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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
63:シガミー(元破戒僧)御一行様、アーティファクト整備と不穏な知らせ
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カチャカチャ、チキキ、ヴォヴォフォォォン♪
客が来ない店内。
いそがしそうに、飛びまわる迅雷。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
鳥顔の仮面を分解していく迅雷。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
――白い仮面の中には、赤黄緑紫青黒の板、網目の板、ビードロの板なんかが、押しこめられていて――剥がしても剥がしてもつぎが出てくる。
樹木の皮を剥いでるみてぇだった。
「なげぇな。まだかかんのか?」
作業台のうえは、仮面の裏から出てきた、いろんな色形で満杯になった。
出だしは面白かったが、中身は板しかねえ。
ぴょん――♪
飽きたレイダが、リオレイニアの膝にとびのった。
子供だな。
そういや、おれもまだ子供だったな……なんでか白布袋頭に、とびつきたくなってきた。
こ、これはしかたねえ。〝迅雷式隠れ蓑〟は――リオの仮面みてえな〝本式〟じゃねえからどうしたって、リオの色香には惑わされちまう。
「はい、全部で216枚の積層構造になっテいますので。推定終了時刻は約7分後になりマす」
「お手数おかけして、申しわけありませんね」
リオが棒に詫びを入れる。子供はおとなしく抱きかかえられている。
「いイえ、他にやるコともありませんし。いつもシガミーがお世話にナっている、せめテものおれいです――(シガミー?)」
「(どうしたぁ?)」
「(ファームウェアならびにAOSの更新により、〝機能拡張〟が可能ですがいかが致しますか?)」
「(拡張……もっと便利になるやつだな? 何ができる?)」
「(現在備えている機能が〝魅了の神眼〟を封印する〝魔眼殺し〟。そして、〝近接透視〟です」
わからん。
「(〝隠形〟と〝天眼通〟とお考えください。それに類する機能ならば効率よく搭載できます)」
ならわかる。
「リオ。この仮面にあたしい機能を、足せるらしいんだが――なんか欲しいのあるか? 何かから隠れたり、見通すようなのだとすぐ出来るぞ?」
「あたらしい力ですか?」
レイダを抱えなおす……まるで母上だな。
そして、おれもそろそろやべえ。リオのひざに、よじ登りたい衝動に、あらがえなくなってきた。
おれは近くに何枚かおいてあった白袋(目穴付き)を、頭からかぶった。
目の部分の、黒い網目。
〝迅雷式隠れ蓑〟には、たしかに効果があった。
「お?(気持ちが落ちついたぞ)」
「(縫製上の都合で、編み目が粗くなっていたのですが、二枚重ねにすれば改善されるようです)」
「隠れたり、見通すような力? ……まるでお嬢さまのフル装備のようでございますね……」
それ、言っちゃって良いのか?
もう、おれたちには、ばれてるけどな。
「あ、そうでしたわ。その仮面は、お嬢さまの甲冑の一部をゆずり受けたものですので……似ているのは、当然かも知れません」
「なるほどな。あの赤と黄と白の派手な甲冑は、この仮面込みで一揃えだったか」
カチャカチャ――ふぉん♪
とつぜん、びーどろが張りついた。
「(おどかすな!)」
迅雷は、いま作業台の上だ。
どっから腕が生えてきたのかと思ったら、机の脚を伝って床に落ちた腕が、靴をはい上ってた。
水みてえな振るまいが、ちと気色が悪い。
ヴュパパ♪
映しだされたのは、やおら立つ甲冑姿。
戦ったときの姿だ。ソレを見たら納得した。
いま迅雷が分解してる仮面と、作りがまるで同じだった。
「それで、仮面にできそうなことで、欲しい力はねえか? ――うぉら」
リオレイニアにしがみつく子供に、白袋をかぶせた。
ゆっくりと、からだを離し、べつの椅子に腰掛けるレイダ。
正気に戻ったらしい。
「(暗視ならびに気配察知……)夜眼がきイたり、かべ向こウの敵味方の影を見られルようになります」
「まあ、それは――狩りがとても、はかどりそうですわね♪」
やさしく手をたたいて、よろこびを表現する仕立ての良い給仕服。
もっと物騒なことに、つかえる機能だ。
たぶん彼女が、これを使いこなしたら、おれたちや鬼娘、姫さんにだって、手に負えなくなるんじゃねぇかと、思わないでもねぇ。
けど、それでも全く、かまわん。
『シガミー御一行様』が強くなるに、越したことはねぇからだ。
「迅雷それって、ウチのお父さんの〝眼鏡〟もできるの?」
「ギルド長の眼鏡は、温度か魔力の流れを視覚化していると思われますので、あまり意味がないと思われます」
「そぅなんだ。しょぼん」
椅子のうえで、膝をかかえる子供。
「もチろん普通に整備すルことは、できマすよ。ぜひ一度、ご来店なさルようお伝えねがえまスか?」
「そぅなんだ。言っておくね!」
落ちこんでたのが、一瞬でなおった。
話の内容……眼鏡は、どうでも良いんだな。
ふぉルるォらレぃ!
ふォるるぉられィ!
フぉるルぉラれぃ!
とつぜん店内に響く、聞きなれねぇ音!
「な、なんだこの音わぁ!?」
腹のあたりから、聞こえてきたぞ!?
「(冒険者カードを使った、緊急時連絡網のようです)」
銀の板の表側。名前が書いてねえ方。
ギルドの家紋の下には、こんな文字が浮かびあがっていた。
『緊急のお知らせ
魔物境界線保全部隊よりの連絡が途絶えました。』
ーーー
隠形/呪術で姿を隠すこと。
天眼通/普通の人が見られない事柄を見通せること。千里眼。
客が来ない店内。
いそがしそうに、飛びまわる迅雷。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
鳥顔の仮面を分解していく迅雷。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
ぱかり――チチチピッ♪
キュキュゥゥィィン、カチカチカチリ。
――白い仮面の中には、赤黄緑紫青黒の板、網目の板、ビードロの板なんかが、押しこめられていて――剥がしても剥がしてもつぎが出てくる。
樹木の皮を剥いでるみてぇだった。
「なげぇな。まだかかんのか?」
作業台のうえは、仮面の裏から出てきた、いろんな色形で満杯になった。
出だしは面白かったが、中身は板しかねえ。
ぴょん――♪
飽きたレイダが、リオレイニアの膝にとびのった。
子供だな。
そういや、おれもまだ子供だったな……なんでか白布袋頭に、とびつきたくなってきた。
こ、これはしかたねえ。〝迅雷式隠れ蓑〟は――リオの仮面みてえな〝本式〟じゃねえからどうしたって、リオの色香には惑わされちまう。
「はい、全部で216枚の積層構造になっテいますので。推定終了時刻は約7分後になりマす」
「お手数おかけして、申しわけありませんね」
リオが棒に詫びを入れる。子供はおとなしく抱きかかえられている。
「いイえ、他にやるコともありませんし。いつもシガミーがお世話にナっている、せめテものおれいです――(シガミー?)」
「(どうしたぁ?)」
「(ファームウェアならびにAOSの更新により、〝機能拡張〟が可能ですがいかが致しますか?)」
「(拡張……もっと便利になるやつだな? 何ができる?)」
「(現在備えている機能が〝魅了の神眼〟を封印する〝魔眼殺し〟。そして、〝近接透視〟です」
わからん。
「(〝隠形〟と〝天眼通〟とお考えください。それに類する機能ならば効率よく搭載できます)」
ならわかる。
「リオ。この仮面にあたしい機能を、足せるらしいんだが――なんか欲しいのあるか? 何かから隠れたり、見通すようなのだとすぐ出来るぞ?」
「あたらしい力ですか?」
レイダを抱えなおす……まるで母上だな。
そして、おれもそろそろやべえ。リオのひざに、よじ登りたい衝動に、あらがえなくなってきた。
おれは近くに何枚かおいてあった白袋(目穴付き)を、頭からかぶった。
目の部分の、黒い網目。
〝迅雷式隠れ蓑〟には、たしかに効果があった。
「お?(気持ちが落ちついたぞ)」
「(縫製上の都合で、編み目が粗くなっていたのですが、二枚重ねにすれば改善されるようです)」
「隠れたり、見通すような力? ……まるでお嬢さまのフル装備のようでございますね……」
それ、言っちゃって良いのか?
もう、おれたちには、ばれてるけどな。
「あ、そうでしたわ。その仮面は、お嬢さまの甲冑の一部をゆずり受けたものですので……似ているのは、当然かも知れません」
「なるほどな。あの赤と黄と白の派手な甲冑は、この仮面込みで一揃えだったか」
カチャカチャ――ふぉん♪
とつぜん、びーどろが張りついた。
「(おどかすな!)」
迅雷は、いま作業台の上だ。
どっから腕が生えてきたのかと思ったら、机の脚を伝って床に落ちた腕が、靴をはい上ってた。
水みてえな振るまいが、ちと気色が悪い。
ヴュパパ♪
映しだされたのは、やおら立つ甲冑姿。
戦ったときの姿だ。ソレを見たら納得した。
いま迅雷が分解してる仮面と、作りがまるで同じだった。
「それで、仮面にできそうなことで、欲しい力はねえか? ――うぉら」
リオレイニアにしがみつく子供に、白袋をかぶせた。
ゆっくりと、からだを離し、べつの椅子に腰掛けるレイダ。
正気に戻ったらしい。
「(暗視ならびに気配察知……)夜眼がきイたり、かべ向こウの敵味方の影を見られルようになります」
「まあ、それは――狩りがとても、はかどりそうですわね♪」
やさしく手をたたいて、よろこびを表現する仕立ての良い給仕服。
もっと物騒なことに、つかえる機能だ。
たぶん彼女が、これを使いこなしたら、おれたちや鬼娘、姫さんにだって、手に負えなくなるんじゃねぇかと、思わないでもねぇ。
けど、それでも全く、かまわん。
『シガミー御一行様』が強くなるに、越したことはねぇからだ。
「迅雷それって、ウチのお父さんの〝眼鏡〟もできるの?」
「ギルド長の眼鏡は、温度か魔力の流れを視覚化していると思われますので、あまり意味がないと思われます」
「そぅなんだ。しょぼん」
椅子のうえで、膝をかかえる子供。
「もチろん普通に整備すルことは、できマすよ。ぜひ一度、ご来店なさルようお伝えねがえまスか?」
「そぅなんだ。言っておくね!」
落ちこんでたのが、一瞬でなおった。
話の内容……眼鏡は、どうでも良いんだな。
ふぉルるォらレぃ!
ふォるるぉられィ!
フぉるルぉラれぃ!
とつぜん店内に響く、聞きなれねぇ音!
「な、なんだこの音わぁ!?」
腹のあたりから、聞こえてきたぞ!?
「(冒険者カードを使った、緊急時連絡網のようです)」
銀の板の表側。名前が書いてねえ方。
ギルドの家紋の下には、こんな文字が浮かびあがっていた。
『緊急のお知らせ
魔物境界線保全部隊よりの連絡が途絶えました。』
ーーー
隠形/呪術で姿を隠すこと。
天眼通/普通の人が見られない事柄を見通せること。千里眼。
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