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3:ダンジョンクローラーになろう

349:龍脈の回廊、子馬包囲網

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「そこのうま! 止まれぇーい!」
 威風堂々いふうどうどうとした声音こわいろが、しょうギルド会館かいかん6F廊下ろうかひびわたった。
 ここは多少たしょうひらけていて廊下ろうか片側かたがわは、なかば道具置どうぐおき場のように使つかわれている。

 シィ……ン――――ぽきゅぽきゅぽっきゅら♪
 張りつめた空気くうきをぶちこわしていく、間抜まぬけた爪音つまおと

「えぇー? だぁれぇー?」
 なにせ、子馬こうまくびふとい。
 レイダから正面しょうめんは見えない。

「よいしょ?」
 うまくびにしがみついたまま、上半身じょうはんしんよこにずらしまえを見る。

 点在てんざいする、要らない木箱きばこ分類前ぶんるいまえほん要修理ようしゅうりこわれた道具どうぐ
 それらをかきあつめてつくられた、バリケードまでの距離きょり数十すうじゅうメートル。

衛兵えいへいさんだっ! どうしよう、おとうさんにおこられる!」
 あおかお子供こどもは――ポケットから取りだした帽子ぼうしを、目深まぶかにかぶった。

 通路つうろ陣取じんどりり待ちかまえる、衛兵えいへいたちのかずは10めいを超えている。
 すでに大事おおごとだ。

「レイダちゃぁん、とまってぇー!」
 悲痛ひつうこえぬしは、袖の留め具カフスボタン子馬こうま尻尾しっぽに引っかけている。
 メイド・タター。ネネルド村出身むらしゅっしん新米しんまいメイドは、涙目なみだめだった。

 帽子ぼうし首紐くびひもあごにかけながら、子供レイダがうしろをみる。

「うん、そうだね! はやく止まらないとね……安全あんぜんところで!」
 はいやぁぁ――ぺちり!
 それは威力いりょくのない、子供こども平手ひらて
 それでも子馬こうま意思いしつたえるのには、十分じゅうぶんだった。

「ひひひひぃん? ひっひひひいひひひぃぃん!?」
 子馬こうまいななき? 加速するぽきゅぽきゅら

「こらっ、止まらないか!」
 よこからあみを投げてきた衛兵えいへいたいし――「ひひぃん?」
 ゴドガッ――「ぐわぁ!?」
 手前てまえに置いてあった踏みだい蹴飛けとばして、あみふせいだ。

「「いまだっ――!」」
 ピンと張られたロープは――ぽっきゅらっ♪
 なんなくジャンプ!

「「突破とっぱされたぞー!」」
 子馬こうまは見た目にはんして、とてもお利口・・・だった。
 ぽきゅらら、ぽっきゅらららららっ――――!
 子馬こうまじつ軽快けいかいはしり。

 コワァーン!
「あー、あー、コホン♪」
 カブキーフェスタのもよおしでも使つかわれた、拡声かくせい魔法具まほうぐ
 そのこえは、子馬こうまのすすむさき
 陣頭指揮じんとうしきをとる高貴こうき人影ひとかげから、はっせられている。

「こら〝レイダ〟ならびに〝てんぷーらごう〟。とまりなさい! これ以上いじょう暴走ぼうそうは、このわたくしゆるしませんよー!」
 派手はで甲冑姿かっちゅうすがた
 取りいそぎドレスを着替えず・・・・うえから甲冑かっちゅうを身につけたのだろう。
 いつにも増して、派手はでさが際立きわだっている。

「ぎゃっ――おじょうさま!? レイダちゃん、いますぐぅー止まってぇー!」
 お屋敷やしきクビになったら、故郷こきょうむら路頭ろようまよいますぅー!
 全開ぜんかいの泣きごとが、通路つうろ木霊こだまする。

「ありゃりゃ、もうわたしだってバレてたのか……けど、〝テンプーラゴウ〟ってなんだろ?」
 小首こくびをかしげる子供こども
 おなじく大首おおくびをかしげた子馬こうまが、軽快けいかいだいジャンプ――――ぽっきゅむぽぽぉぉん♪

「ぎゃぁぁぁあ! レイダちゃん! か、かべ走る所・・・じゃ、ありませぇんよぉう――――!?」
 ガムラン最凶さいきょうと、その他大勢たおおぜいおおきく迂回うかいし――
 バリケードを突破とっぱした。

 ぽきゅらら、ぽっきゅらららららっ――――!
 じつ軽快けいかいはしり。
 子馬こうまにまたがる子供こどもと――引きずられるメイド。

「レーニア! あの子のカフス・・・・・・・は……特別製とくべつせいなんですの?」
 メイド見習みならい、少女しょうじょタター。
 彼女かのじょ以前いぜんにも、やはり給仕服きゅうじふく留め具カフスボタンが引っかかり――
 おにぎり一号いちごう爆走ばくそうに、巻き込まれた・・・・・・ことがある。

「いいえ、数種類しゅうしゅるいデザインからえらべますが――わたしが付けているものと変わりはありません」
 とり仮面かめん元侍女長リオレイニアが――
 おおきな太杖ふとづえをポケットから取りだし――
 ヴォヴォヴォヴォォォン!

 子馬こうまへ向かって、力一杯投ちからいっぱいなげた!

 一直線いっちょくせんに飛んで行く――魔法杖まほうつえ
 手をはなれたそれ一瞬いっしゅん速度そくどをゆるめる。
 そのすきに駆けあしちかより、持ち手のあたりをつかみなおす――
 ガムランいちの(かくれ)モテおんな

 彼女かのじょ、リオレイニアの持って生まれた、その美貌びぼう
 仮面かめんなしに出歩であるこうものなら、ありとあらゆる異性いせい彼女かのじょ恋をするのだ・・・・・
 いや、日頃ひごろのリカルルじょう言動げんどうから、美貌それ同性にも・・・・作用している・・・・・・ようで。
 げんにパーティーメンバーである、シガミー(行儀ぎょうぎわるほう)、レイダの両名りょうめいも、彼女かのじょ素顔すがおこころうばわれたことがあるし――
 美の女神イオノファラーも、彼女かのじょ一目ひとめ見初みそめた。

 才女さいじょにして、生活魔法並せいかつまほうならびに高位こうい魔術使まじゅつつかい。
 その本性ほんしょうは――性別問せいべつとわず、女神めがみをも魅了みりょうする素顔すがおの持ちぬしだ。

「レ、レーニアァ――――!?」
 悲痛ひつうこえに振りかえるレーニア。
 そのひとみに、甲冑ドレスリカルル姿すがたうつった。

「お、おじょうさまっ!? あ、あぶない――――つえよ!」
 ヴォヴヴォヴヴォォォォォンッ!!!
 急停止きゅうていしするつえ――に、しがみ付いていたリカルルじょうが、すっぽ抜けた・・・・・・

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――!?」
 彼女かのじょリカルルは、抜けない聖剣せいけんはらいせに寸断すんだんする――
 異常いようなまでの行動力こうどうりょくを、そなえている。

 以前いぜんは〝聖剣切りの閃光ヴォルト・カッター〟という高等魔術こうとうまじゅつ由来ゆらい魔眼まがんで――  
 現在げんざいは生まれ持った日の本ヒーノモトー稲荷イナリィ由来ゆらいの〝狐火・ウィルオーウィス仙花プ・レーザー〟で――
 圧倒的あっとうてき攻撃力ATKゆうしている――が。

 その無限むげんちか攻撃こうげきレンジは――光学的こうがくてきだ。
 彼女自身かのじょじしんが持つ先制攻撃イカサマスキルをもってしても――物理的ぶつりてき間合まあいは精々せいぜい豪剣士ごうけんし数倍すうばい

「レーニアァ――――コォン!?」
 ぼぼぼぉ――――ぼわっ♪
 くちから目からはなからも――仄暗ほのぐら狐火ひとだまをまき散らす。
 つまるところ、ガムラン最凶さいきょうだって肉体的にくたいてきには常人じょうじん数倍すうばい

 それを越える慣性かんせいあらがうことは出来できないようで。
 じたばたと藻掻もが狐火きつねびまみれが、子馬こうまを追いこし飛んでいく。

 ここにニゲル青年せいねんが居たならば――物理現象ぶつりげんしょうねじ曲げ・・・・いのちに替えても、その御身おんみまもったのだろうが。

 どがっしゃぁぁぁぁん――――――ぱりぱりぱりりぃぃぃん!
「おじょうさまっ!!! つえよ――――!」
 ヴォヴォォォォ――――ヴヴヴヴヴゥン♪

 ふたたびつえを飛ばし、駆けだす仮面美女レーニア
 こんどは手をはなさず――つまり全開ぜんかいいきおいに、引っぱられている!

「くくくぐっ――――!!!」
 つえ彼女かのじょを、彼女かのじょつえを――――加速かそくする。
 その視線しせん一瞬いっしゅんだけ、にぎったつえを見た。

「きゃぁぁっ――リカルルさまぁ!」
 つえの向かうさきから、子供こどもこえ
「ひひぃぃん? ひひひぃぃん?」
 子馬こうま疑問ぎもんに満ちたいななき。

 ぽっきゅらぽっきゅらぽ!
 割れたまどへ駆けよる――黄緑色の子馬テンプーラゴウ
 希代きだい生活魔法使せいかつまほうつかいにして、魔神まじん再来さいらいうたわれる美女びじょが――かおをあげた!

「――――きゃぁあっ!?」
 ヴォヴォヴォヴォォォォンッ――――ぎゅぷばが!
 急発進きゅうはっしんからの急制動きゅうせいどう――からの急加速きゅうかそく
 制御不能せいぎょふのうおちいったつえが、子馬こうましり激突げきとつした!

 子馬こうまはじき飛ばされ、レイダもろとも――割れたまどから飛びだした!

「「「きゃぁぁぁぁぁぁっ――――ひひぃぃっぃん!?」」」
 落ちていく諸共もろとも
 いまココに、女神関係者めがみかんけいしゃシガミーが居たならば――
 この状況じょうきょうでも――最適さいてきなムーブで、切り抜けたことだろう。

 だが、彼女かのじょたちの真下ましたに居たのは、しょぼくれた様子ようす鬼娘おにむすめだった。
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