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4:龍撃の学院

450:コントゥル家家宝(ジンライ)、状態異常〝♡〟のひみつ

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「(カチンときたらしいぞ?)」
 天狗役ジンライあおりを受けた、四つ足の獣リカルルが――
 かべをものすごいいきおいではしりだした。

 ガチャガシャガチャガシャ――――バギバガン、ゴロン、ゴドン、バララララッ!!
 当然とうぜん鉤爪かぎづめを突きたてられたかべというかべは割れ、剥がれ落ちる。

「――ガムラン最強さいきょうだけのことは、有るわねぇぇ――」
 ガムラン代表だいひょうにして、名物めいぶつ受付嬢うけつけじょう片割かたわれ。
 四つあしかべはしる、ご令嬢れいじょうは――相当そうとう面白おもしろい。
 その矛先ほこさきが、こっちに向いていなければだが。

 兜頭かおリカルルからはなさない、天狗ジンライ
 拳程度こぶしていどひづめうえ
 立てたロッド先端せんたんに立つ修験者しゅげんじゃ

 それをねらきつねのつまさきが――ゴッバァァァァァッ!!
 かべおおきく割り、力強ちからづよく踏み抜いた。

 視線しせんとおらずくび反対側はんたいがわまわ天狗てんぐ、その刹那せつな

 ィィィィィィィィィィンッ――――――――!!!!
 ドッゴゴゴゴォォォォォォォンッ!
 死角しかくから飛びこむきつね

「カァァァァッ――――二のかま
 かた尖端せんたんわざ遠方えんぽうへの打突だとつ一点集中いってんしゅうちゅう穿うがちを体現たいげんする。
 錫杖しゃくじょう鉄輪てつわこんさきを持って突き出し、うでからかた、背骨《せなか》からこしひざまでを一直線いっちょくせんに。
 自身じしんほねあしで押し出し、錫杖しゃくじょう正確せいかく最速さいそくで突き出すわざだ。

 しんで当てるのに、向いちゃぁいるが――
「(おまえ、石床ゆかを撃つ気か? 背中せなかからひめさんが跳びかってんぞ?)」

「はぁぁぁぁっ――――
 ズドゴォ――――ゴバッキャッ!!
 地を割り、瓦礫がれきが飛び散る!
 まさかその石礫つぶてで、ひめさんを落とそうってのか?

 ギャギギィィン――――駄目だめだぜ。
 上体じょうたいを起こし、瓦礫がれきけんはらう。
 そのまま、突き出されたけんが――天狗てんぐ大鎧おおよろいむねつらぬいた。

 ガガァァンッ――――火縄ひなわのようなおと
 それは二のかた反動はずみで、天井てんじょうに降りたった修験者しゅげんじゃが――
 天井ゆかを踏みしめたおと
 いままさに、眼下がんかとおり過ぎるあかきつね剣士けんしを――
 打ち下ろすための――足の力にのかまえ

 赤い狐リカルル背中せなか
 なが一対いっつい尻尾しっぽが、生えはじめるあたり。
 そこへ的確てきかく命中めいちゅうする――伝説の獣ミノタウロースのこしたひづめ

 ヒュゴォォウ♪
 すさまじい突風とっぷうが巻き起こり、仄暗い炎きつねびを揺らす。

 どっどむ――♪
 それは大太鼓おおだいこのような。
 ヴォン♪
 狐面きつねめんのちょっとうえ
 あらわれる――『♡』。

「――あらかわいい――」
 どうやらあれが、状態異常じょうたいいじょうかたばみ〟らしい。
「(いままで、どんな状態異常じょうたいいじょうになっても、あんなしるしが出たことはねぇぞ?)」

 ゴゴォォォン――――バキャゴッ!
 石床ゆかたたきつけられ――――ガリガリガリギャギィィィ!
 けずれる石床いしゆか
 ごろりと転がり、つめを立て――ドガッシャン!
 さすがは家宝かほうだけのことはあるようで、四つあしこわれた様子ようすはない。

「ぐぅわぉぅるるるるぅ――――!!!」
 岩場いわば火吐ひはおおかみみたいな、うなごえを上げるご令嬢じょう
 これもニゲルにゃ、見せられねぇ。
 そろそろ、終わりにしようぜ。

 ふぉん♪
『天狗 LV57
 HP:■■□□□□□□□□705/3067
 MP:■■□□□□□517/1794
 神力:■□□□□□□□□□8%』
 ふぉん♪
『リカルル・リ・コントゥル LV53
 HP:■■■□□□□□□□684/2208
 MP:■■□□□□□□□□714/3401
 神力:■■□□□□□□□□22%』

 ジンライのめしが、のこり5パーセント
 ひめさんのほうは、効いちゃいるが……なんでしずまねぇんだ?

「(このさい、負けてやれ。目的もくてきは果たせたし――おまえならかじられたところで、いたくもねぇしよ)」
 ふぉん♪
『>ソレは無理なようです』
「――なんでよ? あたくしさまも、お腹空なかすいてきちゃったからぁー、終わりにしましょお――」

 ふぉん♪
『>リカルルからロックオンされています。強力な攻撃が来ます。
  天狗の四肢が粉砕され、体の中から私が転がり出たら――』
「――面倒めんどうなことになるわねぇん。シガミーなんとかしてっ――」
 なんだと、まだおくの手がありやがるのか?
 これだからコントゥル家の、おやつらさまわぁよぉう!

「(なんとかしろったって、どーしろってんだぜ! だからさっき、代わってやるって言ったのによぉ!)」
 姫さんてきをよく見る。よーく見た。
 狐面あたまうえの、状態異常じょうたいいじょう……かたばみ
 これ、すこしかたちへんじゃね?

「――へんってなにがぁ――」
 おまえさんたちが言う、かわいいハートてのは片喰かたばみの葉のかたちをいうんだろ?
「――カタバミぃ――」

 ふぉん♪
『ヒント>カタバミ科の多年草。雑草でハート型の葉を持ち、葉は夜閉じられる』
「(よーく見て見ろ。ハートのよこがほんのすこし欠けちまってるだろうが?)」

「――ほんとだぁ。はぁと3/4よんぶんのさん――」
 ふぉん♪
『>この形状から類推するに、あと三回、的中させれば私の勝ちです』

 ぽこん♪
『亥の目シリーズ一式【片喰・蹄】
 伝説級の魔物を象った武器防具一式。
 攻撃力320。
 防御力3280。
 条件効果/【片喰】この鎧を攻撃した対象に、状態異常〝♡〟を付与。
      ♡状態となった対象への魔法攻撃は、一切通らなくなる。
 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、
      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』

 おれと五百乃大角いおのはらの目のまえ。
 画面がめんなかに貼りつけられたのは、ミノタウ装備そうび上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっか

 スタタタットトォォン――――ガッシャタタタタッ――――ココォォォンッ♪
 天狗てんぐのまわりを跳ねながら、なみかをねら狐耳きつねみみ
 時折ときおり二本足にほんあしで(けん使つかうぞと)牽制けんせいすることもわすれてねぇ。
 一発食いっぱつらわせたら、6000越えの攻撃力こうげきりょくたたき出すはずのミノタウ武器ぶき
 それに耐える、ひめさんもひめさんだが――

 この『文様を完成させることで、対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』ってのはなんだぜ?

 ぽここん♪
『蹄のロッド【全属性・片喰】
 伝説級の魔物を象ったロッド。
 常軌を逸した魔導伝導率を誇り、
 芯で当てると無詠唱で魔術(小)が発生。
 攻撃力1300/追加攻撃力100/追加魔法攻撃力3200。
 条件効果/【片喰】芯で当てた場合は状態異常〝♡〟を進行させる。
 追加攻撃/戦闘状態が解除されるまでに、文様を完成させることで、
      対象の残存HPに応じた一撃を、放てるようになる』
 装備条件/なし』
 もう一枚表示いちまいひょうじされる、上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっか

 どっどむ♪
 ふたたびの、大太鼓おおだいこのようなおと
 交差こうさする、四つ足リカルル修験者ジンライ
 ひめさんのすきを突いて、迅雷ジンライ二発目にはつめ的中・・させたらしい。

「あっ――!?」
 狐面きつねめんの少し上。
『♡୧』
 酢漿草ハートの葉は、一枚いちまい半分はんぶん
「(『文様もんよう』てのは、こいつ・・・のことで間違まちがいなさそうだな)」

「ぎゃふんっ――!!」
 くずれ落ちるひめさん。

 『対象の残存HPに応じた一撃』てのを、当てるまでもなかったか。
 蘇生薬エリクサー使つかって、なおしてやらねぇと――ヴッ♪
 おれが蘇生薬エリクサーを、取り出したとき――

 カチャカチャカチャッ――――ん?
 機械きかい尻尾しっぽうごいてる?
 カシャーンッ!
 尾のさきが振りおろされ、甲冑かっちゅう首元くびもとを薙いだ。

 ブッシャァァァァッ――――!
 吹きあがる血――――ォォォォッ、ブツン。
 なにかが、断ち切られるようなおと
 シュバァァァッ――――♪
 緑色みどりいろひかりあわのようにあらわれて、赤い獣リカルルからだもぐり込む。
 ツォァッ、タパタタタッ。
 血がふたたび空中ちゅうを跳び、首元くびもともどっていく。

「こほこほけほん、ここぉん?」
 跳びおき、いきととのえるひめさん。

 ふぉん♪
『リカルル・リ・コントゥル LV53
 HP:■■■■■■■■■■2208/2208
 MP:■■■■■■■■■■3401/3401
 神力:■■□□□□□□□□22%』

 生きててくれて、助《たす》かったが――全部ぜんぶもともどりやがったぜ。
 あれか――コントゥル家の、またべつ家宝かほう
 おれのくびにも掛かってる(おれにはなぜか、効かなかったが)――

 ふぉぉん♪
『追憶の結び紐【消費アイテム】
 身につけた者の命を一度だけ保護する』
 そんな表示ひょうじが出た。

「(だから、お貴族きぞくさまはこええんだ)」
 蘇生薬エリクサーの持ち合わせくらい、有っただろうによ。

 からだうごかねぇまま、負けるのがいやだからって――
 こんなためし斬りで、手前てめぇくびを落とすなってんだぜ。
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