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2:カブキーフェスタへの道

199:龍脈の棟梁(シガミー)、ガムラン近郊の龍脈を修復する

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ニゲルにゃぁコレ使ってにゃみゃん♪」
 コッチを向いたニゲル青年せいねんに、テーブルのうえ御神体いおのはらをひっつかんで放り投げだ。
 かれがここへ来たのは、五百乃大角こいつさがしていたからで――
 はなしを切り出せずに居たのは、くだんのお相手あいて探し物ソレかたに乗せていたからにほかならない。

「ぅわったったった!? あぶないっ!」
 必死ひっしにつかむ、ニゲル青年せいねん
「なんてことするんだい!?」
 大丈夫だいじょうぶ。落としたくらいじゃ、キズひとつ付かないから。
 ニゲルの聖剣せいけん安物やすもの)で切られたら、ダメかもだけど。

「――――シガミーに――――? ――一日いちにち――――――発行はっこうして――――。ギルド会館かいかん――、――――♪」
 悪鬼あっきごときささやきが、かすかに聞こえてくる。

 そそのかされた好青年こうせいねんが、かおをあげた。
 そのかおは、なにかを決意けついしたような――それでいてなにかを観念かんねんしたようにもみえる。

「シガミー、ごちそうさま。味噌汁みそしるとお刺身さしみ、とっても美味おいしかったよ♪」
 そういって御神体ごしんたいを手わたす、勇者ゆうしゃニゲル。
 かれはチラリと、ご歓談中かんだんちゅうのご令嬢れいじょう一行様いっこうさまを見るやいなや――
 疾風かぜのように走り去ってしまった。

「もぐもぐもぎゅ――――はぁ、おいひぃ♪」
 刺身さしみ小皿こざらを持ったまま、伯爵はくしゃく令嬢れいじょうリカルルが、こっちへ来た。
 お貴族きぞくさまとしては、非常ひじょう行儀ぎょうぎわるいことこのうえない。
 けど、魔物境界線まものきょうかいせん位置いちするガムランちょう冒険者筆頭ぼうけんしゃひっとうとしては、らしいと言えなくもない。
 リオレイニアが居たら、かみなりが落ちていただろうけど。

「んふふ、あいかわらずあしはやいですこと。さすがはガムランがほこもとスーパールーキー♪」
 スーパーァルゥーキィーってのは、麒麟児きりんじのことだったか?
 ちなみにげんスーパーァルゥーキィーは、シガミーつまりおれ……ぼくだ。

 きゅほん♪
『>ニゲルさんは食堂の店員さんって聞いたけど、ひょっとして強いのかい?』
 文字板いたで聞いてみる。

「そうですわねぇ……もぐもぐ……もともと〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟の一員いちいんとなるために央都おうとから来ていただいたのですけれど、残念ざんねんながら規定きていの入団試験にゅうだんしけんに落ちてしまいましたのよ」
 試験しけんに落ちた?

 きゅふぉん♪
『>試験って、模擬試合でもしたのかい?』

「ええ、わたくしみずからお相手あいてしましたわ――初撃しょげきでコチラの甲冑かっちゅう破壊はかいしたまでは良かったのですけれど……ぱくぱく、もぐもぐ♪」
 甲冑かっちゅう破壊はかい――そのときニゲルが使つかった武器ぶきなにかは分からないけど。
 あの、神速の打ち込みで、剣を防ぐはずの甲冑をなます切りにしたんだろう。
「――光景こうけイが目ニ浮かびます――」

「ただ、そのあとは半裸はんらものともせず打ちかえした、わたくしの気迫きはく防戦一方ぼうせんいっぽうで、残念ざんねんながら……ずぞぞぞぞぉ、ぷはぁ♪」
 いまだに近寄ちかよられただけで、みみまで真っ赤にしてたかれのことだ。
 その様子ようすはみなくても、わかる。

「――ークス♪ 十中八九じゅっちゅうはっく、そのときにハートまでつらぬかれちゃったと、ふぅ。ニゲルくんおとこの子なのねぇ……わるぅい意味いみ――」
「――光景こウけいガ目に、浮かびまス――」

   §

さぁにゃやるかぁーにゃみゃー♪」
「にゃ、にゃみゃー♪」

 まずはシシガニャンのうでが、すっぽりはいるくらいのてつくだ用意よういする。
 迅雷ジンライ綱製こうせいの錆びなくてすこかるくて、迅雷ジンライならどんなかたちにも変えることが出来できる――ながさは1シシガニャンの配管はいかん

ほいにゃたのむねにゃぁぁん♪」
 ヴッ――ぽこん♪
 グワララララァン♪
 すこしやかましいけど、とっととやっちゃわないと――

「――ムラン町近郊ちょうきんこう龍脈りゅうみゃくながれがとどこおればぁ、また変異種バリアントが出るかもよぉ――」
 だそうだからな。

魔方陣はコレでみゃみゃにゃぁ大丈夫みゃん?」
 きゅふぉん♪
『>魔方陣の模様は、
  これで間違いないかい?』

「……ええと、はい。これで大丈夫ですわ、うふふ❤」
 白い給仕服メイドさんのひとりに、あたまを撫でられた。
 リオレイニアの元部下もとぶかのひとに、確認かくにんしてもらう。
 彼女かのじょ聖剣切りの閃光ヴォルトカッターでこそないけど、リオのおしえをうけたうでの良い魔術師まじゅつしだ。
 生活せいかつ魔法全般まほうぜんぱんにも精通せいつうしているというので、手伝てつだってもらってる。

 よし、じゃあ――ぽいっと一号いちごうへ投げる。

「にゃ、にゃぁぁん♪」
 ぽきゅ――だだだっだ――――トトォン――――ガガゴゴォン♪
 受け取った配管くだを、元狩もとかり場の源泉げんせんへ打ち込んでいく一号シガミー(?)

 ヴュパパパパパパパパパパパ――ッ♪
 画面がめん表示ひょうじされる、ガムランの地図ちず
 それがちいさくなって左端ひだりはじ城塞都市じょうさいとし上端うえはじ魔物境界線まものきょうかいせんがあらわれた。
 境界線きょうかいせんの向こうにある山脈さんみゃくからつらなる無数むすうの、活力マナながれ。
 その一番太いちばんふとながれが、しんギルド屋舎おくしゃの有るまち中央ちゅうおうをつらぬいている。

 このながれの一部いちぶは、超女神像ちょうめがみぞう金庫きんこにつながれ――ボクの部屋へや、レイダのいえ、リカルルの天守閣ペントハウスなんかにも配膳はいぜん……配線はいせん(?)されている。

「(このお湯は、どうするんだ?)」
 ふぉん♪
『イオノ>収納魔法具箱に貯める手はずになってるけど、
     大型の収納魔法具の運用には迅雷か一号のアーティファクトが、
     必要になるからスグには使えないでしょ。
     だからいまは真上に噴き出させておいて、構わないわ』
 これは画面がめんに出る迅雷ジンライ一行文字ティッカーと、おなじもの。
 ただ、五百乃大角いおのはら使つかうと、『イオノ』っていう名前なまえがあたまに付く。
 まあ、わかりやすくて良い。

「――はからズもアーティファクト発掘はっクつが、急務きゅうムになってしまいましタ――」
 まったくだな。
 ルコルたちのアーティファクト仲介所ちゅうかいじょが、スグにでも欲しい。
 どういうことになるのか、まださっぱりわからないけど、そっちも手を付けていかないと。

「おおーい、きたよー♪ シガミーのあたらしいメニューが食べられるってのわぁ、ココかぁい?」
 なにこの豪快ごうかいこえ
「――食堂しょくドう女将おかミ、コッヘル婦人ふジんのようデ――」

   §

 ヴュザザッ――――ヴゥン♪
「――映像来えいぞうきた! うつったわぁ――」
「お? うつったな」
うツりましタね」
 画面がめんなか小窓こまどに、うつし出されたのは――たぶん。
 ギルド会館一階かいかんいっかい掲示板横けいじばんよこ自動発券じどうはっけん魔法具まほうぐにならぶ、人々ひとびとだ。

「――龍脈・りゅうみゃく整備せいびとおなじくらい、ニゲルくん確保かくほ急務きゅうむです――」
 女神像めがみぞうほどではないけど、ギルド一階いっかいに作り付けた魔法具まほうぐはいろんなこと出来できる。

 こうしてとおくから周囲しゅうい様子ようす確認かくにんしたり、ボクがひたいに押してやった手形てがたを見せると――『リカルル・リ・コントゥルさまとの一日いちにちデートけん』を発行はっこうしたりも出来できる。
 まあ、いざなうのは天国てんごくというよりは地獄じごくへのとびらかも知れないけど。

 臨時りんじ味噌汁みそしるとおつく販売所はんばいじょは、女将おかみさんにまかせてきた。
 はなしを聞きつけた人々ひとびとがどんどんながれて行ってたから、全部売切ぜんぶうりきるまでさほど時間じかんは掛からないとおもう。

 おれいがわりに、つくかた……レシピをおしえる約束やくそくもした。
 もっとも、味噌みその代わりになる調味料ちょうみりょうがない場合ばあいは、味噌汁みそしるはそうそう簡単かんたんつくれないけど。
 場合ばあいによっては、味噌みそもとになるまめからさがさないといけなくなるかもなぁ。

 本当ほんとうつぎからつぎへと、やることが増えていく。

「――ー、そこもどって断脈だんみゃくしてる……もぐもぐ――」
 おまえ。さっきの一皿ひとさらで終わりにしとけって言っただろ。
 御神体ほんたいはまだ、味噌汁みそしるつく直売所ちょくばいじょに居る。

「あー? こいつか?」
 ぼごっ――地中ちちゅうあななか
 ヴュッ――ぼぉぉぉぅ。
 画面全体がめんぜんたいが、緑色みどりいろでおおわれている。
 その緑色いろが濃くなっている土肌ところつちを盛り、くだいたゴーブリンいしを混ぜ込んでいく。

 しばらく見ていると、緑色みどりいろながれれがつながって、青白あおじろひかりだした。

「これで、全部ぜんぶかぁ?」
 はぁ、ひぃ。
 温泉おんせんが出た場所ばしょのちかくから掘りすすんでは、背後はいごを埋めもどしつづけて……もう二時間にじかんくらいか。
 ようやく温泉おんせんこわれた活力マナみだれを、元通もとどおりにつないでただすことが出来できた。

 源泉げんせん噴出口ふんしゅつこうにぶつかっていた水路すいろは、一号いちごう侍女の人メイドさんまかせてきたし。

「これで、ニゲルのけんを――」
「(これデ、ルコルたちの仲介所ちゅうかイじょノお世話せワ――)」
「――れで、当初予定とうしょよていしていたしんメニューの開発かいはつ――」
 あれ? 思惑おもわく交錯こうさくしている?

「はぁ? おまえ何言なにいってんの!?」
「(シガミー、イオノファラー、優先順位ゆうせんジゅんい策定さくテい重大じゅうダい――)」
「――ンタたちはほんとにもう、いま何時なんじだとおもってんの? いそがないとおやつどきに間に合わないでしょ!?――」
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