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2:カブキーフェスタへの道

235:天狗(シガミー)という名の神さま、妖狐ルリーロ出没中

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 まったく、面倒めんどうなことになった。
 烏天狗ぼくたい天狗わし一騎討いっきうちなんて馬鹿ばかなことをする羽目はめになったのは、ぜんぶ五百乃大角いおのはらのせいだ。

「やい女神めがみさまよ、この落としまえどう付けてくれるんでぇい?」

「えー、べつにぃ良いじゃなぁい♪ 迅雷ジンライにぃーどっちか肩代かたがわりしてもらえばさぁー

「はイ。裏天狗うらテんぐデも裏烏天狗うらかラすてんぐでモ、ヤくエんじるコとは可能かノう
「いや、そういうはなしでもねぇだろうがよ」

「「じゃあ、どういうはなしなの」――でスか
「だからな、かりにも使役獣しえきじゅうおにぎりをくだした烏天狗からすてんぐが、その師匠ししょう天狗てんぐいどむわけだろ?」
「そうわ」「そウです
「なら、おれ……カラテェーとくらべて圧倒的あっとうてきつよくねぇとおかしいじゃねえのってはなしだ」

「じゃー、シガミーが天狗役てんぐやくで良いじゃない。はい、このはなしわぁおしまぁー
 ここは、五百乃大角いおのはら伯爵夫人ルリーロがつかってたらしい部屋へや
 やたらといろんなアーティファクトが、ところせましとかさねて置いてある。
 ここに、レイダの父上ちちうえであるギルドちょうを連れてきたら――かならずどれか引っこ抜いて、くずれてきたアーティファクトに押しつぶされるだろうな。

「ぜんぜんおしまらねぇけど、この宛鋳符悪党アーティファクトはどうしたんだ?」
「ああコレわぁ、予選よせんのときの――」
「――〝おもち〟のノ中《ナか》に入レた景品けイひんあまり・・・だそウで
 じゃあおれが隣町となりまち倉庫そうこからかついできたやつも、そうとう混じってるのか。

「コレだけ有ったら、れいおにぎりに使える・・・・・・・・宛鋳符悪党アーティファクトがあるんじゃ――?」
 五百乃大角いおのはら迅雷ジンライも、くびよこに振る。
 鏡餅ごしんたいはともかく浮かぶ棒アーティファクトのドコにあたまがあるんだっておもわなくもないけど、それがわかるくらいにはいつも一緒いっしょに居たってことだ。

「ぱらぱらり……おにぎりに使つかったあの三角さんかくのヤツ……『廃棄された古代の女神像から回収した謎の遺物』っていうのわぁー、フルバージョンのAOSエーオーエスが乗る特別製とくべつせいみたいよ
最適化前さいてきかマえのフルスペック仕様しよウというわけでス
 わからんはなしだが虎の巻こうりゃくぼんに書いてあるってことは、SDKおにぎりはこの世界せかいにあっても良いものなんだろう。

「じゃあアレだけの大金たいきんを出してでも、手に入れといて良かったなぁ」
 たしかしめて3000パケタだった。
「はイ。こうナるとミャニラステッドギ術開発部じゅつかいはつぶ部長ブちょうにモう一度イちど、くわシいはナしを聞きニ行く必要ひつヨうもあルかも知れませ

「うーん、アイツ自体じたいわるやつでもなさそうだけど、なーんか余計よけい仕事しごとを押しつけられそうでなぁ」
 そもそも、ドコで見つけたって言ってたっけ?
廃棄はイきさレた古代こダい女神像めがミぞうというかラには、遺跡化いせキかしタ神代しンだい都市跡としアとなのデは

 観客席かんきゃくせきが立ちならぶ隙間すきま座席ざせき途切とぎれたあいだに、物置小屋ものおきごやのように建てられたうちのひとつ。
 本当ほんとう休憩所きゅうけいじょは揚げいも屋台やたいにしちまって、とても使つかえないからココを使つかっているのだ。

『▼▼▲――ピピピッ♪』
 なんだ――そらからの攻撃こうげき!?

「あぁー、烏天狗からすてんぐちゃんだぁー♪」
 小屋こやに飛びこんできたのは、としころはせいぜい17、8にしか見えない少女しょうじょ
 はなかた五百乃大角いおのはらそっくりだが、したっ足らずなこえ本当ほんとう子供こどものソレで。
 伯爵令嬢リカルルいもうとと言われてもうたがわないが正真正銘しょうしんしょうめい伯爵令嬢リカルルじつ母上ははうえである。
 それどころかよわい200ねんを超えるらしい化物ばけもの――
 もといもと生まれの、五穀豊穣ごこくほうじょうかみ眷属けんぞくで――
 つまるところが、ぞくに言う――妖狐ようこだった。

 ねじれた山菜さんさいたばねたような巨大きょだい魔法杖つえに乗り、しょっちゅう隣町となりまち城塞都市オルァグラムからあそびに来てる。
 どうりで動く物を捉えモーションる虫の知らせトラッカーが、斜め上・・・を指ししめすわけだ。

「カカッ――これはこれは奥方おくがたさま。こんにちわ」
 烏天狗からすてんぐ装束しょうぞくでいる以上いじょう、カラテェーとしてふるまう。
 すでに彼女かのじょはおたがいが本生もとうまれで、この世界せかい来世らいせであることを知っている。

「はぁい、こぉんにぃちぃーわぁ♪ そおいえばさぁー、アレみせてもらってきたわぁよぉぅ?」
 アレってなんだ!?

「――ルリーロが飛来ひらイシた方角ほうガくカらサっすルに、〝日夜にチやシリーズ一式いッしき〟のこトとオもわれマ――」
 あれか。揚げ芋屋・・・・ではフッカが手伝てつだってくれている。

「なんのことですか?」
「とぼけなくても良いのですわぁん。レーニアちゃんからぁこと次第しだいはきいていますのよわたくし、うふふん♪」
 こと次第しだいってなんだ!?

「――リオレイニアかラ聞いた防具ぼウぐカんスるハなしとイうなら、日夜にちヤシリーズ一式以上いっしきイじょう装備そうビヲ「一週間いっしゅウかんくクレる」とイう発言はつゲんほカならナいとおモわれマ――」
 あー、そんなことを言ったな。
 けどありゃ、ニゲルと五百乃大角いおのはら手伝てつだってくれただろ。
 防具ぼうぐかたちほかならぬリオレイニアに、ほとんどまかせちまったし。

「ひょっとしてぇー、ルリーロちゃんのおおうちのぉー家宝かほうにぃー匹敵ひってきすぅーるぅー防具作成ぼうぐさくせいのぉーご用命ようめいくわすぃるぁー?」
 おい、なんだその白い板・・・は。
 ありゃたしか算木代さんぎがわりに使つかえる、便利べんりいただろ?
 奥方おくがたさま相手あいてに、商売しょうばいっ気をだすな。

「ええっとなんはなしかわからないけどさ、これから天狗戦てんぐせんだからこのはなしはあとにしてもらうわけにはいかないかなぁ?」
 もうばなしでももうからないはなしでも、防具ぼうぐなら伝説でんせつ職人しょくにんスキルで――

「いま、天狗てんぐっていったぁぁぁぁっ――――!? ねぇぇぇぇっ――――いま、天狗てんぐっていったぁぁぁぁぁっ――――!?」
 ぼおっごうわぉぉぉぉぉぉぉわぁぁぁぁぁ――――!!!
 ふくれあがる狐火きつねびと、昼日中ひるひなかから見えたらいけない月影つきかげ眼光ひかり

「いやぁー言ってない言ってない。て、てんぷらのは、なにが一番いちばんうまいかなって言ったんだよ!」
 おい、天狗てんぐがらみのこじれたはなしは、ケリが付いたんじゃなかったのか!?

 ふぉん♪
『イオノ>ついてないけど?』
 はぁぁっ!? じゃあカブキーフェスタを、なんでこんな天狗祭てんぐまつりみたいに仕立したてた!?

 ふぉん♪
『イオノ>なんでってもちろん天狗が弱った所を、
     ルリーロちゃんが襲撃する手はずになってるからよ』
 はぁぁぁぁっ!? 無茶苦茶言むちゃくちゃいうなっ!
 じゃあ、このさき御前試合ごぜんじあいは無しだ!
 終わり終わり――――おにぎりに勝ったぼくが・・・勝者しょうしゃで、師はたたかいにはあらわれなかった体裁ていで。
 そぉ-っと身をかがめ、小屋こやから出ようとするぼくを――じぃぃぃぃぃぃっと獲物えものねらう眼で見つめる、奥方さまルリーロ

「コォン――そんなの決まってるじゃないのっ、お豆腐とうふよ♪ お豆腐とうふうふふふっ♪」
 はぁ、豆腐とうふだぁ?
 豆腐とうふがどうしたんだ?
 奥方コイツさまはなにを言ってやがられるんだ?
 天狗てんぐはなしが逸れたのは良かったけど。

「――さっキの、テんぷらノ具はなニ一番いちばンおいしイかにたイする返答へんとウ――」
「(豆腐とうふだぁ――――そんな豪勢ごうせいなモンはこちとら正月しょうがつにしか、お目に掛かったことがねぇやな)」

 ふぉん♪
『イオノ>あれ、おかしくなぁい?
     天ぷらなんてご馳走を知ってるのに、
     豆腐も食べたことが無いってのわさ』

 ふぉん♪
『>諸説有りますが、豆腐は戦国時代にはそれほど食べられていなかったようです』
 そうだなぁ豆腐とうふ正月しょうがつすこしだけ、ぜんに出たことがあったくらいだ。

 ふぉん♪
『イオノ>贅沢するのはやっぱり、お正月なのね』
 正月しょうがつなぁ一年分いちねんぶん行灯あんどんあぶらで、なんか揚げたりはしたんだよわぜ。

「お豆腐とうふてんぷらって……油揚あぶらあげのことよね? やっぱりルリーロちゃんわぁ、きつねだからぁ、お揚げが好きなのかしらぁ

「うぅふふ、お揚げわぁー、きつねうどんのうえに乗ってるのぉおー、いちどだぇけぇー食べたことがあるわぁー♪」
 月影つきかげひとみが閉じられ、したなめずり。

「きつねうどん……それってもちろん日本にほん……もとでのおはなしよねぇー
 ガムランちょうでは、豆腐とうふ油揚あぶらあげも見たことはない。
 このあいだ味噌汁みそしるをつくれたのは、酒瓶経由さかびんけいゆ味噌みそが手にはいったからだ。

 ふぉん♪
『イオノ>迅雷ジンライ、神域惑星で地球の植物や生物を見たって言ってたわよね?
     まがりなりにも出来た石狩鍋も、おいしかったし』
 たしかにあおまめでつくった味噌鍋みそなべは、結構うまかった。

 ふぉん♪
『>はい。実際に数種類採取しました。現代の品種改良されたものが有るとは限りませんが、食用に適した植生や生物分布を確認しました。概ねイオノファラーの設計した基準を充たしていると思われます』

   §

「さぁさぁさぁさぁ、第一回いっかいカブキーフェスタ最後さいご大勝負おおしょうぶ!」
審査員しんさいんは、おにぎりはいを勝ちのこったファイナリストの皆様みなさまと――」
「わたぁーくし-、ルリーロちゃんがぁーつとめさせてぇーいたぁだぁきぃーまぁすぅーわぁー♪」
 天狗戦てんぐせんは、まさかの料理対決・・・・になった。

「へへ、まあいいやな。こいつで勝てば天狗てんぐがらみの因縁いんねんを、ぜんぶ容赦ようしゃするってんだからおやすいもんだぜ♪」
 舞台上ぶたいじょうにはおれと迅雷ジンライとおにぎりがかきあつめてきた、神域惑星しんいきわくせい食材しょくざいやまと積まれている。
 そしてそのやまいただき陣取じんど御神体ごしんたいさまには、『味見役あじみやく』なんてたすきが掛けられていた。
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