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3:ダンジョンクローラーになろう
361:龍脈の回廊、猫の魔物と村人たち
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「ふにゃみゃにゃぁごぉー! みゃにゃみゃやご♪」
猫の魔物は両手を前に、突き出した。
「「「「「「ひぃいいぃぃぃいっ!?」」」」」」
うしろへ下がる、村人たち。
ふぉふぉん♪
『おにぎり>おにぎりは悪い魔物じゃ無いもの。良い魔物だもの』
両手でつかまれた木の板には、そんな文字。
「おにぎりは……?」
「悪い魔物じゃないもの……?」
「良い魔物だもの……?」
村の若い衆が、顔を近づけ読み上げる。
「悪い魔物は、みんなそう言うだ――!」
「そうだそうだ――おにぎりってのはなんだぁ!?」
血気盛んな村人たちが、農具を振り上げ――
――ると、鍬や鎌の先が盛大に、すっぽ抜けた!
「ひゃぁぁっ!」
ひゅん、どさっ!
「危ねぇや!」
ひゅひゅん、ぐさっ!
「おをわぁっ!? 先がすっとんじまったや!」
腰を抜かした若者の、又の間に突き刺さる鍬の先。
「しかたねぇ、ウチの村にゃこんな武器しかねぇんだからな!」
「武器っていうか、こんなボロじゃ畑を耕すことすら出来ねぇ――!」
がくりっ――次々と膝をつき、勝手に負けていく村人。
よくよく見れば、全員痩せこけていて――
痩せ型のニゲル青年よりも、痩せている。
「にゃみゃやがーごぉ、みゃんにゃにゃにゃぁん?」
ふぉん♪
「おにぎり>こわれてるもの。直してあげるもの♪」
ぽきゅむ♪
青年を切り株に、寄りかからせ――立ちあがる猫の魔物。
その身長は、村人たちの誰よりも高く――
「「「「「「「「ひぃぃぃっ――――!?」」」」」」」」
じりじりとさがる村人を追うように、ぽっきゅぽきゅぽきゅむん♪
大きなネコ手を、ぽぎゅぽぽぎゅむ♪
落ちた農具の柄や刃先を――
ヴッ――すぽん、すぽぽん♪
次々と吸い込むと――
「みゃんやにゃんみゃ、にゃやごゃ?」
何かを村人に問いかける、猫の魔物。
ふぉふぉん♪
『おにぎり>切れ味を鋭くしても、良いもの?』
文字が出るより先に、ヴヴッ――――ガチャガチャガチャガチャンッ!
山積みになる農具。
その全てが、光り輝いている。
「ひゃぁ!」
「ぶっ、武器を奪われちまっただ!」
「「「「「「おしまいだぁー!」」」」」」
嘆く村人たち。
「なんですか、大の大人が情けない――ぎゃっ!? 猫の魔物!?」
村人たちを押しのけ、進み出たのは――
神官のような格好、槍をもった女性。
「先ほどから様子を見ていましたが――アチラの魔物は少なくとも、話が分かる魔物のようですよ?」
魔物が首から下げた木の板には、たしかに文字が書かれている。
「にゃみゃぁー♪」
ふぉん♪
『おにぎり>こんにちわだもの♪』
「はい、こんにちわ」
未知の気安い魔物。しかも人語を解する規格外の魔物相手に、物怖じしないその態度。
その神々しいまでの姿は、まるで美の女神の――再来であった。
「みゃっみゃにゃん、やみゃにゃんやー……みゃみゃん♪」
ふぉふぉん♪
『おにぎり>イオノファラーに、どこか似てるもの……食べ過ぎには気をつけるんだもの♪』
「イオノファラー――――さまっ!?」
美しい神官女性が、槍のような杖を投げ捨て、首を垂れた。
片膝をつき、組んだ手を鼻に押し当てる。
「「「「「「「「へへへぇぇーっ!」」」」」」」」
ズザムッ――統率された村人たちが、真似をする。
「ま、まさか、〝約束された厄災〟をまえに、このようなお姿の御使いさまを、遣わされるとは――――!」
その目から雫がこぼれた。
「「「「「「「「いやったぁぁぁぁっ、コレで助かるぞぉぉっ!!」」」」」」」」
意気を吹き返す、村人たち。
「イオノファラーさまは俺たちを見捨てたわけじゃ、なかったんだなぁ!」
「そうだなぁ、こうして猫の魔物さまを寄こしてくれたんだからよっ!」
「みゃにゃやごぉー?」
ふぉん♪
『おにぎり>どういうことだもの?』
小首をかしげる猫の魔物。
「あら、御使いさまは、よく見ればなんだか……かわいらしいですね♡」
そっと手を出す神官女性。
差し出された手を。ぽきゅりとつかむ謎の魔物。
魔物としては親愛のつもりではなく、単に握手をやり返したのだろうが――
それは、敵意のないことを示した。
「ありゃりゃ――!? おいみんな、俺たちのボロの道具が全部、新品みてぇに直ってるだよ!」
「「「「「「「なんだって!?」」」」」」」
騒々しくなる周囲。
「んむにゃぁ――!? うるさいよ、おにぎりぃー?」
虚ろな顔のニゲル青年が、起床する。
その頭には、猫耳が乗せられたままだ。
「猫の御使いさまが、もう一人!?」
首を垂れる神官女性。
「「「「「「「「へへぇははぁー」」」」」」」」
平伏する人々をまえに、寝惚け眼の青年は――
「むにゃ? お帰りなさいませ、ご主人さま――ニャン?」
などと、宣うのであった。
猫の魔物は両手を前に、突き出した。
「「「「「「ひぃいいぃぃぃいっ!?」」」」」」
うしろへ下がる、村人たち。
ふぉふぉん♪
『おにぎり>おにぎりは悪い魔物じゃ無いもの。良い魔物だもの』
両手でつかまれた木の板には、そんな文字。
「おにぎりは……?」
「悪い魔物じゃないもの……?」
「良い魔物だもの……?」
村の若い衆が、顔を近づけ読み上げる。
「悪い魔物は、みんなそう言うだ――!」
「そうだそうだ――おにぎりってのはなんだぁ!?」
血気盛んな村人たちが、農具を振り上げ――
――ると、鍬や鎌の先が盛大に、すっぽ抜けた!
「ひゃぁぁっ!」
ひゅん、どさっ!
「危ねぇや!」
ひゅひゅん、ぐさっ!
「おをわぁっ!? 先がすっとんじまったや!」
腰を抜かした若者の、又の間に突き刺さる鍬の先。
「しかたねぇ、ウチの村にゃこんな武器しかねぇんだからな!」
「武器っていうか、こんなボロじゃ畑を耕すことすら出来ねぇ――!」
がくりっ――次々と膝をつき、勝手に負けていく村人。
よくよく見れば、全員痩せこけていて――
痩せ型のニゲル青年よりも、痩せている。
「にゃみゃやがーごぉ、みゃんにゃにゃにゃぁん?」
ふぉん♪
「おにぎり>こわれてるもの。直してあげるもの♪」
ぽきゅむ♪
青年を切り株に、寄りかからせ――立ちあがる猫の魔物。
その身長は、村人たちの誰よりも高く――
「「「「「「「「ひぃぃぃっ――――!?」」」」」」」」
じりじりとさがる村人を追うように、ぽっきゅぽきゅぽきゅむん♪
大きなネコ手を、ぽぎゅぽぽぎゅむ♪
落ちた農具の柄や刃先を――
ヴッ――すぽん、すぽぽん♪
次々と吸い込むと――
「みゃんやにゃんみゃ、にゃやごゃ?」
何かを村人に問いかける、猫の魔物。
ふぉふぉん♪
『おにぎり>切れ味を鋭くしても、良いもの?』
文字が出るより先に、ヴヴッ――――ガチャガチャガチャガチャンッ!
山積みになる農具。
その全てが、光り輝いている。
「ひゃぁ!」
「ぶっ、武器を奪われちまっただ!」
「「「「「「おしまいだぁー!」」」」」」
嘆く村人たち。
「なんですか、大の大人が情けない――ぎゃっ!? 猫の魔物!?」
村人たちを押しのけ、進み出たのは――
神官のような格好、槍をもった女性。
「先ほどから様子を見ていましたが――アチラの魔物は少なくとも、話が分かる魔物のようですよ?」
魔物が首から下げた木の板には、たしかに文字が書かれている。
「にゃみゃぁー♪」
ふぉん♪
『おにぎり>こんにちわだもの♪』
「はい、こんにちわ」
未知の気安い魔物。しかも人語を解する規格外の魔物相手に、物怖じしないその態度。
その神々しいまでの姿は、まるで美の女神の――再来であった。
「みゃっみゃにゃん、やみゃにゃんやー……みゃみゃん♪」
ふぉふぉん♪
『おにぎり>イオノファラーに、どこか似てるもの……食べ過ぎには気をつけるんだもの♪』
「イオノファラー――――さまっ!?」
美しい神官女性が、槍のような杖を投げ捨て、首を垂れた。
片膝をつき、組んだ手を鼻に押し当てる。
「「「「「「「「へへへぇぇーっ!」」」」」」」」
ズザムッ――統率された村人たちが、真似をする。
「ま、まさか、〝約束された厄災〟をまえに、このようなお姿の御使いさまを、遣わされるとは――――!」
その目から雫がこぼれた。
「「「「「「「「いやったぁぁぁぁっ、コレで助かるぞぉぉっ!!」」」」」」」」
意気を吹き返す、村人たち。
「イオノファラーさまは俺たちを見捨てたわけじゃ、なかったんだなぁ!」
「そうだなぁ、こうして猫の魔物さまを寄こしてくれたんだからよっ!」
「みゃにゃやごぉー?」
ふぉん♪
『おにぎり>どういうことだもの?』
小首をかしげる猫の魔物。
「あら、御使いさまは、よく見ればなんだか……かわいらしいですね♡」
そっと手を出す神官女性。
差し出された手を。ぽきゅりとつかむ謎の魔物。
魔物としては親愛のつもりではなく、単に握手をやり返したのだろうが――
それは、敵意のないことを示した。
「ありゃりゃ――!? おいみんな、俺たちのボロの道具が全部、新品みてぇに直ってるだよ!」
「「「「「「「なんだって!?」」」」」」」
騒々しくなる周囲。
「んむにゃぁ――!? うるさいよ、おにぎりぃー?」
虚ろな顔のニゲル青年が、起床する。
その頭には、猫耳が乗せられたままだ。
「猫の御使いさまが、もう一人!?」
首を垂れる神官女性。
「「「「「「「「へへぇははぁー」」」」」」」」
平伏する人々をまえに、寝惚け眼の青年は――
「むにゃ? お帰りなさいませ、ご主人さま――ニャン?」
などと、宣うのであった。
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