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2:カブキーフェスタへの道

177:龍脈の棟梁(シガミー)、シシガニャン(魔物)はシガミー?

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「そういや、この状況じょうきょうは、ちぃとばかしマズくねぇか?」
「まズい、とハ?」

天狗殿てんぐどのぉー、ご無事ぶじかぁぁぁぁっ――――――――――――――――ああああああああぁぁぁぁああっぁぁぁぁっ!?」

 オルコトリアを先頭せんとうに、衛兵えいへい冒険者ぼうけんしゃたちの軍勢ぐんぜい
 あいつらは、普段ふだんはボケボケだが――――かりにも、〝魔物まものたたかうためのまち〟の住人じゅうにんだ。
 その、領主りょうしゅであるコントゥル家。その名代みょうだい
 伯爵夫人かのじょ伯爵はくしゃくにならぶ権力けんりょくを、お持ちで。
 その背中せなか腰掛こしかけているのは、どこからどう見ても――――さか鏡餅かがみもちにしか見えない。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ま、魔物まものっ――――――――!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 ほらみろ。この土地とち人間にんげんはシシガニャンをみると、かなら魔物まものだとおもいやがる。
 ジャキジャキジャキジャキザシュザシュザシュザギィィン!
 ギュギギュギギュギギィゴガチャン――――ギラァァン、ィィィィィィィ!
 剣槍けんやり矢尻やじり鉄塊てっかいに、長剣ちょうけん聖剣切りヴォルトカッター

「ま、待たれよ――――!」
 飛び出したが、ときすでにおそしで――ぶった切る気配けはいが飛んできた。
 トトォォォン――――しかたねぇから、うえに飛ぶ。
 鬼娘オルコ姫さんリカルルは、シシガニャンが魔物まものじゃないって知ってるだろうが!

 ガムラン町最強ちょうさいきょう冒険者ぼうけんしゃパーティー、〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟。
 その最強さいきょうかんする――剣技わざ
 いや、技名わざめいかんしてるのが、パーティーめいほうか?
 まあ、なんでもいい。
 不可視のみえない切っ先ぶったぎりは、おれでさえ金剛力パワーアシストがなかったら、簡単かんたんには避けられねぇ。
 つまり、相当そうとうヤバイ。

「あっ、いけない! つい切ってしまいましたわぁ――――!?」
 つい、じゃねぇだろ。

「にゃぉにゅん?」
 こまったようなねこの鳴きごえ
 立ちあがり、繰りだされる正拳突せいけんづき――――ぽきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅむにょんっ♪
 面白おもしろおとが、なんか・・・はじいた。
 なんか・・・ってのはもちろん、聖剣切りボルトカッターだ。

「――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 うるせえ。
 必殺ひっさつわざふせがれたのも、はじめてじゃねーんだから――――大口開おおぐちあけてわめくな。
 おじょうのくせに、はしたねぇな。れいによってニゲルには、とても見せられない。
 やっぱりシガミーとして生まれかわったからには、見た目ってのもすこしは良くしときてぇなと、はじめておもった。

「にゃんみゃにゃ、みゅぅーん♪」
 よごれてない手のこうたたいてから、意気揚々いきようよう着席ちゃくせきす――――ごろぉん♪

「コォォン!? なにいまの!? 〝狐火きつねび仙花せんか〟だけじゃなくってぇ、ひょっとしてリカルルちゃんの〝聖剣切りヴォルトカッター〟まではじいたのぉっ!? どーいうことぉ――――???」
 面白おもしろおとで気がついたのか、伯爵夫人ルリーロが飛びおきた。
 そして、足下あしもとでジタバタする黄緑色の魔物シシガニャンをジッと見つめている。

「コントゥル夫人、ご無事ぶじなによりですが――説明せつめいしていただけると、ありがたいのですが……」
 長剣ちょうけんおさめ、ひざを折る鬼娘オルコトリア
 おれも、説明せつめいしてもらいたい。
 ――――すたん。
 ひとまずは、反逆者はんぎゃくしゃとか魔物扱まものあつかいで……追い立てられなくて、済みそうだが。

「いま、〝〟っておっしゃいました? まさかあの〝つめたいほのお高等魔術こうとうまじゅつ〟を喰らっても無事ぶじとか……おっしゃいませんわよね?」
 口元くちもとを押さえ驚愕きょうがくの表情ひょうじょうを見せる、リカルル・リ・コントゥル。
 その手が、黄緑色の魔物シシガニャンこぶしをつかもうと、伸びる。
 そうだった。

「(どうやら、さきほ――――ギン、ギィン!――――ドの……鬼火怪ウィルオうィスプ光線・レーザー狐火きツねび仙花せンかとイう技名わザめいのヨうです――」
 おう、洒落しゃれてるな。
 コントゥル母娘おやこにらまれた迅雷ジンライが、途中とちゅうから耳栓こえはなす。

「ちょっと、リカルルちゃぁん、だめよぉう――この子・・・を見つけたのわぁ、わぁたくしがぁさきなんですからぁっ――――♡」
 正座せいざする黄緑色シシガニャンの頭・へっどを、うやうやしくなでる妖狐ようこルリーロ。

 するとなにおもったのか、魔物シシガニャンが立ち上がり、伯爵夫人ルリーロあたまをそっと――ポキュポンと騒々そうぞうししくなでた。
「はぅわわわわっ――な、なにを――ふにゃりん♪」
 恍惚こうこつとする伯爵夫人はくしゃくふじん
 そのかおは、昼日中ひるひなかから見せたらダメと言うか、伯爵以外とのさんいがいに見せたらダメじゃね?

「もう、おわすれになったんですのっ!? この子・・・は、シガミーですわよっ!」
 姫さんリカルルのまえで着たり脱いだり・・・・・・・したし、自分じぶん着たこともある・・・・・・・はずだ。
 なのに、一瞬いっしゅんわすれるんだよな。

「えっ――!? おぼえてなぁい、こわぁい♪」
 伯爵夫人ルリーロは、すっかりわすれてたっぽいし、こえぇのはコッチだぜ。
「――ルリーロにモ神域しンいきへ飛ばサれる直前ちょクぜんニ、見られていましタね――」

 シシガニャンのしたぱらを、もちやうどんのようにこねまわす。
 当然とうぜん――魔物まものひめさんのはらをぽきゅぽん♪ と騒々そうぞうしくやさしくなでる。
「ちょっ――シガミーッ!? なにをなさるんですの!?」
 羞恥しゅうちにゆがむかお。コレは……べつ意味いみで、ニゲルには見せられねぇ。

「「きゃぁぁぁぁっ――――!?」」
 なんか人垣ひとがきをかき分けて、二人組ふたりぐみ突進とっしんするしてきた。
「「こらっ、シガミー! なにしてるのっ!?」」
 しろ給仕服きゅうじふくと、いつもの胸当むねあててだけの仕事クエスト着。

 きゃいきゃい、がやがや、ざわざわ、にゃにゅぉん?

「とっちらかって、きおったのう」
「――シシガニャンの行動こウどうにハ、〝やられたらやりかえす〟とイう学習効果がくシゅうこうか根付ねヅいたようでス――」

天狗殿てんぐどの、あの魔物まものがシガミーというのは本当ほんとうなの!? こと次第しだいによっては――――!」
 鬼娘オルコトリアが、コッチを向いた。
 手が長剣ちょうけんに、添えられている。
 くそう、オルコトリアとは、天狗てんぐがらみだと本当ほんとうにウマが合わねぇ。

「落ちつかれよっ! 露払つゆはらいになればと、女神めがみから借り受けた〝護法ごほう〟をもちいたまでじゃっ――――!」
「――自律型じりツがた使役対象しえきたいシょうは、コの世界せかイニもゴーレム・・・・とイう名称めいシょう存在そンざいシ、知られていマす――」
「い、いのちのない……業憂無ゴーレムならば、手練てだれのおぬし相手あいてにうってつけじゃとおもったのじゃ……まさかなかに、同郷どうきょうわらしはいっとるとはおもわんじゃろうて!」

誤報ごほう……いや護法まもうほうか。それって、まえにシガミーていで、イオノファラーさまが、アナタのお体《からだ》を取り出した・・・・・のとおな転移魔法てんいまほう?」
「そ、そうじゃ! あの女神めがみには、まだ借りが有るでのぉ。お、押しつけられたら使つかわぬワケにもいかぬのじゃ」
 勝手かってに、うまいこと勘違かんちがいしてくれたぞ。

「ふぅん。それじゃ、わたしお金ファイトマネーは――シガミーが持ってるの?」
 四人よにんかこまれる魔物シシガニャンへ、親指おやゆびが向けられる。

「(そういや、アレ――ふたを空けたらどうなる?)」
「――現在げんざイモニターできテいないので、やってみないとワかりません――が十中八九じゅっチゅうはっく最初さイしょ状態じょうタいモどルとおモわれまス――」
 最初さいしょっていうと、またあるところからってことか?

「――はイ――」
 ああ、もう。どうしろというのか。

「パパパパッパパパパッパパパパパァァ――――♪」
 なんだこの御囃子おはやしはっ!?
 草原そうげん直上ちょくじょうそらたかところからきこえる。

 ぼぉぉぉぉぉぉぉっ――――ごぉぉうわぁっ♪
 突如とつぜん上空じょうくうにあらわれたのは、巨大きょだいなビードロ……画面がめんだった。

「その勝負しょうぶ、ぜぇーんぶっ! アナタの世界せかいのよりどころっ、美の女神めがみちゃんがぁ――――うけてたちぃまぁすぅよぉぉぉう?。」
 でた、五百乃大角いおのはらが。
 阿鼻叫喚あびきょうかん草原そうげん。おれもふくめた全員ぜんいん黄緑色シシガニャンふくむ)がこしを抜かした。
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