滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４４３：烏天狗（シガミー）、コントゥル家家宝かんせい

「ざっと、こんなのはどうだ？」
　ミノタウロースの角つのをまるごと一対使いっついつかった、頭鎧かぶと。
　甲冑かっちゅうの姿形すがたは城塞都市じょうさいとしギルド長ちょうの甲冑やつを、参考さんこうにして――
　魔石ませき二個にこを使つかい、最大限さいだいげんまで強化きょうかする。
　もうコレだけで、おれの一撃いちげきにも耐えるだろコイツ。

　あとは武器ぶきか――蹄二個ひづめにこだと、剣けんにもしづらい。
　弓ゆみも埋め込む所ところがねぇし、槌つちじゃ柄つかくらいにしか埋め込めねぇ。
　柄つか……それこそ根こんの端さきくらいしか、使つかい道みちが――
　あっ、城塞都市じょうさいとしで作つくりが良い感かんじの根こんを見つけただろ！

　ふぉふぉん――チカチカチカ♪
『風のロッド【風属性】
　芯で当てると風魔法（小）が発生。
　攻撃力１３０／追加攻撃力１０。
　装備条件／なし』
　ブクマから呼び出すと――ソレは鉄製てつせいの根こん。
　鑑定結果それを手でつまんで、エディタの画面がめんに持ってくる。

　ヴォヴォッふぉふぉん♪
　詳くわしい構造こうぞうが、リスト化される。
「（なになに……両端りょうはじにオリハルコンが張ってあるのか？）」
　それこそ、希少金属オリハルコンより魔導伝導率マナでんどうりつが高たかい迅雷ジンライとは、くらべるべくもないが。

　その端オリハルコンを台座だいざに作つくり替えて、蹄ひづめを埋め込んでみた。
「（カラテェー、魔導伝導率マナでんどうりつがレア度★★★ほしさんの期待値きたいちを超えました・）」
　どーいう？
「（そうですね、ミノタウロースの暴力的ぼうりょくてきなまでの突進力とっしんりょくは、この蹄ひづめによるものだったと思おもわれます・）」
　そうしたらミノタウあいつのやばさの殆ほとんど全部ぜんぶが、蹄ひづめから来てるんじゃねーかよ。

「（魔導伝導率マナでんどうりつ……構造的こうぞうてきには、魔法杖まほうつえにもなるんじゃね？）」
　根こんは打撃武器だげきぶきだ。そのうえ魔術まじゅつも放はなてるなら。
　この根こんみたいに魔術まじゅつを放はなつ武器ぶきはあるが、これを突き詰めると――
　たぶん、毛色けいろが違ちがう物ものができそうな。

「（オリハルコンなどの希少金属きしょうきんぞくなら、多少たしょうの蓄たくわえがありますが？・）」
　そうじゃねぇんだよ。
　うぬぅ……目のまえのミノタウ素材そざいを、上級鑑定じょうきゅうかんてい。

　この両端りょうはじの蹄ひづめをよぉ、どうにかしてミノタウ素材・・・・・・で繋げば・・・――
「（――ミノタウの蹄製・・・・・・・の軌条レールにならねぇか？）」
　絵で板エディタの画面なかじゃなくて、石床ゆかに置かれた二ふたつの蹄ひづめを――
　順番じゅんばんに指ゆびさした。

「（角つのですと蹄ひづめとの接合部分せつごうぶぶんに、魔導伝導率マナでんどうりつの斑むらが発生はっせいします・）」
　ヴォヴォォゥン♪
　横長よこながの画面がめんの中なか。
　根こんの中なかを進すすんできた流れ・・が、先端ひづめに届とどいた途端とたん――ヴァリバリバリバリィ!!
　幾重いくえもの奔流ほんりゅうとなって、空中ちゅうに迸ほとばしった。

　かといって、全部ぜんぶを角製つのせいにすると――
　折角せっかくの『魔導伝導率１３００％』という蹄せいのうを、織り込めない。
　中々なかなか、うまくはいかねぇ――んう？

　『魔導伝導率３００％』という、オリハルコン並みの性能せいのう。
　そんなミノタウ素材そざいが、目に入はいった。

「（毛皮けがわですか？　魔導伝導率マナでんどうりつが希少金属並きしょうきんぞくなみの糸いとにすれば、導線どうせんとして使つかえるかもしれません・）」

　ミノタウの毛皮けがわを、ほんの少すこし拝借はいしゃく。
　糸いとを紡つむぐ機械きかい――紡績機ぼうせききと化す迅雷ジンライ。
　出来できたミノタウ糸いとを、ぼくが縒り合わせると――
　それは、しなやかで丈夫じょうぶな縄なわになった。

　ギュギュギュギュッ――すこん。
　しゅるるるるるるるるっ――ぎゅぎゅぎちり。
　根こんの真ん中なかに縄なわを通とおす細穴ほそあなを開け――天衣無縫てんいむほうスキルで、二ふたつの蹄ひづめを繋つなぐ。
　クカカカッ――――思おもったより面白おもしろいもんが出来できそうだぞ。
　要ようするにだ。

「奥方おくがたさまと戦たたかえる位くらいならさ、家宝かほうとして申もうし分ぶんないよね？」
　ひさびさのニゲル語。烏天狗姿カラテーすがたの間あいだは、コレで喋しゃべらんと襤褸ぼろが出る。

「あらそれぇ、すっごく素敵すてきですわねぇ？　ケェッッタケタケタケタッ♪」
　ぼぉぅわっ♪
　仄暗ほのぐらい炎ほのおが、絵で板エディタの向こうに灯ともった――――！

　ヴヴヴヴヴォォンッ――――ぼこんごとん、ガチャガチャ、ガラランッ♪
「あっ!?」
　『作成』を、押しちゃったじゃんか！

　汎用はんようクラフト絵で板エデイタは、石床ゆかに並ならべておいたミノタウ素材そざいを使つかい――
　ミノタウ一式装備いっしきそうびを作成さくせいした。

　　　§

「くすくすくすくすす、ここぉぉん♪」
　ぼぅぅわ、ぼぼぅぅわっ♪

「（ちっ、念話ねんわを使つかっていた今いまの今いままで、気づかなかったぞ!?）」
　動体検知アクティブトラッカーはどうしたぁ!?
　リオの家サキラテの、隠形おんぎょうの術じゅつじゃあるまいし！

　目のまえの床ゆかに転ころがる、ミノタウ装備一式そうびいっしき。
　その中なかから、頭鎧かぶとを拾ひろいあげる――高貴こうきな指ゆび。
　コントゥル家ご令嬢れいじょうは、その狐耳あたまから足元あしもとまで。
　赤あかで白しろで橙だいだいの派手はでな甲冑かっちゅうを、着込きこんでいた。

「（ちっきしょう！　フル装備そうびじゃねぇかよ！）」
　ガムランの草原そうげんで初はじめて、姫ひめさんとやりあったときの――姿すがたを消すアレか!?

「（はい。電磁でんじメタマテリアルによる可視光並かしこうならび電界像でんかいぞうの改竄《かいざん》により、認識阻にんしきそが・――）」
　ィッ――――！
　一瞬いっしゅん、死線しせんで遮さえぎられたが――グググッ！
　両足りょうあしを踏ん張り、必死ひっしに狐面かぶとを押さえている。

「（おい、どうやら、おれたちに近ちかづくために、隠かくれ蓑みのの甲冑かっちゅうを持ち出してきたらしいぜ）」
　ふぉふぉん♪
『＞そのようですね。念話やアーティファクト狙撃に対する、
　　先制攻撃衝動に耐えて忍びより、背後を取ったと思われます』

「（なにをして……やがるんだか）」
　おれは生身なまみの体からだ、生身なまみの魂たましいを持っているから――
　おれが念話するはなす分ぶんには、斬られることはない。

「リ、リカルル姫ひめよ！　隠形おんぎょうの術じゅつとは、恐おそれ入ったわい！・」
　いいぞ、天狗役ジンライ。多少驚たしょうおどろいてやるのか、平民へいみんの心意気こころいきってもんだ。
　実際じっさいに驚おどろかされたがな。

「リカルルさま、コレ・・を使用中しようちゅうは、ぼくたちの身が危あぶないので、近寄ちかよらないでください」
　おれは例れいの無用の長物くさりばこを取りだして、それを突き出して見せた。

「そうは仰おっしゃいますけれど、カラテェー？」
　バカみたいに大おおきな角つのが付いた兜かぶとを抱かかえなおし、その表面ひょうめんをなで回まわすご令嬢リカルル。
「な、なんっでしょうか？」
　今度こんどは何なにを言われるのか、想像そうぞうが付くだけに――聞かないわけには行かない。

「完成かんせいした甲冑これわぁ、試ためし斬り……じゃなかった、性能試験せいのうしけんをしなければなりませんでしょぉぉおぉおぅぅぅぅうぅう？」
　高貴こうきで派手はでな姫ひめさんが、はぁはぁしながら角兜それをおれに突きつけたが――
　烏天狗おれの立端ながさを見て――

　つぎに天狗役ジンライへ、にじり寄っていく。
　そうだな。裏天狗そっちなら身長たっぱも変えられる。

　ふぉふぉん♪
『＞シガミー。救援を要請します』
　じりじりと、追い詰められる天狗役ジンライ。

「（そうは言ってもよぉ。フル装備そのなりの姫さんリカルル相手あいてに、階段かいだんを駆け上がって逃げおおせるとわ思おもえねぇぞ？）」
　あ、そうしたらよ。
　せめてこっちも、〝試し切り・・・・〟させてもらおうぜ？
　それなら、諦あきらめも付くだろ。

　ヴッ――カシャン♪
　おれは白しろい鳥とりのような、仮面そいつを取りだした。

「あらソレ？」
　姫ひめさんが、狐耳くびだけをこっちに向ける。

「これさ、整備せいびするように言われて預あずかってたんだけどさ、その甲冑かっちゅうの一部いちぶなんでしょ？」
　それは、赤黄緑あかきみどり紫青黒むらさきあおくろの板いた、網目あみめの板いたにビードロの板いたなど――
　全部ぜんぶで２１６枚まいの積層せきそう構造こうぞう。
　光学的こうがくてき魔術的まじゅつてきに粋すいを凝らした――
〝魅了みりょうの神眼しんがん〟を封印ふういんする〝魔眼まがん殺ごろし〟。
　リオレイニアの仮面かめんだ。

「ええ、ソレは確たしかに、この甲冑かっちゅうの一部いちぶですわ。リオレイニアはアナタたちを随分ずいぶんと信頼しんらいしているのですね」
　まてまて。なんで剣けんに手が伸びる？
　ちゃんと「おれと迅雷ジンライが居ねぇときは、天狗テェーングか烏天狗カラテェーに見てもらってくれ」って、言ってあるからな。
　それに、お前まえさんの赤あかい狐面かぶとは、すでに天狗わしがいちど直なおしておるじゃろうが。

「まぁね。じゃぁさ、これ完全かんぜんに整備せいびしてあるんだけど――これを付けて、お師さまと立ち合ってみてよ？」
　フル装備そうびの派手はでな甲冑かっちゅう。
　そこに、今いままで欠けていた鳥とりの仮面かめん。
　それを付けた姫ひめさんが、狐火きつねびをどう操あやつるのか――

「（正直しょうじき、気になって仕方しかたがねぇ。お前まえはどうだ迅雷ジンライ、いやお師さまよぉう？）」
　狐耳リカルルと黒頭巾ぼくに見つめられた、天狗役ジンライは――

「カカッ――――よ、良いじゃろう。修験しゅげんの技わざを、ご覧ごらんに入れようではないか・」
　ガガカン――高下駄たかげたを踏みならし、姿勢しせいを正ただす修験者しゅげんじゃ・天狗てんぐ。
　その体長たいちょうが調整ちょうせいされ、ミノタウ一式装備いっしきそうびを着込きこめるくらいになった。