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2:カブキーフェスタへの道

229:ギルド住まいの聖女(研修中)、フォチャカさん

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「はぁ!? 揚げ物……ニゲルが?」
「なんだよっ、これぇ~!?」
 いろめき立つ大人おとなたち。

「ぷははははははははっ――――!?」
「ぷっ、ふふふふふっ、クスクスぷふーっ!?」
 なぜか、くの字に折れ曲がる、パーティーメンバーたち。

 なんだか騒々そうぞうしいけど、こっちはいた小腹こばらをどうにかするのに専念せんねんする。
 じゅわぁぁぁぁっ――パチパチパチパチ♪

「ちょっと待って、おくんなさいよ。いま揚げてるからー♪」
 はぁ、いそがしーなこりゃ、目も冴えて来ちまったし。

 こわれたたな仕舞しまって――かまどをつくった。
 手持てもちの収納板しゅうのういたいもが、えーっと3,648個!?
 いざってときの兵糧ひょうろうがわりに、市場いちばで見つけるたびに買い込んでたけど――

「そんなに一杯いっぱいわぁ、食べられなぁいわぁー♡」
 やい御神体ごしんたい。いくら収納魔法並しゅうのうまほうなみの胃袋いぶくろでも、そんなにははいらねぇだろう。
 まずさき一皿ひとさら、おそなえしたぶん大人おとなしく喰っててくれ。

「はいよっ、あがったよ! 冷めないうちに、どーぞ♪」
 一度いちどに揚げられるのは、20ぽんくらい。
 これなら大皿おおざらも、つぎつぎと山盛おおもりに出来できる。
 たぶん、薬草師やくそうしとしての基本きほんスキル、〝生産数最大せいさんすうさいだい〟が効いてるんだとおもう。

 〝高速調理こうそくちょうり〟、〝食物転化しょくもつてんか〟、〝さじ加減かげん〟あたりも、上手うまいことやくに立ってる。
 けど――くしいもを刺して――こなをまぶして――揚げて――あぶらを切ったら――さらに盛る。
 その調理工程ちょうりこうていのひとつごとに――1・5ばいくらいに増えるのは、どういうこった迅雷ジンライ!?

 じゅわぁぁぁぁっ――パチパチパチパチ♪
 じゅわぁぁぁぁっ――パチパチパチパチ♪
 やべぇ、なんでか芋を揚げる手が、止まらねぇ――――!?
 揚げいも大皿おおざらが、次々つぎつぎならべられていく。

「――シガミー、こレは……〝伝説でンせつ職人しょくニん〟スキルまデ効果発動こうかハつどうしていマせんか――」
 裏烏天狗ジンライひかしつそとにテーブルを、次々つぎつぎと置いていく。

「もー、ダメじゃないかっシガミー!」
 このこえは、女将おかみさんだ!
 コレだけの揚げいもを、こんな夜中よなかにさばけるはずがない。
 「――食材しょくざい無駄むだにしたら、木さじでたたくからね――」
 食堂しょくどうはたらかせてもらっていたときに聞かされた、彼女かのじょ口癖くちぐで

「(まずい、木さじでたたかれる!)」
 どうやって、この場から姿すがたをくらますか、必死ひっしかんがえてたら――
れいの〝たまごソース・・・・・・〟がなくちゃ、折角せっかくいもがかわいそうだよ!」
 うしろに居た、だれかをぼくに押しつけて、女将おかみさんはどこかへはしって行ってしまった。
 あっちには温泉街おんせんがい貯蔵庫ちょぞうこがあるから――たまごでも取りに行ったのかも。

「あのー、あなたはシガミーちゃんね?」
 やたらと血色けっしょくの良い美人びじんが、取りのこされた。
 派手はでかおつきは央都おうとで見た〝しゃらあしゃらしたおんなひとたち〟を、おもい起こさせる。

「そ、そうだけど?」
 だれだろう――これほどのべっぴんさんなら、ひと目見めみりゃおぼえてるはずだけど。

「わたしはフォチャカよ、よろしくね♪」
 麩落家花ふおちゃか――だれだ?

「ところで……カラテェーくん女神めがみさまが、ドコに行ったか知らない?」
 カラテェーの知り合い?
 烏天狗カラテェー正体しょうたいはおれで、こんな知り合いはいない。

わるいけど、おれをうしろに引っぱってくれない?」
 もう手がとまらないから、テーブルが揚げいも山盛やまもりだ。
 麩落家花おんなのひとが「よいしょっ」とおれの背中せなかをひっぱって、引き剥がしてくれた。
「ふぅー、たすかったよ」

「むぐもぐ……フォカッチャ? なんか聞きおぼえが――パンの名前なまえだっけ? もぎゅもぎゅもぎぎゅ♪」
 大皿おおざらのひとつにすわりこんで、いもをむさぼってた女神めがみかおを上げた。
 たしかにこれじゃ、どっちがいもかわかりゃしねぇ。

女神めがみさま、ソコにいらしたのですね……あぶらまみれになって」
 五百乃大角いおのはらに駆けよった女性フォなんとかが――黄緑色きみどりいろ陣羽織じんばおりを押さえて、あとずさる。
 たしかに、そんな一張羅いっちょうらあぶらだらけにされたらたまらない。逃げてくれ。

「あれっあなたぁ、まさかぁ、ひょっとしぃてぇー――さっきの魔術師まじゅつしちゃん!?」
 はぁぁっ!? 何言なにいってやが……る?
「はい、そうです! ど、どうでしょうか? もちろん、なんかなんかが着て良い装備そうびじゃないんですけど……」
 おい、こりゃいくらなんでも――別人べつじんすぎるだろう!

「なに言ってるのっ――すっごい、すっごい、すっごぃく素敵すてき!」
 よくわかったな、五百乃大角おまえさまのくせに。
 ふぉん♪
『イオノ>仮にもあたくしさまは、美の女神ですから。
     美しさに関するすべてにおいて、
     左右に出る者は居りません』

「あ、ありがとうございます! えへへ……それで、カラテェーくんやリカルルさんは?」
 しかし、どういうこった?
 一式装備いっしきそうび出来でき姫さんリカルルのお墨付つみつきで、上等じょうとうらしいけど。
 ソレを着たからといって、ここまで変わるかぁ……まず顔色かおいろがちがいすぎる。

「そうわね。たしかにうぬぬぅ……おかみさぁんにぃ、メイクなおしてもらったりしたぁー?」
「いいえ、かみをかるく巻いてもらったくらいで……」
 たしかに、うごくたびにビョンビョンしてるな。

「――〝のろい〟が消えたことによる、純粋じゅんすい体力回復たいりょくかいふくによる効果こうかおもわれます――」
 おいカラテェーくん、ご指名しめいだ。どっかそのへんにいる、ニゲルとひめさんもつれてきてくれ。

「カラテェーくんたちは、つくり過ぎちまったいもならべてくれてる」
「そうなの? この料理りょうりは――どうしたの?」
「こいつ、うちの女神かみさん小腹こばらいたって言うもんだから、つくはじめたら、なーんか、止まらなくなっちまってな」

「じゃあ、わたしもお手伝てつだいを――あ、けど、この装備ふくよごしたりするわけには、いかないわね」

 ズゴォン――――ゴガガドン!
 いきなりなべまえかべあないた。

「やあ、とっても良く似合にあってるよ」
 そういって、あなの向こうからかおを出したのは――裏烏天狗ジンライ

「カラテェーくん!」
 なべなべに駆けよる見目麗みめうるわしき、フォなんとかさん。

「やあ、見違みちがえたね。けどそれは、ふくのせいだけじゃないよ。のろいから解放かいほうされて、おねえさん本来ほんらい姿すがたにもどっただけだよ?」
 生意気なまいきそうな少年しょうねんこえカラテェーぼくこえ頭巾越ずきんごしだと、こんなふうに聞こえるのか。
 これなら、シガミーおれ見破みやぶひとは居ないだろう。

 いまシガミーはココに居るし、そのかたをガシリとつかんだ鬼の娘オルコトリアが、おに形相ぎょうそうで見つめてなんていない。
「やっとみつけたぁ~♪」
 気のせい、気のせい。

「ぎゃっ――――!?」
 カラテェーのよこからかおを出した子供レイダが、かおを見るなり逃げていった。
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