上 下
278 / 738
3:ダンジョンクローラーになろう

278:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、ゲール少年

しおりを挟む
「――翼膜よくまく虹彩こうさい特徴とくちょうハ、99%合致がっちしてイま――」
 背中せなかつばさ蜥蜴とかげまなこは、間違まちがいなく火龍かりゅうのソレだが。
 しっぽはなくて……手足てあしひとと変わらない。

 それに、よくよく見れば、どことなく――
 かおつきと燃えさかるようなあかかみが、ほのおを統べるりゅうかたどっている。

「くすくす、あのボロボロのふく。シガミーの部屋へやにあったのにそっくり♪」
 レイダがそんなことを言う。
 そういやふくを、着てやがるぜ。
 おれがこの世界せかいに来たときにも、ボロぬのを着てたから――
 そういうもんなのかも、知れねぇ。

「ウヌゥ。これ以上分割すわけると、ながくはもたぬ……」
 図体ずうたいのでかい少年しょうねんが、大蜥蜴おおとかげからおりる。
 グッギャギュギュギッ――ジロジロリ!?
 ボッボゥワッ――あたりを見わたす大蜥蜴おおとかげくちからチロチロと、種火たねびのようなちいさなほのおが、見えかくれしている。

 少年しょうねんゆかに手をつき――「ヌオワァ――――フム!」

 ズゴドドドドドゴゴゴォォォォン!
 ぐわらぐらわ、らららわっ!
 ふたたびの地響じひびき。

「グッギャルルルルッ――――!」
 ボゴゥゴォウ、オゥワッ!
 地が爆ぜ、とどろ獣声じゅうせい
 少年かれあししたから姿すがたあらわしたのは、燃えさかる何か・・
 それはまるで地のそこから、ほのお化物ばけものを呼び出したかのよう。
 少年しょうねんほのおの四つあしに、またがっている。

「燃える蜥蜴とかげが――増えた!?」
 ドシドシンッ――ほのお蜥蜴とかげしょう)が地を踏みしめる。
 そのおとおどろいたほのお大蜥蜴おおとかげが、あたりをはしはじめると――グワラララッ!

 またすっころぶ、おれたち。
 ガチャガチャァァン――パリパリィィン!

「おなべがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――!?」
 取りみだすな、みっともねぇ!
 それ、さっきもやっただろーが!

 カシャ――『(>д<)』 
 ヴォォォォン♪
 浮かぶたまに乗って、拠点なべへすっ飛んでいく御神体いおのはら

 ズドドッド――ドガン!
 蜥蜴とかげだい)が蜥蜴とかげしょう)にぶつかった!
 グッギャォォォオオォォォォッ――――ギャギャギャガヤァオォォォオオォォオッ!!!

 すぽーん――――ぺちゃりっ!
 小蜥蜴ことかげの背から振り落とされたゲール少年しょうねんが、ムクリとからだを起こした。

「グヌゥ、コチラが研ぎ澄まされると、アチラがニブる――やはり普通フツウ魔物マモノのようにアバれ出すようだな」
 少年しょうねんあかかみみどりがかった茶色ちゃいろに、変わってる。
 かおつきもひとのソレで、背中せなか羽根はねもなくなり――なによりもおおきさがレイダと変わらなくなった。

 ドッガンバッガン――――ギュギョギュリュリュリュグググゥルル!
 二匹にひきほのお床壁ゆかかべを、縦横無尽じゅうおうむじん蹂躙じゅうりんする。
 グワラグワラグワラ――――ドゴドゴバガガァン!
 かべくずれ、地が割れる!

ながくは持たねぇって――洞窟のこと・・・・・かぁっ!?」
 ドガン――ちいさないわが、ゲール少年しょうねん脳天のうてん直撃ちょくげき
「バカ、あぶねぇ! 迅雷ジンライ――金剛力だパワーアシスト――!」
 バッ――おれは跳びはねる。
 金剛力こんごうりき使つかうには、体に迅雷ジンライ機械腕かいなを張りつけねぇといけない。
 そのためには、真上まうえに飛ぶのが一番いちばんはえぇ。

 『▲▲▲ピピピッ♪
 ブブブブッキャチャカチャキャチャ――ぱしゃん!
 うしろあたまに取りついた迅雷ジンライが、細腕かいなをおれに巻き付ける。

 スタン――一足ひとあしで駆けよると、コッチをみあげる少年しょうねん

問題モンダイない」
 平気へいきっぽい――けど、血がたらり。
「ヌゥ?」
 バタリとたおれる。
 平気へいきじゃないっぽい。

「でぇぇぇぇいっ――――!!」
 ガシリッ、スタタァーン♪
 ガシリッ、「きゃっ!?」トトォン――――!
 子供二人こどもふたりかかえて、拠点きょてんへ逃げこむ!

「シガミー、はやく!」
 入りぐちに飛びこむと、大盾おおたてかついだエクレアが――入りぐちをふさいだ。
 ――ドゴガガァン!
「はぁーはぁーはぁー! や、やばかったぜ」
 燃えさかるちいせぇほうとかげは、この入りぐちとおり抜けられる。
 なかはいられなくて、たすかった。

 どざざざ、ズザザァ――タおレ込ムなり迅雷ジンライが、「――シガミーッ、跳んでくだサい――」
 やぶからぼうにどうしたぁ!?

「でぇいっ――――!?」
 両手両足よつあしうえに飛んだ!
 かっしゃ――チャキャチャカチャキャ――ブッツンッ!
 細腕かいなが、迅雷ジンライに巻きとられて――ヴヴヴゥーーン!
 迅雷ジンライがはずれて、どっか飛んでいく。

 くそう、空中ちゅうからだをひねるくらいはお手のものの、このからだだが。
 迅雷ジンライ金剛力かいなをはずすあいだは、自由じゆうがきかねぇ――
 おれはレイダとゲール少年しょうねんあいだに、ドスンと落ちた!
「痛ってぇ!」

 給仕服メイドが――ちょうど良いながさになった銀色ぎんいろぼうをつかむ。
「――――ひかりのたて、ひかりのたて!」
 エクレアの背に向かってはなたれる、曼荼羅もんよう

 火龍かりゅう喧噪けんそうとおざかり――エクレアがそっとたてをはずす。
 〝ひかりのたて〟は入りぐち二重にじゅうにふさぎ、ねつおともほとんどとどかなくなった。

「ふぅー。これでひとまずは安心あんしんですよ……こちらどなた?」
 迅雷ジンライ空中ちゅうはなし、ひたいから血をなが少年しょうねんに駆けよる――しろ仮面かめん給仕服きゅうじふく

いたくはないですか? ひとまずコレを、飲んでください」
 ゲールの血ぬれのひたいをソッと拭いて、ポーションを飲ませてやる慈愛じあい化身けしんリオレイニア。

「そいつは、ゲールだ」
「あらまぁ♪ とても、かわいらしい姿すがたに」

なにごとですの――!?」「大丈夫だいじょうぶかい!?」
 甲冑一式かっちゅういっしき装備そうびしたひめさんと、錆びたけんをかついできたニゲル青年せいねん

 いたひじをさすりつつ、巨大鍋きょだいなべを見たらフッカと、機械腕かいなを生やした浮かぶたまが、必死ひっし形相ぎょうそう死守ししゅしてた。

「(おい、ソイツはひとまず仕舞しまっとけ!)」
 迅雷ジンライ――手が空いたなら、あっちを手伝てつってヤッてくれ。
「――了解りょうかイしまシ――」

 (ドガガァン――――グォゥルルルッギゥッ)!
 (ドドガガァァァン、ジタバタタァァン――――グッギャゥオゥルルルゥゥゥゥゥッ)!
 ひかりのたては、向こうが透けて見える。
 いいきいのとちいさいのの、二匹にひき
 小蜥蜴ことかげが、ひどく大暴おおあばれしてる。

「シガミー! ゲールがおとこの子になっちゃったよ!?」
 いまのゲールは、ひとと変わらない。
 むしろヒトよりも非力ひりきに見える。
 はしゃぐ子供こどもに抱きつかれ、あおかおをしている。

「そうだなぁ、なんでまた姿すがたを変えたり出来できるんだ?」
「エリアボスに昇格ショウカクすると色々イロイロなコトが出来デキるようになるのだが、そのナカでも〝人化ジンカ〟は初歩的ショホテキなものだ」
 ポーションがきいたのか、ゲールの顔色かおいろが良くなった。

初歩的しょほてき……それはおかしいですわ」
「なにがだい、リカルルさま?」
 ニゲルも咄嗟とっさのときには、こうして普通ふつうはなせてる。
 いつもこうなら、なんとかなるかも知れねぇのに。

いままでひと姿すがた魔物まもの確認かくにんされたのは――魔王まおう一体いったいだけですわよ?」
「グヌゥ? ワレのホカにも姿スガタを変えるモノるではないか」
 そう言って少年かれは、かたわらの少女レイダゆびさした。

「このレイダは、まだヒト幼体ヨウタイでアリながら、ネコのような姿スガタ変化ヘンゲしていたであろう?」
 あー、コレを説明せつめいするのにはすこ時間じかんが掛かった。

   §

「せめてむこうの二匹にひきを――ひとまとめ・・・・・には出来できねぇか?」
「ヤッテみよう」
 子供レイダを張りつかせたままの子供ゲールが、ひかりのたて越しに手をかざすと――
 スポスポン――小気味こきみ良いおと
 燃えさかる蜥蜴とかげだい)(しょう二匹にひきが、よりおおきな燃えさかる蜥蜴一匹とかげいっぴきになった。

 グゥゥウゥゥォルルルルルルゥ――――――!?
 止まったのは、ほんの数秒すうびょう――――ドガドガドガドガッズゴゴゴゴゴォォォォンッ!
 入り口こっちに向かって、体当たいあたりをしてきた。
「おれたちを、ねらってやがる!」
 アレをたおしちまうわけには……いかねぇよなぁ。

「ワレの半身ハンシンタオしても、かまわぬぞ。魔力不足マリョクブソクで、店主テンシュが言った〝ダンジョン経営ケイエイ〟はかなわぬコトになるが――」

「じゃぁー、ダメよっ! ミノタウ素材そざいまわりで融通ゆうずうを利かせてもらう交換条件こうかんじょうけん
としてぇー、〝魔法まほう修練所しゅうれんじょ〟はないとこわ
 巨大鍋なべをなんとかしまい込んだらしい御神体いおのはらが、フッカの手に乗せられやってきた。

「「「「こまる?」」」」
「んーん、「こわる!」よ。ルリーロちゃんがぁ「お約束やくそくぉーやぶったらぁー、火龍かりゅう寝床ねどことこの辺一帯へんいったい、まるごとこわる」って言ってた
 こわる?

 ふぉん♪
『>とても強い怨念を感じます』
 リオレイニアのひかりのたてで、強固きょうこふせがれてるけど。
 ずっとココに居るわけには、いかない。

「じゃぁ、どーすんだこれ?」
 なにより、明日あしたにはまちへ向かって出発しゅっぱつしねぇと――
 クエスト失敗しっぱいで、依頼者いらいしゃから「壊る・・」されかねない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...