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1:輪廻転生、おいでませガムラン町
51:冒険者パーティー『シガミー御一行様』、リオレイニアがあらわれた
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「シガミーがおしえてくれた、お寿司をまた作ってみたのですけれど――――」
「そんなことより、うちのシガミーがごめんなさい!」
ほら、シガミーもあやまって!
おれを押し倒し、草原に這いつくばる子供。
子供とはいえ、この世界の先輩だ。
ときどき頼りにならねえこともねえし、言うことをきいておく。
せっかくひろった来世だ、もうすこし生きて見てまわりてえ。
レイダのまねをして、組んだ手を鼻につけ、這いつくばる。
「けど、オスーシって何? ちょっときになる……ひそひそ」
たよりになる先輩が、顔をこっちに向けて話しかけてくる。
気を散らすんじゃねえ。やっぱ子供だな。
それにしても、五百乃大角といい鬼娘といい、ここの女どもは、やたらと食い意地がはってる気がする。
「(シガミー。〝五百乃大角〟は美をあらわす字句として辞書登録されています。大食漢という文脈には不適切と思われます)」
「うるせえな、てめえはだぁってろい……ひそひそ」
「ちょっと、シガミー! 黙ってろってどういうコト!?」
「あ、いやおめえに言ったんじゃなくてな――」
また声に出ちまった。
「わ、私には、なにがなにやらわかりま――――」
急にはいつくばったと思ったら、突然ケンカをはじめる子供ども。
そりゃ、困った顔をさせるに決まってらぁ。
§
「驚かせないでくださいませ。そのことでしたら、先ほどリカルルさまと、お話ししてきましたよ」
「な、なんでえ。姫さんも、いちおう許してはくれたし、心配はしてなかったんだがよ……ふぅーっ!」
よし、崖っぷちだが生きのびたぜ。
「(けど迅雷、念のため姫さんのアレを抜くことを当座の目標にするぞ)」
「(はい。最優先項目……〝おお急ぎ〟に設定しました。しかしまだ〝不可視の剣尖〟……見えない切先の解析中……頓知が終了するまで約6時間、お待ちください)」
「(六時間……三刻だな。いいぜ。そんだけ待ちゃ、あの〝間がねえ剣〟を止められるってんなら、安いもんだ)」
よしよし。とにかく何がなんでもいきのびる。
万が一、何ひとつ手がねえってときは、なごり惜しいが、ガムラン町とこいつらはあきらめる。
隣町にゃ子供もたくさん居るから、まぎれることくれえできんだろ。
五百乃大角には、隣町名物のうまいものを食わせ……供えときゃ、文句も言わねえだろうしな。
「――――はい、これで私も晴れて、冒険者パーティー『シガミー御一行様』の一員です」
胸元からむにゅりと取りだされたそいつは、おれやレイダの木の板とは違っていた。
『リオレイニア・サキラテ LV:47――』
小判みてえな黄金のかがやき。
『――|魔法使い★★★★ /簡易詠唱/全属性使用可能/ロックオン無効/レンジ補正/クリティカル発生率補正/魅了の神眼/女神の加護/女神の祝福――』
やたらとたくさん付いてる技能。その最後。
『――所属:シガミー御一行様』
おれが言った冗談をレイダが、むりやりパーティー名に登録しちまったのと――同じ名。
「「はぁーーーーっ!?」」
§
「ちょっとまて? どうしてそうなった!?」
「リカルルさまのご友人のオルコトリアさんに、ご相談いたしましたところ――――」
イヤな予感しかしねえ。
「「そりゃ、おもしろい事になりそうね~♪」と、その場で手続きをしていただきました。お嬢さまには、すでにご了解をいただいてありましたし――」
〝ご了解をいただいてありましたし?〟
だらだらだらだらり。
脂汗がとまらねえ。
「LV差でパーティは組めないはずじゃ!?」
そうだ、いってやれレイダ。
おれたちのLVは6と7。リオレイニアは47。40も差がある。
「レベル差が解消されるまでは、私が得る経験値は自動的に、お金に変換されます。その変換率が――「(割合のことです)」――とても少ないので、事実上できないと言われているだけだったようです」
「そ、そう……なのぅ? なら、リオレイニアさんが入ってくれるなら、ものすごくうれしいけど……ちらり」
こっちみんな、先輩。
そして、もっとちゃんと姫さんの――
お貴族さまの腹ん中と面子と金勘定の機微ってもんを――
考えろってんだ。
おれも見誤ってたが。
「つきましてはパーティー加入の、ご了承をいただきたく存じます♪」
「「ご了承?」」
ふたたび差しだされた金ぴかを、よーくみる。
『所属:シガミー御一行様』
なんか文字が、薄くなったり濃くなったりしてやがる。
薄くなったときに、刻印済みの『聖剣切りの閃光』の文字がかすかに浮かぶ。
なんとなくだ。
それはほんとうに言葉にできねえほどの――微かさ。
気の迷いみてぇな――それでも、あらがえねぇ気配。
そんなのに突きうごかされて、かるく横に飛ぶと――――
――――ィン!
おれが居たところの景色が斜めにずれた。
――――ぼこり。
へこむ草地。
――――ィイィイィン!
――――ぼこぼこっぼこり。
だっだっだだだだっ!
もう止まれねえ。止まったら――――まっぷたつになっちまう。
「(迅雷!)」
「(はい、シガ――――)」
――――――――ィィィィィィィィッィィィィィィィィイイイイイイイインンンンッ!!!
迅雷の内緒話に割りこんできた存在感!
背後の、ずっと遠くの森の木々が、なぎ倒された。
「そんなことより、うちのシガミーがごめんなさい!」
ほら、シガミーもあやまって!
おれを押し倒し、草原に這いつくばる子供。
子供とはいえ、この世界の先輩だ。
ときどき頼りにならねえこともねえし、言うことをきいておく。
せっかくひろった来世だ、もうすこし生きて見てまわりてえ。
レイダのまねをして、組んだ手を鼻につけ、這いつくばる。
「けど、オスーシって何? ちょっときになる……ひそひそ」
たよりになる先輩が、顔をこっちに向けて話しかけてくる。
気を散らすんじゃねえ。やっぱ子供だな。
それにしても、五百乃大角といい鬼娘といい、ここの女どもは、やたらと食い意地がはってる気がする。
「(シガミー。〝五百乃大角〟は美をあらわす字句として辞書登録されています。大食漢という文脈には不適切と思われます)」
「うるせえな、てめえはだぁってろい……ひそひそ」
「ちょっと、シガミー! 黙ってろってどういうコト!?」
「あ、いやおめえに言ったんじゃなくてな――」
また声に出ちまった。
「わ、私には、なにがなにやらわかりま――――」
急にはいつくばったと思ったら、突然ケンカをはじめる子供ども。
そりゃ、困った顔をさせるに決まってらぁ。
§
「驚かせないでくださいませ。そのことでしたら、先ほどリカルルさまと、お話ししてきましたよ」
「な、なんでえ。姫さんも、いちおう許してはくれたし、心配はしてなかったんだがよ……ふぅーっ!」
よし、崖っぷちだが生きのびたぜ。
「(けど迅雷、念のため姫さんのアレを抜くことを当座の目標にするぞ)」
「(はい。最優先項目……〝おお急ぎ〟に設定しました。しかしまだ〝不可視の剣尖〟……見えない切先の解析中……頓知が終了するまで約6時間、お待ちください)」
「(六時間……三刻だな。いいぜ。そんだけ待ちゃ、あの〝間がねえ剣〟を止められるってんなら、安いもんだ)」
よしよし。とにかく何がなんでもいきのびる。
万が一、何ひとつ手がねえってときは、なごり惜しいが、ガムラン町とこいつらはあきらめる。
隣町にゃ子供もたくさん居るから、まぎれることくれえできんだろ。
五百乃大角には、隣町名物のうまいものを食わせ……供えときゃ、文句も言わねえだろうしな。
「――――はい、これで私も晴れて、冒険者パーティー『シガミー御一行様』の一員です」
胸元からむにゅりと取りだされたそいつは、おれやレイダの木の板とは違っていた。
『リオレイニア・サキラテ LV:47――』
小判みてえな黄金のかがやき。
『――|魔法使い★★★★ /簡易詠唱/全属性使用可能/ロックオン無効/レンジ補正/クリティカル発生率補正/魅了の神眼/女神の加護/女神の祝福――』
やたらとたくさん付いてる技能。その最後。
『――所属:シガミー御一行様』
おれが言った冗談をレイダが、むりやりパーティー名に登録しちまったのと――同じ名。
「「はぁーーーーっ!?」」
§
「ちょっとまて? どうしてそうなった!?」
「リカルルさまのご友人のオルコトリアさんに、ご相談いたしましたところ――――」
イヤな予感しかしねえ。
「「そりゃ、おもしろい事になりそうね~♪」と、その場で手続きをしていただきました。お嬢さまには、すでにご了解をいただいてありましたし――」
〝ご了解をいただいてありましたし?〟
だらだらだらだらり。
脂汗がとまらねえ。
「LV差でパーティは組めないはずじゃ!?」
そうだ、いってやれレイダ。
おれたちのLVは6と7。リオレイニアは47。40も差がある。
「レベル差が解消されるまでは、私が得る経験値は自動的に、お金に変換されます。その変換率が――「(割合のことです)」――とても少ないので、事実上できないと言われているだけだったようです」
「そ、そう……なのぅ? なら、リオレイニアさんが入ってくれるなら、ものすごくうれしいけど……ちらり」
こっちみんな、先輩。
そして、もっとちゃんと姫さんの――
お貴族さまの腹ん中と面子と金勘定の機微ってもんを――
考えろってんだ。
おれも見誤ってたが。
「つきましてはパーティー加入の、ご了承をいただきたく存じます♪」
「「ご了承?」」
ふたたび差しだされた金ぴかを、よーくみる。
『所属:シガミー御一行様』
なんか文字が、薄くなったり濃くなったりしてやがる。
薄くなったときに、刻印済みの『聖剣切りの閃光』の文字がかすかに浮かぶ。
なんとなくだ。
それはほんとうに言葉にできねえほどの――微かさ。
気の迷いみてぇな――それでも、あらがえねぇ気配。
そんなのに突きうごかされて、かるく横に飛ぶと――――
――――ィン!
おれが居たところの景色が斜めにずれた。
――――ぼこり。
へこむ草地。
――――ィイィイィン!
――――ぼこぼこっぼこり。
だっだっだだだだっ!
もう止まれねえ。止まったら――――まっぷたつになっちまう。
「(迅雷!)」
「(はい、シガ――――)」
――――――――ィィィィィィィィッィィィィィィィィイイイイイイイインンンンッ!!!
迅雷の内緒話に割りこんできた存在感!
背後の、ずっと遠くの森の木々が、なぎ倒された。
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