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3:ダンジョンクローラーになろう

301:仙果到達ルートC、ニゲルVSリカルル(リアルタイム)

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「おい、おれをスグに、魔王城まおうじょうもどせやぁ!」
 おれはあわてふためく。

「それは出来できないらぁん、ケットーシィのおじょうちゃん」
「なんでだっ!」
転送てんそうするためのマナチャージに、時間じかんが掛かりますものらん」
 そりゃそうか!

「じゃあ転移陣てんいじんは、どのくらいで使つかえるようになる!?」
 超女神像ちょうめがみぞうでさえ、つづけて何度なんど使つかうことは出来できない。

一時間いちじかんほどで、向こうから・・・・・こちらに来る・・・・・・ことなら可能かのうになりますらん」
「こっちから向こうには、行けねぇのか!?」
「ええ、こちらから向こうへ飛べるのは――日に一度いちどきりですらぁん」
 いろいろな条件じょうけんそろわねぇと――転移魔法てんいまほう使つかえねぇ。
 そのための女神像めがみぞうだ。

「ちっ――このままニゲルとリカルルがやり合ったら……やべぇことになる」
「それは何故なぜですらぁん?」
 そりゃあなぁ。

「リカルル……さまとニゲルがやり合ったら――おれのみせが立ちゆかなくなりかねねぇからだ!」

 おれたちの食い道楽どうらく……その屋台骨やたいぼねになる猪蟹屋ししがにやは、あくまでガムランちょうあっての物種ものだねだ。
 もとはそこまででも、なかったんだが――
 神域惑星しんいきわくせいっていう兵糧庫ひょうろうこに、饅頭まんじゅうやこまかい品物しなもの夜通よどおつくれる無人工房むじんこうぼう
 どっちも超女神像ちょうめがみぞう必要ひつようで、ガムランちょうに居なけりゃ使つかえねぇ。

 ガムラン町最強ちょうさいきょう名高なだかい、伯爵令嬢はくしゃくれいじょうリカルル。
 そして麒麟児スーパールーキーと言われていたわりには、冒険者ぼうけんしゃ廃業中はいぎょうちゅうで鳴かず飛ばずの青年せいねんニゲル。
 ガムラン町最弱ちょうさいじゃくとまではいかないものの、冒険者ぼうけんしゃたちのあいだ格下かくしただとおもわれていたおとこが――
 最強さいきょう冒険者ぼうけんしゃ地に着けよう・・・・・・ものなら――下剋上げこくじょうだ!

 しかもいまリカルルは伝家でんか宝刀ほうとう聖剣切りヴォルトカッター使つかえねえ。
 いまさらニゲルがけんを引いたところで、かどが立つ。
 どうすりゃぁ、良いんだ。
 あのふたりには、平穏無事へいおんぶじで居てもらわねぇと。
 それじゃなくても、ふたりとも大事だいじ友人ゆうじんだ。

「おみせ? ケットーシィのおみせらぁん!?」
 このいそがしいときに、目をかがやかせるんじゃねぇや。

「やい、おにぎり。はこごと腹に詰めた・・・やつがあるだろっ、一箱ひとはこお出しして差しあげろ」
 猪蟹屋ししがにやなにかと聞かれたら、まつりで大人気だいにんきだった饅頭まんじゅうを出すのが一番いちばんだ。

 むぎゅり――ふるふる。
 くちをおさえてくびよこに振る、猫の魔物ケットーシィおにぎり。

「(迅雷ジンライ、なんか手はねぇのか? せめて金剛力こんごうりき使つかえりゃ――)」
 いや、使つかえたとしても――こっからだと二時間以上掛にじかんいじょうかかりそうだ。

 ふぉん♪
『>コチラの状況を撮影し、ソチラへ配信することは可能です。
  約200フレームの遅延、三秒ほど過去の映像にはなりますが』
 なんだそりゃ?

「えーっとねぇ、それなんだけどさぁ――あ、ちょっとまって……ぺらぺらり」
 なんだ、五百乃大角いおのはら
 なにか手が有るならスグやれ今やれ、とっととやれやぁ!

「どいつもこいつも――それと、おれの名前なまえ決闘死けっとうしじゃねぇ、シガミーだ!」
死神しにがみちゃん?」
 不吉ふきつさがひでぇ。

死神しにがみじゃねぇっ、シガミーだっ――でごぜえますわぜ!」
 くらいとしちゃ、リカルルよかうえ
 あまり無礼ぶれいはたくと、リオやレイダに迷惑めいわくを掛けちまうかも知れねぇ。

「そ、そしてコイツの名前なまえは、おにぎりでござる」
「ござる? おにぎりちゃん?」
 おにぎりのうしろあたまを、グイグイ押してみる――ひとまず饅頭まんじゅうを出せや。
 ぽきゅむぎゅ――かたくなくちを押さえてやがる。
 オマエはそもそも、神力棒しんりょくぼううごいてるだろうが。

まちもどったら、いくらでも食わせてやるから――」
 第一王女だいいちおうじょ好奇心こうきしんに満ちた視線しせんに、耐えきれなくなったのか――
 むぎゅにゅるり――くちから一箱ひとはこ、しぶしぶ出てきた。

「あららぁん? なぁにコレ? ひょっとしてケットシーちゃんたちのおかお? 素敵すてき、すっごく素敵すてきらぁん♪」
 はこの絵を、よろこんでくれている。

 ヴォォォォオォォッゥゥゥン――――!
 五百乃大角いおのはらがテーブルに手をつくと――なんかでた。
 フェスタでも使つかってた、とおくのものおおきくみせたりする画面がめんだ。

「これがイオノファラーさまの魔法まほう……女神像めがみぞうのご神託しんたくみたいらぁん♪」
 テーブルのうえ四角しかくく切り取られた画面がめんなか
 バラバラになったゴーレムのからだが、散乱さんらんしている。

「ニーゲールーゥ? アナタがここまでけん使つかえるだなんて、聞いていませんでしたわぁ――?」
 赤色あかいろ派手はで甲冑かっちゅう
 細身ほそみつるぎに手が掛かる。

あいも変わらぬ戦闘狂せんとうきょう、お変わりないようで――あららぁん?」
 はこをあけた王女おうじょが、目をまるくする。
 たたかいに……ゴーレム以外の・・・たたかいに、興味きょうみはなさげだ。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ――いま、ちょっと余裕よゆうないから、10メートル以内いない近寄ちかよらないでよ――あぶないから」
 くろ制服せいふく猫耳ねこみみ
 まばゆいひかりに――画面がめんが揺れて調整ちょうせいされる。
 ニゲルのけんは、錆びてても錆が落ちても――切れあじは変わらず。
 たぶん、攻撃力こうげきりょく34だ。
 切れあじ神速しんそく正体しょうたいは、おれが金剛力こんごうりき全開ぜんかいにしても持ち上げるのがやっとの、重さ・・に有る。

あいも変わらぬ昼行灯ひるあんどん、おかわりないようで――安心あんしんいたましたらぁん♪」
 なんだか、ニゲル青年せいねんのことを……本当ほんとうにくからずおもっているように見える。

 そんな場合ばあいじゃねぇんだが――ちゃを入れてやる。
 せいぜい気をらくにしてもらうか。

「こうなったら、しかたがねぇや。せいぜい見物けんぶつさせてもらう」
 おにぎりのあたまをひっぱたいて、どうにかこうにか――
 おれとおにぎりと、五百乃大角いおのはらぶんも出させて――

 「かわいそう」と抜かす王女おうじょのお気持きもちちを尊重そんちょうして、特撃型とくげきがたぶんまで人数分用意にんずうぶんよういした。
 全部ぜんぶを出させるのに、うしろあたま十回じゅっかいくらいたたき合う・・・・・はめになった。
 特撃型たちはでなニャンにまで、ひっぱたかれやしないかと用心ようじんしたけど――
 そっちは平気へいきだった。

 その場でおにぎりの真似まねはするけど、なんでかうごきや身振みぶりりがちいさくなって――
 ふぉん♪
『>特撃型のオートクルーズを、
  アップデートしました』
 なんだぜ?

 ふぉん♪
『>おにぎりのあとについて真似る行動に、
  少しだけ融通が効くようになりました』
 よし、わからんがたすかった。

 ぽきゅぽきゅぽっきゅきゅ――――♪
 ただ最後さいご一匹いっぴきがやっぱり、椅子いすすわり付けず――

 こともあろうか、王女おうじょさまに椅子いすをひとつ――ズレてもらうことになった。
「ららぁん、たのしいらぁん♪」
 こういうところは、天正てんしょう生まれからすると……いまだにおどろく。
 場所ばしょはちがえど――のちの世なのだ。

 しかし真似まねするだけの特撃型こいつらじゃ、どうしたって不便ふべんだ。
 やっぱりおにぎり同様どうよう酢蛸SDKを入れてやるか――
 二号にごうみたいに――人が着られるようにしてやらねぇと。

 ぼっごぉぉぉぉぉぉわぁぁぁぁぁぁぁあぁっ――――!
 ちゃ用意ようい調ととのったテーブルのうえ
 ヴユザザッと揺らめく、四角しかく画面がめん

 魔王城まおうじょうかくされた階層かいそうおおきな転送部屋てんそうべやを切り取る風景ふうけい
 そのすべてをおおうう――青白あおじろほのお

「このあおほのお――もしかしてルリーロさまも、ご一緒いっしょかしららぁぁん!?」
 第一王女だいいちおうじょ、えーっと名前何なまえなんだったっけ?
 ゴーレム首謀者しゅぼうしゃにして、杓子女しゃくしおんなで有らせられる――

 ふぉん♪
『>ラプトル王女です。央都ラスクトール自治領第一王女、
  ラプトル・ラスクト-ル姫です』
 そうだぜ、ラプトルだ。
 迅雷ジンライとは、こうしてはなし出来できるだけでもたすかる。

 そして杓子王女ラプトルは、伯爵夫人ルリーロ狐火きつねびを知ってるらしい。
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