滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

９２：猪蟹屋店主（シガミー）、ご神体をつくろう

　暴徒無芸ぼうとむげいをしながら、うわのそらで迅雷ジンライの説明せつめーを聞いていた。
　五百乃大角いおのはらが収納魔法具しゅうのうまほうぐの中なかに入はいったり、裏天狗うらてんぐになって出てきちまった仕組しくみが、ようやくわかった。

「（つまり、あれだろ？　いつものように五百乃大角いおのはらの〝雑ざつ〟な仕事しごとのせいで、こんなことになったんだろ？）」
　ようするに五百乃大角いおのはらの、下界このよでの姿すがた。
　その作りが・・・雑ざつなせいで、色々いろいろおかしな事ことになっている。

「シガミー・・・・がおなか空いてるみたいだから、お菓子かしあげてもいーい？」
　は？　おれぁ朝飯あさめしくったばっかだぜ？
　レイダが手にしているのは、おれの形かたちの駒こまだ。
　さっきはうごいたが、生きものじゃない。

「クスクス――この町まちは荒あらくれ者ものもおおいというのに、レイダはやさしい子に育そだちましたね♪」
　リオがレイダの襟元えりもとを、なおしてやる。
　やはりリオは仲間パーティーメンバーだが、おれとレイダの母上ははうえか姉上あねうえだな。

「はい、あーん♪」
　子供レイダが駒こまにむかって差しだしたのは、冒険者ぼうけんしゃギルド向かいの店みせで売られてる菓子かしだ。
　やたらと甘あまくてかたくて、大おおきめの焼き菓子がし――――ぱくん♪

　菓子かしが半分はんぶんになった！
　自分じぶんのからだよりも、おおきな菓子かしの半分はんぶん。
　それを一口ひとくちでくらう大食漢たいしょくかんとあの歯形・・・・には、こころ当たりがある。

「（やい、女神めがみさまよ？）」
「（なぁに？　けっこういけるわねん……ぼりぼりぼり♪）」
「（イオノファラーの作成さくせいした〝ボードゲームの駒こま〟に上位権限じょういけんげんが譲渡じょうとされました。事象じしょうライブラリを更新こうしん――チィィーッ――終了しゅうりょうしました。）」

「本当ほんとうに食べちゃ駄目だめっ！　それはアタシとシガミーの今日きょうのおやつ――」
　――ぱくん♪
　あーあ、のこり半分はんぶんも食いやがった。
　飯事ままごとのつもりが――駒ほんにんは食う気満々まんまんだったな。

　下しもぶくれで頭あたまでっかちの人型こまから――くきゅるるるりゅぅ♪
　腹はらの虫むしが聞こえてきた。

　　　§

「（この混沌こんとんとした現状げんじょうをまねいたのは、まちがいなくイオノファラーの不勉強ふべんきょうが原因げんいんですが――）」
　神かみの世界せかいにもどるための〝神の船・・・〟が壊こわれたわけは、まだわからないらしい。

「（うまいことＳＰなんたらも温存おんぞんできるうえに、こうして女神かみさんも飯めしまで食えるようになった。ひとまずはよかったじゃねーか）」

　下手へたをうったと言っても今回こんかいは酒さけを、駄目だめにされたりしてねぇしなー。
　菓子かしを食われて涙目なみだめのレイダには、なんか別べつの菓子かしを買ってやろう。

「（ふふふふ、シガミー君くーん？　そんなこと言ってて、いっいーのぉーかぁなぁー？）」
　びーどろの中なか。声こえがする方ほうをみると――ふたたび収納魔法とらわれのみとなった和菓子うめぼしが、べつの四角しかくい和菓子・・・を持ちあげてた。

「（そりゃなんだ？　おれにどーしろってんだ？）」
　ふぉふぉにゅるりぉん♪

「（無課金むかきんでキャラメイクができるのは、一回いっかいだけみたいなのよー。あたくしさまは〝ちっさいシガミー〟を作つくっちゃったから、もうできないのよー。つ・ま・り――）」
　和菓子うめぼしが和菓子しかくいのをなげた。

　ヴッ――――どん！
　おれの目のまえ。
　机テーブルの上うえに並ならんでた小ちいさな駒こまたちを蹴散けちらしたのは――桃色ももいろの餅もち……いや、土つちの塊かたまりだった。

「（イオノファラーが所持しょじしている、キャラ作成メイク粘土マテリアルはコレで最後さいごです。）」

　ふぉふぉん――ヴュワワワワッ♪
『キャラメイクエディター　００：１９：５６』

「ぎゃっ、シガミー！　目のまえに魔物まものが！」
「二人ふたりとも、離はなれてください！　凍こおらせま――――！」
　この桃色ももいろの土塊つちくれは、ふたりにも見えてるようだった。
　暴徒無芸つくえのうえは無茶苦茶むちゃくちゃになった。

「大丈夫だいじょウぶです、ふたりトも。これハわが主神しゅしんイオノファラーかラの、宣告せんこクによるモのです。」
「「イオノファラーさまの？」……!?」

「しばラくの間あイだ、お静しズかにオ願ねがいシます。子細しさいはのチほどお教オしえいタしますので。」
　迅雷ジンライのひとこえで、着席ちゃくせきするリオレイニア。
　その膝ひざに、レイダがちょこんと座すわった。

　ふぉふぉん♪
『クラフト依頼達成クエスト
　〝御神体〟を作成しよう
　残り時間　００：１９：０３』
　ごわぁん♪

「（ソレをお手本てほんにして、可憐かれんでカワイイアタシを作つくってくださいな。はぁーやれやれ。やはくやれ、時間じかんないでしょ！）」
　手本てほんがぴょんぴょん跳ねて、よってきた。
　土塊まものに驚おどいたレイダが放ほうりなげた、おれそっくりの駒こまだ。

「（迅雷ジンライ――）」
「（〝初級造形しょきゅうぞうけい〟があるので、できあがりを思おもい浮かべるだけで出来できあがります。）」

　ビードロの向こうに、ビードロが見える。
　透明とうめいな箱形はこがたが、土塊つちくれをかこんでる。
「これは、レイダたちにも見えてんのか？」
「うん、ガラスの箱はこが見えるよ」
「はい、高度こうどなクラフト魔術まじゅつのようですが、これは一体いったい!?」

　すっ――――両手りょうてを土塊つちくれにかざす。
　うにょにょ、ぐぐぐぅん♪
　〝初級造形しょきゅうぞうけい〟で大おおまかな形かたちができあがる。

「わっ、おもしろい！　わたしもやりたい！」
「すみマせん、レイダ。これはヒとつしかないので、あきらメてください。」
　落ちこむレイダをリオが、頭あたまをなでてなぐさめている。

　そのあと、手本てほんをたよりに、一本箸フォークをつかって細こまかいところを整ととのえた。
　これは〝木工彫刻もっこうちょうこく〟が、効いてるのかもしれなかった。

　前世まえに茶器ちゃきを焼くのを手伝てつだったことがあったが、あのときの出来できとは雲泥うんでいの差だった。
　下しもぶくれのまるっこい形かたちには、思おもいのほか苦労くろうさせられたが――なんとか完成かんせいした。

　おおきなあたま、あいらしい瞳ひとみ。
　ちいさな手と、両耳りょうみみのうえでくくった長髪ながかみ。
　倒たおれないように、おおきめの靴くつを履かせてやった。

「かわいいいい♪」
「おかわいらしいですね♪」
「かわいいく、できたんじゃねぇか？」

「それで、これなぁに？　これも駒シガミーみたいにうごくの!?」
　おれの駒こまをつかんで、持ちあげてみせるレイダ。

「ああ、うごくぞ！　きいておどろけ、こいつぁ美の女神めがみの御神体ごしんたい――〝ねがみめんど〟だぜ！」
「〝めがみネんど〟でス、シガミー。」

　ふっふっふ。
　われながら、何なんという下したっ腹ぱらの曲線きょくせんか。
　じつに良い仕事しごとをした。
　珠玉しゅぎょくの下したっ腹ぱらの出来できに、惚れ惚れする。

「（えーちょっと、なにこのお腹なか、うらわかく……もないけど乙女おとめにこの仕打しうちちは酷ひどくな――!?）」

　ふぉふぉん♪
『クラフト依頼クエスト
　【御神体】作成成功！
　残り時間　００：０１：５９』
　――――ごわぁあぁん♪

　女神かみさんからの直じかのたのみだから、とうぜん五百乃大角いおのはら印じるしのクエストだ。

『Ｎｅｗ／保留中の、クエスト達成報酬　……　＋３』
「（これは、なんでぇい？）」

「（五百乃大角いおのはら印じるしのクエストに関かんして、保留中ほりゅうちゅうの項目こうもくが３点てんあります。【ぜんぶ受けとる】を押すと未収得みしゅうとくの経験値けいけんちやＳＰスキルポイントなどの報酬いちどが、いちどに受けとれます。）」
　あーなんか、後あとまわしにしてたのが有ったな。

　押した――――――――ブブブブッ♪

　ＬＶレベルとＳＰスキルなんたらの手続てつづきがはじまって、銀板かあどの震ふるえがいつまでも止やまなくなった。
　しかたねぇから、寝床ねどこの布団ふとんに突っこんだ。

　時折ときおりびーどろに出る、五百乃大角いおのはらのクエストをこなすと、やたらとＬＶレベルとＳＰスキルなんたらが増える。
　これが〝女神めがみに・加護かご〟の報酬ほうしゅうと考かんがえりゃ、世話係せわがかりとしての気苦労きぐろうも報むくわれるってもんだ。
　その恩恵おんけいがないリオとレイダには、せめて給金きゅうきんを弾はずんでやりたい。

　ヴ――すぽん♪
　消える、御神体ねがみめんど。
　ヴヴッ――ぽっこぉん♪
　ふたたびあらわれた五百乃大角いおのはらには、色いろがついていた。

「うふふん――けっこう良いかんじね♪」
　早速さっそく、御神体ごしんたいに女神かみさんが取り憑いた・・・・・――前世ひのもとの神降かみおろしとは毛色けいろがちがうが、気にすまい。

「さあ、イオノフ教きょうの信徒達しんとたちよ。献上けんじょうなさい供物くもつを――」
　ちいせぇのに後光ごこうがさしてて、まぶしい！
　〝木戸きど〟をしめろ。目が痛いたくならぁ――あ、まって〝輝度きど〟がリセットされちゃってたみたい……これで良しと。

　まぶしくなくなったが、どこか日ひの光ひかりをおびてる。
　風かぜもないのに、なびく髪かみ。
　あるくと〝ぽきゅぽん♪〟と音おとがする。
　そしてやっぱり、五百乃腹いおのはらの虫むしが――くきゅるるるりゅぅ♪

「しゃべった!?　それに綺麗きれいな色いろがついてる！」
　子供レイダが飛び跳ねる。
　これで、ようやく五百乃大角いおのはらを紹介しょうかいできそうだ。
　『シガミー御一行様ごいっこうさま』の仲間メンバーなのに、レイダ一人ひとりだけ女神かみさんのことを隠かくしておくのは気が引けたからな。

「物ものに色いろがつけられるのは、テェーングさまの能力のうりょくではなかったのですか？」
　あ、白天狗うらてんぐのときに、シガミーの駒こまをつくって見せてんのか？
「（そうですね。〝神かみの御業みわざ〟で説明せつめいはつきますが・――）」

「うーんと……天狗てんぐは山やまの神かみみたいなもんだから、たしかに物ものの色いろくらい変えられる。対たいする五百乃大角いおのはらは、この世界せかいまるごとの神かみだ。天狗てんぐのまねごとくれぇは朝飯前あさめしまえなんだろうぜ」

　ちいさな五百乃大角いおのはらは、全身ぜんしんをおおきく広ひろげて宣のたまふ――

「――ではその〝朝あさごはん〟とやらを、あたくしさまがご所望しょもうです。もちろん、大盛おおもりでおねがいいたしますよぉ♪」

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神降ろし／祭りの最初に神霊を呼びだすこと。巫女がご神託を受けるために、その身に神霊をのり移らせること。