滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

３：ダンジョンクローラーになろう

３７１：龍脈の回廊、おかえりシガミー？

「なんでぇい？　目のまえが真っ白しろになっちまったぞ!?」
　見える範囲ところが、ぜんぶ白しろいぞ？
　ぼこぼこと湧いてた白しろい花はなで、埋もれちまったのかぁ？

　ふぉふぉん――ヴュワワワワッ♪
『キャラメイクエディター　００：１９：５６』
　なんかでやがったぞ？

　紙かみが張ってねぇ障子しょうじで、目のまえが仕切しきられた。
「やい、いったいどうしろってんだぁ？」
　誰だれか居ねぇのかぁ――そもそもここはぁ、眩まぶしくていけねぇやい！

　ふぉふぉおふぉふぉふぉぉぉぉおんっ♪
　眩まぶしいって思おもったら――目のまえが急きゅうに暗くらくなった。
　逆ぎゃくに障子しょうじや文字もじが、白しろくなって見やすくなる。

　ふぉふぉん♪
『ヒント＞音声入力／エディタをダークモードに切り替えました』
　わからんが見やすくなって助たすかる。

　スゥゥゥゥッ！
　障子しょうじで囲かこまれた中なかに、人影ひとかげが見えた！

「やべぇ――やられるっ！」
　何なにかねぇのか武器ぶきは！
　さっきの伸びる独古杵どっこしょでも良いぞぉー!?

　　　§

「――と思おもったがぁ、まるで動うごかねぇぞ・――ニャン！」
　コントゥル邸ペントハウスに、可憐かれんな声こえが響ひびきわたる。
　邸宅付ていたくづきの使用人しようにんの働はたらきにより、花はなは天井てんじょうまでの半分はんぶんくらいまで減った。

「わっきゃ!?　シガミーの声こえだっ！」
　ぽっきゅら、ひひぃん？
　子馬こうまに掘り起こされながら――友達シガミーの声こえに、興奮こうふんするレイダ。

「よいしょっと、怪我けがはありませんか？」
　鳥とりの仮面かめんの給仕姿メイドが、子供レイダをうけとり馬うまの背に乗せた

「大丈夫だいじょうぶー♪　それより、リオレイニアさん、シガミーの声こえだよ！」
　馬うまの首くびをわっさわさしながら、心こころのうちを繰りかえすレイダ。

「ええ、この、お行儀ぎょうぎの悪わるい話はなし方かた。聞き間違まちがえようもありません」
　ギュッと子供レイダの手を握にぎり、安堵あんどの表情ひょうじょうを浮かべるメイド・リオレイニア。
　レイダとリオレイニアは、さっき聞こえた行儀ぎょうぎの悪わるい声こえの主ぬし。
　〝シガミー〟率ひきいる冒険者ぼうけんしゃパーティー〝シガミー御一行様ごいっこうさま〟の、メンバーである。

「侍女隊前じじょたいまえへー！」
　雪ゆきかきのような道具どうぐをつかい、捨てられていく綺麗きれいな花はな。

　オルコトリア謹製きんせいダストシュート・・・・・・・が、満杯まんぱいになりつつあるいま――
　花はなの搬出先はんしゅつさきは、外そとだった。
　伯爵夫人はくしゃくふじんが飛びこんできた、外部がいぶハッチ。
　何カ所なんかしょかあるそれらが、全すべて解放かいほうされ――花はなは、ガムランの町まちへ舞う。

「カヤノヒメさま、この花はなは何なんですの？　外そとへ捨ててしまって、よろしいのかしら？」
　できる限かぎりやんわりと、本質ほんしつへ切り込むご令嬢れいじょう。
　興奮こうふんさせて、また花はなが増えたら、ガムラン町ちょうが壊滅かいめつしかねない。

「これはシガミーさん探索たんさくに使つかった〝龍脈りゅうみゃくの回廊かいろう〟の……なんと言ったら良いのかしら？　〝余り・・〟と言うしかないものですわ。月つきの光ひかりに溶けるので、外そとへ捨ててもかまいませんわ、こひゅこふゅん♪」
　ぱぁぁぁ、ぼっぼっがぁぁん！

「侍女隊前じじょたいまえへー！」
　花はなは窓まどの外そとへ、くるくるひらひらと。

「――んんぅー？　この目も鼻はなも口くちもねぇのわぁ、まさか……おれの体からだかぁ？」
　誰だれへ告げるでもない、行儀ぎょうぎの悪わるい子供シガミーのつぶやき。

「シガミーは、何なにを言ってるんだろうね？」
「さぁ、ひょっとしたら、寝ぼけている・・・・・・のかも知れませんね」
　パーティーリーダーを心配しんぱいするふたり。

　白しろく肉厚にくあつな花はなびらが、五枚ごまい連とらなる大おおきな花はな。
　花はなをまき散らす、新しんギルド会館かいかん最上階ペントハウス。
　その光景こうけいは、語かたり草ぐさになるほど美うつくしかったという。

　　　§

「ギギギギギギギギギギギギィィィイッィィィィィイッ、ギャァァァァァァァォォォウゥウゥ――――――――!!!!」
　凄すさまじい唸うなり声ごえ！

「ああもう、ホントにしつこいな！　その平ひらたい目を向けて、追っかけてくるなよっ！　怖こわい怖こわい怖こわいんだよぉう！」
　頭あたまに猫ねこの耳みみを乗せた青年せいねんが、自分じぶんの顔かおほどもあるサメの目に・・・・・――捉とらえられている。
　肉迫にくはくする、二重にじゅうに生えた牙きば。

　レイド村むらから離はなれること、およそ数すうキロメートル。

「――――ッチィィィィェェェエエエエェェイイッ！」
　鍵剣かぎけんセキュアの剣速けんそくを上げるため、何度なんども試こころみられる回まわり込み。
　ごぼぼぼおｂがぼぼぼごぉぉぉおんっ！
　ぐねる魚影ぎょえい。

　進行方向しんこうほうこうには大口サメが待ちかまえ――――ザッギイィィィィイィンッ！
　並み・・の魔物まものなら、鍵剣セキュアの超重量ちょうじゅうりょうだけで寸断すんだんされるところだが。
　ガッギュギギギィッィンッ！
　大口おおぐちの牙きばで受け止められ、ニゲル音速おんそくの――聖剣セキュア・・・・・・を振るうには至らない・・・・。

　そのとき――すぽん♪
　青年かれの靴くつが、脱げた。
　遺跡獣いせきじゅうと呼ばれる巨獣きょじゅうにより、倒壊とうかいしたビルの下敷したじきになり死亡しぼう。
　死後しご、日本にほんから惑星わくせいヒースへと転移てんい（蘇生そせい？）してきた青年せいねんニゲル。

　その革靴かわぐつは、生前せいぜんから履いていた物もののようで――
「靴紐くつひもが、切れたっ!?」

　ズドッ、ゴガァァン、ゴロロロロロオッ――どがばきゃ!!
　木の幹みきや枝えだを折り、地を転ころがって大岩おおいわへ激突げきとつ！

「――おれの体からだは決まってらぁ・――ニャッ！」
　気を失うしなった彼かれの胸ポケットスマホから、聞こえてくるのは――

「――よくは覚おぼえちゃいねぇが、いくさ場みてぇな現うつつで生き抜くならぁ、コイツ・・・一択いったくだ・――ニャァ♪」
　鈴すずの音ねのような、かわいらしい――威勢いせいの良さ。

「ギギギギギギギギギギギギィィィイッィィィィィイッ、ギャァァァァァァァォォォウゥウゥ――――――――!!!!」
　凄すさまじい唸うなり声ごえが、ニゲルに迫せまる。
　青年せいねんの額ひたいや手足てあしから血が滴したたり落ち、割れた大岩おおいわを濡らしていく。

「――なんか引っかかってやがる・――ニャッ？）」
　ギィィン！

「グギャォオォアァォォゥ!!??」
　ドッズウズズズズズズウズゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ――――!!!!
　正まさにいま、獲物えものに食らいつこうとしていたサメの巨体きょたいが跳ね――地に突き刺さった。

「痛つっう!?　けほけほけほけほっ――気絶きぜつしてた!?」
　土砂どしゃを頭あたからかぶった青年ニゲルが、土つちを払い起きあがる。

　彼かれのまえに横よこたわるのは――――赤あかい切り込みが入はいった、巨大鮫きょだいざめ。

「――滅せよっ・・・・――ニャァ♪」
　そんな可憐かれんで物騒ぶっそうな声こえ。

　日の本生ヒーノモトーうまれの僧兵そうへいが唱となえる、伝家の宝刀とっておき。
　その文言もんごんを唱となえると、どういう訳わけか――
　直前ちょくぜんに放はなった攻撃こうげきの――威力いりょくが増すのだ。

　キュドゴッ――――ぼぎゅるり――――――ぐにゅるるるるりゅっ！

　ホオジロザメの体からだが弾はじけ、一瞬いっしゅんで裏返うらがえった。
　その不思議ふしぎでで不気味ぶきみな光景こうけいに、青年ニゲルは言葉ことばを失うしなう。
　とっておきの蘇生薬エリクサーを飲み――全回復ぜんかいふく。

　そして鍵剣セキュアを、構え直した・・・・・。

　なぜなら――
　サメの体からだを割って・・・、姿すがたを現あらわしたのは――
　鎧よろいを身にまとった〝巨大きょだいな武者むしゃ〟だったからだ。

「赤あかい鎧よろい？　鬼おに……いや、ロボットみたいだっ！」
　青年せいねんは、いそいで靴くつの片方かたほうを脱ぎ――
　ヴッ――がらからん♪
　黒くろい鉄下駄てつげたを、取り出した。