滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

４７：魔法使いの弟子（破戒僧）、魔法と酒瓶

「リオ、こっちは五百乃大角いおのはら。美の女神めがみとか言われてる」
　組んだ手を鼻はなにおしあて、ひざまつく白いのリオレイニア。

「イオノファラーです。シガミー。」

「いーのいーのっ♪　そんなにかしこまらないでいーのよぉーほぉーん♡」
　なでなでなでなで、白いのリオレイニアのあたまを執拗しつようになでくる、美の女神いおのはら。
　まだ、化かされたままじゃねーか、まったく。

「五百乃大角いおのはら、こっちはリオレイニア、さっき話はなしにでただろ、領主りょうしゅの娘むすめのお付きで、すげえ腕うでの魔術師まじゅつしだ。

「（イオノファラーです。シガミー。）」
「（迅雷ジンライ、〝い・お・の・は・ら〟ってのは、おれの思おもいっきりの美うつしさのあらわしかただと思おもえ、わかったか？）」

「（了解りょうかいしました、シガミー。）」

「私わたくしは魔術師まじゅつしではありません。魔法使まほうつかいでございます」
「ん？　森もりでカミナリ落としたろ？　ありゃ高位こういの魔術まじゅつってやつじゃねーのか」

「乾燥かんそうの魔法まほう＋ぷらす風の魔法＋ぷらす土つちの魔法まほうの混合魔法ミックスね？　フフフッ♪」

　五百乃大角いおのはらが呪言じゅごんをはく。
　なんのまじないだそりゃ。

「はい、その通とおりにございます。イオノファラーさま」
　あわてたようすで顔かおをあげ、ふたたびひざまつく魔法使まほうつかい。

「こりゃどっちが凄すげえってはなしだ？　わかるか迅雷ジンライ？」
「ＭＰマジックポイントの消費しょうひとくらべて、莫大ばくだいな効果こうかを達成たっせいしています。リオレイニアの魔法まほうは物理ぶつり法則ほうそくにもとづいた科学かがくでもあります」

「じゃ、白いのリオがすげえってこったな」
「いえ、それを一瞬いっしゅんで見抜みぬくイオノファラーも、甲乙付こうおつつけがたく――」

「――そんなに褒ほめなくてもいいわよぉー。だって、『魔法まほうの取とり扱あつい』の頁ぺーじにちゃんと書いてあるもの♪」
　迅雷ジンライが黙だまった。それで、なんとなく虎とらの巻まきでも盗ぬすみ見たってのがわかった。
　ここは、ひざまづき続つづけるリオレイニアに免めんじて、聞かなかったことにしといてやる。

　　　§

　ならんで座すわるおれたち、反対はんたいがわに美いおの女神はら。テーブル中央には、酢入すいりの酒瓶さかびん。

「よーし、じゃあそろそろ、おれの酒さけをドコにやったかきかせてもらおうか」
　はなしを強引ごういんにもどす。

「それについては、私わたくしに心当こころあたりがございます。」
　テーブルの端はしに置いといた迅雷ぼうがころがりでた。

　ごろごろごろ――酢入すいりの酒瓶さかびんに――ぶつかるガチーン♪

「イオノファラー。この瓶びんを復元ふくげんするときに、中身なかみを満杯まんぱいにする演算式えんざんしきをどのように記述きじゅつしましたか？」

「どーだったかしらねっ……元もとどおりにするって記述きじゅつしたけどっ？」
　むくれた顔が、「あたしのぉーご・は・んわぁ～!?」といっている。

「この構文こうぶんだと、満杯まんぱいにする＝イコール過去かこに満みたされていた液体えきたいになり、近似きんじの値あたいしか収得しゅうとくできません。」

「だって、酒瓶さかびんのなかみは、お酒さけにきまってるじゃないよ？」
「イオノファラーは正規表現せいきひょうげんの基礎きそを勉強べんきょうしてください」

　横目よこめで見たら、白いのリオレイニアが、面めんごしでもわかるほど、むずかしい顔かおをしてた。
　いきなりこんな状況じょうきょうに放ほうり込こまれたらわけもねえ。

「いつにもましてなに言ってんのか、さっぱりわからねえが、ようは五百乃大角いおのはらが雑ざつな仕事しごとをしたせいで、おれの酒さけが酢すになっちまったって訳わけだな？」
　おれはひじをどかり・・・とテーブルにのせる。

「う、ううううるさいわね！　そもそも割われちゃったのを戻もどしてあげたんだから感謝かんしゃなさーぁい。気に入らなければ、割わってほっとけば次の朝には、別べつの中身なかみが出てくるからっ、もぉーーーーいーでしょ！　ごぉはぁんぅ～～～～！」
　美びの女神めがみは子供ガキか？
　けど――

「シガミー、酒瓶さかびんを割われば、自動的じどうてきに修復しゅうふくされますが、なかみは元もとの清酒せいしゅになるかどうかはわかりません。」

「ん？　酒さけになるときもあんのか？」

「中なかに入はいっていた事ことのある液体えきたいのなかからランダム……手当てあたり次第しだいに再現さいげんされます。」

「入はいってた事ことがあるだぁ？　酒さけじゃねえとすると、いま入ってる酢すのほかに入はいってたかもしれねえのはぁ……水みずとか料理りょうりにつかう、ごま、ざらめ、油、塩、しょうゆ、みそ、みりんくれえか――――博打ばくちじゃんかよ！」

　〝香味庵こうみあん〟の女将おかみは酒瓶さかびんがなくなるたびに、空から瓶びんに店みせの名なぁ書いてやがったしなぁ。

「はい、イオノファラーが皆みなに告つげます。あと１０分でおいしい、ごはんが出てこなかったら、この世界せかいがおわりにします！」
　どっからか出した、一本箸フォークと小刀こがたなでテーブルを叩たたきだしやがった。
　あと、「します」ってなんだ！

　ひょっとしたらと思おもっちゃいたが、やっとわかった。
　美の女神こいつは子供ガキだ、見みた目めどおりの子供ガキ！

「さあ、ごはんかぁー、最終回さいしゅうかいかぁー、ふたつにひとぉーつ！」
　どかどかどかどかどっかんかん♪
　やかましぃー！

　ガタッ――――美の女神イオノファラーさま、なにとぞおゆるしを～～ガタガタガタガタッ！
　ほれみろっ、白いのリオレイニアが恐おそれおののいちまったじゃねーか！