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2:カブキーフェスタへの道

197:龍脈の棟梁(シガミー)、ムシュル貝の味噌汁

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 そうだ、攻略本こうりゃくぼんひらかせるには、うまいものという対価たいかが要る。
「(五百乃大角いおのはらはなしがある)」
 視線しせんとおれば、どれだけはなれていても、こうして直接・・念話ねんわとどく。
 距離きょりを取った姫さんリカルルかたに降り立ち、ながかみかくれる御神体ごしんたい
 いまさらながら、〝おれにおこられる〟状況ことおもい出しやがったか。

「(――あー、うまいもののはなしなんだけどなぁ、興味きょうみがないならやめとくかぁー)」

 ぽこん♪
「――な、なによう。だましたら承知しょうちしないんだからねぇー――」
 これは念話ねんわではなく、迅雷ジンライ収納魔法ファイリングシステム経由けいゆした音声こえを、強化服シシガニャン二号にごうあたまなかだけで聞いている。
 コントゥル家のひめさんが居るから、おれ以外いがい念話ねんわ使つかえないのだ。
 使つかってもいいけど、暗殺用あんさつようのアーティファクトと勘違かんちがいいした、戦闘狂ひめさんひかりはやささで切り込んでくる。

「(死ぬほどうまい貝料理かいりょうりを、食わせてやる)」
 ゆであがったかいを、ひとつひろいあげた。

「――ごくり……見返みかえりは、なぁに――」
 そと風景ふうけいうつ画面がめんにかさなる、いろんな表示ひょうじすみほう
 和菓子わがしみたいに立ちならぶ、収納魔法しゅうのうまほう中身なかみ
 棚分たなわけけされた、石材せきざい木材もくざい食材しょくざいなんかに混じる、ちいさなちいさな美の女神様めがみさま
 かみならではの通力つうりきで、自分の分け身マルチカーソルを――迅雷ジンライなか降臨こうりんさせたのだ。

 いまだ迅雷ジンライ――れいの取っておき出せ!
 はい、シガミー。

 パッ――なんかのくろ小窓こまどがひらく。
 コカカカッコココッ――ピィーッ♪
 文字もじが書きこまれ、小鳥ことりが鳴いて、小窓こまどが消える。
 そうすると、五百乃大角いおのはら厚みのない・・・・・分け身カーソル右上みぎうえに――ひょっとしたら錠前じょうまえか?
 そんなのが、張りついた。

 ふぉん♪
『>これでイオノファラーは収納魔法の中ファイリングシステムから、
  退出たいしゅつできなくなりました』
 この画面がめんうえしたに出る文字もじは、迅雷ジンライがよくつかう。

「――レ!? 退出イグジットできない!? じたばたじたばたっ――」
 ジタバタを、くちで言うな。

 むにゅにゅにゅにゅっ――――ススススー。
 画面がめんなか四方向よんほうこうにしかすすめなくなる、五百乃大角マルチカーソル
 まるで水面すいめんただよ水鳥みずどりだ。
 いつもはおく手前てまえにと、もっと自由じゆううごまわるから画面がめんがせわしなかったんだけど――

「こいつぁ良いな」
 けど迅雷おまえは、五百乃大角いおのはら眷属したっぱじゃねーの?
 よくもこんな〝閉じ込める〟なんてことが、できるもんだ。

 コレは、前々まえまえから迅雷ジンライ相談そうだんしておいた〝取って置き〟だ。
 対策ちさくをされれば、二度にどつかまえられないらしいけど――ニゲルのはなしをしなきゃならない、いまこそ使つかどき・・だ。

 ふぉん♪
『>イオノファラ-の御神体がまるごと格納されていたら、
  物理ストレージのファイル共有アクセス権限を、
  ハッキングすることは不可能でした』
 わからんけど、分け身カーソルじゃなくて御神体ほんたいが来てたら、この錠前・・失敗しっぱいしてたと……。
 あぶないところだった。

「――ーどーせ、あたくしさまを閉じ込めてアンタたちだけで、おいしーものお、二人占ふたりじめしようって魂胆こんたんでしょ!? わかってるんでぇすぅかぁらぁねぇぇぇっぇっ――」

「(全然ぜんぜんわかってねぇじゃねーか。そもそも御前おまえさまの御神体ほんたいが、すぐソコに居るんだから――二人占ふたりじめなんて出来できっこないだろ)」
「――はイ、わたシ動力源どうりょくゲん神力かミなりデす。かイは食べませ――」

「(おとこ二言にごんはねぇ。まずはなしを聞け。そしたらちゃんと、うまいかいを食わせてやるから)」
「――い、聞きますかっこキリかっことじ――」
 みじかあし正座せいざする、梅干し大いおのはら

「(えっとな……ニゲル居るだろ、女将おかみ食堂とこわかしゅうの――)」
「――がどうしたのよさ? とうとうおひめちゃんに、ふられでもしたぁ――」
 滅多めったなことを言うな。

「(あいつなぁ、おれやルリーロとおなじ〝本生もとうまれ〟らしい……)」
 目をてんにする、梅干し大マルチカーソル退出不可たいしゅつふか)。

「――ぁぁ? ぷははははっ、なにを言い出すかとおもえば……そんなわけないでしょ。シガミーわぁ、バカなのぉ――」

 ふぉん♪
『>約20分前の映像です』
 ヴュザザッ――――ザラつく小窓こまどがあたらしくひらかれた。

「――わるいけどさ、ボク日本人にほんじんだからさ――むずしい文字もじは読めないよ――」
 小窓こまどうつし出されたのは、ついさっきわかれたニゲル青年せいねん

「――んとだ、日本人にほんじんって言ってる。どーいうコトなの!? この世界せかいたましい転移てんいさせるなんて、かみで有るあたくしさまか前任ぜんにんのぉ……〝オノハラレン〟にしかできないわよぉう!?――」
 おとろいてるな。かみがやりがちな、タチのわる冗談じょうだんわなじゃないのはわかった。

 この世界せかいかみである五百乃大角いおのはらが知らない、もと……日本にほんからの来訪者らいほうしゃ
「――しかモ、勇者ゆウしゃというこトは、こノ世界せかイすクうべク転移てんイしテきた……最上級さいじょウきゅう冒険者ぼうけンしゃ……のはズです――」
 いまニゲル食堂しょくどうはたらいているし、たしかに下手へたしたら全力ぜんりょくを出したおれよかつえぇかも知れない。

「(それについて、御前おまえさまに相談そうだんがある。あとシシガニャンの中身なかみあつかいについても、はなしを詰めておかないとマズいことになるぞ)」

「――ぁ、わかったわよぉぉぅだっ! ムシュルがいのドラゴーラ焼き、ひとつ貸し・・だからね――」
「(おい美の女神めがみ、ふざけんな。貸しはない・・温泉おんせん一号いちごうとおれと迅雷ジンライ大手柄おおてがらだ。ムシュルがいのドラゴーラ焼き……そうだな、三皿分の価値・・・・・・はあるだろう?)」

「(ぬぬ、たしかに大手柄おおてがらだから、なにも言いかえせないわねぇ――ぐぬ)」
 梅干うめぼしみたいなおおきさの、さかさまになった鏡餅かがみもちみたいなからだつき。
 画面がめんなか五百乃大角いおのはらがゴロゴロところがるけど、今日きょう収納魔法しゅうのうまほう中身なかみが吹っ飛ばされずに済んでいる。

 毎回まいかい錠前コレできりゃ……らくだな。
 ふぉん♪
『>仮にも神ですので、二度と通じません』
 だよなぁ。

「じゃあとにかくにゃみゃぁ食いながらでみゃにゃにゃみゃ良いからやーう話を聞いてくれみゃんやーにゃん

   §

「さぁー、カラテェーくーん♪ 一体いったいなぁにぃおぉー、たぁべぇさぁせぇてぇーくれるーのぉー?」
 うまいものが食えると確信かくしんしたのか――
「イオノファラーさまそんなに急かすと、落ちてしまいますわよ!」
 がやがやがや――ぞろぞろぞろ。
 五百乃大角いおのはら御神体ほんたいが、遠巻とおまきにコッチを見ていた姫さんリカルルたちを、連れてきた。

「にゃみゃぁ、にゃにゃみゃぁ♪」
 一号いちごうがかきあつめたムシュルがいが、山積やまづみになってる。
 コレだけ有れば、いまココに居る全員分ぜんいんぶん余裕よゆうまかなえるだろ。

「カラテェーとシガミーには、特別報奨金バウンティー支払しはらわれますわ……多分たぶんですけれど」
 ひょっとすると〝岩場住いわばずまい〟ってことになってるカラテェーは、町民ちょうみんと見なされなくて、支払しはらわれないかもしれない。
 まあ、そんなのはどうでも良い。

「それと、この温泉利用おんせんりようかんしての決定権ぜんけんは、ガムランおさめるわたくしとの折半せっぱんになりますけれど――よろしくて?」
 そんなのも、どうでも良い。

任せるよにゃみゃぁーご♪」
 ふぉん♪
『>かたじけない、
  お任せします』
 まだお祭りフェスタはじまったばかりなのに、ますますいそがしくなりそうだなー。

 ゴバババ、ズゴォォォォ――――!
 おれとレイダの狩り場から吹きあがる温泉おゆは、いきおいを増していく。
 まっすぐあなを開けたせいか、見事みごと真上まうえに伸びている。
 温泉おんせん飛沫しぶきかぜで飛んでこないところまで、はなれた空き地。
 そこへ急遽きゅうきょ石畳いしだたみを敷き、大机テーブル椅子いす沢山たくさんならべた。

 ぼちゃぼちゃ、がらごろろん♪
 かまどに乗せた巨大きょだいなべ温泉おんせんで満たし、ひろってきたかいあらって入れる。

 収納魔法しゅうのうまほうの〝とっておきフォルダ〟から、さけ味噌みそとつくり置きのダシを取りだす。
 味噌みそは、酒瓶さかびんにははいってなくて――なんとしばり付けてあった、お猪口ちょこにみっしりと詰め込まれていた。
 それをちまちまとたくわえて置いたのが――おおきなどんぶりに山盛やまもりになってる。
 コレを使つかうなら、いまそのときだ・・・・・

ょっとシガ……カラテェー、コレって
そうだにゃぁ味噌汁みゃぁんだよにゃ
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