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3:ダンジョンクローラーになろう

261:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、特性と運用とアイテム名偽装

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 錫杖しゃくじょうおもさと仕込しこまれた刀身とうしんおもさ。
 その安定あんていした重心じゅうしんが――――ミノタウロースの大角おおつのとらえた!

 ザッシュ――ゴリッ!
 ごどんっ!
 ゆかに落ちる太角ふとつの
 ひめさんのけんじゃなくても、普通ふつうに切れたな。
 〝不壊ふかい〟の〝埒外らちがい硬さ・・〟で寸断すんだんすりゃ、問題もんだいなくね?

 落としたつのはなんかに使つかえるから、ひろっとくとして――すぽん♪

 よーし!
 ニゲルの〝勇者の歩みブレイブ・ステップ〟並みのはやさ。
 正体不明しょうたいふめいのおとぎばなしの、おかしな魔物まもの
 およごしのパーティーメンバー+2名ほかにめい

一時いっときはどうなることかとおもったがよ、曲がり角でかわす・・・・・・・・だけで済んじまったぞ♪」
 最悪さいあくは〝真言しんごんめつ太刀たち〟で穴蔵ダンジョンまるごと、滅してやる・・・・・覚悟かくごもしてたんだが。

「ギュギュギュギュグギュ、ギュギュギュギュグギュ、ギュギュギュギュグギュ!」
 四つあしを付いて、また地声じごえ
 自慢じまん大角おおつの全部折ぜんぶおられたんだ、あせりもうなりもするだろう。
 けどなんだこの、ふしが付いた鳴きごえ

「(バレッドウルフ……火吐ひかきおおかみたちと同様どうようの鳴きごえです。注意ちゅういしてください)」
 そうだな――――ストトォォン!
 目一杯めいっぱいさがる。

 背後はいごには真っくら階段かいだん
 迅雷ジンライ昼間ひるまのように見せてくれてるが、色自体いろじたいくらいからぽっかりと空いたあなにしか見えねぇ。

 バッキュグボッツ!
 奇怪きっかいおとに、視線しせんを魔物ミノタウもどした。

 ふくれあがる体躯からだは、一瞬いっしゅんはじけ飛んだのかとおもったほどだ。
 ボッゴボッギュボギュギュギュボボゴゴゴキュキュゴボンッ!

 小柄な魔物ミノタウロースは、自分じぶんからだおなじぐれぇの太角ふとつのをへし折られた。
 そして、なんかくちから吐くのかとおもいきや――
 通路つうろはばを超えてなおふくれあがり、やつ身動みうごきひとつ取れなくなった。

「なんだこりゃ、魔物の壁ミノタウ・ウォールか?」
「(大角おおつの格納かくのうされていた質量めかたが、もと体組織からだもどったようです)」
 どういう?

「(わかりませんが、収納魔法具しゅうのうまほうぐのような機能きのうを、太角ふとつのゆうしていたとおもわれます。その発露はつろとしてニゲル青年並せいねんなみみの超加速を得ていた・・・・・・・・と、かんがえるべきです)」
 わからんが、わかった。
 ニゲルのさびたけん安物やすもの)も、金剛力パワーアシストでも持てねぇほどの重さ・・だったからな。

「(はい。質量しつりょう攻撃こうげき変換へんかんする特性とくせい――に特化とっかした魔物まものなのでしょう)」
 この来世らいせには、いろんなヤツが居るな。
「しかし、コイツはなにしてぇんだ・・・・・?」

「(現象げんしょうだけをみるなら、我々われわれ地上ちじょうかえさないつもり・・・のようです。肥大ひだいしてしまった質量しつりょう有効活用ゆうこうかつようしており、高負荷演算こうふかえんざんによる効率的こうりつてき運用うんようが果たされています)」
 ふう、わからんぞ。わからんけど――
 あのままうごけねえなら、やぶつつくことはねぇだろ。
 下手へたかべごと切っちまうと、またあばれだしそうだし。

 ひとまず避けなくて良いだけでも……ありがてぇ。
 一息入ひといきいれつつ――アレをやっちまうか。

 ちいせぇつくえ椅子いす
 ごとごとん――ガチャン!
 それに借りた豪奢なの・・・・を取りだした。

 ふぉふぉん♪
『まがい物の聖剣【匠スペシャル】
 攻撃力287。聖剣の柄を再利用した業物。
 伝説の職人によるリペアにより、不壊が付与されている。
 剣速に補正が付くが、攻撃力は高級品並み
 追加効果/AGI+78』

 湯飲ゆのみに茶葉ちゃばを入れ、みずのたまとひのたまを同時に使う・・・・・
 できたなかから、茶葉ちゃばだけを――すぽんと仕舞しまえば。
 こんな穴蔵あなぐらでも、あったけぇちゃが飲める。

 ゴギュギギッ、ボッキュビキ――――景色けしき最悪さいあくだがな。

「さて、どーする?」
 ふぉん♪
『>そうですね。ニゲルの剣を偽装した時のように、表記間違いをしないように気をつけましょう』

 ふぉふぉん♪
『鍵剣セキュア【安物】
 攻撃力34。参考価格は2ヘクク。
 >セキュリティー重視の試作品。
 装備条件/揚げ芋』

 装備条件そうびじょうけん揚げいもってなぁ、いくらなんでもひでぇ。
 あれもそのうち、なおしてやらねぇとな。
 五百乃大角いおのはら余計よけい文言もんごんさえ折り込まなきゃ、ここまでひでぇことにはならない。
 揚げいものことをかんがえるあまりに、勇者ゆうしゃと揚げいも書き間違ったりな・・・・・・・・

「(ひめさんの〝まがいもの聖剣せいけん〟てのも随分ずいぶんだけど、もとからだろ?)」
「(はい。変えるわけにはいきません)」

 ふぉん♪
『伝説の職人によるリペアにより、不壊が付与されている。』
「(このぎょうをどうにか上手うまいこと差し替えて、辻褄つじつまを合わせましょう)」

「じゃぁ、伝説でんせつ職人しょくにんてのは無しでー、不壊ふかいまで行かねーよーなやんわりとした……それでいて偶然頑丈ぐうぜんがんじょうになっちまったかんを、かもし出せってワケだろ?」
 けっこう、むずかしいんでやんの。

「(そうですね。では、『度重たびかさなる修復しゅうふくにより、強度きょうどUPアップ』とかでは?)」
 UPあっぷてなぁ〝増える〟ってこったろ、ソレで良ぃーだろ。

「(あ、まて。『たくみスペシャル』ってのは、どっから来た?)」
「(収納魔法具しゅうのうまほうぐである指輪ゆびわでの簡単かんたん修繕しゅうぜんでしたので、めいが入ったとはかんがえられません)」
 筆書ふでがきしてねぇからな。たぶんもとからだろ。
 よし、今度こんどこそコレで。

 ふぉふぉん♪
『まがい物の聖剣【匠スペシャル】
 攻撃力287。聖剣の柄を再利用した業物。
 剣速に補正が付くが、攻撃力は高級品並み。
 度重なる修復により、強度UP。
 追加効果/AGI+78』

 いいんじゃぁねぇのー?
「(はい、なかなかの出来できです)」

 よぉうしっ、じゃぁあとは――――すぽすぽすぽん♪
 ひろげた全部ぜんぶをしまい込む。

 ジャリィィン――ピカリとひかてつぼう
 アイテム名偽装めいぎそうをつつがなく終え、ものためしと錫杖しゃくじょう不壊ふかいほどこしてみた。
 振りまわしたり、かべ穿うがったりしたけど、とくに変わらない手応てごたえ。
 けずられないなら、ながさが減らなくて便利べんりだ。

 すっすぅ――すっすぅ――すっすぅぅぅぅっ。
 ふかいきを吸う。
 せまいから、ななめになっちまうが「――二のかまえ。」
 錫杖しゃくじょうあたまについた鉄輪てつわを持ち、水平よこかまえた。
 二の型こいつは〝なんにでもあな穿うがつ〟わざだ。

 ゴゴゴゴゴゴズズズズズムンッ――――!!!!
 かべを突き抜ける、不壊ふかい錫杖しゃくじょう極太ごくぶと)。

 おおきくあいたあなの向こうに、通路つうろが見えた。
 くずれた瓦礫がれきゆかに飲み込まれていくけど、あなふさがる様子ようすはない。
「(ある程度ていどおおきくこわすと、スグには修復しゅうふくできないようですね)」
「(じゃぁおれがとおれるくらいまで、この横穴よこあなひろげりゃよくね?)」
「(はい、ミノタウロースを迂回うかいして、まずは地上ちじょうもどりましょう)」

 くるりと向きなおり、もう一度いちどミノタウのかべを見る。
「それにしても綺麗きれいにぴっちりと、はさまったもんだなあ」

「(ああ、なるほど。つのこわされ肥大ひだいした状態じょうたいになってはじめて、かろうじて採れる部位ぶいヒレ肉・・・のようです)」
 そういうことか。五百乃大角いおのはら、ご垂涎すいぜんのヤツな。

 見たかんじは、前世ひのもとに居た本物ほんものおにと変わらない。
 オルコトリアはつら綺麗きれいだし金剛力こんごうりき使つかったときでも、力強ちからづよさのなかにもうつくしさがあった。

 けど、ミノタウはなー。
「(とにかく剛力ごうりき発揮はっきするためだけの・・・・・からだのつくりをしていま)」
 かおつきもからだつきも、まるで掘り出すまえの木彫きぼりりの仏像ぶつぞうだ。
 ボコボコしてて、とても人型ひとがたには見えない。

 ふぉん♪
『イオノ>いまさー、お姫ちゃんがこっちに来たけどさー、
     ソッチはどんな感じなのー?』

「コッチはどうにかこうにか、両角りょうつのを折ったぞ」
 ふぉん♪
『イオノ>史上最美味目前じゃないのっ! でかしたわよ!
     それで、ちゃんと倒したのを仕舞ったんでしょーね』

「いやそれがつのを折ったら、からだきゅうおおきくなりやがってなぁ」
 ふぉん♪
『>このまま動く様子がないので、一旦、地上へでて合流しようかと思っていた所です』

 ふぉん♪
『イオノ>ふぅん、はさまったってさぁ、
     いったいどんな感じなのよ?』

 ――――ぽこん♪
 画面がめんなかにあらわれた、ちいさなちいさな御神体いおのはら

 それがパタリとたおれ、いきおあまってコロコロコロコロ♪
『イオノ>あっははははっはははははははははははははっははははははははっ!』
「――あっははははっはははははははははははははっははははははははっ――」
 おい御神体アイコンさまよ、音声通話こえに出てるぞ――うるせぇ!

 ひょっとしたらかんさわわらごえが、聞こえたのかも知れない。
 ――――ゴギュバギョゴバガァン!
 かべこわしながらせまってくる、ミノタウ(大柄おおがら)!
 ――――ズシン、ズズッシィンッ!

て、ってえ!」
 ぶち当たってくる瓦礫がれき
 バゴォォォン、ゴガァァァン――――こりゃやべぇ!

 前門ぜんもん牛壁うしかべ後門こうもん階下かいかへの階段あな

 ちっ、こうなったらしたかいで、ひろところを見つけて――仕留しとめてやる。
 そして、姫さんリカルル文句もんくを言いそうだが――あらわれるであろう階下した強敵きょうてきも、全部ぜんぶおれがたたっ切っちまっても……言いわけが立つぞ。
「ふふふふっ、よしソレで行くぞ、迅雷ジンライ
 ふぉん♪
『>了解しました』

 おれたちはしたつづ階段あなに、飛びこんだ。
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