隊。
騎馬隊が子供たちを、送ってくれることになり――
央都猪蟹屋は、夜の部に突入した。
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