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3:ダンジョンクローラーになろう

266:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、魔法不可の効能

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「これはこれはイオノファラーさま……すごあかるくて便利べんりです」
「にゃみゃがぁー♪」
 わいわいがやがや。
 自然しぜんとみんな、小躍りいおのはらにあつまる。

「――生命せいメいモととナる活力かつりョく……マナノなガレが、こノ場所ばシょニはかヨっテいませ――」
 魔法まほうもとになる活力かつりょく――
 マナがないから魔法まほう使つかえない。
 そういうことらしい。

 MPエムピーとやらが減るし一瞬いっしゅんでかかりはするが、それも空中ちゅうに溶けちまう。
 ここで使つかえるのは、リオレイニアのひかりのたまと――
 迅雷ジンライたち神々かみがみ使つかう――神力しんりょくだけだ。

「さっきまでの暗闇くらやみが、うそのようだぜ! がははは♪」
 迅雷ジンライめしおなじ――神力しんりょくうごいてるんだから。
 とうぜんコイツらも使える・・・・・・・・――道理どうりだ。

「「「「「「ぎゃぁぁぁぁっ――――!?」」」」」」
 繰りだした〝紙猫おもち〟を見るなり、全員ぜんいんが跳び上がった!

「なぁんでぇい、もうわすれちまったのかぁ? こいつはまつりの最後さいごつくった、〝おもち〟だろーがょぉ」
 あやつるための火縄ひなわっぽいぼう引き金トリガーを引けば、こうして五百乃大角いおのはらほどじゃなくてもかりがとれる。

「それにしても迅雷ジンライ、こーんな便利べんりもんわすれてんなよなー」
 まあ、おもちたちじゃ、ミノタウせんには力不足ちからぶそくだっただろーが。

「オ言葉コとばでスが、シガミーもデす」
 うん、そうだな。
 そもそもこいつぁ――舞台ぶたい照らすため・・・・・つくった仕掛しかけだった。

 しかも、ほんの十分前じゅっぷんまえたたかいの最中 さいちゅうのことが、まるまるすっ飛んじまってるから――
 わすれた度合どあいでいやぁ、おれにかなうものがいねぇ――

「――ってオマエらわぁ、いつまでこしを抜かしてるんだぁ?」
 引き金トリガーを引いて――――ふすふすふすすふっ。
 おもちをけしかける。

「「「「「ち、ち、ちがっちがう! 血っ、血ィィィィィィッ――――!?」」」」」
 血だぁ?
 一斉いっせいゆびを指されて、はじめて気づく。

「あー、そーいや、そーだったぜ! これなぁー、そうだぜ、こいつぁーミノタウの野郎やろうの――かえり血だぜ!」
 すたりと起き上がり、五百乃大角いおのはら後光ひかりに立った。
 全身真ぜんしんまっ赤に染まった、ふくをさらす。

「そんなわけないぃーですわぁっ!」
「なんでだぁーっ?」
 あれだけの図体ずうたいだぜ。
 たおしたってんなら――返り血これぐれぇ。

 テーブルのうえに置きっぱなしだった、やたらとなげ包丁ほうちょう
 それを布巾ふきんぬぐう、くろ護衛ごえい
「シガミー、これを見てください」
 ぬぐった布巾それを、ひらいてみせられた。

「ちっ、しくじったぜ!」
 そのいろは――あかくなかったのだぜ。
「――やって仕舞しまいましたね、シガミー――」
 青白あおじろい血のいろが、後光めがみで照らされた。

 テーブルのうえに、おなじく置きっぱなしの――
 丁寧ていねいに切りわけた――深い所・・・
 いろは――なんでか普通ふつう桜色さくらいろだった。

 ふぉん♪
『ヒント>血の色/活力を運搬する色素蛋白質の発色
    >魔物肉の色/活力を変換した酸素を運搬する色素蛋白質の発色』
 わからんが――おれの・・・血のいろを見て、おどろいてるんじゃねぇよな?

 いやたしか、いつだかひめさんがあたまあたまから吹いたぃわぁー、ちゃんとあかいろをしてた。
 冒険者ぼうけんしゃたちの包帯ほうたいにじんだいろも、ちゃんとあかかったし。
 そもそも、いつも狩ってた丸鳥ポグバ-ドも、あかい血をしてたじゃんか――
 ――って、それどころじゃねぇぞ。
 五百乃大角いおのはら懸念が・・・本当ほんとうになっちまう。

「みゃみゃん、にゃがにゃがやーが?」
 肉球にくきゅうを向けるんじゃねぇよ。
 ねこのレイダを筆頭ひっとうに、詰めよられた。

   §

「まったくもう、あきれてものが言えませんわ」
 おれをかかえて、おにのような目を向けるガムラン最強さいきょう
 ちけちけぇ!
「やい、はなしやがれ!」

蘇生薬エリクサー使つかったなら肉体的にくたいてきには、完全かんぜん修復しゅうふくされていますけど――――おぼえていないって言うのは、すこし気になりますね」
 そういって、つめたい視線しせんを向けるのは――白い給仕服リオレイニア

「そうですね、高等魔術こうとうまじゅつによる高位こうい蘇生術そせいじゅつを掛けられた場合ばあい記憶きおく混濁こんだくがあるって言うのは、わたし魔術まじゅつ師匠ししょうから聞かされたことがあります」
 おなじく、いぶかしむような視線しせんを向けるのは――黄緑色きみどりいろのケープ姿すがた

 ガチャガチャガチャ――ごどどん。
 テキパキと再現さいげんされるキャンプ。
 うえかいに置きっぱなしだった休憩所きゅうけいじょを、こっちにうつしたのだ。

 降りるみちはとうとう見つからず、今晩こんばん――もうあさだが、ココで夜営やえいするコトになった。
 なんせ伯爵夫人はくしゃくふじん直々じきじきのご依頼いらいだ。
 どうしたって火龍かりゅうとやらをたおして、家宝かほうつくるための素材そざいあつめないといけない。

 ちなみにだが、ミノタウロースの素材そざいはおそらくは超高額ちょうこうがく取引とりひきされるだろうし、有史以来存在ゆうしいらいそんざい確認かくにんできたのはかぞえるほどしかなく。

下手へたなことしたらさぁー、あたくしさまのごはんがさぁー。研究室送けんきゅうしつおくりとかになってさぁー、年単位ねんたんいでさぁぁぁぁー――おあずけとかくらいそうよねぇーん?」
 その眼光がんこうあかくらく、ミノタウのソレよりもおそろしかったから。
 すべてを保留ほりゅう……〝史上最美味しじょうさいびみミノタウごはんまつり〟が済むまで、内緒ないしょにすることになった。

 結局けっきょく、火龍は必要で、やはりしたに降りる方法ほうほうを、見つけなければならない。

「みゃにゃみゃにゃやー!」
 グリグリグリグリ――――だからその、短ぇ夏毛シシガニャンへっどをこすりつけるなってんだ。

「おい、はなしやがれ!」

「ダーメでーすーわぁー。もし、蘇生そせい失敗しっぱいしてたらシガミーは、いまこうして生きていなかったんですのよ――?」
 ガチャガチャガチャガチャ――――だからその甲冑かっちゅうに付いた、やたらととんがった飾りを・・・突き刺すなってんだ。
 せっかく綺麗きれいにしたふくかくみのが、また血塗ちぬれになっちまうだろ。

「なぁ、こんな魔法まほうひとつ使つかえねぇ場所ばしょやすんだりして、平気へいきなのかよ……わぜ?」
 この混成こんせいパーティーの良心りょうしん
 黒騎士くろきしエクレア氏に、おうかがいを立てる。

「それは問題もんだいないと……おもいますよ」
 かれかおを向けたさき

こおりの――みずの――いかづちの――ほのおの――、――――!!!!」
 ダンジョンよう本式ほんしきの、なが魔法杖まほうつえ
 いつも乗りものがわりにしてるほうを、たからかにかかげた給仕服リオが。
 とんでもない早口はやくちで、やたらとなが呪文じゅもんとなえて――
 片膝かたひざをついた。

彼女かのじょをもってしても、満足まんぞく魔法まほう発動はつどうしない、この空間くうかんはとても――――」
 あぶねぇだろうってはなしをしてるんだ。

「――すばらしい修行場しゅぎょうばになりますっ!」
 ほのお魔術師まじゅつしフッカじょうが、自分じぶんつえを取りだして――
 やっぱり――片膝かたひざをついてる。

魔法まほう最初さいしょ収得しゅうとくしたときの――形質けいしつ一生いっしょうついてまわるんですのよ」
「みゃん、にゃがーやーにゃ、やー♪」
 わからんが、いい加減かげんはなせよおまえら。
 おれぁ赤子あかこか。

「そんな呑気のんきなことしてて、平気へいきなのか? 魔物まものの巣で魔法まほう使つかえねぇんだぞ?」
「ですから、魔法まほう使つかえないのは――向こうも同じ・・・・・・でしょう?」

 ふぉん♪
『>危険な魔物の83%は、魔法による攻撃を主体に戦います』
 ふぉん♪
『イオノ>コッチの弱体化より、向こうの弱体化の方が大きいってことよ』
 かわの真んなかを行く敵軍てきぐんに対して、コッチが浅瀬あさせを取ったってかんじか?

「なら――おれもやる、やるぞ!」
 やい、はなしやがれっ。
 だきつかれたままじゃ、窮屈きゅうくつでいけねぇや。

 あ、おれぁ魔法まほうつえなんて、持ってなかった。
「でハ僭越せンえつナがらわタくし
 ヴヴルルヴルン――――ゴツン!

 迅雷ジンライがひさびさに、1シガミーのながさになった。
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