上 下
241 / 738
2:カブキーフェスタへの道

241:天狗(シガミー)という名の神さま、QTE料理人あらわる

しおりを挟む
「テェーング殿どの手助てだすけはするけど審査しんさはきびしくするからね」
 女将おかみさんはトゥナさんというのか、はじめて知った。
 それと宮廷料理人きゅうていりょうりにんってのも初耳はつみみだし、尋常じんじょうじゃねえな。
 実際じっさいにその仕事しごとをちかくで見たから、納得なっとくしかしないが。

 けどなんでまたこんな場末ガムランで、食堂しょくどうなんかをやってるんだろう――
 とはおもうけど、生きてりゃ色々いろいろあらぁな。

「さぁ、おにぎりちゃん。この果物くだものしぼるよ!」
 テーブルのうえにならべられた、いろとりどりの果物くだもの

「んみゃぉ、みゃにゃぁごおぉ♪」
 テーブルの向こうでは、強化服一号おにぎりが待ちかまえている。

 やたらと刀身とうしんやこしらえが立派りっぱ包丁ほうちょうが、果物くだもの両断りょうだんしていく。
「ありゃ!?」
 すぽん――まるくて縞模様しまもようのがひとつ跳ねて――逃げだした。
 ガムラン近郊きんこうに生えてる果物くだもの野菜やさいは、たいていが活力マナをおびた魔物まものだ。
 ときおり食卓しょくたくから果物くだものが逃げだすなんてことも、ごくまれにある。

 ぽぉん――にゃみゃが!
 跳ねたソレに、とびつく一号おにぎり
 さすがは猫族ねこぞくを模したシシガニャンだ、すばやい。

「じゃぁ、いくよ。ちゃぁんと押さえといておくれよ?」
 てぇりゃぁ――!
 女将トゥナさんが、気合きあいをいれて赤色あかいろのをしぼると――
 しぼりざらのうえに奇妙きみょう文様もんようがあらわれた。

 『あある
 それは神々かみがみがつかう文字もじのひとつに似てた。

「でぇりゃりゃりゃりゃぁ――――!」
「にゃみゃがにゃやーん♪」
 いろで充たされていく、むっつのしぼりざら
 その水面すいめんには――六個ろっこ文様もんよう

 橙色だいだいいろ果物くだものには――『おう
 黄色きいろ果物くだものには――『ぅわい
 緑色みどり果物くだものには――『
 青色あおいろ果物くだものには――『
 紫色むらさきいろ果物くだものには――『

 かがやく水面すいめん背後はいご画面がめん大映おおうつしになると――
 会場かいじょうがふるえるほどの大歓声だいかんせい

「みゃごー♪」
 ことん、ことことことん。
 から大皿おおざらを取りかこむようにならべられる、しぼりざら

「じゃあ、つぎにいくよぉー!」
 いつもの木さじに持ちかえた――Q邸きゅうてい料理人りょうりにんが、沸していた湯をかきまわす。
 ぐるぐるぐるるるっ!

 大鍋おおなべをかきまわすと――なべうえにも文様もんようがあらわれた。
 ピキパキガキィィィンッ――――!
 一瞬いっしゅんのうちにこおりつく湯――ひか文様もんよううえにせりあがったかたちは、水晶すいしょうやゴーブリンいしかたまりみたいになった。

 なべよこにずらすと浮かんでいた文様もんようが、テーブルのたかさまで降りる。
 それにあわせてこおりも降りて、テーブルのうえ20センチくらいに浮かんだ。

「みゃんにゃやーご?」
 しぼりざらにかこまれた大皿おおざら
 その手前てまえ七個ななこちいさいかねならべられている。

「いまから言う順番じゅんばんで、ソコに有るベルを鳴らしてくれるかい?」
 ぶるるん、ぶるぅんとあちこちを揺らしながら、女将おかみさんが手を振った。

 ヴォォォォォォォッ――――!
 大皿おおざらしたに浮かびあがる――魔法まほう法印ほういん
 それはまるで、曼荼羅マンダラのような精緻せいちさで――
 そのすじ一本一本いっぽんいっぽんが――〝魔法まほう神髄しんずい〟で出来ていた。

「いつみても女将おかみさんの古代魔術・・・・わぁー、おもしろぉいわねぇぇ――♪」
 ぱんっと扇子せんすをひろげ――えつ伯爵領はくしゃくりょう名代みょうだい
 古代魔術こだいまじゅつだぁ?
 ここにきて、いままでに聞いたこともない〝〟の〝じゅつ〟が出てきやがったぞ。

 ぽこふぉん♪
『イオノ>攻略本の記載によれば、
     文様魔術と呼ばれる魔術体系みたい。
     ほんの二十年前までは、
     普通に使われていた生活魔法だってさ」

 魔法の文様まんだらうえ、浮かぶ氷塊ひょうかい
 それを力一杯ちからいっぱい、ばしんとひっぱたく!
 ひっぱたかれた氷塊こおりは――しずかに回転かいてんをはじめた。

 そして木さじをふたたび、頑丈がんじょうそうな包丁ほうちょう――いやありゃ、短刀たんとうなのか?

 ふぉん♪
『>アーティファクトの反応があります』
 となると伯爵夫人ルリーロつえとおなじくらいの、チカラを秘めてるかもしれねぇ。

 うっすらと魔法まほうひかりはな短刀たんとうを、まわるこおりに突きたてた!
 ザリザリザリィィィ――――――――シャァァァァァァアッ!!!

 こおり鉋屑かんなくずが弧をえがき、とおくに置いた高足たかあしびーどろに降りそそぐ。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――!
 沸く会場かいじょう
 彼女おかみさんわざは出しものとしても見事みごとで、これにはわしも弟子でし感嘆かんたんした。

 ふぉん♪
『>この氷を使った出し物は、舞台で映えますね』
 ああ、これはおもしれぇ――よーく見といてくれ。
 いつか似たことをするはめに、ならないともかぎらないからな。

OOおーおーGOじーおYOわいおGOじーおOOOおーおーおGYじわいYOよー♪」
 女将おかみさんのかけごえに合わせて、おにぎりがうごき出す。
 シャァァァァァァアッ――けずられていくこおり

「にゃがにゃが、みゃごみゃごぉ♪」
 『O――』『O――』『G――』『O――』『Y――』『O――』『G――』『O――』!
 しぼりざらに浮きでた文様ひかりから伸びていくひかすじ
 それはおにぎりのまえ
 置かれた小鐘こがねにつながった――チィン♪
 つまみをたたくと音が鳴るだけの道具どうぐだ。
 ギルドの受付うけつけにも置いてある。

 かねが鳴ると――ぽちゃん♪
 しぼじるそらたかくはねて大鍋おおなべに。

 チィンチィンチィンチチチン♪
 黄緑色おにぎりがせわしなく両手りょうて交差こうささせ、六色ろくしょくしる大鍋おおなべそそいでいく。

ROああるおらっBYOびわいおらっGYOじわいおらっYOよーらっ♪」
 ぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅ――♪
 女将おかみさんのこえに合わせて――しりをふるおにぎり。
「にゃ、にゃ、みゃみゃ、にゃにゃみゃみゃ♪」
 もっわぁぁぁあぁぁ――さまざまないろにかがやくくも大鍋おおなべからあふれた。

 シャァァァァァァアッ――けずられていくこおり
 人数分にんずうぶんならんだビードロのうつわ
 真っしろ雪山ゆきやまたかさを増していく。

YGわぁいじYBわぁいびPYGぴわぁいじOOYGYおぉーやぁじ♪ OBおぉびOGおぉじPYGぴわぁいじOYAGYおぉーやぁーじ♪」
 出し物りょうり佳境かきょうなのか、かけごえ複雑ふくざつになっていく。
 OOYGYおわいじのところは途中とちゅうから「オヤジ」にしか聞こえなくて、すこし面白おもしろかった。

「オヤージ、オヤッジーィ♪」
 あんじょう観客かんきゃくのバカなヤツが一緒いっしょうたい出す。
 とおもったら――このこえ、レイダか。
 階段かいだんのひろいおどり場で、タタと一緒いっしょすわって待機たいきしてる。
 そのこえはやがて、会場中かいじょうじゅう大合唱だいがっしょうとなり――

「にゃがにゃが、みゃごみゃごぉ♪」
「――ヤイヤイ、ワイワイ、オヤジオヤッジー♪」
 央都おうとのモサモサ神官しんかん合唱がっしょうとはちがって、どんどんはやくなっていく。

「――にゃにゃやにゃ、みゃにゃみゃごにゃみゃっごぉ♪」
 おにぎりの手が見えなくなった・・・・・・・ころ。
 いちばん手前てまえ雪山ゆきやまに――〝きり〟がかかった。

 短刀たんとうを置いて――なにかを手のひらにえが料理人トゥナさん
 するときりから、なにかが落ちていく。
 なんだ――?

「にゃみゃん、ふぎゃぁー♪」
 それはいろとりどりの――ゆきだった。
 おにぎりがかぶりつくようにかがみ込む。

 おい、見えんだろうが。
 仕方しかたないから巨大画面きょだいがめんうつ冬景色ふゆげしき見守みまもる。
 きり雪雲ゆきぐもあらしているのか。

 しんしんと降り積もる、いろとりどりのゆき
 ビードロのうつわかさなるように突き刺さっていた曼荼羅もんようがパリンと割れると――
 ズゥォワァッ――――雪山ゆきやまいろどられた。

 これははる景色けしきかっ!?
 さくらのようないろはなが咲きみだれる、やま景色けしき

「さぁできたよ。溶けるまえにおあがり♪」
 色鮮いろあざやかなこおった菓子かしが、透明とうめいなビードロのうつわ完成かんせいした。

 それはふたたび画面がめんうつし出されている、『グラニテ』とやらとおなじかがやき。
 こりゃ見事みごとだ。
 ちいさなさじで――ぱくり。

 こりゃあめぇ――けどすぐ溶けちまうから、これっぽっちもくどくねぇ。
 うめえうめぇ――一瞬いっしゅんでなくなっちまった。
 なるほど。
 つめたくて食べると溶けちまう――そんな菓子かしつくれば良いんだな。

食堂しょくどう女将おかみ……トゥナとやら。つめたい菓子かしのご指南しなん――まことにかたじけない」
「――かたじけない」
 弟子ジンライわしにならってれいを言う。

「おぉーっと、ここでヒーノモトーこく伝家でんか宝刀ほうとう、〝かたじけーない〟が炸裂さくれついたしましたぁー♪」

 かたじけーぇなぁい♪
 観衆きゃくがいっせいにマネなぞしやがる、ひょっとしてバカにされてんのか?
 めっすぞ。

ーーー
文様魔術/手のひらに光の文様を描き、それを地面などに転写して発動させる魔術形態。
※参照URL
https://ncode.syosetu.com/n7103gx/
※参照URL
https://novelup.plus/story/807719871
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仔猫殿下と、はつ江ばあさん

鯨井イルカ
ファンタジー
魔界に召喚されてしまった彼女とシマシマな彼の日常ストーリー 2022年6月9日に完結いたしました。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。 左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。 この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。 しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。 彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。 その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。 遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。 様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~

なつのさんち
ファンタジー
「俺のぉぉぉ~~~ 前にぃぃぃ~~~ ひれ伏せぇぇぇ~~~↑↑↑」 その男、絶叫すると最強。 ★★★★★★★★★ カラオケが唯一の楽しみである十九歳浪人生だった俺。無理を重ねた受験勉強の過労が祟って死んでしまった。試験前最後のカラオケが最期のカラオケになってしまったのだ。 前世の記憶を持ったまま生まれ変わったはいいけど、ここはまさかの女性優位社会!? しかも侍女は俺を男の娘にしようとしてくるし! 僕は男だ~~~↑↑↑ ★★★★★★★★★ 主人公アルティスラは現代日本においては至って普通の男の子ですが、この世界は男女逆転世界なのでかなり過保護に守られています。 本人は拒否していますが、お付きの侍女がアルティスラを立派な男の娘にしようと日々努力しています。 羽の生えた猫や空を飛ぶデカい猫や猫の獣人などが出て来ます。 中世ヨーロッパよりも文明度の低い、科学的な文明がほとんど発展していない世界をイメージしています。

処理中です...