上 下
355 / 738
3:ダンジョンクローラーになろう

355:龍脈の回廊、二つの月影

しおりを挟む
「いよぉし! やぁぁっと、巻きとったぞ!」
 どうしてくれよう、このほとんどなにも書いてねぇ巻物まきもの

 ぽきゅ、ぽぽきゅきゅ♪
 化け猫からださぐるも、みじかい毛が生えてるだけで――
 そでふところもねぇから、仕舞しまっとく場所ばしょがない。

「どうしたもんかな。いつもおれのうしろあたまに張りついてたヤツに聞けりゃ、どうにかなる気がするんだがなぁ」
 巻物まきものじくわら仏像型ぶつぞうがた)を小脇こわきかかえる。

 ぽきゅぽきゅぽきゅ♪
 丸々まるまるふとったきのこ根菜こんさいでも、見つかりゃ良いんだがなにもねぇ。
 化け猫おれ巻物にもつだけが、なんでか見える。
 そらつきのひとつも、ありゃしねぇってのに。

「やっぱり、ここわぁ地獄じごくなんじゃねーのかー?」
 そう言葉ことばにしたら――
 おそらくは――
 だれか――
 聞いてたヤツが――
 とばりを巻き上げやがった。

 ――――スウゥゥゥゥッ。
 きゅう化け猫からだかげが、わかるようになった・・・・・・・・・
「あかるくなっ――――!?」
 かげ出所でどころを振りかえる。

 あるのは空一面そらいちめんの――つき

 もしコレが天道てんとうさまなら、化け猫からだは消しずみのこらねぇ。
 このつよいがあたたかみのない、あおみがかった仄暗ほのぐらさは――
 ひといのち燃やした・・・・発露はつろだ。

「うぎゃっわわわわっわっ――――――――!?!?」
 こりゃ、理屈りくつじゃねぇ。
 おれはふたたつきに背を向けた!

 あんなもんを、あんなつきひかりを、こんな間近まぢかで浴びたら――
 身もこころも、化けもんになっちまう・・・・・・・・・・

 よだつ夏毛なつげを押さえる。
 しんぞうを、両手りょうてひざおおかくす。

 どこかかくれられる場所ばしょはねぇのか!?
 ドコまでもたいらで、くさひとつ生えない地面じめん
 なめらかで、かたいのかやわいのかすら、ハッキリしない。

 ぽっきゅごむん♪
 たたいてみたが、ビクともしない。
 それでもいまできることは、コレしかない。

 ぽぽきゅきゅごごむわん♪
 ぽぽきゅきゅごごむわん♪
 ぽぽきゅきゅごごむわん♪
 ぽぽきゅきゅごごむわん♪

 くろ地面じめんに落ちるかげが、自分じぶん足下あしもと殴りつける・・・・・
 それは自分じぶんからだたたいて、押し込めてるみたい・・・・・・・・・で――
「はぁはぁ――こりゃ駄目だめだ。気が滅入めいらぁ!」

 そのとき――振りあげたこぶしがスゥゥと、ばい増えた・・・
 増えたこぶし背後はいごへ――ばかでけえつきに向かって、流れ落ちていく・・・・・・・
 あんなにあかるいつきに向かって――どうして。

かげが落ちる?」
 地面じぶんたたくのを止め、かおを上げる。

 見れば一目瞭然いちもくりょうぜん光源ひかり二つ・・になっていた。
 ひらたいだけだとおもってた、地面じめんさき
 ずっととおくに、やまが見えた。

 そのやま地面じめんおな漆黒しっこくで。
 もう一つの月が・・・・・・・、そのかげからのぼっていなかったら――
 稜線りょうせんに気づくこともなかっただろう。 

『>この惑星ヒースには、衛星が二つあります』
 文字もじがでた。

 二つつたつきがまたたき、そのいろ濃くしていく・・・・・・

『>少し小さい方が真っ青な、ルィノ』
『>少し大きい方が真っ赤な、ウェレ』
 文字もじがでた。

 揺らめく大気かぜが、見える気がする。
 まるで蘇生薬エリクサーのような紫色エリクサーいろに、染まっていく。


 ぽっふきゅっふむん――――♪
 つきひかり一身いっしんに浴びた化け猫からだが、とうとう悲鳴ひめいをあげた。
 ひじのあたりから脇腹わきばらとおって、へそからこしまで。
 パァァッ――なかからひかりが漏れだしたのだ。
 やぶけちまったのか――!?

「あぁー、ここまでかー……『もういちどあたりを、よく見るのですよ』?」
 そんなことを言われても、まわりにゃ何もねーだろが。

 っていうか、なんだこの文字もじわぁ!?
 体中からだじゅう文字もじが書かれてるのは見えてたが――

『いいえ、なにもなくはありません』
 こんどは、反対はんたい手首てくびから背中せなかまで。
 ひかじゅんに読むと、意味いみがつながってた。

「んぁ? なんで背中・・に書かれた文字もじまで、読める・・・んでぇい?」
 ついつい読んじまったが、化け猫からだをすかしてからだが読める!
 だれ仕業しわざだぁ!?!

 そんなのは決まってる。
 おおよそひとじゃあるまい。

 うまいめしを食わせねぇえと、へそを曲げて世界せかいほろぼす――アイツだ。

となえるのです』
 なにをだ――?

『〝めっせよ〟と』
 なんでだ――?

「おおーい――?」
 そこで文字もじひからなくなったから――
 なんでとなえなきゃいけねぇのかは、わからなかった。

   §

「ねぇ、カヤノヒメちゃん――もぐもぐ、ぱくぱく
 食事しょくじの手を止めず給仕きゅうじを呼ぶ、行儀マナーわる女神めがみ

「なんでしょうか? イオノファラーおじょうさまニャン
 幼女ようじょねこみみを、あたまうえにのせで――やってきた。

「なんか、今日きょうわぁりょうがぁおおくなぁいぃー? おかわりのぉ手間てまがぁはぶけて良いんだけどさぁ
「いえ、ご指示通しじどおりの二人前ににんまえですけれど、くすくす――ニャン
 猫手ねこてのように、ちぢめたこぶしそろえてみせるカヤノヒメ――ニャン。

「カヤノヒメ、そノ格好かっこウハどうされたのですか
猪蟹屋ししがにや二号店にごうてん業務形態ぎょうむけいたいで、央都おうとの方々かたがたをおむかえしてはいかがかというはなしになりまして――ニャフフ

「なんか、聞いてたおはなしと違いますね――シガミー……じゃなくてカヤノヒメさまは」
 それはそうだろう。

 まるで、聖女せいじょのように可憐かれんはかなげな――幼子おさなご
 がさつで行儀ぎょうぎわるいけど――本気ほんきのリカルルさまをも退しりぞけるつよさ。

 目のまえの猫耳メイドカヤノヒメが、ウワサどおりなのは――外見がいけんだけだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...