260 / 739
3:ダンジョンクローラーになろう
260:ダンジョンクローラー(シガミー御一行様)、豪奢な剣(まがいもの)と小太刀(新色)と仕込み錫杖(極太)
しおりを挟む
またもや姫さんの不意打ちをくらった魔物が、四つ足をついた。
「ギャッギュギャギュギュギュギュギャギュギュギュギュギュギュギュギュ――!!!」
その地声、うるせぇなぁ。
「またその唸り声っ――うるっさいで――――すわ――――――よーっ!」
剣を引き、通路の奥へ逃げていく伯爵ご令嬢。
まあ正解だ。
リカルルのぶった切りを全部避けたおれでさえ――金剛力と、〝動く物を見える化する窓〟がなかったら。
あの間がねぇ突進は、そうそうさばききれなかったからな。
おれも奥へさがる。
「(おい、五百乃大角。角をひとつ、姫さんが壊してくれたぞ!)」
ふぉん♪
『イオノ>えー、ほんとぉー? あと一本あと一本、きゃほぉーい♪』
「(ああ、だから地上へ向かった連中のことを頼めるか?)」
ふぉん♪
『イオノ>そーね。あっちには強化服二号が居るから、あたくしさまがレイダちゃんを使ってみんなを守ってあげてもいいわよ?』
「(なんか不安だが、ソレで頼むぜ)」
スタタタッ――――ドッゴォォォンッ!
曲がると言うことを知らない、頑なな殺気を尻目に――通路の曲がり角へ飛びこむ。
ゴッゴンゴゴンドズゴゴォン!
壁が粉々に粉砕され――――瓦礫をまき散らす!
痛ってぇ――――スタトタッ――トトォーン!
地図はすでに完成してる。
この先の突きあたりの三叉路を右に曲がりゃ、ミノタウが登ってきた階段が有るあたりへ通じる道に出る。
「――きゃぁきゃぁぁぁっ――――!――」
む? リカルルめ、まだこんな所に居やがる。
「連日の祭りの宴会で、体が鈍ったんじゃねぇのかぁー?」
「だ、誰が酒樽ですってぇー!? き、聞き捨てなりませぇんわよぉー!?」
いけねぇ、また声に出てたか。
迅雷式隠れ蓑をひろげ――――ぶわささささぁぁぁぁっ!
長く真っすぐな道を、飛んでかけぬける。
わめく令嬢をふたたび、すくい上げて抱えた。
「(迅雷、コッチに行き止まりの道があるだろ?)」
画面に表示される地図を見てたら、短ぇ横道を見つけた。
ふぉん♪
『>はい、なるほど。リカルルにココへ隠れていてもらえば、
安全に地上へ引き返させることが出来そうですね』
「(ああ、隠れ蓑を一枚出してくれ)」
ぶわっさぁぁぁぁ――――あっぶね!
風に煽られて、前が見えなくなった。
巻きついちまった隠れ布を通して、迷路の壁が表示される。
ぐるん――スッタァン。
三叉路の壁を蹴り、出口じゃない方に身を隠す。
「ふう、姫さんに相談だ。コイツで体をまとって、この先の行き止まりに隠れてくれ」
ガンガガン――隠れ蓑を力一杯、拳で叩いてみせる。
こいつは迅雷が無しじゃただの布だが、それでも強い攻撃には滅法強い。
色味も群青色にしてある。
「んなっ!? ガムラン代表のこの私が、シガミーみたいな小さい子をひとりのこしておめおめと、逃げおおせられるとお思いっ!?」
「思わねぇが、ここはおれひとりのほうが動きやすい。ミノタウの野郎を倒したらスグに呼ぶから、ソレまでみんなの所に戻っててくれねぇかい?」
がばっ――歯を食いしばられ、腕に抱きつかれた。
意地でも付いて来やがるつもりだぜ。
「じゃあ、この刀に免じて言うことを聞いちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
指輪から群青色の小太刀を、取り出して押しつける。
オルコトリアに色とりどりの小太刀を自慢されたとき、そうとう悔しがってたから……ひょっとしたら。
「あら、素敵な色ね?」
片手を放して、ガシリとつかまれる小太刀。
もう「返せ」って言っても、あの手は離れそうもない。
「そうだろう? そしてもう一本おまけにくれてやるから、姫さんの剣を貸しちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
同じ色じゃ芸がねぇから――コッチのはさっきまでの洞窟の、赤茶けた岩肌色にしてみた。
剣は武人の魂だ。
命を預ける刃を、そうそう借り受ける事は出来ね――――――
「――先ほどノ、大角ヲ破壊しタ一撃を再現するのに必要かモ知れないのデす――」
「そうなんですの? ならよくってよ」
おれの腕を放り投げ、手首に引っかけた剣のこしらえをグイッと持ちあげる。
「随分とすんなり貸してくれるんだな――助かるけど」
あわよくばさっき剣に付けちまった〝伝説の職人〟のくだりを、アイテム名偽装スキルで隠しちまおうって腹だったんだが。
うまくいったなおい。
「けれど、この剣自体はそれほど強いものでは無くってよ?」
「いや、大丈夫だ。恩にきる」
ドッゴォォォxン――――――――――――!
銃声が飛んでくる。
「じゃ、みんなの所には五百乃大角も付いてるから、何かあったらなんでもいいつけてくれ!」
§
じゃあこの豪奢な剣に、アイテム名偽装を掛ける――
スタタァァン、肩越しにうしろを振りかえる。
ドッゴォォォォォンッ!
空中を裂く銃声は、コッチを追ってきてる。
画面の地図の中。
ものすごい勢いで迫り来る――『殳』。
逆に『◎』から離れていく――『尽』、リカルルか?
――けど、まずは魔物を倒しちまおう。
危なくて仕方がねぇ。
ふぉん♪
『>了解しました』
すこし削れた錫杖を――すぽん♪
収納して出しなおす――ジギャリリィン♪
鉄輪の重い音が心強い……すっげー重くて疲れるけど。
借りた剣は、ひとまず締まっとく。
壊れない〝不壊〟は錫杖にも、付けといても良いかもな。
「(あれ? けどそもそも姫さんの剣は、指輪で直しただけじゃね?)」
もし、伝説の職人スキルが、よけいな気をきかすってんなら、今までだって小太刀も錫杖も〝不壊〟になってなきゃおかしーよな?
ふぉん♪
『仕込み錫杖(極太)
攻撃力102。修験者が使う鉄の棍。
内部に隠された刀身は高威力。
追加効果/ATK+274』
やっぱり〝不壊〟の文字はない――――スッタァァン!
ドゴッォォオォンッ――ゴガギャッ!?
また曲がり角で躱したら、ミノタウが壁に突き刺さった。
「(シガミー、いまです!)」
おうよ――――シュッカァァァァァンッ!
一本のこった太角へ、打ちおろしの変則的な居合いを繰りだした。
「ギャッギュギャギュギュギュギュギャギュギュギュギュギュギュギュギュ――!!!」
その地声、うるせぇなぁ。
「またその唸り声っ――うるっさいで――――すわ――――――よーっ!」
剣を引き、通路の奥へ逃げていく伯爵ご令嬢。
まあ正解だ。
リカルルのぶった切りを全部避けたおれでさえ――金剛力と、〝動く物を見える化する窓〟がなかったら。
あの間がねぇ突進は、そうそうさばききれなかったからな。
おれも奥へさがる。
「(おい、五百乃大角。角をひとつ、姫さんが壊してくれたぞ!)」
ふぉん♪
『イオノ>えー、ほんとぉー? あと一本あと一本、きゃほぉーい♪』
「(ああ、だから地上へ向かった連中のことを頼めるか?)」
ふぉん♪
『イオノ>そーね。あっちには強化服二号が居るから、あたくしさまがレイダちゃんを使ってみんなを守ってあげてもいいわよ?』
「(なんか不安だが、ソレで頼むぜ)」
スタタタッ――――ドッゴォォォンッ!
曲がると言うことを知らない、頑なな殺気を尻目に――通路の曲がり角へ飛びこむ。
ゴッゴンゴゴンドズゴゴォン!
壁が粉々に粉砕され――――瓦礫をまき散らす!
痛ってぇ――――スタトタッ――トトォーン!
地図はすでに完成してる。
この先の突きあたりの三叉路を右に曲がりゃ、ミノタウが登ってきた階段が有るあたりへ通じる道に出る。
「――きゃぁきゃぁぁぁっ――――!――」
む? リカルルめ、まだこんな所に居やがる。
「連日の祭りの宴会で、体が鈍ったんじゃねぇのかぁー?」
「だ、誰が酒樽ですってぇー!? き、聞き捨てなりませぇんわよぉー!?」
いけねぇ、また声に出てたか。
迅雷式隠れ蓑をひろげ――――ぶわささささぁぁぁぁっ!
長く真っすぐな道を、飛んでかけぬける。
わめく令嬢をふたたび、すくい上げて抱えた。
「(迅雷、コッチに行き止まりの道があるだろ?)」
画面に表示される地図を見てたら、短ぇ横道を見つけた。
ふぉん♪
『>はい、なるほど。リカルルにココへ隠れていてもらえば、
安全に地上へ引き返させることが出来そうですね』
「(ああ、隠れ蓑を一枚出してくれ)」
ぶわっさぁぁぁぁ――――あっぶね!
風に煽られて、前が見えなくなった。
巻きついちまった隠れ布を通して、迷路の壁が表示される。
ぐるん――スッタァン。
三叉路の壁を蹴り、出口じゃない方に身を隠す。
「ふう、姫さんに相談だ。コイツで体をまとって、この先の行き止まりに隠れてくれ」
ガンガガン――隠れ蓑を力一杯、拳で叩いてみせる。
こいつは迅雷が無しじゃただの布だが、それでも強い攻撃には滅法強い。
色味も群青色にしてある。
「んなっ!? ガムラン代表のこの私が、シガミーみたいな小さい子をひとりのこしておめおめと、逃げおおせられるとお思いっ!?」
「思わねぇが、ここはおれひとりのほうが動きやすい。ミノタウの野郎を倒したらスグに呼ぶから、ソレまでみんなの所に戻っててくれねぇかい?」
がばっ――歯を食いしばられ、腕に抱きつかれた。
意地でも付いて来やがるつもりだぜ。
「じゃあ、この刀に免じて言うことを聞いちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
指輪から群青色の小太刀を、取り出して押しつける。
オルコトリアに色とりどりの小太刀を自慢されたとき、そうとう悔しがってたから……ひょっとしたら。
「あら、素敵な色ね?」
片手を放して、ガシリとつかまれる小太刀。
もう「返せ」って言っても、あの手は離れそうもない。
「そうだろう? そしてもう一本おまけにくれてやるから、姫さんの剣を貸しちゃくれねぇか?」
ヴッ――ぱしん♪
同じ色じゃ芸がねぇから――コッチのはさっきまでの洞窟の、赤茶けた岩肌色にしてみた。
剣は武人の魂だ。
命を預ける刃を、そうそう借り受ける事は出来ね――――――
「――先ほどノ、大角ヲ破壊しタ一撃を再現するのに必要かモ知れないのデす――」
「そうなんですの? ならよくってよ」
おれの腕を放り投げ、手首に引っかけた剣のこしらえをグイッと持ちあげる。
「随分とすんなり貸してくれるんだな――助かるけど」
あわよくばさっき剣に付けちまった〝伝説の職人〟のくだりを、アイテム名偽装スキルで隠しちまおうって腹だったんだが。
うまくいったなおい。
「けれど、この剣自体はそれほど強いものでは無くってよ?」
「いや、大丈夫だ。恩にきる」
ドッゴォォォxン――――――――――――!
銃声が飛んでくる。
「じゃ、みんなの所には五百乃大角も付いてるから、何かあったらなんでもいいつけてくれ!」
§
じゃあこの豪奢な剣に、アイテム名偽装を掛ける――
スタタァァン、肩越しにうしろを振りかえる。
ドッゴォォォォォンッ!
空中を裂く銃声は、コッチを追ってきてる。
画面の地図の中。
ものすごい勢いで迫り来る――『殳』。
逆に『◎』から離れていく――『尽』、リカルルか?
――けど、まずは魔物を倒しちまおう。
危なくて仕方がねぇ。
ふぉん♪
『>了解しました』
すこし削れた錫杖を――すぽん♪
収納して出しなおす――ジギャリリィン♪
鉄輪の重い音が心強い……すっげー重くて疲れるけど。
借りた剣は、ひとまず締まっとく。
壊れない〝不壊〟は錫杖にも、付けといても良いかもな。
「(あれ? けどそもそも姫さんの剣は、指輪で直しただけじゃね?)」
もし、伝説の職人スキルが、よけいな気をきかすってんなら、今までだって小太刀も錫杖も〝不壊〟になってなきゃおかしーよな?
ふぉん♪
『仕込み錫杖(極太)
攻撃力102。修験者が使う鉄の棍。
内部に隠された刀身は高威力。
追加効果/ATK+274』
やっぱり〝不壊〟の文字はない――――スッタァァン!
ドゴッォォオォンッ――ゴガギャッ!?
また曲がり角で躱したら、ミノタウが壁に突き刺さった。
「(シガミー、いまです!)」
おうよ――――シュッカァァァァァンッ!
一本のこった太角へ、打ちおろしの変則的な居合いを繰りだした。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜
田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。
謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった!
異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?
地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。
冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
暴虎馮河伝
知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。
とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。
————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる