226 / 738
2:カブキーフェスタへの道
226:ギルド住まいの聖女(研修中)、一式防具完成
しおりを挟む
「(呼・ん・だぁ?)」
呼んでねぇけど、良い所に!
五百乃大角、いまどこにいる!?
「(こっちこっちぃー、窓の外ぉー♪)」
じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――居た!
こっちを見つめるリオレイニアの頭の上。
ちょこんと、鎮座ましまして居られやがる。
§
「ちょっと、ニゲル! アナタのせいでレーニアに、怒られたじゃないのっ!」
「なにいってるんだよ、かってに、あ、あられもない格好で、僕の剣を奪おうとするのが悪いんじゃないか!」
まあ、あっちはリオレイニアに任せとくとして。
呪いの装備は――晴れて、四枚の布になった。
「(五百乃大角、迅雷は?)」
直したテーブルの上。ふんぞり返る美の女神にたずねる。
「(観客席でレイダと一緒に、寝こけてるわよ♪)」
うーん、下手なことしていろいろ面倒なことになるくらいなら、迅雷はそのままレイダと居てもらうか。
夜中に子供ひとりにもしておけないしな。
「じゃあ、神さんを見こんで頼みがある」
「じゃあってなによ、じゃあって! まぁ、すべてのイベントの神采配は滞りなく完了したのでぇー、超暇だけどっ♪」
テーブルの上を見わたす、御神体。
その足の下一面に、作りかけの服が敷かれている。
折角、ニゲルが用意してくれた素材だ。
袖とか裾とかスッパリ切られたローブを、上手いこと使って――
「〝無敵で最強の装備〟を、仕立てないといけないんだけどさ――手伝ってくれない?」
「なんでまた、そんな面白いことになってんの?」
「本戦出場者の装備がボロ……使いこまれてたから、直してあげようかと思って――」
「ふうん、その黄緑色のケープも使って良いの? けっこう良い生地よそれぇ――」
「黄緑……ほんとだ、いつの間にか一号みたいな色合いになってた」
広げてみると、袖のあたりが解れて――まるで短い陣羽織だ。
あの呪いの神髄が抜けたから、縫い目がほどけちまったのかもしれない。
「色が変わる? ……ぺらぺらり、あった。かなり魔術特性に優れた素材みたいよん。どこで手に入れたの?」
「いやまあ、ニゲル……さんが――身を挺して?」
「そうなの? 意味わかんないけど――じゃあ、すこし気合い入れてお手伝いしてあげよーっかしららぁねぇ♪」
浮かぶ玉にのって、テーブル上空を跳びまわること、数分。
「うーん。このネクタイとベストの組み合わせは、悪くないんだけど」
やっぱり、しゃらあしゃらしたのは、奥が深くて美の女神さまでも手に余るらしいな。
〝美の女神とは〟――言ってやるな迅雷の空耳。
「ふーん。じゃあ、いいもんね。あたくしさまには強い味方がいるもんねーだ!」
ヴッ――すたり♪
となりの説教部屋へ飛んでく、美の女神(笑)。
§
「それでしたら――こちら、お借りしても?」
黒板を持ち、手を差しだすリオ。
テーブルの端に置いた、黒筆を寄こせと言ってるのだろう。
「はい、どうぞ」
手渡してやると、彼女は黒板の上に白線をササササッと引いていく。
ぼくでさえ迅雷がいても最初は、かいもく使い方がわからなかったのに。
恐ろしいな。あのじゃじゃ馬を御する手綱、その手腕は伊達ではないのだろう。
「――こんな感じで、いかがでしょうか?」
それは、門外漢のぼくがみても、しゃらあしゃらの極致とわかる。
さすがは、女の中の女だな。
それを図面がわりにして、黒鋏で切って――必要な所は結び目ひとつ残さずに、縫いあわせ――ジンライ鋼を黒手袋で捏ねて、留め具や飾りを作っていく。
厳つい防具の修復の、何倍もの手間と時間が掛かるな。
「ふぅ、ひぃ――!」
迅雷が居ないのにも苦労したけど、ソレを差し引いても――しゃらあしゃらしたのは――実に手ごわかった。
白い甚平の留め具を、銀色のジンライ鋼でつくり、首布には細鎖と白線をあしらう。
袖のない法被の色を灰色にして、腰巻の色とそろえる。
腰巻の裏地に、迅雷式隠れ蓑を縫いあわせ、ココにも白線をあしらった。
隠れ蓑は、急所を守るだけじゃなくて――ふんわぁり……させるタメだ。
理由はわからん。わからない所は、図面のまま進める。
「あら、非常に良い手際ですね。それに非の打ち所のない仕上がり♪」
出来るそばから、服を手に取って確かめるリオ。
「採寸はちゃんと、してあるのですよね?」
伝説の職人に任せておけば、その辺は問題ない。
「はい、親方ぁ!」
最後に、腰帯に凝った作りの鋲を打ちこんで――完成!
「親方ではありません――リオさんとお呼びください♪」
仮面の下から覗く口元が、ほころんでいる。
ふう、なんとか仮面にかなったみたいで良かった。
これなら、依頼主の姫さんにも着る当人にも、気に入ってもらえそう――
「ですが――鑑定」
親方は〝魅了の神眼〟スキルに含まれた、〝中級鑑定〟が使えたはずだ。
チーン♪
上級鑑定を持つ、ぼくのそばで誰かが鑑定すると、こんな鐘の音が鳴る。
ついでなので、ぼくも上級鑑定。
チーン♪
『令嬢の服
防御力12。高貴な貴女のための上下服。
襟元やボタンの猫の意匠が愛らしい。
追加効果/なし』
普通の服じゃなくなってる。
『貴婦人の靴
防御力5。細身の革靴。
追加効果/なし』
こっちもだ。
『社交界のベルト【夜】
防御力3。夜会に最適な高級ベルト。
追加効果/背筋が伸びる』
効果の意味は、わからないけど、【銘】まで入ってる。
「これは、すこし――かなり、いただけませんねぇ」
あれ?
なかなかよくできたと思ったのに、なんか不評だった。
「「あれ? コレじゃダメだった?」」
五百乃大角と、声がかさなる。
「いえ、そういうことではなくてですね――あっ、コラッお嬢様!」
お説教は、まだ終わっておりませんよっ――――!
ドアの向こうから、こっそりとコチラを盗み見ていたリカルルさまが逃げていく。
追うリオレイニア。
「行っちゃったわねぇー、どうするの? コレじゃマズいみたいよ?」
うーんと、あと出来ることっていったら、裏地にビッシリと筆書きして強化するくらいしか思いつかない。
机の上の黒筆を取り――さらりっ。
普通じゃなくなった装備に一筆――【朝】、【昼】、【夜】って書いてみる。
意味はない。
ただ、腰紐に【夜】って銘が付いてたから、それにならっただけだ。
ルコルなら狐。ニャミカなら猫。
そういうのが、あの女の人に有れば良かったけど無かったから。
まさか、女人って書くわけにもいかないし。
「へぇー、なんだかコスプレ衣装みたいな、立派なのが出来たねぇー♪」
開放されたのか、ニゲルが寄ってきた。
「けど、これでもリオレ……リオさんには渋い顔をされたから――」
「もう一つ、パンチが欲しいわねー♪」
衣装の上や中を転がりまくってた、御神体が顔をだす。
「あ、イオノファラー所長、こんちわッス♪」
「はい、ちわッス♪」
イェーイ♪
陽気に手を振りあうほどに、仲良くなっている。
もともと近い時代の生まれらしいから、話も合うのかもしれない。
気の知れない世界で、気の置けない友達ができるのは良いことだ。
ついでにこのまま〝女神の料理番〟も分担してくれたら、最高なんだけど……。
「そっか、オーダーは〝無敵で最強〟なんだっけか。うーん……じゃあこのカワイイ色のをマントみたくして――シリーズ防具にでもしたら、強化されたりしない?」
あー、短い陣羽織な。
切った縁を太糸でしっかり縫い合わせて、簡単な括り紐をつけたけど――コレには文字を入れてなかった。
「シリーズ防具……一式装備のぉ、作り方はねぇー……ぺらぺら、あれ? 載ってない?」
「それ、何を見てるんだい?」
なにかを必死にめくる仕草を見た青年が、興味を持つ。
「あれは、虎の巻らしいよ」
告げ口をしてやる。
「えぇー、ずるくなぁいー?」
だろう?
もう彼は、日の本軍団の一員だからな。
「なによ! ニゲルはノラクエ8とか38とか67とかぉー、ヒント無しでクリアできるって言うのっ!?」
「えぇー、なにそのナンバリング!? まだ11が出たばっかりだよ?」
「えっ!? あ、そっか! その辺のお話ぃ――全然してなかったっけ?」
わからん。
なんか話が弾んでるならソレはソレで。
じゃあ、三つの【朝】【昼】【番】装備を、この陣羽織でまとめてみる。
――さらり♪
【日夜】
ケープの背中。首うしろに、そんな言葉を入れる。
ポォウ――♪
間違いなく強化はされたけど、そのあとは何もおこらない。
出来た服を重ねて――〝一式防具になれ〟と念じてみる。
――――ぽこん♪
スキルによる画面が出た。
『一式装備へのランクアップをしますか?
はい/いいえ』
何か出たから、『はい』を指でおす。
――――ぽこん♪
『SPを1消費しますが、続行しますか?
はい/いいえ』
SPを使うのか。
「(おい五百乃大角、SPを使うみたいなんだけど?)」
コチラを見上げた丸頭が、かすかに傾く。
「(1ポイントだけ、だけど)」
丸頭が、こくりと頷いた。
押してみる――ポンッ♪
ピッカァァァッ!
目映い輝き。
テッテレーッ♪
騒々しい音。
――――ぽこん♪
『シリーズ防具が完成しました』
「できた……みたいだよ」
さーて、どうなったかなー♪
――――ぽこん♪
『日夜シリーズ一式【終日】
全防御力日中336~夜半784(+229~+677)。
全魔法攻撃力日中342~夜半81(+143~-118)。
時間帯によって追加効果が変わる、
摩訶不思議な魔術師向け防具一式。
追加効果/日中INT+30/AGL+30
条件効果/日没中にHPが一割を切ると女神の加護により、
STR+30/ATK+30/VIT+30
装備条件/INT25。成人女性または、成人前の子供』
上級鑑定だと、こまかい数字まで出るから、こうして長くなりがちだけど――
「ん? んぅー?」
何だろこの、ややこしいの。
当然、ぼくの首も傾く。
その傾いた首の、目の前。
ニゲルが黒手袋で鑑定結果をひっつかんで、黒板に押し当てる。
画面をみたリオレイニアが、なんでか床に崩れ落ちた。
ぼくは、女神やニゲルと顔を見合わせる。
「ひょっとして……ひそひそ……コレでも足りなかった?」
「きっと……ひそひそ……そうだよ」
「そうわよ……ひそひそ……どうするぅ?」
ーーー
陣羽織/甲冑や具足の上から着る羽織。煌びやかな装飾あり。
日夜/ひるとよる。四六時中。
呼んでねぇけど、良い所に!
五百乃大角、いまどこにいる!?
「(こっちこっちぃー、窓の外ぉー♪)」
じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――居た!
こっちを見つめるリオレイニアの頭の上。
ちょこんと、鎮座ましまして居られやがる。
§
「ちょっと、ニゲル! アナタのせいでレーニアに、怒られたじゃないのっ!」
「なにいってるんだよ、かってに、あ、あられもない格好で、僕の剣を奪おうとするのが悪いんじゃないか!」
まあ、あっちはリオレイニアに任せとくとして。
呪いの装備は――晴れて、四枚の布になった。
「(五百乃大角、迅雷は?)」
直したテーブルの上。ふんぞり返る美の女神にたずねる。
「(観客席でレイダと一緒に、寝こけてるわよ♪)」
うーん、下手なことしていろいろ面倒なことになるくらいなら、迅雷はそのままレイダと居てもらうか。
夜中に子供ひとりにもしておけないしな。
「じゃあ、神さんを見こんで頼みがある」
「じゃあってなによ、じゃあって! まぁ、すべてのイベントの神采配は滞りなく完了したのでぇー、超暇だけどっ♪」
テーブルの上を見わたす、御神体。
その足の下一面に、作りかけの服が敷かれている。
折角、ニゲルが用意してくれた素材だ。
袖とか裾とかスッパリ切られたローブを、上手いこと使って――
「〝無敵で最強の装備〟を、仕立てないといけないんだけどさ――手伝ってくれない?」
「なんでまた、そんな面白いことになってんの?」
「本戦出場者の装備がボロ……使いこまれてたから、直してあげようかと思って――」
「ふうん、その黄緑色のケープも使って良いの? けっこう良い生地よそれぇ――」
「黄緑……ほんとだ、いつの間にか一号みたいな色合いになってた」
広げてみると、袖のあたりが解れて――まるで短い陣羽織だ。
あの呪いの神髄が抜けたから、縫い目がほどけちまったのかもしれない。
「色が変わる? ……ぺらぺらり、あった。かなり魔術特性に優れた素材みたいよん。どこで手に入れたの?」
「いやまあ、ニゲル……さんが――身を挺して?」
「そうなの? 意味わかんないけど――じゃあ、すこし気合い入れてお手伝いしてあげよーっかしららぁねぇ♪」
浮かぶ玉にのって、テーブル上空を跳びまわること、数分。
「うーん。このネクタイとベストの組み合わせは、悪くないんだけど」
やっぱり、しゃらあしゃらしたのは、奥が深くて美の女神さまでも手に余るらしいな。
〝美の女神とは〟――言ってやるな迅雷の空耳。
「ふーん。じゃあ、いいもんね。あたくしさまには強い味方がいるもんねーだ!」
ヴッ――すたり♪
となりの説教部屋へ飛んでく、美の女神(笑)。
§
「それでしたら――こちら、お借りしても?」
黒板を持ち、手を差しだすリオ。
テーブルの端に置いた、黒筆を寄こせと言ってるのだろう。
「はい、どうぞ」
手渡してやると、彼女は黒板の上に白線をササササッと引いていく。
ぼくでさえ迅雷がいても最初は、かいもく使い方がわからなかったのに。
恐ろしいな。あのじゃじゃ馬を御する手綱、その手腕は伊達ではないのだろう。
「――こんな感じで、いかがでしょうか?」
それは、門外漢のぼくがみても、しゃらあしゃらの極致とわかる。
さすがは、女の中の女だな。
それを図面がわりにして、黒鋏で切って――必要な所は結び目ひとつ残さずに、縫いあわせ――ジンライ鋼を黒手袋で捏ねて、留め具や飾りを作っていく。
厳つい防具の修復の、何倍もの手間と時間が掛かるな。
「ふぅ、ひぃ――!」
迅雷が居ないのにも苦労したけど、ソレを差し引いても――しゃらあしゃらしたのは――実に手ごわかった。
白い甚平の留め具を、銀色のジンライ鋼でつくり、首布には細鎖と白線をあしらう。
袖のない法被の色を灰色にして、腰巻の色とそろえる。
腰巻の裏地に、迅雷式隠れ蓑を縫いあわせ、ココにも白線をあしらった。
隠れ蓑は、急所を守るだけじゃなくて――ふんわぁり……させるタメだ。
理由はわからん。わからない所は、図面のまま進める。
「あら、非常に良い手際ですね。それに非の打ち所のない仕上がり♪」
出来るそばから、服を手に取って確かめるリオ。
「採寸はちゃんと、してあるのですよね?」
伝説の職人に任せておけば、その辺は問題ない。
「はい、親方ぁ!」
最後に、腰帯に凝った作りの鋲を打ちこんで――完成!
「親方ではありません――リオさんとお呼びください♪」
仮面の下から覗く口元が、ほころんでいる。
ふう、なんとか仮面にかなったみたいで良かった。
これなら、依頼主の姫さんにも着る当人にも、気に入ってもらえそう――
「ですが――鑑定」
親方は〝魅了の神眼〟スキルに含まれた、〝中級鑑定〟が使えたはずだ。
チーン♪
上級鑑定を持つ、ぼくのそばで誰かが鑑定すると、こんな鐘の音が鳴る。
ついでなので、ぼくも上級鑑定。
チーン♪
『令嬢の服
防御力12。高貴な貴女のための上下服。
襟元やボタンの猫の意匠が愛らしい。
追加効果/なし』
普通の服じゃなくなってる。
『貴婦人の靴
防御力5。細身の革靴。
追加効果/なし』
こっちもだ。
『社交界のベルト【夜】
防御力3。夜会に最適な高級ベルト。
追加効果/背筋が伸びる』
効果の意味は、わからないけど、【銘】まで入ってる。
「これは、すこし――かなり、いただけませんねぇ」
あれ?
なかなかよくできたと思ったのに、なんか不評だった。
「「あれ? コレじゃダメだった?」」
五百乃大角と、声がかさなる。
「いえ、そういうことではなくてですね――あっ、コラッお嬢様!」
お説教は、まだ終わっておりませんよっ――――!
ドアの向こうから、こっそりとコチラを盗み見ていたリカルルさまが逃げていく。
追うリオレイニア。
「行っちゃったわねぇー、どうするの? コレじゃマズいみたいよ?」
うーんと、あと出来ることっていったら、裏地にビッシリと筆書きして強化するくらいしか思いつかない。
机の上の黒筆を取り――さらりっ。
普通じゃなくなった装備に一筆――【朝】、【昼】、【夜】って書いてみる。
意味はない。
ただ、腰紐に【夜】って銘が付いてたから、それにならっただけだ。
ルコルなら狐。ニャミカなら猫。
そういうのが、あの女の人に有れば良かったけど無かったから。
まさか、女人って書くわけにもいかないし。
「へぇー、なんだかコスプレ衣装みたいな、立派なのが出来たねぇー♪」
開放されたのか、ニゲルが寄ってきた。
「けど、これでもリオレ……リオさんには渋い顔をされたから――」
「もう一つ、パンチが欲しいわねー♪」
衣装の上や中を転がりまくってた、御神体が顔をだす。
「あ、イオノファラー所長、こんちわッス♪」
「はい、ちわッス♪」
イェーイ♪
陽気に手を振りあうほどに、仲良くなっている。
もともと近い時代の生まれらしいから、話も合うのかもしれない。
気の知れない世界で、気の置けない友達ができるのは良いことだ。
ついでにこのまま〝女神の料理番〟も分担してくれたら、最高なんだけど……。
「そっか、オーダーは〝無敵で最強〟なんだっけか。うーん……じゃあこのカワイイ色のをマントみたくして――シリーズ防具にでもしたら、強化されたりしない?」
あー、短い陣羽織な。
切った縁を太糸でしっかり縫い合わせて、簡単な括り紐をつけたけど――コレには文字を入れてなかった。
「シリーズ防具……一式装備のぉ、作り方はねぇー……ぺらぺら、あれ? 載ってない?」
「それ、何を見てるんだい?」
なにかを必死にめくる仕草を見た青年が、興味を持つ。
「あれは、虎の巻らしいよ」
告げ口をしてやる。
「えぇー、ずるくなぁいー?」
だろう?
もう彼は、日の本軍団の一員だからな。
「なによ! ニゲルはノラクエ8とか38とか67とかぉー、ヒント無しでクリアできるって言うのっ!?」
「えぇー、なにそのナンバリング!? まだ11が出たばっかりだよ?」
「えっ!? あ、そっか! その辺のお話ぃ――全然してなかったっけ?」
わからん。
なんか話が弾んでるならソレはソレで。
じゃあ、三つの【朝】【昼】【番】装備を、この陣羽織でまとめてみる。
――さらり♪
【日夜】
ケープの背中。首うしろに、そんな言葉を入れる。
ポォウ――♪
間違いなく強化はされたけど、そのあとは何もおこらない。
出来た服を重ねて――〝一式防具になれ〟と念じてみる。
――――ぽこん♪
スキルによる画面が出た。
『一式装備へのランクアップをしますか?
はい/いいえ』
何か出たから、『はい』を指でおす。
――――ぽこん♪
『SPを1消費しますが、続行しますか?
はい/いいえ』
SPを使うのか。
「(おい五百乃大角、SPを使うみたいなんだけど?)」
コチラを見上げた丸頭が、かすかに傾く。
「(1ポイントだけ、だけど)」
丸頭が、こくりと頷いた。
押してみる――ポンッ♪
ピッカァァァッ!
目映い輝き。
テッテレーッ♪
騒々しい音。
――――ぽこん♪
『シリーズ防具が完成しました』
「できた……みたいだよ」
さーて、どうなったかなー♪
――――ぽこん♪
『日夜シリーズ一式【終日】
全防御力日中336~夜半784(+229~+677)。
全魔法攻撃力日中342~夜半81(+143~-118)。
時間帯によって追加効果が変わる、
摩訶不思議な魔術師向け防具一式。
追加効果/日中INT+30/AGL+30
条件効果/日没中にHPが一割を切ると女神の加護により、
STR+30/ATK+30/VIT+30
装備条件/INT25。成人女性または、成人前の子供』
上級鑑定だと、こまかい数字まで出るから、こうして長くなりがちだけど――
「ん? んぅー?」
何だろこの、ややこしいの。
当然、ぼくの首も傾く。
その傾いた首の、目の前。
ニゲルが黒手袋で鑑定結果をひっつかんで、黒板に押し当てる。
画面をみたリオレイニアが、なんでか床に崩れ落ちた。
ぼくは、女神やニゲルと顔を見合わせる。
「ひょっとして……ひそひそ……コレでも足りなかった?」
「きっと……ひそひそ……そうだよ」
「そうわよ……ひそひそ……どうするぅ?」
ーーー
陣羽織/甲冑や具足の上から着る羽織。煌びやかな装飾あり。
日夜/ひるとよる。四六時中。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
付喪神、子どもを拾う。
真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和
3/13 書籍1巻刊行しました!
8/18 書籍2巻刊行しました!
【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます!
おいしいは、嬉しい。
おいしいは、温かい。
おいしいは、いとおしい。
料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。
少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。
剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。
人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。
あやかしに「おいしい」を教わる人間。
これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。
※この作品はエブリスタにも掲載しております。
嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない
AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。
かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。
俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。
*書籍化に際してタイトルを変更いたしました!
【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~
泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。
女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。
そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。
冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。
・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。
・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる