滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４５２：猪蟹屋四号店（央都拠点）、家宝勝負のゆくえと冷たい飲み物

「さぁ、おにぎりさん。この階段かいだんを直なおして……いえ、ドーム全周ぜんしゅうを使つかえるようにリフト型がたの折りたたみ階段かいだんを――」
　直なおせとは言うが、地下ちかへの扉とびらを開ひらくと階段かいだんは――
　三段さんだんも残のこってなかった。
　このままじゃ、確たしかに危あぶねぇ。

「にゃみゃごぁーん♪」
　ヴヴッ――――ガゴンカシャシャシャシャァ、ガチン♪
　茅の姫ほしがみが言うが早はやいか完成かんせいする、〝リフト型折がたおりたたみ階段かいだん〟。

　横壁よこかべに触さわると、ひとりでに開ひらく重い扉かくへき。
　それに連動れんどうし足場あしばを降ろす、太ふとく長ながい支柱しちゅう。
　ゴンゴンゴンゴン――ガゴォン♪
　その動力どうりょくは人造筋肉製アクチュエーターで、階段かいだんを引き出すためにも支ささえるためにも使つかわれている。

　ふぉん♪
『シガミー＞なかなか良い出来できじゃねーか』
　こりゃラプトル王女殿下おうじょでんかの魔導工学まどうこうがくだ。
　いつの間に、こんな難むずしいもんを覚おぼえやがった？
　頑張がんばらんと、おにぎりに置いて行かれる。

　ふぉん♪
『おにぎり＞みゃにゃがにゃっ♪』
　そう一行表示へんじを返かえす、黄緑色きみどりいろの魔物まものみたいなの。
　階段かいだんをふさぐ、そいつを避けて――――ドガン、シャァァァァッ♪
　ぼくは手すりを、高下駄たかげたですべりおりた。

　石床ゆかに降りたち、洞窟中央ドームちゅうおうに駆けよる。
　そこに転ころがるのは、真っ二つ・・・・にされた大鎧おおよろい。
　這いつくばる黒装束くろしょうぞくと――
　豪奢ごうしゃな刺繍入ししゅういりの白しろい布ぬのを纏まとう、四つ足あし……じゃないコントゥル家、ご令嬢れいじょう（戦闘狂せんとうきょう）。

　決着けっちゃくは、実じつにあっけなかったのだ。
　迅雷ジンライが最後さいごの大太鼓おおだいこを、打ち鳴らし――『♡♡♡　どっどむ♪』
　姫さんリカルルが無数むすうの光輪こうりんを、吐き放はなち――『○◎⑧ヴォオォヴォ＠℃ｇオォヴォオォ∞‰品ゥィイィンッ♪』

　片喰かたばみの葉が完成かんせいし――散る。
　泡あわのように湧く――封鎖クローズド怪サーキット光輪・レーザー。
　両者相打りょうしゃあいうち、虫の息ＨＰ１。

　倒たおれた赤い狐リカルルの体からだが、パリンと割れる。
　甲冑からだの下したは、ピッタリとした革製かわせいの服ふくを着ていたが――
　ソレも裁縫さいほうされた部分ぶぶんが、すべて解ほつれ――
　薄衣の下着ふんどしだけになった。

　ロックオンされた大鎧ジンライは、壁かべを走はしり逃げ回まわったが――
　追い詰められ、もう一度蹄いちどひづめの両端さきで、光輪こうりんと光輪こうりんを繋ごうとして・・・・・・、失敗しっぱいし――
　綺麗きれいに、二つに・・・なった。
　斬られた大鎧おおよろいは、何なにかを放ほうり投げた。

　それは黒くろづくめの、修験者しゅげんじゃとなり――
「カカカッ――――小娘こむすめよ、実じつに見事みごと！　此度こたびは痛いたみ分けと言うことでどうじゃろうかのぉ？・」
　ガガン、高下駄たかげたの歯で、ひび割れた石床いしゆかを踏みならす。
　なるほど、その早変わり・・・・のために裏天狗うらてんぐが必要ひつようだったのか。

　ヴヴヴッ――――ぶわっさり♪
　豪奢ごうしゃな刺繍入ししゅういりの外套ローブを取りだし、ご令嬢リカルルに掛ける天狗役ジンライ。

「ふぅ、まったくヒーノモトー国こくのご老体ろうたいは、体からだを何個持って・・・・・いますの？」
　一瞬いっしゅん、おれの一人三役ひとりさんやくがバレたのかと思おもった。

「修験者しゅげんじゃたる者もの、換えの体くらい・・・・・・・持ち合わせておるわい――クカカカッ♪・」
　もちろん、あっちは裏天狗うらてんぐ。
　大鎧おおよろいの中なかに残のこされた天狗装束てんぐしょうぞくは、おれが収納魔法具しゅうのうまほうぐに――すぽん♪

「お嬢じょうさま、ご無事ぶじですか!?」
　初心者用しょしんしゃようのじゃない、大おおきめの木の杖つえ。
　それにぶら下がり、階段かいだんから直接飛ちょくせつとんできた給仕服メイドふくの裾すそが――ぶわっさぁぁっ♪
　盛大せいだいに、まくれ上がった。
　やめろ、心しんの臓ぞうが跳ねる・・・だろうが。
　〝簡易型魔眼殺しサングラス〟じゃ、お前リオの女らしさは・・・・・全然隠ぜんぜんかくれねぇからな！

「あらレーニア、私わたしの服ふくを出してくれないかしら？」
　どかりと胡座あぐらをかき座すわり込む、ご令嬢れいじょう。
　頑丈がんじょうさが自慢じまんのはずの、対魔王結界たいまおうけっかいを壊滅かいめつさせたのだから、無理むりからぬだろうが。
　彼女かのじょは酷ひどく、お疲つかれのようだった。

　　　§

「じゃあ、ぼくたちは王都おうとに滞在たいざいする間あいだの根城ねじろを探さがしに行くので、今日きょうの所ところは失礼しつれいします」
　いろいろと引き留められたが、「カカッ――棲み家だけは、修験者しゅげんじゃとして譲ゆずれぬわ・」と早々そうそうに立ち去った。

「ねぇ、シガミー！　カラテェー君くんは？　本当ほんとうに出て行っちゃったのっ!?」
　蜻蛉返とんぼがえりした早々そうそう、子供レイダに詰めよられた。
「あいつらは、もともとガムランの岩場いわばで暮らすような奴やつらだからな――町中まちなかで過ごすのには、慣れてねぇんだよ……たぶん」
　天狗テェーングも烏天狗カラテェーも、おれと迅雷ジンライの別べつの姿すがただ。
　四六時中しろくじちゅう、一ひとつ所ところに居るわけにはいかんだろうが。

「えーっ！　このおいしくて冷つめたい飲み物ものの、おかわりを作つくってもらおうと思おもったのに！」
　なんだよ、呑み物もんの話はなしか。
「これ、いける・・・じゃないのさっ！　冷つめたくて甘あまくて、ファミレスのシェイクそのままじゃんか！・」
　レイダの杯コップを取り返かえし、顔中かおじゅうを冷つめたい飲み物ものまみれにした御神体いおのはらさま。

「あー、それか。えーっと、茅の姫かやのひめはわかるか？」
　ありゃ、おれが作つくったわけじゃねーから、知らん。

　ふぉん♪
『＞アイスクリームに甘さを足した牛の乳でかさ増しして、なめらかになるまで撹拌するだけです』
　随分ずいぶんと簡単かんたんだな。

「元もとの材料ざいりょうとなったアイスクリームの作つくり方かたは、お聞きしましたけれど、くすくす？・」
　星神かやのひめの目が笑わらってない。
　どうしてこうも、猪蟹屋ししがにやの商あきないに関かかわろうとするのか。
　邪魔じゃまされるよか、よっぽど良いが。

「それなら私わたくしが、天狗テェーングの奴やつ……天狗テェーングさまが作つくる所ところを見ていたから、わかりますわよ？」
　すっかり回復かいふくした姫ひめさんが、作つくり方かたを教おしえてくれた。

　それは天狗役ジンライの作つくり方かたとは、ちょっと違ちがっていたが――
　そこはおれがうまいこと、伝つたえておいた。
　誰だれにって、もちろん現場責任者リオレイニアにだ。

「――では、猪蟹屋ししがにや四号店よんごうてんの主力商品しゅりょくしょうひんは決まりましたが……シガミー？　こんな大変たいへんなときに、一体いったいどこにお出かけだったのですか？」
　魔眼殺しグラサン給仕服メイドに、詰めよられる。

「そうですねぇー。シガミーさんが居ればカラテェー君くんの負担ふたんは減ってたかも知れませんね、クスクス？・」
　茅かやの姫ひめに背後はいごを塞ふさがれた。

「そぉーだよ！　テェーングさまもリカルルさまを、おもてなししてくれたんだからね？」
　うんまぁ、今回は迅雷ジンライにだいぶ任まかせちまったからな。
　生意気な子供レイダにも、言い返かえさないでおく。

「それで、シガミー。アイスクリームと――」
「この冷つめたい飲み物もの、如何いかほどで売り出しますか――クスクス？・」
　計算機まほうぐ片手かたてに、にじり寄る給仕服メイドたち。

「さっきから出てくる、アイス・・・ってなんですの？」
「そうですらぁん。何なんだか気になりますらぁん？」
　高貴こうきな姫ひめさま連中れんちゅうまで、寄ってきた。

「な、なんでぇい？　何奴どいつも此奴こいつも！」
　神域惑星しんいきで作つくったときと、同おなじ手順てじゅん。
　それを何倍なんばいもの規模きぼで、作つくらされる羽目はめになった。
　具体的ぐたいてきには〝耐熱たいねつおもち〟１２匹分ひきぶん。
　面倒めんどうだったからおにぎりの肩かたをつかませて、行進こうしんさせた。

　　　§

「うむ、シガミー。これらの冷つめたい菓子かしは夏場なつばの兵へいたちの士気しきを高たかめるのに、実じつに有用ゆうようだと知った。当家とうけの兵営へいえいひいては、我が屋敷やしきまで毎日届まいにちとどけてはくれぬか？」
　「へぇ、それがぁ～。レア装備そうびの修繕強化しゅうぜんきょうかと猪蟹屋ししがにや開店準備かいてんじゅんびに、魔導学院まどうがくいんの授業じゅぎょうもありますんでぇ――来月らいげつまで、お待ち頂いただけると助たすかりますんで、へへへ♪」
　――――なんて、言えるか！

「へ、へぇ。承知しょうちいたしやした。伯爵はくしゃくさま」
　ぐ、今日きょうも寝ずの作業しごとをしねぇと、央都ここでの生活せいかつがまわらねぇ。
　本格的ほんかくてきに拠点きょてんとしての設備せつびを、整ととのえるしかねぇなー。

「やしたやした、ごわすでござる♪」
　うるせえ……が、この際さい、子供レイダだろうが使つかえる者ものは使つかう。

「王城おうじょうへも、届とどけて欲しいですららぁん♪」
　幸さいわいなことに天才魔導技師てんさいまどうぎしであらせられるラプトル王女おうじょも、なんか暇ひまそうだし。
　話はなしによっちゃ、手伝てつだってくれるかもしれん。