上 下
207 / 738
2:カブキーフェスタへの道

207:神域探訪、乳牛とニゲルの災難

しおりを挟む
「じゃあ、いまあつめたぶんで、それなりのなべになるんだな?」
「はい、強化服一号シシガニャン発見次第はっけんしだい、イオノファラーぞうまでもどりましょ

 ふぉん♪
 『▼――ピピピッ♪』 

 なんかきたぞ!?
一号いちごう
 しげみの向こうを見る。
 なんかすごい土煙つちけむりが。

 あのいきおいは、まずい。
「タター、つかまれ。ココに居るとあぶない」
 貸していた錫杖しゃくじょう格納ししまって――すぽん♪

 しがみつく華奢きゃしゃからだ……身長的しんちょうてきしりのあたりをガシリとつかんだ。
「にゃひゃぁぁぁっ――シシガミーちゃん、ちょっと待っ――――!?」
 トトトォォォッォン――――!

 大木たいぼく天辺てっぺんへ、降り立った。
 ジタバタするタターに「足場あしばがないからあばれると落ちるよ」とささやく。

 スゴイかおにらまれたけど、一号おにぎりのようすを確認かくにんしないと――したを見た。

 ブゥウモンォォォッォヲ――――♪
 どかどか、ぱかぱか、ぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅ――――むん♪
 あばうしに乗ってご登場とうじょうの、おにぎり一号いちごうさん。

 かなりでかいつの片方かたほうが、ポッキリと折れている。

大方おオかた出会でアいがシらに頭突ズつきでモ喰らっテ、ヤりかエしたとおもわれマ

 ヴヴッヴッ――――ルガばちのうごき。
 目のまえにジンライ鋼製こうせい格子こうしがあらわれ――――ひゅぅーーーーーんと落ちていく。

 どずごーん!
 モォォォォォォォォォォ――!
「よくやった、また食材しょくざいが増えた!」
 うし……タターよりも背のたかい、おおきなうしつかまえた。
 ガッシャァァァァァァンッ!
 閉じこめられたうしが、おり激突げきとつする。

 ぽきゅむん♪
 ガチャガチャガチャ!
 一緒いっしょつかまった一号おにぎりが、てつぼうをつかんでガタガタ揺らしてる。
「にゃぁみゃぁーごぉぉう?」
 オマエはおり隙間すきまから、余裕よゆうで抜けだせるだろうが。

 トォン――
「きゃぁぁぁっ――!?」
 ――すたり。
 タターを降ろし、おり近寄ちかよる。

「ンモーゥ♪」
 すぐに脱出だっしゅつをあきらめ、大人おとなしくしくなるうし
「こうしてみると、なんか愛嬌あいきょうがあるなー」
 ヴ――じゃりぃん♪
 錫杖しゃくじょうを出して、かるくかたけてあしで踏む。
 棒一本ぼういっぽんでも、十数年じゅうすうねん修行ぎょうを積めば、足場あしば出来できる。

 おりそとから、うしあたまを撫でてやる。
 しきりにふくのまたのあたりを直してたタターも、ソッと手をのばす。
「かわいい……♡」
 うしの目はとても綺麗きれいだった。
 おれ……ボク……あたし?
 ――やタターの姿すがたが、ちゃんとうつりこんでいる。

 ガムラン周辺しゅうへん変梃へんてこなつくりの動物どうぶつ魔物達まものたちとはちがって、見ているだけでもこころあらわれるようだ。
 なんせ、よーく見ると、波打なみう黒目くろめいろは濃いあか)にうずまく白目しろめいろは濃いあお)みたいなのばかりだからな。

「じゃあ、無事合流ぶじごうりゅうしたし、もどるか」
 おれは小太刀こだちを取りだした。
「ちょっとまって、シガミーちゃん! なにを……するの?」
 そで発止はっしとつかまれた。
「なにって、絞める・・・んだよ。そうしなきゃ収納魔法しゅうのうまほうはいらねぇし――」

 涙目なみだめになったタターが、うしを背にして立ちふさがる。
 おれたちの真似まねをしてるのか、一号おにぎりが牛の頭を撫でる。
 一号おにぎり、おまえ……足伸あしのばしたり出来できるんだな。
 まあ、金剛力も普段から使えてたか。

 さて――ちらり。少女タターと目が合う。

「だって、この子は魔物まもの全然ぜんぜんちがうでしょぉー!?」
 ふつうのうしおおきさはばいだけど)を見たのは、はじめてか。
「んーっと、ひめさんトコで侍女じじょをしてりゃ、毎日まいにちのように獲物えものくらいはこびこまれてるだろう?」

「にゃみゃにゃにゃごー♪」
 タターのとなりに立つ一号おにぎり
 あしながいままで、コッチを見下みおろしてくる。

「ああモー、モー一匹ひとり増えやがった」
 気持きもちはわかる。あの澄んだひとみを見てると、こころあらわれる気がする。
「わかったよ。どうせ今日きょう肉鍋にくなべじゃねぇしな。迅雷ジンライ、逃がしてやれ」

   §

「ふぅん、それでぇーそのゴーレム子・・・・・ちゃんがぁ――昼夜問ちゅうやとわずぅ、熱烈ねつれつなアタックおー……物理的ぶつりてき仕掛しかけけてーきたと?」
「アタックなんてなまやさしいもんじゃないんだよ――――借りてた宿屋やどや離れ・・に、もりの木のうろ。逃げこんだ廃屋はいおく地下ちかダンジョンにまで追いかけてきて、全部壊ぜんぶこわしていくんだっ!」

「それじゃぁ、ゆっくりごはんも食べられないわね――キリッ」
 真剣しんけんかおつき。
「しまいには神聖しんせい祭壇さいだんでも有るはずの、〝召喚しょうかんとう〟を倒壊とうかいさせても――一切いっさいのおとがめなしでさ!」
 青年かれにしてはめずらしく、大声おおごえを張りあげている。

「けどそれは魔王まおうたおすための、訓練くんれんだったんでしょ?」
「たしかにいのちまで取ろうとはしてこなかったけど、毎日毎日まいにちまいにちいろんな姿すがた人型ひとがたロボットみたいなのに追いかけられて――いつだかは屋台やたいで食べてたら、大通おおどおりをあるひと全員ぜんいんゴーレムに変えられてたしさっ!」
 涙目なみだめ青年ニゲル

「……それで西計ニゲルくんわぁ、どぉーしたのぉー?」
「ぐすっ、仕方しかたないから全部斬ぜんぶきったよ。そうすると翌日よくじつには、その攻撃こうげきを避けるように、改良かいりょうされたのがくるんだよ!? ――まったく忌々いまいましい!」

「ドルイドである王女おうじょさまのつくりだしたゴーレムに……連日追れんじつおわれつづけたと――――んー、それたぶんだけどぉ、きみを当てうまにした〝兵器開発へいきかいはつプロジェクト〟よねぇ?」

兵器開発へいきかいはつプロジェクト? 言われてみればそういうことか。やっぱり、なんかおかしいとおもったんだよ。持ってた魔導書まどうしょ表紙ひょうしに、ドクロマークとか書いてあったしさっ!」

「そもそも、きみがこの世界せかいに来た時点じてんで、とっくに魔王まおうは斬られちゃってるわよね?」
「つ、通信機つうしんきみたいなものがあって、最前線さいぜんせん状況じょうきょう王女おうじょが知ってたってことは、ガムランちょうに来て知ったよ――」
「つまり、〝だまされていた〟と――」
 タブレットPCになにかを書きこんでいく、イオノファラー所長しょちょう
 
「うあぁぁぁ――おもい出すとはらがたつ! に、逃げてきて本当ほんとうに良かった!」

央都おうとNGのけんは、よぉーっくわかったけど……きみ身体能力しんたいのうりょくが、〝シガミー越え〟らしいっていうのは本当ほんとう? 一体いったいどんなスキルぉー、かくし持ってるのかしらぁねぇー?」
 核心かくしんせまるイオノファラー。

かくすもなにもギルドカードを見れば、書いてあるけど?」
 革製かわせいベストのポケットから取りだした、銀色ぎんいろのカード。
 ソレをぽすっと、テーブルに置くニゲル。

 イオノファラー(映像えいぞう)の目が、見開みひらかれる!
 ニゲルの神速しんそく敏捷性アジリティけいのブーストや、コントゥル家御用達けごようたつ先制攻撃ファーストアタックとは一線を画していた・・・・・・・・

   §

「おーい、もどった……もどりましたでござりますわ♪」
 まどそとに、うし手綱たづなをひく少女シガミーがあらわれた。

もどりましたわ――さんはい♪」
 うしにまたがる給仕服メイド

「みゃやうー♪」
 ゴロゴロとのどを鳴らす強化服SDK
 おなじくうしにまたがり、タターが落ちないようにうしろから抱きついている。
 目をほそかかえた給仕服からだひたいをこすりつけるさまは――

もどりましたでごぜぇますわ……なんだか、随分ずいぶんなついたもんだなー」

 キィィ――あけられる出窓でまど
 かおを出したのは、どこかおつか気味ぎみ美の女神イオノファラー

「おかえり~……なぁにそれうし? モー、どこで見つけてきたのよ。あっ、ぎゅうスキもいいわねぇぇ――じゅるり♡」
 よだれを垂らす女神めがみからの、あつ視線しせんおびえるうし
 すとんと地面じめんに降り、あいだに立ちふさがる侍女タター一号おにぎり空飛ぶ棒ジンライ

「オ待ちくだサい、イオノファラー。コの乳牛にゅウぎゅうかラは牛乳ぎゅうニゅうが取レ、様々さマざま食品しょくヒん加工出来かコうでき
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~転生赤ちゃんクマちゃんのもふもふ溺愛スローライフ~

猫野コロ
ファンタジー
転生したもこもこは動揺を隠し、震える肉球をなめ――思わず一言呟いた。 「クマちゃん……」と。 猫のような、クマのぬいぐるみの赤ちゃんのような――とにかく愛くるしいクマちゃんと、謎の生き物クマちゃんを拾ってしまった面倒見の良い冒険者達のお話。 犬に頭をくわえられ運ばれていたクマちゃんは、かっこいい冒険者のお兄さん達に助けられ、恩返しをしたいと考えた。 冷たそうに見えるが行動は優しい、過保護な最強冒険者の青年ルークに甘やかされながら、冒険者ギルドの皆の助けになるものを作ろうと日々頑張っている。 一生懸命ではあるが、常識はあまりない。生活力は家猫くらい。 甘えっこで寂しがり屋。異世界転生だが何も覚えていないクマちゃんが、アイテム無双する日はくるのだろうか?  時々森の街で起こる不思議な事件は赤ちゃんクマちゃんが可愛い肉球で何でも解決!  最高に愛らしいクマちゃんと、癖の強い冒険者達の愛と癒しと仲良しな日常の物語。 【かんたんな説明:良い声のイケメン達と錬金系ゲームと料理と転生もふもふクマちゃんを混ぜたようなお話。クマちゃん以外は全員男性】 【物語の主成分:甘々・溺愛・愛され・日常・温泉・お料理・お菓子作り・スローライフ・ちびっこ子猫系クマちゃん・良い声・イケボ・イケメン・イケオジ・ややチート・可愛さ最強・ややコメディ・ハッピーエンド!】 《カクヨム、ノベルアップ+、なろう、ノベマ!にも掲載中です》

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝
ファンタジー
異世界定食屋 八百万 -素人料理はじめましたー   八意斗真、田舎から便利な都会に出る人が多い中、都会の生活に疲れ、田舎の定食屋をほぼただ同然で借りて生活する。     田舎の中でも端っこにある、この店、来るのは定期的に食材を注文する配達員が来ること以外人はほとんど来ない、そのはずだった。     でかい厨房で自分のご飯を作っていると、店の外に人影が?こんな田舎に人影?まさか物の怪か?と思い開けてみると、そこには人が、しかもけもみみ、コスプレじゃなく本物っぽい!?     どういう原理か知らないが、異世界の何処かの国?の端っこに俺の店は繋がっているみたいだ。     だからどうしたと、俺は引きこもり、生活をしているのだが、料理を作ると、その匂いに釣られて人が一人二人とちらほら、しょうがないから、そいつらの分も作ってやっていると、いつの間にか、料理の店と勘違いされる事に、料理人でもないので大した料理は作れないのだが・・・。     そんな主人公が時には、異世界の食材を使い、めんどくさい時はインスタント食品までが飛び交う、そんな素人料理屋、八百万、異世界人に急かされ、渋々開店!?

BL短篇集

朏猫(ミカヅキネコ)
BL
BLで全年齢の短篇集。SF(少し不思議)だったり妖(あやかし)だったり、その他いろいろ。1話完結、お好みのものをつまみ食いのようにお楽しみいただければ幸いです。他サイトからのんびり転載中。

処理中です...