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3:ダンジョンクローラーになろう
370:龍脈の回廊、ニゲルVSサメ
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「ギギギギギギギギギギギギィィィイッィィィィィイッ、ギャァァァァァァァォォォウゥウゥ――――――――!!!!」
凄まじい唸り声!
ヒュボォ――――――――ゴゴゴゴォゥワッ!
長く伸びる炎。
この世界のサメは、ここまで大きく(全長約15メートル。ニゲル換算で8・5ニゲル)成長すると――
空を泳ぎ、口から火を吐くのだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
女性の悲鳴に、振りかえるニゲル。
見れば、大きな卵を大事そうに抱えた神官ナーフが、うずくまっていた。
「み、御使いさまの卵さまは、私がお守りせねばっ!」
地上を焼き尽くす、炎の流れ。
その熱から、おにぎりの卵を守っているのだ。
ガムラン最凶よりも手練れの、ニゲルをもってしても――
身を隠さずには居られないほどの、厳つい形相。
牙に尾がついたような、恐ろしさを体現するフォルム。
神官という職業を差し引いたとしても、彼女の献身は――
立派だった。
「あのそれっ! そこまで大層な物でもないので――放っといて逃げてくださぁーい!」
物陰から身を乗りだし、声を掛ける青年。
あの卵の中には、自律型一号を構成するアーティファクトが入っている。
自律型シシガニャンの中枢にして神髄。
廃棄された、古い時代の女神像。
その中から発掘された、まるでおにぎりみたいな三角形の物体。
それは二つ組み合わせることで、神々が持つ遠大な演算単位を獲得する。
SDK(ソフトウェア開発キット)として機能するソレは――
遠隔操作出来る裏天狗の筐体や、神域惑星に設置した女神像の土台などにも使われている。
詰まるところ、おにぎりの卵は大層な物であり、換えのきかない代物だ。
だが決して――命を賭してまで、守るほどの物ではない。
ヒュボォ――――――――ゴゴゴゴォゥワッ!
サメの口から、長く伸びる炎。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ! い、イオノファラーさまぁ――――!」
卵を抱きかかえ、組んだ手を鼻に押し当てるナーフ・アリゲッタ。
「し、仕方ない――――!!」
御使いさまの従者と思われているが、青年はイオノフ教の信者ではない。
それでも敬虔な信徒である神官女性を、〝見捨てる〟という選択肢はなかったようで――
飛び出すニゲル青年。
その足取りに迷いはなく。それは前世の日本。
遺跡獣が闊歩する世界で生きていた彼が培った、〝死に様〟も関係しているのかも知れない。
「ッチッィイイィィイェェェェェェエェェェエエエィ――――――――!」
いざ動き出してしまえば、聖剣セキュア使いであるニゲルに、切れぬ物などなく――
接敵のための直線さえ確保できれば、彼の敵は帰結的に一刀両断される。
置きっぱなしの荷車――タァン!
一頭しか居ない、牛舎の屋根――タタタァン!
屋根が崩れた、サイロの塔壁――スタタタッタァン!
それらを踏み台にし、彼は果敢にも天へ昇る!
ごっぼごぼごぼ――――どっぱぁぁぁん!
ニゲルを察知し旋回する、空飛ぶ大口。
気性の荒さを体現する、凶悪な牙。
巨大な目に、感情はなく――
ニゲルとサメの視線が交差する――――ザッギィィィィィィンッ!
ひゅぼぼぼぼぉぉぉぉう――――切り裂かれる炎!
鍵剣セキュアを放つ、勇者(のなりそこない)ニゲル。
セキュアは進路を数回折り返すことで、音速を超える。
だが足場のない空中では――折り返すことは出来ない。
スッタン!
サメの鼻先へ、靴裏がつく。
身をよじるサメの体表を、駆けだすニゲル。
ザシュッ、ジャギジャギジャギジャギジャギジャギギザギギザザギギギィィィィィンッ――――!
鮫肌の鼻先から、尾びれまで。
ぐねる魚を、一曲線に走るニゲル――――ッシュッカァァァァァンッ!
剣を振り抜き――離脱。
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――厳ついよ、何あの口! そしてあの目、怖い怖い!」
村の外。森の木々の上に落ちていく青年の顔が、ふたたび――恐怖にゆがむ。
ドダァン――ドゴドゴドタタタァン!
着地後、十人並みの速さで――逃げていくニゲル。
「神官さまー、今のうちですじゃぁー!」
村長の声が遠くから、かすかに聞こえる。
ばしゃばしゃざざざぁぁ――――!
空を走る水音は、青年を追いかけ加速する。
「ッチィ――まるで切れやしないな!」
振りかえる彼の目に映るのは――
追撃を開始した、大海空を泳ぐサメ。
その胴体に、赤い筋が見えた。
致命傷にはほど遠い、薄皮一枚。
サメの体表面を覆う鱗には、ナノサイズの渦流生成器が配置されている。
それは規格外の揚力を発生させるだけでなく――
活力を流すことで、堅牢な鎧にもなるのだ。
§
「あれれ!? 外部アドレス#44Ga3の存在確率がさぁ――100%なんだけどぉー、ウ・ケ・ルーゥ♪」
目のまえの画面のひとつに、目を留めた御神体がそんなことを言った。
ヴォオゥゥウゥン♪
まるで変化がなかった映像空間中央。
重く鈍い効果音が発せられ――
猫の魔物の姿形が、赤色に変化した!
「ど、どういうことかしら? 仮想化シシガニャン、顕現しますわぁ!」
額を押さえ、取り乱す星神。
ぱぁぁぁ、ぱぱぱぱぁぁぁぁっ――ぼっがぁぁんぼぼぼぼががぁぁぁんっ!
新ギルド会館最上階、コントゥル家邸宅は――
天井まで花で埋もれた。
ーーー
ボルテックスジェネレーター/空力特性を高める突起群。空気を切り裂くことで、揚力を高めたり、騒音を軽減したりする。
凄まじい唸り声!
ヒュボォ――――――――ゴゴゴゴォゥワッ!
長く伸びる炎。
この世界のサメは、ここまで大きく(全長約15メートル。ニゲル換算で8・5ニゲル)成長すると――
空を泳ぎ、口から火を吐くのだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
女性の悲鳴に、振りかえるニゲル。
見れば、大きな卵を大事そうに抱えた神官ナーフが、うずくまっていた。
「み、御使いさまの卵さまは、私がお守りせねばっ!」
地上を焼き尽くす、炎の流れ。
その熱から、おにぎりの卵を守っているのだ。
ガムラン最凶よりも手練れの、ニゲルをもってしても――
身を隠さずには居られないほどの、厳つい形相。
牙に尾がついたような、恐ろしさを体現するフォルム。
神官という職業を差し引いたとしても、彼女の献身は――
立派だった。
「あのそれっ! そこまで大層な物でもないので――放っといて逃げてくださぁーい!」
物陰から身を乗りだし、声を掛ける青年。
あの卵の中には、自律型一号を構成するアーティファクトが入っている。
自律型シシガニャンの中枢にして神髄。
廃棄された、古い時代の女神像。
その中から発掘された、まるでおにぎりみたいな三角形の物体。
それは二つ組み合わせることで、神々が持つ遠大な演算単位を獲得する。
SDK(ソフトウェア開発キット)として機能するソレは――
遠隔操作出来る裏天狗の筐体や、神域惑星に設置した女神像の土台などにも使われている。
詰まるところ、おにぎりの卵は大層な物であり、換えのきかない代物だ。
だが決して――命を賭してまで、守るほどの物ではない。
ヒュボォ――――――――ゴゴゴゴォゥワッ!
サメの口から、長く伸びる炎。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ! い、イオノファラーさまぁ――――!」
卵を抱きかかえ、組んだ手を鼻に押し当てるナーフ・アリゲッタ。
「し、仕方ない――――!!」
御使いさまの従者と思われているが、青年はイオノフ教の信者ではない。
それでも敬虔な信徒である神官女性を、〝見捨てる〟という選択肢はなかったようで――
飛び出すニゲル青年。
その足取りに迷いはなく。それは前世の日本。
遺跡獣が闊歩する世界で生きていた彼が培った、〝死に様〟も関係しているのかも知れない。
「ッチッィイイィィイェェェェェェエェェェエエエィ――――――――!」
いざ動き出してしまえば、聖剣セキュア使いであるニゲルに、切れぬ物などなく――
接敵のための直線さえ確保できれば、彼の敵は帰結的に一刀両断される。
置きっぱなしの荷車――タァン!
一頭しか居ない、牛舎の屋根――タタタァン!
屋根が崩れた、サイロの塔壁――スタタタッタァン!
それらを踏み台にし、彼は果敢にも天へ昇る!
ごっぼごぼごぼ――――どっぱぁぁぁん!
ニゲルを察知し旋回する、空飛ぶ大口。
気性の荒さを体現する、凶悪な牙。
巨大な目に、感情はなく――
ニゲルとサメの視線が交差する――――ザッギィィィィィィンッ!
ひゅぼぼぼぼぉぉぉぉう――――切り裂かれる炎!
鍵剣セキュアを放つ、勇者(のなりそこない)ニゲル。
セキュアは進路を数回折り返すことで、音速を超える。
だが足場のない空中では――折り返すことは出来ない。
スッタン!
サメの鼻先へ、靴裏がつく。
身をよじるサメの体表を、駆けだすニゲル。
ザシュッ、ジャギジャギジャギジャギジャギジャギギザギギザザギギギィィィィィンッ――――!
鮫肌の鼻先から、尾びれまで。
ぐねる魚を、一曲線に走るニゲル――――ッシュッカァァァァァンッ!
剣を振り抜き――離脱。
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――厳ついよ、何あの口! そしてあの目、怖い怖い!」
村の外。森の木々の上に落ちていく青年の顔が、ふたたび――恐怖にゆがむ。
ドダァン――ドゴドゴドタタタァン!
着地後、十人並みの速さで――逃げていくニゲル。
「神官さまー、今のうちですじゃぁー!」
村長の声が遠くから、かすかに聞こえる。
ばしゃばしゃざざざぁぁ――――!
空を走る水音は、青年を追いかけ加速する。
「ッチィ――まるで切れやしないな!」
振りかえる彼の目に映るのは――
追撃を開始した、大海空を泳ぐサメ。
その胴体に、赤い筋が見えた。
致命傷にはほど遠い、薄皮一枚。
サメの体表面を覆う鱗には、ナノサイズの渦流生成器が配置されている。
それは規格外の揚力を発生させるだけでなく――
活力を流すことで、堅牢な鎧にもなるのだ。
§
「あれれ!? 外部アドレス#44Ga3の存在確率がさぁ――100%なんだけどぉー、ウ・ケ・ルーゥ♪」
目のまえの画面のひとつに、目を留めた御神体がそんなことを言った。
ヴォオゥゥウゥン♪
まるで変化がなかった映像空間中央。
重く鈍い効果音が発せられ――
猫の魔物の姿形が、赤色に変化した!
「ど、どういうことかしら? 仮想化シシガニャン、顕現しますわぁ!」
額を押さえ、取り乱す星神。
ぱぁぁぁ、ぱぱぱぱぁぁぁぁっ――ぼっがぁぁんぼぼぼぼががぁぁぁんっ!
新ギルド会館最上階、コントゥル家邸宅は――
天井まで花で埋もれた。
ーーー
ボルテックスジェネレーター/空力特性を高める突起群。空気を切り裂くことで、揚力を高めたり、騒音を軽減したりする。
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