40 / 739
1:輪廻転生、おいでませガムラン町
40:魔剣イヤーイ使い(幼女)、小屋に住もう
しおりを挟む
「え? ここに住むの!?」
おれがこわした屋根には、厚手のぼろ布がかぶせてある。
どうせ中身はぜんぶ鍛冶工房に持ってっちまったから、からっぽだけどな。
「おうよ。宿屋でまいにち金を取られるくれえなら、ここに住んだ方がよっぽどいいぜ。なあ、迅雷」
「はい、シガミー。こコに居をかまえるナら、じかに充電……神力補充が可能ですのデ、ギルドの女神像を停止させル心配がなくナります」
ギルドのとんがり屋根からのびた太縄は、小屋のよこに立つ柱にくくりつけられ、となりの草地に突き刺さっている。
§
物置小屋が、ごそりと消える。
光の升目があらわれたとおもったら、また物置小屋が――どすん!
「一瞬で綺麗になっちゃった……こわれた屋根もなおったし!」
例の迅雷の〝汚れをおとす達人〟――物をしまう魔法の応用だ。
こわれた屋根がなおったのは、なんでかわからねえが。
「(格納時に元素単位の量子記述的な再配置をおこないました。そして展開時にナノミリメートル以下の精度で物理的に再配置したことによる破損箇所の――)」
「(やめろっ! 無遠慮か! おめえ、どうせわからねえにしても、あきらめすぎだ! おれにもわかるように説明する努力をしやがれ、努力をよぉ!)」
おれは屋根にかかってたぼろ布を、がらんとした小屋のなかに敷いた。
「(失礼いたしました…………ひとつの物、たとえば木や石や鉄など、おなじ種類の物なら、大きな塊にして取りだすことができます)」
よいしょっと――そとに置いておいた木箱を、レイダが運んでくれた。
「わりい、たすかる」
いかんせん、子供には体力ってモンがねえ。
「(塊……おなじ種類の塊ってぇことぁ…………じゃあ、こわれた屋根……バラバラになった木の板を、いったん仕舞って、元どおりの屋根を取りだした……ってぇの……か?)」
「(はい。その認識……かんがえであっています。イオノファラーも感心していましたが、シガミーは〝天正生まれ〟にあるまじき理解力……頓知がきくようです)」
「(おれぁくさっても坊主だったからな。かんがえるのが仕事の半分だ)」
どかどかどかッ!
「(のこりの半分は?)」
どかどかどかん、どずんッ!
「(……目のまえにあらわれる全部を、呑みこむこったよ)」
あいた扉のむこう。
うずたかく積み上げられた、道具や荷物や資材。
その頂点に立てられたのは、狐耳の剣に付いてたのとおなじ紋章の旗。
「「こんなことになるんじゃないかとは、おもったのよねぇー」」
仁王立ちの受付嬢がふたり。
ひとりはかるく、もうひとりはふかーく、ため息をついた。
§
「はーい、その戸棚はコッチ!」
号令は一本角。
へぇーい。どかどかどか!
したがうはニゲルや常連客。
「じゃあ、その浴槽と、おトイレはひとまず仮置きで良いから組んじゃってー!」
こっちの号令は、ねじり鉢巻きの狐耳。
よーし、仕事に取りかかるぞ!
したがうは工房でみた小柄な連中と、姫さん付きの厳つい護衛が一名。
ぱたばたん、ぎーこぎーこぎーこ、とんてんかんてん、どっがんがん!
くちをはさむ暇もなかった。
一刻……30分で完成する、おれの新居。
§
「いっやぁ、掃除に時間かかると思ってたけど、綺麗になってたから一瞬でできちゃったわねぇ~♪」
率先して指揮を取った受付嬢(戦闘狂)が紅茶をすすってる。
「がははははっ♪」
「わははははっ♪」
「わけえの、この茶菓子うめえぞ、もっと食え!」
「は、はい、どうも」
がやがやがや。
姫さんのお付きの白っぽい装束のやつが、みんなの茶の用意までしてくれた。
姫さんには、あらめて礼くらい言っとかねえとな。
「そうねぇ、屋根まで直ってたし――迅雷の汚れ落としは本っ当に使えるわねぇー」
受付嬢(鬼)が獲物を見るような目で、おれの相棒を見つめている。
おれがこわした屋根には、厚手のぼろ布がかぶせてある。
どうせ中身はぜんぶ鍛冶工房に持ってっちまったから、からっぽだけどな。
「おうよ。宿屋でまいにち金を取られるくれえなら、ここに住んだ方がよっぽどいいぜ。なあ、迅雷」
「はい、シガミー。こコに居をかまえるナら、じかに充電……神力補充が可能ですのデ、ギルドの女神像を停止させル心配がなくナります」
ギルドのとんがり屋根からのびた太縄は、小屋のよこに立つ柱にくくりつけられ、となりの草地に突き刺さっている。
§
物置小屋が、ごそりと消える。
光の升目があらわれたとおもったら、また物置小屋が――どすん!
「一瞬で綺麗になっちゃった……こわれた屋根もなおったし!」
例の迅雷の〝汚れをおとす達人〟――物をしまう魔法の応用だ。
こわれた屋根がなおったのは、なんでかわからねえが。
「(格納時に元素単位の量子記述的な再配置をおこないました。そして展開時にナノミリメートル以下の精度で物理的に再配置したことによる破損箇所の――)」
「(やめろっ! 無遠慮か! おめえ、どうせわからねえにしても、あきらめすぎだ! おれにもわかるように説明する努力をしやがれ、努力をよぉ!)」
おれは屋根にかかってたぼろ布を、がらんとした小屋のなかに敷いた。
「(失礼いたしました…………ひとつの物、たとえば木や石や鉄など、おなじ種類の物なら、大きな塊にして取りだすことができます)」
よいしょっと――そとに置いておいた木箱を、レイダが運んでくれた。
「わりい、たすかる」
いかんせん、子供には体力ってモンがねえ。
「(塊……おなじ種類の塊ってぇことぁ…………じゃあ、こわれた屋根……バラバラになった木の板を、いったん仕舞って、元どおりの屋根を取りだした……ってぇの……か?)」
「(はい。その認識……かんがえであっています。イオノファラーも感心していましたが、シガミーは〝天正生まれ〟にあるまじき理解力……頓知がきくようです)」
「(おれぁくさっても坊主だったからな。かんがえるのが仕事の半分だ)」
どかどかどかッ!
「(のこりの半分は?)」
どかどかどかん、どずんッ!
「(……目のまえにあらわれる全部を、呑みこむこったよ)」
あいた扉のむこう。
うずたかく積み上げられた、道具や荷物や資材。
その頂点に立てられたのは、狐耳の剣に付いてたのとおなじ紋章の旗。
「「こんなことになるんじゃないかとは、おもったのよねぇー」」
仁王立ちの受付嬢がふたり。
ひとりはかるく、もうひとりはふかーく、ため息をついた。
§
「はーい、その戸棚はコッチ!」
号令は一本角。
へぇーい。どかどかどか!
したがうはニゲルや常連客。
「じゃあ、その浴槽と、おトイレはひとまず仮置きで良いから組んじゃってー!」
こっちの号令は、ねじり鉢巻きの狐耳。
よーし、仕事に取りかかるぞ!
したがうは工房でみた小柄な連中と、姫さん付きの厳つい護衛が一名。
ぱたばたん、ぎーこぎーこぎーこ、とんてんかんてん、どっがんがん!
くちをはさむ暇もなかった。
一刻……30分で完成する、おれの新居。
§
「いっやぁ、掃除に時間かかると思ってたけど、綺麗になってたから一瞬でできちゃったわねぇ~♪」
率先して指揮を取った受付嬢(戦闘狂)が紅茶をすすってる。
「がははははっ♪」
「わははははっ♪」
「わけえの、この茶菓子うめえぞ、もっと食え!」
「は、はい、どうも」
がやがやがや。
姫さんのお付きの白っぽい装束のやつが、みんなの茶の用意までしてくれた。
姫さんには、あらめて礼くらい言っとかねえとな。
「そうねぇ、屋根まで直ってたし――迅雷の汚れ落としは本っ当に使えるわねぇー」
受付嬢(鬼)が獲物を見るような目で、おれの相棒を見つめている。
1
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
喰らう度強くなるボクと姉属性の女神様と異世界と。〜食べた者のスキルを奪うボクが異世界で自由気ままに冒険する!!〜
田所浩一郎
ファンタジー
中学でいじめられていた少年冥矢は女神のミスによりできた空間の歪みに巻き込まれ命を落としてしまう。
謝罪代わりに与えられたスキル、《喰らう者》は食べた存在のスキルを使い更にレベルアップすることのできるチートスキルだった!
異世界に転生させてもらうはずだったがなんと女神様もついてくる事態に!?
地球にはない自然や生き物に魔物。それにまだ見ぬ珍味達。
冥矢は心を踊らせ好奇心を満たす冒険へと出るのだった。これからずっと側に居ることを約束した女神様と共に……
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
暴虎馮河伝
知己
ファンタジー
神仙と妖が棲まう世界「神州」。だがいつしか神や仙人はその姿を消し、人々は妖怪の驚異に怯えて生きていた。
とある田舎町で目つきと口と態度の悪い青年が、不思議な魅力を持った少女と運命的に出会い、物語が始まる。
————王道中華風バトルファンタジーここに開幕!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
カティア
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる