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1:輪廻転生、おいでませガムラン町

84:猪蟹屋店主(シガミー)、ログアウトできないんですけど?

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大変たぁいへぇんおいしゅうございましたぁんぅ~♡ シィガァミィー?」
 どうした、食う手が止まったぞ。
 やっとはらがふくれたか?

「あの狐耳娘きつねみみこちゃんも逃がしたら――ほろびかねないわよ――?」
 そんなことを言われてもなあ。
 〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟からリオレイニアを引き抜けたのだって、そうとうなまぐれ当たりだぜ?

「――〝おまえの中ではなぁ・・・・・・・・・〟――ウケケケッケケケッウフフックツクツクツッ……ふぅ~、わらうのにつかれた。じゃあまったねぇぇん♪」
 やっと、かえってくれるみてぇだ……つかれたぜおらぁよ。

「んぁ……どうした?」
 いつものように、奇怪きっかい口上ぜりふを吐いた五百乃大角いおのはらが――まだ、そこにいる。

「いつもの煙幕えんまくとか、かべとか屋根やねとかぶっこわしてすっ飛んでったりしねえのか?」
 なんか様子ようすがおかしい。

 ぽふむ♪
 ぽふぽふぽふぽふぽふぽふ――――ぽふむ♪
 魔法まほうがでねえみてぇで、指先ゆびからけむがでてる。

「あらぁん、ログアウトできない・・・・・・・・・とか? なにこれ、ウ・ケ・ルゥー♪」
 大口おおぐちを開けてわらっちゃいるが、両手りょうてひたいに張りついたまま微動びどうだにしなくなった。

「(迅雷ジンライ、どういうこった?)」
「(はい。神々プレイヤーのためのフルダイブアバタートランスデューサーシステム……に、重大じゅうだい瑕疵かししょうじまし

「(あきらめんな、説明せつめー)」
「(現実世界げんじつせかいの……いえ、神々かみがみ世界せかいへの渡航とこうが、制限せいげんされたようで)」

「おいまさか。まえに言ってた、むこう一億年居座いちおくねんいすわるとか抜かしてたのが、本当ほんとうになったってぇのかぁー!?」
 やべえなんてもんじゃねぇだろソレ。

「えー、ちょっとぉー? こまるんでっすっけっどぉ~!? あしたの講義こうぎ資料しりょうつくんなきゃなんないのに――――!」
 座敷ざしきひろめの蹴上けあがり厚布あつぬのを敷いただけだが)に、はいつくばる――美の女神めがみ

「(おい、どうすんだ――よくわからんが癇癪かんしゃくでも起こされて、まるごと消えてなくなるなんてのは、ごめんだぜ)」
「(その場合ばあい、イオノファラーも消えてなくなるので――もう、その心配は無いか)」
 そいつぁ、良い知らせだが――世界ここをつくった五百乃大角いおのはら帰れねえ・・・・ってのは、おだやかじゃねぇな。

「(おれかおまえか五百乃大角あいつが、なんか下手へたうったか?)」
 普通ふつうじゃねぇことって言ったら、やまのようなおおきさの化けウサギや、やまのようなれの小鬼ゴーブリンが出たぐれぇしかおもいつかねえ。

「(いいえ……フルダイブアバタートランスデューサーシステム――かみふねのがわの、一方的いっぽうてき都合つごう)」
 かみふねってもいろいろあるだろ……天磐船あまのいわふね宝船たからぶね……無目籠まなしかたまはべつか。
 どっちにしろ、おれじゃ荷がおもい。

 虚舟うつろぶねなんていう、すさまじくでけぇなべそらを飛んだなんてはなしもあった気がするが。
 いま用意よういできるのは――工房長ノヴァドおおいそぎでつくってもらった、串揚くしあよう大鍋おおなべくれえのもんだ。
 おれがギリギリはいるかどうかで、レイダのご立派様しり五百乃大角びのめがみのでけぇ下っ腹はらは、とてもはいりそうもねえ。

「なにかーましたか、テェーングさま?」
 つつみをかかえたレイダが、天狗おれ見上みあげてた。
「ぐぬ!? ど、どうしたわらしよ、なにも言っとらんぞぃ……(言ってねえよな?)」
 こころなしか、まなじりがつり上がってる。

「(はい。こえに出ていませ)」
「(ちょっと、ちょう~聞こえてるからね。ちゃんとうやまわないと、このまちうみに変えるわよ?)」
「(わるかった。うやまう、ちょううやまうぜ――)」
 五百乃大角いおのはら言葉ことばが、うつっちまった。

「して、なにようじゃ?」
「リオレイニアさんが、串揚くしあげ30ぽん土産みやげにどうぞって」
 みせ反対側はんたいがわ仕立したての良い給仕服きゅうじふく前掛まえかけ。
 いつもと変わらねえが、口元くちもとわらってねえ。

 天狗おれ美の女神いおのはらを〝見える・・・〟と知るや、質問しつもんぜめにされたから――
「なにも聞かぬなら、この場はわしが女神めがみ相手あいてをしてやろう……わしもこの世界うつつ……世界このよまもりたいでのう――どうじゃ?」
 と言ってやったら、「――すべておまかせいたします」って全部ぜんぶ丸投まるなげしてきたところは、さすがはもと・〝聖剣切りの閃光ボルトカッター〟だ。
 即断即決そくだんそっけつ本当ほんとうにそつがねえ。

「ではそろそろ、おいとまするかのう。この土産みやげはありがたく、頂戴ちょうだいしていくわい」
 天狗おれは、土産みやげ大事だいじそうにかかえた五百乃大角いおのはら背負せおいい、猪蟹屋ししがにやをあとにした。

   §

「おまえ、さっき散々さんざん食ってただろうが! コッチもはらってんだ、半分はんぶんよこせってんだ!」
 ここはシガミー邸ものおきごや
 やわけぇ寝床ねどこに、ひっくりかえったままのシガミーおれ
 それを見下ろす〝裏天狗うらてんぐ〟。

 はなれたテーブルのさらの上には串揚みやげ。
 まえに陣取じんどるは、美の女神いおのはら
 もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ……さっきようやく満足まんぞくして一度いちどかえろうとしたんじゃねぇのかよ!

かみ顕現けんげんつづけるのにも、おなかが減るのよっ! それに一定時間いっていじかんをこえての顕現けんげんには、SPスキルポイント結構けっこうつかっちゃうし……もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅっ♪」
 おれのぶん、のこしとけよな!

SPスキルなんたらは、どれくらいあるんだ?」
 おれよかすくねぇんだろ?
「24000くらい……いま23990、23980……」
 どんどん、減ってんじゃねーか。
「なくなったらどうなる?」

「……すくなくとも、このかり姿すがたが消えて無くなるわね……もぎゅもぎゅ」
 そのわりに、悲壮感ひそうかんがねぇ。

「(迅雷ジンライ時間ときはどれくらいある?)」
「(このままのペースで消費しょうひされるなら、あと10分程ぷんほどですべて消失しょうしつしま)」

SPなんたら補充ほじゅうは、できねぇのか?」
「ログアウトちゅうの……もぎゅ……デイリークエストでかせいでたんだけど……もぎゅもぎゅ」
 そりゃなんだ?

「〝五百乃大角いおのはらじるしのクエスト〟のこと
 あー、そんなのもあったな――――!?
「それじゃ、おれのあまってるSPなんたらを――五百乃大角いおのはらにやりゃ急場きゅうばはしのげるじゃ――」

SPスキルポイント譲渡じょうとは、できませぇ~ん(キッパリ)……もぎゅもぎゅ」
「じゃぁ、いますぐ――化けウサギでもなんでも狩ってくりゃ――」

かみであるあたしのSPスキルポイントと、シガミーたち住人じゅうにんSPスキルポイントはあつめかた別物べつものだし……もぎゅもぎゅもぎゅ……ポイント精算せいさん課金かきんをするのわぁ、ログオフ画面がめんじゃないとできないからぁー、無《むぅ》・理《りぃ》なんだよねぇ~♪)」

「よくわからんが、どうにもならんのか?」
「そのようです。ですが、ものは考えようです。この世界せかいをことあるごとに消しろうとする、イオノファラーが居なくなれば、シガミー的には安泰あんたいなのではありませんか
 おい、それは不敬ふけい物言ものいいじゃねぇのか?
 ばちぃ、おとされんぞ。

「んーまぁーねぇー。そうかもしれないわぁねぇー……もぎゅもぎゅ」
 くそぅ、マジ・・でぜんぶ食われる。
 あとやっぱり、悲壮感ひそうかんがまるでねぇ。

「そのとき、この世界うつつはどうなる?」
 ひょいひょいっ――〝裏天狗うらてんぐ〟をうごかして――串揚くしあげを四本よんほんばかり、べつさらに取りわけた。

正直しょうじき、わからないわぁー、もぎゅもぎゅもぎゅ――ただ、このアタシは、あくまで仮の姿アバターでしかないから、そのうちべつ仮の私イオノファラーがごはんを食べにくるかもしれないし、こないかもしれないわねー」

 い、大食漢いおのはら二人ふたりになるだとぉう?
 どんな末世まっせだ、おそろしいことを言うな!

ーーー
ログアウト/ネットワークの利用を終了すること。ログオフ。
末世/人の道が廃れた時代。
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