上 下
223 / 739
2:カブキーフェスタへの道

223:ギルド住まいの聖女(研修中)、黒板と黒手袋と呪いのアイテム

しおりを挟む
うつす? そんなのゆびでつまんで張りつけたら、できるんじゃない?」
 ニゲル青年せいねんが、のろいのアイテムをおおきくよけて、まわりこんで来た。

ゆびでつまむ?」
 なに言ってんだろ。
 そもそも〝スキルでみえる画面がめん〟と、〝女神像めがみぞうとか黒板くろいたがみせる画面がめん〟はべつものだ。
 そのふたつを・・・・つなぐには・・・迅雷ジンライ五百乃大角いおのはらが要る。

「ちょっと借りるよ?」
 そういって、ニゲルが手にしたのは――なんでか、黒筆くろふで
 そして「鑑定結果かんていけっかは――このへん?」と、なにもない空中ちゅうふでで指ししめした。

「コッチだけど――?」
 と目のまえのあたりをゆびさして、ぼくにしか見えない鑑定結果かんていけっか場所ばしょおしえてやる。

 すると青年ニゲルは、ちょっと右上みぎうえあたりの空中ちゅう黒板こくばんを、交互こうごに突き刺しはじめた。

 なん真似まねだろう?
 たしかにこの黒板くろいたは、ニゲルが五百乃大角いおのはらにあずけた道具やつに似てる。
 ニゲルがもってた〝ちいさい黒板〟をもとに、何個なんこかの道具どうぐがつくられた。
 それはこうしてお祭りフェスタ二号店にごうてん運営うんえいなんかに、早速使さっそくつかわれてる。
 そもそもニゲルは、五百乃大角いおのはらがいた未来の・・・もとに、ちかい生まれらしい。
 たぶん、ぼくよりよっぽど、神々かみがみ道具どうぐ上手じょうず使つかえても不思議ふしぎじゃない。

「あれー? つかめない?」
 ひょいひょいひょひょい――?
 奇行きこうにはしる青年せいねんを、遠巻とおまきにながめる予選通過者よせんつうかしゃたち。

「アプリがわ対応たいおうしてないと、つかめないのかなー?」
 ひょいひょいひょひょい――?
 うーん。居たたまれなくなってきた。
 いつも迅雷ジンライ五百乃大角いおのはらに言われるままに、神々かみがみ道具どうぐを持ちだしてたけど。
 シガミーぼくも、こんなふうにみられてたのかもしれない。

 鑑定結果かんていけっかも見てもらいたいし、なんとかたすぶねを――
 黒筆二本くろふでにほんで〝はし〟みたく、つかめないかな。
 黒筆これは、黒板くろいたふちに差しこんであったヤツで、ぼくの収納魔法板しゅうのうまほういたにはこれまで使つかった道具どうぐなんかは、入れっぱなしだから――

 ヴッ――ぱさり。
 でた――けど黒筆くろふでじゃなくて、くろ手袋てぶくろみたいなのがでた。
 まちがえた。こりゃ『再生品なんとか』って判子はんを押すヤツだ。

「あれ? データグラブじゃん。それならつかめるかも……借りても良いかい?」
「コレは、〝再生品さいせいひん〟って判子はんを押すヤツだけど?」
 青年せいねん手渡てわたすと、手につけてキュッとこぶしにぎった。

判子はんを押す? それって、テェーングさまがわたくし仮面かめんに押してくれたのと、おなじものかしらっ――!?」
 ぎゅっ♡
 しなやかな細指ほそゆびが、青年せいねんの手をつかんだ。

「うっわっ――――!?」
 姫さんりかるるにぎられた手を、必死ひっしに振りほど――
 ――こうとしたけど「こらっ、ニゲル・・・んじゃ有りませんわよ。わたくしにも、お見せなさいな!」
 と力一杯ちからいっぱい、引きよせられた。

「ヒーノモトーこく神々かみがみにつらなる神秘しんぴ技術ぎじゅつ独占どくせんは、ガムラン町代表ちょうだいひょうとして見過みすごせませんわっ♪」
 それは建前たてまえで、本音ほんねかおに書いてある。
 「面白おもしろそうなものはすべて、わたくしにもお見せなさい」と。

 ニゲルを胸元むなもとに引きよせるリカルル。
 見つめあう二人ふたり
 ここにリオレイニアが居なくて良かった。

 姫さんリカルルの目は、手袋てぶくろを見つめ――。
 青年せいねんの目は、ひめさんの手、胸元むなもとかおをいつまでも――行ったり来たりしてる。

「それでニゲル。その手袋てぶくろで、なにしようってんだい?」
 女将おかみさんまで来た。
 木さじでのろいのローブを、テーブルの端に追いやってる。
 背中せなかには顔色かおいろがいくらか良くなった気がしないでもない、ローブの持ちぬしがひっついてる。
 その様子ようすから、彼女かのじょ食堂しょくどうの常連客じょうれんきゃくだとわかる。

「こっ、手袋コレで、カラテェーくんが見た鑑定結果かんていけっかを、みんなで見られるようにするだけだよっ――はなぁーして、はなしてっぇ!」
「なさけないねぇー。リカルルひめはなしておあげ」

 開放かいほうされる青年せいねん
 ひとってのはここまで〝あかく〟なれるんだな。

「ふぅー、じゃ、じゃあやってみるけど――」
 ニゲルが、ぼくの目のまえのあたりを、つまみ上げ――
 黒板くろいたに押し当てる。
 すると、パッっと画面がめんが切りかわり――

『真蒼のローブ【吸血の呪い】
 防御力60。魔術師向けの一体型防具。
 追加効果/DEF+着用時間×0.001%
 条件効果/【火炎縛】ローブが吸った血を使い、
      無差別に火炎系魔法を放つ』

 黒板くろいた上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっかが、うつしだされた。

「お、でたでた。すごいね、ニゲルさん♪」
 これで、みんなにも見てもらえる。

「うっわー、便利べんりね♪ けどこれ……洒落しゃれになりませんわよ?」
「むしろ今日きょうこのとき暴発ぼうはつしてくれて――アンタ、いろんな意味いみ命拾いのちびろいしたねっ♪」

「まさか、ローブのいろって!? いままでMPエムピーじゃなくて……血を吸われてた・・・・・・・のっ!?」
吸血きゅうけつのろい……この世界せかいには、吸血鬼きゅうけつきなんて……居るのかい?」
 あおざめる女性じょせいと、身をすくめる青年せいねん

大丈夫だいじょうぶですわよ、真祖しんそと呼ばれてたのは、魔王まおう一緒いっしょに切りすてたから――ふふん♪」
「けどそのなりじゃ、いくらなんでも心許こころもとないねぇ――アタシが女学校じょがっこうのころ使つかっていたローブを、あげようかい?」
 ぶるるるんと絢爛豪華けんさんごうかなカラダを振りまわす、女将おかみさん。
 いいええええ、遠慮えんりょしておきますと突っぱねる、女性じょせい
 リオレイニアみたいにうす胸元むなもとを、かかえた魔法杖つえかくしている。

「そうかい? 魔法攻撃力まほうこうげきりょく命中率めいちゅうりつ補正ほせいがつく、結構けっこうなレアものなんだけどねぇ」
 ぶるるるるるるん――いーえ、遠慮えんりょしておきます。
 たしかに体型たいけいがちがいすぎて――部分的に・・・・ぶかぶかで、着られそうもない気がする。

 上級鑑定じょうきゅうかんてい(しめしめフヒヒと品定しなさだめするようなわるかお)で、女性じょせいを見た。

 ――――ぽこん♪
『普通の服
 ふつうの服。特筆すべき所はない。』
 ――――ぽこん♪
『普通の靴【ぼろぼろ】
 ふつうの革靴。そろそろ壊れる。』
 ――――ぽこん♪
『普通のベルト【ぼろぼろ】
 ふつうの革ベルト。そろそろちぎれる。』

 こりゃ、ひどいな。

「それ、いま装備そうびしてるオンボロも、一式いっしきぜんぶ、そろそろこわれそうだよ?」
 ぼっと、かおあかくして、身をかがめる女性じょせい

「こら、カラテェー! 女性レディーに向かって、なんてこと言うの!」
 ぼかり――!
った――!」
 姫さんリカルルに、本気ほんきなぐられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~

結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は 気が付くと真っ白い空間にいた 自称神という男性によると 部下によるミスが原因だった 元の世界に戻れないので 異世界に行って生きる事を決めました! 異世界に行って、自由気ままに、生きていきます ~☆~☆~☆~☆~☆ 誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります! また、感想を頂けると大喜びします 気が向いたら書き込んでやって下さい ~☆~☆~☆~☆~☆ カクヨム・小説家になろうでも公開しています もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~> もし、よろしければ読んであげて下さい

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜

田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。 謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった! 異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?  地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。 冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……

暴虎馮河伝

知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。    とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。 ————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

辺境領の底辺領主は知識チートでのんびり開拓します~前世の【全知データベース】で、あらゆる危機を回避して世界を掌握する~

昼から山猫
ファンタジー
異世界に転生したリューイは、前世で培った圧倒的な知識を手にしていた。 辺境の小さな領地を相続した彼は、王都の学士たちも驚く画期的な技術を次々と編み出す。 農業を革命し、魔物への対処法を確立し、そして人々の生活を豊かにするため、彼は動く。 だがその一方、強欲な諸侯や闇に潜む魔族が、リューイの繁栄を脅かそうと企む。 彼は仲間たちと協力しながら、領地を守り、さらには国家の危機にも立ち向かうことに。 ところが、次々に襲い来る困難を解決するたびに、リューイはさらに大きな注目を集めてしまう。 望んでいたのは「のんびりしたスローライフ」のはずが、彼の活躍は留まることを知らない。 リューイは果たして、すべての敵意を退けて平穏を手にできるのか。

処理中です...