滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１７８：龍脈の棟梁（シガミー）、カブキーフェスタ開催のお知らせ（再）

「勝負しょうぶはは一週間後いっしゅうかんごぉ。この〝ビデオカメラ〟と〝巨大きょだいモニター〟みたいなアーティファクトをつかって、大々的だいだいてきに興業こうぎょうしまぁす♪。」
　なんだこのでけぇ、画面がめんわぁ!?
「な、何なにをしておるのじゃ、アヤツ……いや美の女神めがみわぁぁぁっ――――!!!」

「〝遠見とおみの鏡かがみ〟と〝映うつし視みの箱はこ〟です、イオノファラーさま」
　五百乃大角いおのはらのうしろから――――ギュギュギュギュィィィィンッ♪
　なんか騒々そうぞうしい音おとが、かすかに聞こえる。
「お父とうさんの声こえだ!?」
　子供レイダが飛びおきて、あたりを見わたした。

　おれの画面がめんの中なか。
　大おおきな矢印やじるしが、すこし離はなれた地面じめんを指した。

　五百乃大角いおのはらを頭あたまに乗せた、猪蟹屋うちの若わかい衆しゅう――――猫頭青年ねこあたませいねんが姿すがたをあらわした。
　まったく猫頭ねこあたまくんまで、かり出しやがって。
　大鍋おおなべの真ん中なかに棒ぼうが立った物ものを、背負せおわされてる。

「――受像機兼じゅぞうきけん投影装置とうえいそウち……遠見の鏡プロジェクターノようです。アレが巨大きょダいナ画面がめンヲ映うツしだしていマす――」
　わからぬ。
　ちなみに、彼かれの名前なまえは――〝ネコアタマ〟だ。
　猫頭ねこあたまを持つ猫耳族ねこみみぞくで、平民ただのネコアタマ。
　猫頭ネコアタマ、うちの飯の神いおのはらが、迷惑めいわくかけてスマン。

　その背後はいご、ギルド長ちょうや橙色だいだいいろの布ぬのを纏まとった連中れんちゅうが付きしたがってる。
　同おなじく五百乃大角いおのはらに、こき使つかわれてんだろな。
　マジ《・・》でスマン。

「あー、イオノファラーさまがらみか」
「じゃあ、しかたがないわね」
「けど、シガミーが居ないから、そこまで大事おおごとにはならなそうじゃね？」
　おい、なんか言われてるぞ。おれが。
　ヴッ――――揺れる迅雷ジンライ。
　やい迅雷てめえ、いま鼻はなで笑わらいやがったか？

「こほん、良いでしょう。ではいまここに、〝シガミー争奪杯そうだつはい☆カブキーフェスタ〟の開催かいさいを決定けっていしますぅーわぁぁぁぁっ♪」
　シシガニャンに話はなしかける姫さんリカルル。

「ふにゃ？」
「ええ、そうよシガミー。超女神像ちょうめがみぞうの、お披露目ひろめをかねた素敵すてきな――武闘会ぶとうかいにしましょおねー？」

「だぁめでぇすぅー！　カワイイ魔物まもののシガミーちゃんわぁー、わたくしのものでーっす♪」
　シシガニャンの腕うでを、取りかえす妖狐ルリーロ。
「にゃにゅん？」
　やめろ、あんまり引っぱんな。
　また大おおケンカになるぞ。

「ありゃ、シガミーちゃんもいるみたいねー」
「しばらくは騒々そうぞうしくて、昼寝ひるねも出来できなくなりそうだぜ」
「けど早はやくて安やすくてうまい、串揚くしあげの例れいも有るぞ？」
「そうだ。万まんが一いちうまくいったら、ガムラン町ちょうが発展はってんするのは間違まちがいいないよ」
　やい町民ちょうみん。期待きたいと不安ふあんが入り乱みだれた、複雑ふくざつな表情かおを黄緑色シシガニャンに向けんなってんだ。

「に゛ゃぁぁぁぁごぉぉぉぉ――――♪」
　群衆ちょうみんからジッと見つめられた仕返しかえししのつもりなのか、シシガニャンが化け猫ねこみたいに鳴いた。
　もしケンカが始はじまっても、〝殴なぐった強つよささ〟でしか仕返しかえしが来ないなら――大おおけがするコトもねぇかな。

　となると問題もんだいはあっち・・・だ。
　もう一度いちどよーく、画面そらを見つめる。
　巨大きょだいな五百乃大角いおのはらの顔つら。
　大おおきすぎて、顔その一部いちぶしか見えてねぇ。
　なにこの、おぞましさ。
　まさに末世まっせとしか、言いようがない。

「――どうヤら私わたシが以前いぜン、生成せイせいシた楽曲がっキょくヲ、央都おウとのノ神官しんかンが歌ウたっていたコとに関連かんれンシたアーティファクトを使ツかっているようでス――」

「っぎゃっ、魔物まものだ魔物まものが居るっ!?」
　うるせえな。
　遅おくれてきたヤツが、「ま、魔物まものだー」のくだりを、今いまさらやってやがる。
　それはとっくに終わっ――――なんだ、ニゲルじゃんか。
　彼かれが背負せおった巨大きょだいな目玉めだまがついた箱はこ。
　それは、ルコルの店みせで見た、上級鑑定じょうきゅうかんていできる箱はこに似てた。

「――アレも、巨大画面きょだイがめんヲ映うツすタめに必要ひツようなアーティファクトでス。おソらく、撮像機兼さつゾうきけん送信装置そうしんそうち……映し視の箱ビデオカメラで、アの大眼玉おオめだまに映うツっタ物もノが画面がメんニ映うツシ出されル仕組しクみかト――」

「り、リカルルさんと、ルリーロさまから離はなれろぉ！」
　ニゲルが剣けんを抜く。
　ココの連中れんちゅうは本当ほんとうに毎回まいかい、必かならずアレやるのな。

「――――お主ぬしの金かねを返かえすのは、童わらし……シガミーが開放かいほうされてからでも良いかのう？」
「――――そりゃ困こまるわ……手合てあわせは、どうするのよ？」
「条件じょうけんはかわらん。猫耳頭シガミーに勝ってからじゃなー」
　天狗わしと鬼娘オルコが、しゃがみ込み、頭あたまを抱かかえた。

　　　§

　折角せっかく、草原そうげんに大集合だいしゅうごうしてるってんで、姫ひめさんの号令ごうれいでギルド再建さいけんが進すすめられた。
　なんせ、あの顔が良いやつエクレアの結婚式けっこんしきに、超女神像ちょうめがみぞうのお披露目ひろめに、シシガニャンおれ（？）争奪そうだつに、鬼娘オルコとの一騎討いっきうちまで、祭りの予定プログラムに組みこまれちまったからな。
　今日きょうにでもギルド建物たてもの、兼けんレイダの家いえ……クエーサー家の家屋かおくを完成かんせいさせねぇと。

　けど、大おおきな区画くかくを一気いっきに作つくるために作つくった収納魔法箱しゅうのうまほうばこが、シシガニャンに使つかわれてるから、取り出せない。
　取り出すと、シシガニャンとの試合しあいっていう出し物ものが減っちまう・・・・・。

　おれが中なかに入はいっても良いが、祭まつりの最中さいちゅうはいろんな事ことにかり出されるだろうから――――うまくシシガニャンを使つかえたら、とても助たすかるのだ。

　じゃあ、どうするかと悩なやんだけど、まったく問題もんだいなかった。
　収納魔法箱しゅうのうまほうばこを使つかいたい場所ばしょに、シガミーシシガニャンを連れて行けば、普通ふつうに箱はこが使つかえたからだ。

「シシガニャン、次つぎは向こうだよ？」
　黄緑色きみどりいろの手を引き、足場あしばを駆け抜ける。
「おい、カラテェー。この壁かべの厚あつさは、コレで良いかぁ？」
　手伝てつだわされてる冒険者ぼうけんしゃが、声こえを掛けてきた。

「うん、それで大丈夫だいじょうぶだよ」
　黄緑色シシガニャンの背中せなかに、手を置く。

　ゴドゴゴドゴドズズズズズムン！
　預あずかっていた調度品ちょうどひんを修復しゅうふくし配置はいちし、本ほんや書類しょるいごと棚たなを等間隔とうかんかくにならべる。
　ついでに必要ひつような〝金庫きんこと女神像めがみぞうを繋つなぐ配線てつのなわ〟なんかも、一度いちどに済ませた。

「あっつ、居た！　君きみたちさー、手なんか繋つないじゃって――とっても仲良なかよししさんだよねっ？」
　路地ろじの向こうから飛びだしてきた子供こどもが、そんなことを言う。

「ええと、レイダだっけ？　仲なかが良いわけじゃ無いよ。この背中せなかの収納箱しゅうのうばこを使つかえるのが、コイツだけだから、ぼくが便利べんりに使つかってやってるのさ」
　ぼくは今いま、烏天狗カラテェーだから、とぼけておく。

「こぉら。頑張がんばってるシガミーに、その言い方かたは良くありませんね？」
「そーだね。そもそもウチの家いえを壊こわしちゃったのは、アナタとオルコトリアさんでしょお？」
　それをいわれると、ぐうの音ねも出ねぇ。
「か、かたじけない」
　片手かたてで印いんを結むすび、謝罪しゃざいの意を示しめす。

「にゃっ、にゃみゃ♪」
　ぽきゅむ♪
　猫耳頭オマエは、真似まねしなくて良いから。