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2:カブキーフェスタへの道
206:神域探訪、大根と大豆と
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「オヴォボヴォヴォゴゴボボボゲゲゲゲボヴォヴォヴォガビャビャビャ――――!!!」
まさかの、大根……マンドラゴーラの群れに遭遇した。
木の上からの奇襲に成功したが、収穫はたったの二匹。
「そっち行ったぞ!」
地面に引っ込まなかった奴らを、追ったはいいが――
こう入り組んだ森の中じゃ、捕まるもんも捕まらねぇ。
「きゃぁぁぁぁっ――みずのたマギョボギョヴォゴゴゴボボボギョリャピボルボッギャニティゲヒシビッ!!!」
魔法を放とうとしたタターの喉奥から、あの気持ちの悪い絶叫がほとばしる!
――ぱたり。
ちっ、やべぇ、白目むいちまってる。
二匹の大根から真正面に捉えられると、放たれた呪言が自分の口から飛びだしてくる。
アレは女子供にはキツイ。
おれでさえ、あまりの衝撃で胆力のすべてを奪われたほどだ。
おれは子供で女だが、生前に約四十年。
戦国の世を生抜いた、破戒僧猪蟹としての人生がある。
しかたねぇ――トン――ゴン!
大木の根を蹴りあがり――ぱしりと枝をつかんで――
勢いのついた体を――ガサガササァ――止め――!?
ゴォォォォォォォォォォォォォッ――――!!!
「(シガミーッ、100メートル直下に滝壺を発見!)」
なんだと、あぶねぇな!
なんで、わからなかった!?
「(神域の女神像は、まだ地図が白紙です。それと指向性の高い音波により、周囲の索敵が阻害されたためです)」
「おぼう゛ぉぉぉぉぇ――――!」
「ぎゃびゃぶぎゃぉぉ――――!」
「――――!」「――!」
次々と飛びこんでいく、紫色の大根。
タターが倒れてくれてなけりゃ、おれまで滝壺に飛びこんでた所だ。
「ん?」
わしっ、わささっ、しゅるるる、わささささっ、しゅりゅるりゅ――――ぶらぁぁぁん。
大根どもは手、いや葉を絡め――ぶら下がった!
なんだと、あのまま落ちてたら、おっ死んでたのは、おれだけだったのか!
「(なかなかに高度な――ひょっとしたら、追い込んでいたのはコチラではなく――――)」
まさか、滝壺に飛びこんだのは――狩りの手口だったってぇのか!?
ぶちぶちぶち、ばきっ――――ばらら、ばららっ――オボオビョ――ギュリュリャ――バヴァビャババッ――――――――!!!
重さと勢いに耐えられなかった、高級お野菜どもが――バラバラと落ちていく。
「(練達な集団行動を見せましたが……葉や地下茎の強度までには考えが至らなかったようでんす《・》)」
かなりの高さだから追いかけられないけど、もし下流に回りこめる道でもあったら、半欠けでも良いから回収しようぜ。
「(そうですね。食堂の女将への良いお土産になります……イオノファラーに発見されなければですが)」
そうだな。持ちこんだ食材を、全部くうからなアイツは。
いまは取りこんでるらしくて、『ニゲル専用恋愛相談所』とかいう枠の中に閉じこもってくれてるから、コッチのことは筒抜けにはなってねぇみてぇで助かる。
ずっと居たら居たで、めんどうだな五百乃大角わぁ。
しかし、なんで大根どもはあんなに沢山、まとめて植わってやがった?
「(おそらく神域では、イオノファラーが欲する食材が、優先して発生するようです)」
「(じゃあ、大根取り放題ってわけかっ♪)」
捕まえるのは骨だが、ガムラン町のまわりには、まるで居なくなっちまったからな。
「(また日を改めて、優先的に狩りに来ましょう)」
異論はないが、そこまで慌てなくてもいいぞ。
「(いいえ、生息分布が広範囲にわたる場合には、生態系が構築される過程で外敵に狙われやすくなります)」
わからん?
「(絶滅――大型の草食動物などの天敵に、刈り尽くされるおそれがあります)」
かーっ!
中々うまくわぁ、いかないもんだな。
「まあいいや、コイツはとっておきのとっておきだ」
収納魔法の中の大根、二匹。
「五百乃大角《いおのはら》に見つからない場所に、仕舞っておけるか?」
「残念ながラ、見つからナい場所はありませン」
だめか。
「イえ、一カ所ダけイオノファラーの視線かラ逃れらレる場所がアります」
どこだ?
「強化服一号ノ服ノ中でス。あソこならイオノファラーでモ開けてみることハないと思われマす」
「そうだな、五百乃大角も一号のことは、面白がってたからな。あとでちゃんと取りだせるのか?」
「はイ但し、大暴れスる一号ノうゴきが、内部にあたエる影響ハ予測できマせん」
おれは二号の中でうごき回っても、ピンピンしてるじゃねーか。
「そレはシガミーの体に合ワせて、隙間ヲ自動的に埋めているかラです。マンドラゴーラが、ふた株だけデは、どうしテも隙間が出来まス」
まあすこしくらい折れたりしても、いいそ。どうせドラゴーラ焼きにするなら、すり下ろしちまうわけだし。
「そうイうことでしたら、一号へ接近次第、収納魔法箱経由デ、服内へ送っておキます」
§
「よしじゃぁ、おにぎりが居る方に、もうすこしだけ進むぞ……よ」
「お野菜って言ってたけど、ぜぇーはぁー、ガムラン町で取れるのじゃ、ふぅぅぅぅっ、ダメなんですか?」
復活したタターが、貸してやった錫杖に寄りかかり――よろよろと付いてくる。
言葉づかいを注意する気力までは、まだ回復してない。
「苦みヤ辛みノない葉野菜があレば十分でスが、ほかに不足してイる物がアります」
「それはなんですわぜ?」
「シ、シガミーちゃん、はぁはぁ……さ、最後の〝ぜ〟は要りま……せんよ」
「おう、わかった――それはなんでごぜえますわ?」
「ご、ございますか――さん、はい……♪」
だいぶ調子が戻ったみたいで、よかった。
「それはなんで、ございますか――っていうか、別に〝ニゲル語〟でも良いんじゃないのかい?」
ニゲル語なら、いくらか話せる。
「ダメです。カラテェー君と似たような物じゃないですか。シガミーちゃんは面白おかしく楽しく冒険者兼、猪蟹屋店主兼、女神の使わされた聖女様をやっていくつもりなのでしょう?」
「おう、いや……ハイでござるわよ」
「はぁ、もーじゃあ間を取って――レイゲル語でいきましょう」
「なんだその、レイゲル語っていうのわぁ?」
「基本的には、ニゲル君の丁寧なしゃべり方を真似しつつ、女の子らしさ――レイダちゃんの話し方をまぜてみるのよ」
「レイダの話し方ぁ?」
そりゃ、どんなだったか。
枝葉を払ってた包丁を仕舞い、ほんのすこし開けた平地でタターを待つ。
遅れてたどり着いた給仕服。
杖のように使われる錫杖。
アレは本来、ああして使うもんだったなあ。
さて、じゃあ少し似せてみるか……。
「シガミー、お尻がつっかえたのー、たすけてー」
体をくねらせて、今は源泉と化した通路での一幕を披露する。
「……声を真似する必要はないわよ?」
「じゃあ――お尻がつっかえたのだわ、たすけてでごわす――こんな感じか?」
「はぁ、どうしても、なにか足したいみたいね」
錫杖を倒し、地に突っぷす少女。
「シガミー、そノ木の裏に生えてイる豆ヲ、すコし採取してくダさい」
木の裏だぁ――?
「お? 枝豆じゃねーか。これなら茹でるだけでも食えそうだ」
「あら緑色の……豆? 変な形ね」
メイドさんが、よろよろと寄ってきた。
「日の本に生えてたヤツと同じなら、塩ゆでにするだけで、酒のつまみになる」
「お酒は成人の儀を、済ませてからですよ?」
「わかってる、わかってる♪」
この豆で、何が出来る?
「五百乃大角の、なんたら鍋に使えるのか?」
「はイ、(数種類ノスキルを収得シ、調理工程ヲ簡略化すれバ)味噌ト豆腐が確保できマす」
まさかの、大根……マンドラゴーラの群れに遭遇した。
木の上からの奇襲に成功したが、収穫はたったの二匹。
「そっち行ったぞ!」
地面に引っ込まなかった奴らを、追ったはいいが――
こう入り組んだ森の中じゃ、捕まるもんも捕まらねぇ。
「きゃぁぁぁぁっ――みずのたマギョボギョヴォゴゴゴボボボギョリャピボルボッギャニティゲヒシビッ!!!」
魔法を放とうとしたタターの喉奥から、あの気持ちの悪い絶叫がほとばしる!
――ぱたり。
ちっ、やべぇ、白目むいちまってる。
二匹の大根から真正面に捉えられると、放たれた呪言が自分の口から飛びだしてくる。
アレは女子供にはキツイ。
おれでさえ、あまりの衝撃で胆力のすべてを奪われたほどだ。
おれは子供で女だが、生前に約四十年。
戦国の世を生抜いた、破戒僧猪蟹としての人生がある。
しかたねぇ――トン――ゴン!
大木の根を蹴りあがり――ぱしりと枝をつかんで――
勢いのついた体を――ガサガササァ――止め――!?
ゴォォォォォォォォォォォォォッ――――!!!
「(シガミーッ、100メートル直下に滝壺を発見!)」
なんだと、あぶねぇな!
なんで、わからなかった!?
「(神域の女神像は、まだ地図が白紙です。それと指向性の高い音波により、周囲の索敵が阻害されたためです)」
「おぼう゛ぉぉぉぉぇ――――!」
「ぎゃびゃぶぎゃぉぉ――――!」
「――――!」「――!」
次々と飛びこんでいく、紫色の大根。
タターが倒れてくれてなけりゃ、おれまで滝壺に飛びこんでた所だ。
「ん?」
わしっ、わささっ、しゅるるる、わささささっ、しゅりゅるりゅ――――ぶらぁぁぁん。
大根どもは手、いや葉を絡め――ぶら下がった!
なんだと、あのまま落ちてたら、おっ死んでたのは、おれだけだったのか!
「(なかなかに高度な――ひょっとしたら、追い込んでいたのはコチラではなく――――)」
まさか、滝壺に飛びこんだのは――狩りの手口だったってぇのか!?
ぶちぶちぶち、ばきっ――――ばらら、ばららっ――オボオビョ――ギュリュリャ――バヴァビャババッ――――――――!!!
重さと勢いに耐えられなかった、高級お野菜どもが――バラバラと落ちていく。
「(練達な集団行動を見せましたが……葉や地下茎の強度までには考えが至らなかったようでんす《・》)」
かなりの高さだから追いかけられないけど、もし下流に回りこめる道でもあったら、半欠けでも良いから回収しようぜ。
「(そうですね。食堂の女将への良いお土産になります……イオノファラーに発見されなければですが)」
そうだな。持ちこんだ食材を、全部くうからなアイツは。
いまは取りこんでるらしくて、『ニゲル専用恋愛相談所』とかいう枠の中に閉じこもってくれてるから、コッチのことは筒抜けにはなってねぇみてぇで助かる。
ずっと居たら居たで、めんどうだな五百乃大角わぁ。
しかし、なんで大根どもはあんなに沢山、まとめて植わってやがった?
「(おそらく神域では、イオノファラーが欲する食材が、優先して発生するようです)」
「(じゃあ、大根取り放題ってわけかっ♪)」
捕まえるのは骨だが、ガムラン町のまわりには、まるで居なくなっちまったからな。
「(また日を改めて、優先的に狩りに来ましょう)」
異論はないが、そこまで慌てなくてもいいぞ。
「(いいえ、生息分布が広範囲にわたる場合には、生態系が構築される過程で外敵に狙われやすくなります)」
わからん?
「(絶滅――大型の草食動物などの天敵に、刈り尽くされるおそれがあります)」
かーっ!
中々うまくわぁ、いかないもんだな。
「まあいいや、コイツはとっておきのとっておきだ」
収納魔法の中の大根、二匹。
「五百乃大角《いおのはら》に見つからない場所に、仕舞っておけるか?」
「残念ながラ、見つからナい場所はありませン」
だめか。
「イえ、一カ所ダけイオノファラーの視線かラ逃れらレる場所がアります」
どこだ?
「強化服一号ノ服ノ中でス。あソこならイオノファラーでモ開けてみることハないと思われマす」
「そうだな、五百乃大角も一号のことは、面白がってたからな。あとでちゃんと取りだせるのか?」
「はイ但し、大暴れスる一号ノうゴきが、内部にあたエる影響ハ予測できマせん」
おれは二号の中でうごき回っても、ピンピンしてるじゃねーか。
「そレはシガミーの体に合ワせて、隙間ヲ自動的に埋めているかラです。マンドラゴーラが、ふた株だけデは、どうしテも隙間が出来まス」
まあすこしくらい折れたりしても、いいそ。どうせドラゴーラ焼きにするなら、すり下ろしちまうわけだし。
「そうイうことでしたら、一号へ接近次第、収納魔法箱経由デ、服内へ送っておキます」
§
「よしじゃぁ、おにぎりが居る方に、もうすこしだけ進むぞ……よ」
「お野菜って言ってたけど、ぜぇーはぁー、ガムラン町で取れるのじゃ、ふぅぅぅぅっ、ダメなんですか?」
復活したタターが、貸してやった錫杖に寄りかかり――よろよろと付いてくる。
言葉づかいを注意する気力までは、まだ回復してない。
「苦みヤ辛みノない葉野菜があレば十分でスが、ほかに不足してイる物がアります」
「それはなんですわぜ?」
「シ、シガミーちゃん、はぁはぁ……さ、最後の〝ぜ〟は要りま……せんよ」
「おう、わかった――それはなんでごぜえますわ?」
「ご、ございますか――さん、はい……♪」
だいぶ調子が戻ったみたいで、よかった。
「それはなんで、ございますか――っていうか、別に〝ニゲル語〟でも良いんじゃないのかい?」
ニゲル語なら、いくらか話せる。
「ダメです。カラテェー君と似たような物じゃないですか。シガミーちゃんは面白おかしく楽しく冒険者兼、猪蟹屋店主兼、女神の使わされた聖女様をやっていくつもりなのでしょう?」
「おう、いや……ハイでござるわよ」
「はぁ、もーじゃあ間を取って――レイゲル語でいきましょう」
「なんだその、レイゲル語っていうのわぁ?」
「基本的には、ニゲル君の丁寧なしゃべり方を真似しつつ、女の子らしさ――レイダちゃんの話し方をまぜてみるのよ」
「レイダの話し方ぁ?」
そりゃ、どんなだったか。
枝葉を払ってた包丁を仕舞い、ほんのすこし開けた平地でタターを待つ。
遅れてたどり着いた給仕服。
杖のように使われる錫杖。
アレは本来、ああして使うもんだったなあ。
さて、じゃあ少し似せてみるか……。
「シガミー、お尻がつっかえたのー、たすけてー」
体をくねらせて、今は源泉と化した通路での一幕を披露する。
「……声を真似する必要はないわよ?」
「じゃあ――お尻がつっかえたのだわ、たすけてでごわす――こんな感じか?」
「はぁ、どうしても、なにか足したいみたいね」
錫杖を倒し、地に突っぷす少女。
「シガミー、そノ木の裏に生えてイる豆ヲ、すコし採取してくダさい」
木の裏だぁ――?
「お? 枝豆じゃねーか。これなら茹でるだけでも食えそうだ」
「あら緑色の……豆? 変な形ね」
メイドさんが、よろよろと寄ってきた。
「日の本に生えてたヤツと同じなら、塩ゆでにするだけで、酒のつまみになる」
「お酒は成人の儀を、済ませてからですよ?」
「わかってる、わかってる♪」
この豆で、何が出来る?
「五百乃大角の、なんたら鍋に使えるのか?」
「はイ、(数種類ノスキルを収得シ、調理工程ヲ簡略化すれバ)味噌ト豆腐が確保できマす」
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