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2:カブキーフェスタへの道
145:龍脈の棟梁(シガミー)、女神像建立開始
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ふぉん♪
『>高度486㍍』
ぎゅぎゅぉぉぉぉぉぉぉっ――――!!
小さな棒を親指で押しこむと、見ている方向にすすむ。
裏天狗のうごかし方と、同じ――じゃねぇー!
ふぉん♪
『>高度588㍍』
ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――!!
勢いが付きすぎたけど、いそいで魂徒労裏をうごかすと、またひっくり返りかねない。
コレだけの大目玉を操ろうとすると、ちょっとのズレでも大きく動いちまう。
さいわい、大目玉の柔らかさのおかげで、いきおいがカラダにのしかかることはない。
けど、おれも姫さんも……なんでか梅干しまで横になってる。
もう、このまま、天辺までいく。
霧の向こうは何も見えない――――ぎゅぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
「あれ? いまなんか――――?」
ビードロの中に、なんか見えたと思ったら――――
「――「「うぉわぁぁーー」」――」
でた!
これは、なんだろ?
でけえ、島だった。
グリリッ――――ぎゅるるるるっ、ぐじゃらららるらぁ――――!?
「きゃぁぁぁぁっ――!」
「うおっぁ、動かしすぎたーっ!」
上下が逆さまになって――「――ウケケッケケケケケケケケケケケケケッケッ♪――」
魔物が高らかに――笑うるせえ。
§
「――まったく、ウチのバカ兄貴は! 自律型大陸プレートだけ放流して、そのまま放置したのかー、飽きっぽいんだからまったく、もぉーぅ――」
後栂叩射六……わからん。
だだっ広い地面。
草木は生えてなくて、鳥や虫も一匹も居ないけど――
地面に土というか――色が付いてるだけでも、気持ちがだいぶ楽になった。
「おまえさまの兄てのも、神なんだろう? いまはどこに居るんだ? 例の神の船に乗って、神の国に帰ったのか?」
「自律型……大陸? それに美の女神さまの……お兄さま? 神の船は、まえに壊れたと聞きましたけれど……」
出してやった机に突っぷして、あたまを抱える伯爵令嬢。
気持ちはわかる。おれだって、迅雷が居なけりゃ――サッパリ、はなしについていけねえからな。
いや、居たところで(話せないだけで、おれの首のうしろにちゃんと居るけど)――神々の言葉やかんがえ方には、到底ついていけねぇんだけどな。
「――いいえ、レンくん……彼はもう神では……ないわね――」
煉燻……神じゃない?
「なんせ、あたくしさまが正式に、プレイヤーアカウントを受けついだからねぇー♪」
えへん♪
火鼠るとかいう分け身姿の、平べったい梅干しさまが威張ってやがる。
そりゃ、神なんだから威張っても良いんだが、こうも、小さい形でふんぞり返られてもな――――ころん、ごろろろっ――ごちん!
うしろに勢いよく転がり、置いてあった和菓子(みたいな)形にぶつかった。
「――いった、あたまぶつけたんですけど――責任者出てこぉーい!――」
責任者はおまえだろ。いま自分で、威張ったばかりじゃねーか。
「あの、シガミー?」
「どうした?」
「私にも、イオノファラーさまのお姿を見られるようには、できませんか?」
「あーそうだな。声しか聞こえねぇのも、不便だ――できんのか?」
「――迅雷が居ないと、あたくしさま周りの処理はできないわね――」
うしろあたまを、さすりながら、窮状を訴える御神体。
「わりぃけど、出来ねえみたいだな」
「そうですか、では、なおさら女神像をいそいで建ててしまいましょう」
お? 復活したぞ。
地面に足をつけて、気力を取りもどしたらしい。
こわがってた目玉も、おれたちを地面の真ん中に置いたら、どっか行っちまったしな。
「そうだな、雨は降りそうもねぇけど――また、何が邪魔しに来るかわからねぇからなー」
空を見上げる。霧の向こうには何もなくて、昼か夜かもわからない。
「――シガミーは、すっかり〝べらぼうめぃてやんでぇい〟に、戻っちゃったわねー?――」
「それは、シガミーの口の悪さのことでしょうか? 私も前から気になっては、いたのですが――」
「――そう! 猪蟹屋のみんなから、女性客が逃げるって、つるし上げられたのよねー♪――」
ひょい、ズドォン!
五百乃大角が、ちかくにあった和菓子から――何かを取り出した!
「わわ!」「きゃっ!」
ぐらぐらり――相当な重さだ。
ソレは、五百乃大角が背中にくっつけてた箱と、おなじ形。
酢蛸《すだぁこ》とかいう、迅雷の代わりにいろんな事が出来たり――物をつくり出したりするのに必要な、小さい箱とも同じ形。
だけど、大きさは――おれの寝床くらいある。
「――コレが、女神像の土台にぃーなりまぁーす♪ はい、総員拍手ぅー♪ ぺちぺちぺちっ♪――」
ちいさな手拍きが、きこえた。
ぺちぺちぺちぺち、ぱちぱちぱちぱち♪
ご気分を害されても、迅雷が直るのに余計な時間がかかるだけなので、言われるままに拍手をしてやる。
姫さんは、美の女神であらせられる五百乃大角の野郎を本気で敬っているので、力強い拍手を自発的にしてくれている。
「――はいじゃぁ、早速デザインしてくけど――いま、何の話をしてたっけ?――」
「シガミーの、口の悪さについてですわ」
「――あ、そうだった。ニゲル語も似合わないけど、この見た目でアレはないよねぇー♪――」
「孤児の身の上をかんがえて、つよくは言わないで来てしまいましたけれど――レーニア……リオレイニアがよく見過ごしています……ね?」
なんだその、訝しむような目は。
ニゲル語に、まるで言及がなかったのが、ちょっと悲しい。
「飯を食うときの作法とか、しゃらあしゃらした挨拶の仕方なんかは、時々やらされてるぜ?」
おれは片足をひいて、毛皮をちょっと摘まんで、腰を静かに落とした。
『>高度486㍍』
ぎゅぎゅぉぉぉぉぉぉぉっ――――!!
小さな棒を親指で押しこむと、見ている方向にすすむ。
裏天狗のうごかし方と、同じ――じゃねぇー!
ふぉん♪
『>高度588㍍』
ぎゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――!!
勢いが付きすぎたけど、いそいで魂徒労裏をうごかすと、またひっくり返りかねない。
コレだけの大目玉を操ろうとすると、ちょっとのズレでも大きく動いちまう。
さいわい、大目玉の柔らかさのおかげで、いきおいがカラダにのしかかることはない。
けど、おれも姫さんも……なんでか梅干しまで横になってる。
もう、このまま、天辺までいく。
霧の向こうは何も見えない――――ぎゅぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
「あれ? いまなんか――――?」
ビードロの中に、なんか見えたと思ったら――――
「――「「うぉわぁぁーー」」――」
でた!
これは、なんだろ?
でけえ、島だった。
グリリッ――――ぎゅるるるるっ、ぐじゃらららるらぁ――――!?
「きゃぁぁぁぁっ――!」
「うおっぁ、動かしすぎたーっ!」
上下が逆さまになって――「――ウケケッケケケケケケケケケケケケケッケッ♪――」
魔物が高らかに――笑うるせえ。
§
「――まったく、ウチのバカ兄貴は! 自律型大陸プレートだけ放流して、そのまま放置したのかー、飽きっぽいんだからまったく、もぉーぅ――」
後栂叩射六……わからん。
だだっ広い地面。
草木は生えてなくて、鳥や虫も一匹も居ないけど――
地面に土というか――色が付いてるだけでも、気持ちがだいぶ楽になった。
「おまえさまの兄てのも、神なんだろう? いまはどこに居るんだ? 例の神の船に乗って、神の国に帰ったのか?」
「自律型……大陸? それに美の女神さまの……お兄さま? 神の船は、まえに壊れたと聞きましたけれど……」
出してやった机に突っぷして、あたまを抱える伯爵令嬢。
気持ちはわかる。おれだって、迅雷が居なけりゃ――サッパリ、はなしについていけねえからな。
いや、居たところで(話せないだけで、おれの首のうしろにちゃんと居るけど)――神々の言葉やかんがえ方には、到底ついていけねぇんだけどな。
「――いいえ、レンくん……彼はもう神では……ないわね――」
煉燻……神じゃない?
「なんせ、あたくしさまが正式に、プレイヤーアカウントを受けついだからねぇー♪」
えへん♪
火鼠るとかいう分け身姿の、平べったい梅干しさまが威張ってやがる。
そりゃ、神なんだから威張っても良いんだが、こうも、小さい形でふんぞり返られてもな――――ころん、ごろろろっ――ごちん!
うしろに勢いよく転がり、置いてあった和菓子(みたいな)形にぶつかった。
「――いった、あたまぶつけたんですけど――責任者出てこぉーい!――」
責任者はおまえだろ。いま自分で、威張ったばかりじゃねーか。
「あの、シガミー?」
「どうした?」
「私にも、イオノファラーさまのお姿を見られるようには、できませんか?」
「あーそうだな。声しか聞こえねぇのも、不便だ――できんのか?」
「――迅雷が居ないと、あたくしさま周りの処理はできないわね――」
うしろあたまを、さすりながら、窮状を訴える御神体。
「わりぃけど、出来ねえみたいだな」
「そうですか、では、なおさら女神像をいそいで建ててしまいましょう」
お? 復活したぞ。
地面に足をつけて、気力を取りもどしたらしい。
こわがってた目玉も、おれたちを地面の真ん中に置いたら、どっか行っちまったしな。
「そうだな、雨は降りそうもねぇけど――また、何が邪魔しに来るかわからねぇからなー」
空を見上げる。霧の向こうには何もなくて、昼か夜かもわからない。
「――シガミーは、すっかり〝べらぼうめぃてやんでぇい〟に、戻っちゃったわねー?――」
「それは、シガミーの口の悪さのことでしょうか? 私も前から気になっては、いたのですが――」
「――そう! 猪蟹屋のみんなから、女性客が逃げるって、つるし上げられたのよねー♪――」
ひょい、ズドォン!
五百乃大角が、ちかくにあった和菓子から――何かを取り出した!
「わわ!」「きゃっ!」
ぐらぐらり――相当な重さだ。
ソレは、五百乃大角が背中にくっつけてた箱と、おなじ形。
酢蛸《すだぁこ》とかいう、迅雷の代わりにいろんな事が出来たり――物をつくり出したりするのに必要な、小さい箱とも同じ形。
だけど、大きさは――おれの寝床くらいある。
「――コレが、女神像の土台にぃーなりまぁーす♪ はい、総員拍手ぅー♪ ぺちぺちぺちっ♪――」
ちいさな手拍きが、きこえた。
ぺちぺちぺちぺち、ぱちぱちぱちぱち♪
ご気分を害されても、迅雷が直るのに余計な時間がかかるだけなので、言われるままに拍手をしてやる。
姫さんは、美の女神であらせられる五百乃大角の野郎を本気で敬っているので、力強い拍手を自発的にしてくれている。
「――はいじゃぁ、早速デザインしてくけど――いま、何の話をしてたっけ?――」
「シガミーの、口の悪さについてですわ」
「――あ、そうだった。ニゲル語も似合わないけど、この見た目でアレはないよねぇー♪――」
「孤児の身の上をかんがえて、つよくは言わないで来てしまいましたけれど――レーニア……リオレイニアがよく見過ごしています……ね?」
なんだその、訝しむような目は。
ニゲル語に、まるで言及がなかったのが、ちょっと悲しい。
「飯を食うときの作法とか、しゃらあしゃらした挨拶の仕方なんかは、時々やらされてるぜ?」
おれは片足をひいて、毛皮をちょっと摘まんで、腰を静かに落とした。
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