滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

７１：シガミー（元破戒僧）、七天抜刀根術七の型

「（鬼娘アイツには、おれがみえてんのか！）」

　ヴゥゥーッ♪
　地図ちずで言ったら左上いぬいの方角ほうがく。
　迅雷ジンライが〝遠とおく〟を切りとって〝近ちかく〟にして、みせてくれる。

　けど〝切りとられた枠わく〟の中なかは、ほとんどザラザラした暗闇くらやみでしかなく、人影ひとかげすらみえやしねえ。
　迅雷ジンライよか間合まあいがひろいなら、姫さんリカルルと本気まじでやりあえんじゃねぇか？
　この間あいだ、おれたちが勝てたのは正直しょうじき、迅雷ジンライが使つかった如何様いかさまのおかげだ。

「（シガミー、そろそろゴーブリンの先端せんたんが到達とうたつします）」
　天辺てっぺんにいる小鬼こおにどもが大口おおぐちをあけて、かじり付こうとしてやがる。
　おれは鯉こいの餌えさじゃねぇーぞ。

「（小太刀かたなに持ちかえて、金剛力こんごうりきだよりで切りつけても良いが――いかんせん数かずが多おおすぎらぁ！）」
　一本いっぽんだけだった小鬼櫓こおにやぐらが、いつのまにか何本なんぼんも立ち始はじめていた。

「（ゴーブリンは想定以上そうていいじょうの強敵きょうてきでした。シガミー、広範囲こうはんいにおよぶ攻撃方法こうげきほうほうはありませんか？）」
　真言マントラ――〝瀑布ばくふ火炎かえんの印いん〟で焼きはらうことはできるが、たぶんおれまで燃えちまう。

「（では――七天しちてん抜刀ばっとう根術こんじゅつの型かたに、広範囲こうはんいにおよぶものがありませんか？）」

「（三さんの型かたがあるが、百八ひゃくはちまでしか狙ねらえねえから、とても殺ころしきれねえぞ）」
　……七しちの型かたもあるにはあるが、ありゃ技わざじゃねえ。ただの自決はらきりだ。

「（――７の型かたをくわしく？）」
「（はぁ!?　てめえ、ちょっと頭あたまをよぎった言葉ことばまで、読む・・んじゃねぇよ！）」

「（時間じかんがありません――７の型かたをくわしく？）」

「ったく！　錫杖しゃくじょうを地面じめんに思おもいっきり突き刺して、地割じわれを起こし――おれごと・・・・――奈落ならくの底そこに落おっことすような技わざだ！　なっ？　つかえねえだろ!?）」

　したを見る。やっぱり来世ここは地獄じごくだ。
　小鬼こおにっていうか、緑色みどりいろの餓鬼がきの群れに、いまにも囓かじられそうだ。
　マジでやべえ。飛びかかられたら、つかまれそうなところまで、落ちてきちまった！

「（７の型かたでいきましょう。いますぐ真下ましたに放はなってください！）」
「（無理むりだぜ。どれだけ金剛力こんごうりきで跳べたところで、七の型あれを打つとおれぁたぶん、精根せいこん尽きてぶったおれる・・・・・・」

　おれに根術こんじゅつを教おしえたやつぁ、天狗てんぐと差しちがえて、七の型それで死んだしな。
　ガムラン町ちょうに落ちてきた日に、本気ほんきで差しちがえるつもりでも、七の型あれだけは使つかおうとすら思おもわなかった。

「（では、リカルル他数名ほかすうめいを――見殺みごろしにしますか？）」
　まだ、どんなことになってんのかは、わからねえじゃねぇかよ。

「（このまま落ちた場合ばあい、神力不足しんりょくぶそくでパワーアシストこんごうりきの膂力りょりょくが維持いじできなくなる確率かくりつが７０％に達たっして――――）」
　おまえの飯めしは背負せおってきただろうが！
　使用開始しようかいしまでに、３０秒必要びょうひつようですので――
　３０秒びょうだと!?　それも、さきに言っとけ！

「（――ええい、わかった！　小鬼コイツらさえ蹴散けちらしゃぁ、絶対ぜったいになんとかできるんだな!?）」
「（お任まかせください、シガミー）」
　迅雷ジンライの言うことは、全部ぜんぶが全部ぜんぶうまくいってるわけじゃねえが、乗ってやる。
　万まんが一失敗いちしっぱいしても、そいつぁまるごと、五百乃大角いおのはらのせいにできるからな！

「すっすぅー、すっすぅー、すっすぅぅぅぅーーーーっ！」
　免許めんきょ皆伝かいでんのおれでも、型かたのさいちゅうに息いきを継つぐことはできねぇ。おおめに吸う。

「ギャギャギャギュギョッ!!!」
　やかましいぞ、小鬼こおにめ！

「（七しちの構かまえ、柳ぬりご鬼たまおの――危うみやめ虚とみて。）――槍やりから南方七宿すざくまで。」
　ヒュヒュヒュヒュッヒュヒュヒヒヒュフォオン――――ゴッガァン！

　おれは構かまえをとりながら、伸びてきた小ちいせぇ腕うでを、たたき落とす！
　目印めじるしがわりに、一回いっかい打っとくか―――この錫杖しゃくじょうは定さだめて当あたる――――

「――――血怨戒ちえんかい・襲しゅう！」
　ふんぬぉりりりゃやぁぁぁぁぁぁ――――ギャリリィン――――どんっ！
　直下ちょっかへ放はなたれた錫杖しゃくじょうが――ゴバキャッ――――ドズズズゥン！

　丘おかに突き刺さっちまったが、まったく以もってかまわねえ――すぽん♪
　小鬼こおにが消しとび、錫杖しゃくじょうが消え、丘おかに亀裂きれつができた。

　――ヴッ――ジャリィン！
「（もう一度いちどだ）――槍やりから南方七宿すざくまで。」

　錫杖しゃくじょうを肘ひじまで使つかってはさみこみ――――ジャリィィィィィィィィィィィィイッィイィッンッ！
　錐きりか独楽こまのように――縦に回したねじった！

　ブォヴォォォォォォォォォォォォォォォォン――――うっわ！
　回まわりすぎだぜ、危あぶなくてつかめやしねぇ！

「（つかめねえと、印いんが結むすべねえぞ！）」
　両手首りょうてくびから、手袋てぶくろみてえな分厚ぶあつい腕かいながとびだした。

　ドッゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴゴゴッ、ゴオッ、ゴゴォォォォンッ!!!
　回転かいてんのいきおいで跳ねまわる錫杖しゃくじょうを――――手袋かいなで押さえこまねえといけねえ！

「あとは、どうなってもしらんぞぉー!?」
　ギャリッ、ギャリィィィィィィィィィィィィィィィィンッ――――ギュギャギャギャギャギャリリリリリィィンッ！

　うるっせぇぇぇーーーーっ！
　ずざぁっ――丘を踏みしめるでぇいりゃあああああ――がきっん！

　どうにか抑おさえこんだが――――ざりざりざりりぃーーーーーーーーっ！
　いきおいあまって一回転いっかいてん。

　おれの靴跡あしできれいな・・・・円まるが、錫杖しゃくじょうを取りかこむように描えがかれた。
　ひょっとしたら、こいつが悪わるかった……いや、効きすぎた・・・・・のかもしれねえな。

　重心じゅうしんがえがいた円えんのちからを、まっすぐ突きささる根ぼうから、地面に・・・つたえきった。
　小鬼こおにどもが、縦横無尽じゅうおうむじんにはしる亀裂きれつにふきとばされたり、飲み込まれたりしてる。

　ふかく突き刺さった錫杖しゃくじょうを、かかえた手。
　おれは――印いんを結むすぶ。
　これに真言マントラはのらねえが、あるのとないので威力いりょくがなんでか変わる――

「――滅めっせよ！」
　ゴガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッドッズズズズズズズムン！

　ふわぁり――気がとおくなる。
　精魂せいこんをつかい果たしたからだ――こりゃ、マジで死ぬんじゃねえか？

　地面じめんに着地ちゃくちしたはずが、また空中ちゅうに放ほうり出されてる。
　ちがうか、んう？
　わかった……丘おかの底そこが、まるごと抜けやがった・・・・・・――ガムラン町ちょう一個分いっこぶんくらいあんじゃねえのかこりゃ……横にも縦にも・・・・・・。

　ふにゃり――――最後さいごにあたまに浮かんだのは、レイダとリオの怖こえぇ顔かおだった。





















「（シガミー？　――――――使用者マスターのバイタルサインに、看過かんかできない異常値いじょうちを検出けんしゅつ。）」

　ふぉふぉふぉふぉっふぉおふぉふぉふぉぉぉぉぉん♪♪♪
『緊急時戦術プロトコル作動
　＞ＷｅｔＷａｒｅＩＤ＃４４Ｇａ３
　　対象アドレス：生体デバイス個体シガミー内／不随意記憶領域内／……／……
　＞Ｃｒｅａｔｅｄ　ｂａｃｋｄｏｏｒ　ｔｏ　ｒｏｏｍ　＃４４Ｇａ３