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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
80:天狗(シガミー)、惡神と飯のしたく
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「人の子らよ、よく聞けぇい! このなかで炊事ができる者はおらんかぁーーっ?」
それは迫真の様子だっただろう。
化けウサギの口をこじ開け、転がり出た黒焦げ。
もとから黒いから、わかりずれえが、纏ってる物がぜんぶ煤けてる。
「テ、テェーング! よ、よくぞ無事で――炊事?」
一個大隊同等とウワサされる、S級冒険者パーティー(二名除く)。
それが苦戦し、とうとう倒せなかった強敵――角ウサギ変異種を、身を挺して屠った黒ずくめ。
勝ち誇るでもなく、安堵の息をつくでもなく――――開口一番、飯の支度の催促だ。
唖然とした顔に、取りかこまれるのも致しかたねぇ。
敵はすでに、たおれた。
安堵からか、その場の全員(約一名除く)が笑いだした。
「……まずは、落ち着きなさいな。くすくす――いったい何ごとですの?」
理解が及ばねえのは、もっともだし――わかる。
だがなぁー、笑ってる場合じゃねーんだよ!
「カカカッ――――つ、つられて笑ってる場合ではないのじゃぁ――――め、飯の支度をせねば、世界が――――!?」
その取り乱しようは、尋常ではなく。
「まさか、まだ何か居るんですの?」
周囲を警戒する一同。
「リカルルー、どういうこと? この黒い人は誰?」
合流した一本角の鬼娘が、不審がる。
姫さんたちの態度も、鬼娘の警戒も――わかる。
けど、こりゃもう、理屈じゃねぇーんだ。
そう、こりゃ暴力だ。
暴力的なまでの、飽くなき食の――――いや違うな。
五百乃大角の腹ん中に棲まう――――白虎(仮)との戦いだ。
だってよぉう――――あんたらにゃ、感じ取れねえだろうが――――すぐそこで、この世界の神であらせられる、下っ腹さまがよぉー――――
§
「ぷんすか、ぷかすか、ぽっぽこぽん♪」
「ぴんすか、ぺんすか、ぽっこぺけっ♪」
見たことのねえ、舞い。
聞いたこととのねえ、調べ。
「でっででででっででぇーーーー♪」
なんか脅かすような声色を、口ずさんだと思えば――
「兎角この世は、お名残おしいものでござ――だれだよゴリオって!」
神々の世界の物は、なにひとつわからねえ。
美の女神なりの様式っつうか――頭を叩いて舌を出すと、どこからともなく聞こえる〝誰かの笑い声〟。
ふざけてる事だけは、わかる。でも、気楽にかまえてはいられねえ。
あっちが、どれだけ楽しそうでも――こっちは無事で済むわけじゃねぇからだ。
「あぁー、そこの天狗ちゃんさぁー。ね、これ見て、見てってぇー?」
きたぞ、始まった!
よぉいぃしょぉっ!
どがっ、ごどん。
とつぜん何かを机に、積みあげた。
『救出クエスト/残り時間 2時間6分』
『討伐クエスト/残り時間 27秒』
びーどろに描かれてた、五百乃大角印のクエスト。
それと同じ文言。
それを書いた板が吊された、細長い箱……か?
「(時計です、シガミー。)」
そりゃ、わかる。
刻をはかる絡繰りだろ。
なんで、そんなもんを今ここで出して来たんだってこったよ――おれが知りてぇのは。
ぱたぱたぱたん――数字が書かれた板はひとりでにめくられ続け、どんどん減っていく。
下の『変異種発見【角ウサギ】 討伐クエスト 残り時間 00:00:27』てのが止まってんのは――たぶん、おれが角ウサギを倒したからだ。
その上に詰まれた『遠征部隊を救出せよ! 救出クエスト 残り時間 02:06:53』てのが、いま止まったのは――おそらくだが、合流した冒険者の最後尾が無事到着したからだろうな。
パパパパパパパパパパララァァァァァァァァン――――♪
いきなり騒ぎ出す時計。
「(パーフェクト達成。おめでとうございます。)」
「(あー、いま板きれにガタガタされても、面倒だから切っといてくれ)」
「(了解しました)」
パパァァァン――――グサリ、グワッシャン!
騒ぎ出した箱に、小刀を突き刺して粉砕する女神。
美の女神である、五百乃大角が、椅子から立ち上がった!
「どんがったぁんどんがったぁん、うぁうぅぉおぉわぉおぉわぉわぁぁーー♪」
どがっ、ごどん。
がしゃ、ぐしゃん。
がちゃん、ごわっちゃん。
ごっぴゅーん、ぽりょぺーん♪
何もねえ空中からつかみ出した時計を、どんどん積み上げていく。
『角ウサギの丸焼き/残り時間 2秒』
『角ウサギのステーキ/残り時間 1分』
『角ウサギの串揚げ/残り時間 10分』
『角ウサギのドラゴーラ焼き/残り時間 15分』
『角ウサギのカレー/残り時間 30分』
『角ウサギのガムラン町 残り時間 1時間』
『角ウサギのトッカータ大陸 残り時間 1時間30分』
『角ウサギの惑星ヒース 残り時間 2時間』
積みあげられたのは、8個の時計。
上にある程、刻が切れるまでの猶予が短え。
即座に『丸焼き』がピピピピ――――グサッ、ぼがぁん!
一本箸で突き刺され、粉砕される時計。
「(こりゃ、何のまねでぇい?)」
「(イオノファラーは空腹を、こじらせたようです。)」
はぁ? どーいう意味でぇい?
「これだけあたしを待たせたんだから――――おいしい物じゃなかったら、わかってるわね?」
五百乃大角が心の内を、説明してくれた。
こういうところは、惡神にしちゃ気だてが良いとおもう。
「(迅雷よぅ――)」「(はい、シガミー。)」
「(――ようするに、この〝お品書き〟の時間までは、待ってくれるって事でいーんだな?)」
「(前回の寿司を考えれば、まだ時間がある方です。)」
そうだな――
「(しかしこの、いちばん下の……惑う星てぇのはなんだ?)
「(イオノファラー流の脅し……上位権限により、非公開です。)」
ガムラン町なんかもある。
上位権限により、非公開です。
§
「(迅雷、カレーてのも飯か?)」
「(香辛料を大量に使った煮込みです。)」
「(じゃあ、それで良いだろ)」
「(手持ちの香辛料では味が作れません。)」
駄目か……ドラゴーラはここに来るまで、一本も見なかったから無理だろ?
じゃあ、その上の『角ウサギの串揚げ/残り時間 10分』一択だ。
それは迫真の様子だっただろう。
化けウサギの口をこじ開け、転がり出た黒焦げ。
もとから黒いから、わかりずれえが、纏ってる物がぜんぶ煤けてる。
「テ、テェーング! よ、よくぞ無事で――炊事?」
一個大隊同等とウワサされる、S級冒険者パーティー(二名除く)。
それが苦戦し、とうとう倒せなかった強敵――角ウサギ変異種を、身を挺して屠った黒ずくめ。
勝ち誇るでもなく、安堵の息をつくでもなく――――開口一番、飯の支度の催促だ。
唖然とした顔に、取りかこまれるのも致しかたねぇ。
敵はすでに、たおれた。
安堵からか、その場の全員(約一名除く)が笑いだした。
「……まずは、落ち着きなさいな。くすくす――いったい何ごとですの?」
理解が及ばねえのは、もっともだし――わかる。
だがなぁー、笑ってる場合じゃねーんだよ!
「カカカッ――――つ、つられて笑ってる場合ではないのじゃぁ――――め、飯の支度をせねば、世界が――――!?」
その取り乱しようは、尋常ではなく。
「まさか、まだ何か居るんですの?」
周囲を警戒する一同。
「リカルルー、どういうこと? この黒い人は誰?」
合流した一本角の鬼娘が、不審がる。
姫さんたちの態度も、鬼娘の警戒も――わかる。
けど、こりゃもう、理屈じゃねぇーんだ。
そう、こりゃ暴力だ。
暴力的なまでの、飽くなき食の――――いや違うな。
五百乃大角の腹ん中に棲まう――――白虎(仮)との戦いだ。
だってよぉう――――あんたらにゃ、感じ取れねえだろうが――――すぐそこで、この世界の神であらせられる、下っ腹さまがよぉー――――
§
「ぷんすか、ぷかすか、ぽっぽこぽん♪」
「ぴんすか、ぺんすか、ぽっこぺけっ♪」
見たことのねえ、舞い。
聞いたこととのねえ、調べ。
「でっででででっででぇーーーー♪」
なんか脅かすような声色を、口ずさんだと思えば――
「兎角この世は、お名残おしいものでござ――だれだよゴリオって!」
神々の世界の物は、なにひとつわからねえ。
美の女神なりの様式っつうか――頭を叩いて舌を出すと、どこからともなく聞こえる〝誰かの笑い声〟。
ふざけてる事だけは、わかる。でも、気楽にかまえてはいられねえ。
あっちが、どれだけ楽しそうでも――こっちは無事で済むわけじゃねぇからだ。
「あぁー、そこの天狗ちゃんさぁー。ね、これ見て、見てってぇー?」
きたぞ、始まった!
よぉいぃしょぉっ!
どがっ、ごどん。
とつぜん何かを机に、積みあげた。
『救出クエスト/残り時間 2時間6分』
『討伐クエスト/残り時間 27秒』
びーどろに描かれてた、五百乃大角印のクエスト。
それと同じ文言。
それを書いた板が吊された、細長い箱……か?
「(時計です、シガミー。)」
そりゃ、わかる。
刻をはかる絡繰りだろ。
なんで、そんなもんを今ここで出して来たんだってこったよ――おれが知りてぇのは。
ぱたぱたぱたん――数字が書かれた板はひとりでにめくられ続け、どんどん減っていく。
下の『変異種発見【角ウサギ】 討伐クエスト 残り時間 00:00:27』てのが止まってんのは――たぶん、おれが角ウサギを倒したからだ。
その上に詰まれた『遠征部隊を救出せよ! 救出クエスト 残り時間 02:06:53』てのが、いま止まったのは――おそらくだが、合流した冒険者の最後尾が無事到着したからだろうな。
パパパパパパパパパパララァァァァァァァァン――――♪
いきなり騒ぎ出す時計。
「(パーフェクト達成。おめでとうございます。)」
「(あー、いま板きれにガタガタされても、面倒だから切っといてくれ)」
「(了解しました)」
パパァァァン――――グサリ、グワッシャン!
騒ぎ出した箱に、小刀を突き刺して粉砕する女神。
美の女神である、五百乃大角が、椅子から立ち上がった!
「どんがったぁんどんがったぁん、うぁうぅぉおぉわぉおぉわぉわぁぁーー♪」
どがっ、ごどん。
がしゃ、ぐしゃん。
がちゃん、ごわっちゃん。
ごっぴゅーん、ぽりょぺーん♪
何もねえ空中からつかみ出した時計を、どんどん積み上げていく。
『角ウサギの丸焼き/残り時間 2秒』
『角ウサギのステーキ/残り時間 1分』
『角ウサギの串揚げ/残り時間 10分』
『角ウサギのドラゴーラ焼き/残り時間 15分』
『角ウサギのカレー/残り時間 30分』
『角ウサギのガムラン町 残り時間 1時間』
『角ウサギのトッカータ大陸 残り時間 1時間30分』
『角ウサギの惑星ヒース 残り時間 2時間』
積みあげられたのは、8個の時計。
上にある程、刻が切れるまでの猶予が短え。
即座に『丸焼き』がピピピピ――――グサッ、ぼがぁん!
一本箸で突き刺され、粉砕される時計。
「(こりゃ、何のまねでぇい?)」
「(イオノファラーは空腹を、こじらせたようです。)」
はぁ? どーいう意味でぇい?
「これだけあたしを待たせたんだから――――おいしい物じゃなかったら、わかってるわね?」
五百乃大角が心の内を、説明してくれた。
こういうところは、惡神にしちゃ気だてが良いとおもう。
「(迅雷よぅ――)」「(はい、シガミー。)」
「(――ようするに、この〝お品書き〟の時間までは、待ってくれるって事でいーんだな?)」
「(前回の寿司を考えれば、まだ時間がある方です。)」
そうだな――
「(しかしこの、いちばん下の……惑う星てぇのはなんだ?)
「(イオノファラー流の脅し……上位権限により、非公開です。)」
ガムラン町なんかもある。
上位権限により、非公開です。
§
「(迅雷、カレーてのも飯か?)」
「(香辛料を大量に使った煮込みです。)」
「(じゃあ、それで良いだろ)」
「(手持ちの香辛料では味が作れません。)」
駄目か……ドラゴーラはここに来るまで、一本も見なかったから無理だろ?
じゃあ、その上の『角ウサギの串揚げ/残り時間 10分』一択だ。
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