上 下
82 / 738
1:輪廻転生、おいでませガムラン町

82:猪蟹屋店主(シガミー)、たおれる

しおりを挟む
 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 きつねいろになって――あぶらうえに浮かんできたら、ひっくりかえして引きあげる。

「はやく、はやくっ♪ キャキャッホーゥイ♪」
 やい、美の女神いおのはら
 みせなかおどるなまわるな、じゃまだ。
 もっとも、いまのところ見えてるのは、おれとリオレイニアだけだが。

 今回こんかいは、どういうわけか、いつまでも腹一杯はらいっぱいにならねえらしい。
 近寄ちかよららなけりゃ影響えいきょうはでねえが、どうにかして、おかえりいただかねえと。

「レイダ、揚がったぜ!」
 ぜんぶ食われちまわねえように、一度いちどにたくさん揚げる方法ほうほうをあみだした。
 こうすりゃ、五百乃大角いおのはら一個いっこ食ってるあいだに、みせぶん確保かくほできる。

 そういや迅雷ジンライも、ひめさんの揚げかたを覚えたあとで、天狗の体こんごうりきをつかって、たくさん揚げてやがったな。

「はぁい。あ、シガミー、〝たまごソ-ス〟切れてるよ?」
 たまごソースてのは、五百乃大角いおのはら情報じょうほうから迅雷ジンライつくったものだ。
 すっぱいが、みょうににうまくて、これも大入おおいりの原因げんいんだ。

 くそう、いそがしいぜ。
「おーい、鬼娘オルコトリア今日きょうはヒマなんだろ? 買いものたのまれてくれねぇか?」
 魔物討伐まものとうばつ遠征中えんせいちゅうに出くわした、ゴーブリンの異常発生いじょうはっせいつのウサギ変異種バリアントとの遭遇そうぐう
 報告ほうこくやなんかは、姫さんリカルル付きの聖剣切りの閃光パーティーメンバーが引きうけてくれたから、むこう一週間いっしゅうかん強制的に・・・・ひまらしい。

「じゃあ、串揚くしあげ10ぽんでどう?」
「わかった。じゃ、たまごしお果物酢くだものすを、買えるだけ買ってきてくれ!」
 かねはリオレイニアから、もらってくれぇ~。
 はぁひぃ――ほかのきゃくもまだまだ、ならんでる。

 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 揚げろ。
 っじゅわぁぁぁぁぁあぁっ――――ぱちぱちぃぃ♪
 揚げろ揚げろ。

「そういえばわたくし、テェーングさまの正体しょうたいがわかりましたわ!」
「ぶっふぉ――――っ!?」
 な、なんんだとぉう!?

 つい、吹きだしちまった!
 遠征えんせいからもどったばかりだってのに、うちのみせ手伝てつだってくれてるひめさんが、とんでもねぇことを言いだす。

 テングはシガミーおれかり姿すがただぜ――――!?
 さすがにバレたか!?

「かれはシガミーこくからのまよびと――かくしてその正体しょうたいわぁーーーー!?」
 もともと
 シガミーこくなんて、ねぇぞ。


 えー、なになに?
 ほらあの、くろずくめの……。
 あー、かおおおきな目が描いてあった人でしょ?
 がやがやがや、わちゃわちゃわちゃ♪

 じつはウサギにくや、ほか素材そざいはこんでやるのに、おれはガムランちょう一度訪れている・・・・・・・

 じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ――――姫さんリカルル狐耳きつねみみが、おれを正面しょうめんにとらえた。
 なんでそこで、おれをじっと見つめやがる?

 天狗テングすがたはくろずくめであやしくて、あいらしいシガミーおれとは、似ても似つかねえだろうが。

 たしかに〝小太刀かたな〟は色違いろちがいなだけで瓜二うりふたつだし、れた武器ぶきなおしかたもおなじだし、そもそも錫杖しゃくじょうなんてつかうのは、ここじゃおれだけだ――――同郷どうきょうってだけじゃ強引ごういんだったかもしれんが。

 姫さんリカルルらをたすけるためとはいえ、まちの決まりやリオレイニアとの約束やくそくやぶったおれがわりぃ――――はらをくくるか――目を閉じ、あぶらの跳ねるおとを聞く。

「みんな、聞いておどきなさい! テェーングの正体しょうたいは――――凄腕すごうでの、宮廷きゅうてい料理人りょうりにんよ!」
「はぁ――――――――――――!?」
 おれは、へなへなとゆかたおれこんだ。
 あぶねぇから、油鍋あぶらなべの火はつめてぇ魔法まほうで消した。

「だって、わたくし一度いちどつくってって見せた串揚くしあげげを、あれだけ完璧かんぺき再現さいげんして見せた、あの腕前うでまえ――――」
 なんでぇい、バレたわけじゃねぇのか。

「だぁはぁぁっ――――」
 安堵あんどいきをついたら――――びききききっ!
「ん? あれ? いてぇ? でででだだっ!?」

「シガミー、どーしたの!? このいそがしいそしいときに!?」
 レイダが駆けよってきて、おれのうであそてえところを、ぐりぐりとしてくる。

「い、いてえって言ってんだろうが!」
 大声おおごえを出したら、リオレイニアが飛んできた。

「シガミー! ど、どうなされたのですか?」
 見おろすかお蒼白そうはくなのは――おれを心配しんぱいしてくれてるだけじゃねぇ。

 コトン――よこを向くおれのみみうえ
 さらをおいて、おかわりを要求ようきゅうする――暴力神いおのはら姿すがたがみえているから……だとおもう。

   §

「みなサん、心配しンぱいにはおよびマせん。たダの筋肉痛きんにくツうでス。」
 おれのうしろあたまから、いつものこえひびいた。

「(そんなわけあるか、このいたみはふつうじゃねえ!)」
「(はい、ふつうではありません。ですがれっきとした筋肉痛きんにくつうです。)」

「もー、おどかすんじゃないわよ。シガミーは本当ほんとう体力たいりょくがないなあ」
 てめえ鬼娘おにむすめめ!

 どかんごとん、どさどさどさどささっ!
 買いものありがとう。けど、おまえはゆるさん。
 いつかひかりのたまのうらみを、晴らすからな。

「(――金剛力こんごうりき連続使用れんぞくしようによる深層筋インナーマッスル筋力低下きんりょくていかならびに、急激きゅうげきなオーバーワークによる弊害へいがいです。)」
 せ・つー、いてぇーっ!

「(長時間ちょうじかん金剛力こんごうりきをつかうと、体力増強たいりょくぞうきょうスキルがあっても筋力きんりょく維持いじできないほどの筋力低下きんりょくていか……からだがなまります。)」
「(あれだけからだをうごかしたのになまるってぇのか!? ――けどそりゃそうだな、おれがうごいたのはすこしだからな)」

「(一日いちにちにつき、合計ごうけいで30ぷん連続使用れんぞくしようは3ぷんまでにおさえるなら、問題もんだいないかと。)」
「(三分さんぷん十回じゅっかいまで? それでも使つかえるっちゃ使つかえるが――――そうだ、きのう買いこんだ〝襟草えりくさ〟があるじゃねーか、いますぐよこせ!」

「(金剛力こんごうりきとおなじ理由りゆう不可能ふかのうです。その筋肉痛いたみ蘇生薬エリクサー解消かいしょうした場合ばあい短期間たんきかん筋力きんりょく低下ていかするおそれがあります。)」
 おおけがを何回なんかいなおすと、からだがよわくなんのか?

「(いいえ、筋力増大きんりょくぞうだいのメカニズム……筋力ちからをつけるときのからだのしくみと食い合います・・・・・・。)」
 わからん。

「(じゃ、どーすんだよ。こんなんじゃ、みせのかき入れどきにおれぁ、なにもできねぇじゃねーか!)」
 よこにたおれたままの、おれのみみのうえ――カチャリ♪
 さら何枚なんまいかさねはじめた美の女神こいつも――このままにしておけねえ。

「(ソレについては、ひとつかんがえがあります。)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

付喪神、子どもを拾う。

真鳥カノ
キャラ文芸
旧題:あやかし父さんのおいしい日和 3/13 書籍1巻刊行しました! 8/18 書籍2巻刊行しました!  【第4回キャラ文芸大賞 奨励賞】頂きました!皆様のおかげです!ありがとうございます! おいしいは、嬉しい。 おいしいは、温かい。 おいしいは、いとおしい。 料理人であり”あやかし”の「剣」は、ある日痩せこけて瀕死の人間の少女を拾う。 少女にとって、剣の作るご飯はすべてが宝物のようだった。 剣は、そんな少女にもっとご飯を作ってあげたいと思うようになる。 人間に「おいしい」を届けたいと思うあやかし。 あやかしに「おいしい」を教わる人間。 これは、そんな二人が織りなす、心温まるふれあいの物語。 ※この作品はエブリスタにも掲載しております。

嫌われ者の悪役令息に転生したのに、なぜか周りが放っておいてくれない

AteRa
ファンタジー
エロゲの太ったかませ役に転生した。 かませ役――クラウスには処刑される未来が待っている。 俺は死にたくないので、痩せて死亡フラグを回避する。 *書籍化に際してタイトルを変更いたしました!

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

処理中です...