上 下
177 / 738
2:カブキーフェスタへの道

177:龍脈の棟梁(シガミー)、シシガニャン(魔物)はシガミー?

しおりを挟む
「そういや、この状況じょうきょうは、ちぃとばかしマズくねぇか?」
「まズい、とハ?」

天狗殿てんぐどのぉー、ご無事ぶじかぁぁぁぁっ――――――――――――――――ああああああああぁぁぁぁああっぁぁぁぁっ!?」

 オルコトリアを先頭せんとうに、衛兵えいへい冒険者ぼうけんしゃたちの軍勢ぐんぜい
 あいつらは、普段ふだんはボケボケだが――――かりにも、〝魔物まものたたかうためのまち〟の住人じゅうにんだ。
 その、領主りょうしゅであるコントゥル家。その名代みょうだい
 伯爵夫人かのじょ伯爵はくしゃくにならぶ権力けんりょくを、お持ちで。
 その背中せなか腰掛こしかけているのは、どこからどう見ても――――さか鏡餅かがみもちにしか見えない。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ま、魔物まものっ――――――――!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 ほらみろ。この土地とち人間にんげんはシシガニャンをみると、かなら魔物まものだとおもいやがる。
 ジャキジャキジャキジャキザシュザシュザシュザギィィン!
 ギュギギュギギュギギィゴガチャン――――ギラァァン、ィィィィィィィ!
 剣槍けんやり矢尻やじり鉄塊てっかいに、長剣ちょうけん聖剣切りヴォルトカッター

「ま、待たれよ――――!」
 飛び出したが、ときすでにおそしで――ぶった切る気配けはいが飛んできた。
 トトォォォン――――しかたねぇから、うえに飛ぶ。
 鬼娘オルコ姫さんリカルルは、シシガニャンが魔物まものじゃないって知ってるだろうが!

 ガムラン町最強ちょうさいきょう冒険者ぼうけんしゃパーティー、〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟。
 その最強さいきょうかんする――剣技わざ
 いや、技名わざめいかんしてるのが、パーティーめいほうか?
 まあ、なんでもいい。
 不可視のみえない切っ先ぶったぎりは、おれでさえ金剛力パワーアシストがなかったら、簡単かんたんには避けられねぇ。
 つまり、相当そうとうヤバイ。

「あっ、いけない! つい切ってしまいましたわぁ――――!?」
 つい、じゃねぇだろ。

「にゃぉにゅん?」
 こまったようなねこの鳴きごえ
 立ちあがり、繰りだされる正拳突せいけんづき――――ぽきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅむにょんっ♪
 面白おもしろおとが、なんか・・・はじいた。
 なんか・・・ってのはもちろん、聖剣切りボルトカッターだ。

「――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 うるせえ。
 必殺ひっさつわざふせがれたのも、はじめてじゃねーんだから――――大口開おおぐちあけてわめくな。
 おじょうのくせに、はしたねぇな。れいによってニゲルには、とても見せられない。
 やっぱりシガミーとして生まれかわったからには、見た目ってのもすこしは良くしときてぇなと、はじめておもった。

「にゃんみゃにゃ、みゅぅーん♪」
 よごれてない手のこうたたいてから、意気揚々いきようよう着席ちゃくせきす――――ごろぉん♪

「コォォン!? なにいまの!? 〝狐火きつねび仙花せんか〟だけじゃなくってぇ、ひょっとしてリカルルちゃんの〝聖剣切りヴォルトカッター〟まではじいたのぉっ!? どーいうことぉ――――???」
 面白おもしろおとで気がついたのか、伯爵夫人ルリーロが飛びおきた。
 そして、足下あしもとでジタバタする黄緑色の魔物シシガニャンをジッと見つめている。

「コントゥル夫人、ご無事ぶじなによりですが――説明せつめいしていただけると、ありがたいのですが……」
 長剣ちょうけんおさめ、ひざを折る鬼娘オルコトリア
 おれも、説明せつめいしてもらいたい。
 ――――すたん。
 ひとまずは、反逆者はんぎゃくしゃとか魔物扱まものあつかいで……追い立てられなくて、済みそうだが。

「いま、〝〟っておっしゃいました? まさかあの〝つめたいほのお高等魔術こうとうまじゅつ〟を喰らっても無事ぶじとか……おっしゃいませんわよね?」
 口元くちもとを押さえ驚愕きょうがくの表情ひょうじょうを見せる、リカルル・リ・コントゥル。
 その手が、黄緑色の魔物シシガニャンこぶしをつかもうと、伸びる。
 そうだった。

「(どうやら、さきほ――――ギン、ギィン!――――ドの……鬼火怪ウィルオうィスプ光線・レーザー狐火きツねび仙花せンかとイう技名わザめいのヨうです――」
 おう、洒落しゃれてるな。
 コントゥル母娘おやこにらまれた迅雷ジンライが、途中とちゅうから耳栓こえはなす。

「ちょっと、リカルルちゃぁん、だめよぉう――この子・・・を見つけたのわぁ、わぁたくしがぁさきなんですからぁっ――――♡」
 正座せいざする黄緑色シシガニャンの頭・へっどを、うやうやしくなでる妖狐ようこルリーロ。

 するとなにおもったのか、魔物シシガニャンが立ち上がり、伯爵夫人ルリーロあたまをそっと――ポキュポンと騒々そうぞうししくなでた。
「はぅわわわわっ――な、なにを――ふにゃりん♪」
 恍惚こうこつとする伯爵夫人はくしゃくふじん
 そのかおは、昼日中ひるひなかから見せたらダメと言うか、伯爵以外とのさんいがいに見せたらダメじゃね?

「もう、おわすれになったんですのっ!? この子・・・は、シガミーですわよっ!」
 姫さんリカルルのまえで着たり脱いだり・・・・・・・したし、自分じぶん着たこともある・・・・・・・はずだ。
 なのに、一瞬いっしゅんわすれるんだよな。

「えっ――!? おぼえてなぁい、こわぁい♪」
 伯爵夫人ルリーロは、すっかりわすれてたっぽいし、こえぇのはコッチだぜ。
「――ルリーロにモ神域しンいきへ飛ばサれる直前ちょクぜんニ、見られていましタね――」

 シシガニャンのしたぱらを、もちやうどんのようにこねまわす。
 当然とうぜん――魔物まものひめさんのはらをぽきゅぽん♪ と騒々そうぞうしくやさしくなでる。
「ちょっ――シガミーッ!? なにをなさるんですの!?」
 羞恥しゅうちにゆがむかお。コレは……べつ意味いみで、ニゲルには見せられねぇ。

「「きゃぁぁぁぁっ――――!?」」
 なんか人垣ひとがきをかき分けて、二人組ふたりぐみ突進とっしんするしてきた。
「「こらっ、シガミー! なにしてるのっ!?」」
 しろ給仕服きゅうじふくと、いつもの胸当むねあててだけの仕事クエスト着。

 きゃいきゃい、がやがや、ざわざわ、にゃにゅぉん?

「とっちらかって、きおったのう」
「――シシガニャンの行動こウどうにハ、〝やられたらやりかえす〟とイう学習効果がくシゅうこうか根付ねヅいたようでス――」

天狗殿てんぐどの、あの魔物まものがシガミーというのは本当ほんとうなの!? こと次第しだいによっては――――!」
 鬼娘オルコトリアが、コッチを向いた。
 手が長剣ちょうけんに、添えられている。
 くそう、オルコトリアとは、天狗てんぐがらみだと本当ほんとうにウマが合わねぇ。

「落ちつかれよっ! 露払つゆはらいになればと、女神めがみから借り受けた〝護法ごほう〟をもちいたまでじゃっ――――!」
「――自律型じりツがた使役対象しえきたいシょうは、コの世界せかイニもゴーレム・・・・とイう名称めいシょう存在そンざいシ、知られていマす――」
「い、いのちのない……業憂無ゴーレムならば、手練てだれのおぬし相手あいてにうってつけじゃとおもったのじゃ……まさかなかに、同郷どうきょうわらしはいっとるとはおもわんじゃろうて!」

誤報ごほう……いや護法まもうほうか。それって、まえにシガミーていで、イオノファラーさまが、アナタのお体《からだ》を取り出した・・・・・のとおな転移魔法てんいまほう?」
「そ、そうじゃ! あの女神めがみには、まだ借りが有るでのぉ。お、押しつけられたら使つかわぬワケにもいかぬのじゃ」
 勝手かってに、うまいこと勘違かんちがいしてくれたぞ。

「ふぅん。それじゃ、わたしお金ファイトマネーは――シガミーが持ってるの?」
 四人よにんかこまれる魔物シシガニャンへ、親指おやゆびが向けられる。

「(そういや、アレ――ふたを空けたらどうなる?)」
「――現在げんざイモニターできテいないので、やってみないとワかりません――が十中八九じゅっチゅうはっく最初さイしょ状態じょうタいモどルとおモわれまス――」
 最初さいしょっていうと、またあるところからってことか?

「――はイ――」
 ああ、もう。どうしろというのか。

「パパパパッパパパパッパパパパパァァ――――♪」
 なんだこの御囃子おはやしはっ!?
 草原そうげん直上ちょくじょうそらたかところからきこえる。

 ぼぉぉぉぉぉぉぉっ――――ごぉぉうわぁっ♪
 突如とつぜん上空じょうくうにあらわれたのは、巨大きょだいなビードロ……画面がめんだった。

「その勝負しょうぶ、ぜぇーんぶっ! アナタの世界せかいのよりどころっ、美の女神めがみちゃんがぁ――――うけてたちぃまぁすぅよぉぉぉう?。」
 でた、五百乃大角いおのはらが。
 阿鼻叫喚あびきょうかん草原そうげん。おれもふくめた全員ぜんいん黄緑色シシガニャンふくむ)がこしを抜かした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...