滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

３７：魔剣イヤーイ使い（幼女）、ジンライ鋼ですな

「伯爵はくしゃく。迅雷ジンライどのは、私がいままで見てきた中でも、最高さいこうの知性ちせいをそなえた、とても優すぐれたアーティファクトです。さまざまな魔法まほうも使えるようですし」
　レイダの父上ちちうえ、ギルド長もいた。

「それはまことか？」

「はい伯爵はくシゃくさマ。では試ためしに預あずかったままの電解でんかい鉄てつ……オリハルコンを、お返かえしいたしましょう」
　ヴヴヴッルーン！

「〝ルガ蜂ばち〟の軌道きどう!?」
　ギュイーン！
　おいギルド長、伯爵とのさんの御前ごぜんだぞ。
　その眼鏡そうぞうしいの、ほどほどにしとけよ。

　ひとが居ねえ空いたところに、ひかりの升目ますめがみえ――――ゴッドン。

「わっ」「きゃぁ」「ぬうん」「ひょ」「わぁー」
　おどろくぜ、そりゃあ。まばたきしたら、鉄てつの棒ぼうが山のように、つみあがってるんだからよ。
　物をしまう魔法まほうはふつうにあるみてえだが、その目方おもさっつうか分量ぶんりょうが大きいらしい。

　ぎらん――！
　その表面ひょうめんはきれいで、日のひかりを跳はねかえしていた。
　呑のみこんだときは埃ほこりまみれで、うす汚よごれてたんだが。

「こ、これは――――薬草やくそうを大量たいりょうに運び込んだときとおなじ収納しゅうのう魔法まほうですね」
　ギュギュイーン！

「そうですわ、お父さま。シガミーが取ってきてくれた一年分いちねんぶんの薬草やくそうは、どれも虫も土も一切いっさいついてなくて、とても状態じょうたいが良い物でしたのよ」
　それを言われると、レイダにわるくて気が引ける。

「状態じょうたいが良いとな……ふむ。とすると、迅雷ジンライは――〝汚れをおとす・・・・・・達人たつじん〟でもあるのではないか？」

「（おい、伯爵とのさんが言ってるのは本当ほんとうか？）」
「（はい、ストレージ……格納庫かくのうこへの搬入はんにゅうは元素げんそ……物質ぶっしつの要素ようそ単位たんいでおこなわれるため、ホコリなどは格納庫かくのうこに残のこしておくことが可能かのうです」
「（わからんが、伯爵とのさんには、それがわかったってこったな？）」

「（はい。ラウラル公はギルド長以上いじょうに、たかい見識けんしきをそなえた御仁ごじんのようです）」

「（あたまが良いってことか……あんまり手のうちをさらさねえほうが、いいかも知んねえなあ）」


「お父さま、それは一体いったいどういうコトですの？」
　狐耳ひめさんのことばに、全員ぜんいんが首くびをかしげ、やがてギルド長が何かに気づいて手を叩いた。

「しゅっ、収納しゅうのう魔法まほうは入る大きさが小さいほど、物ものの整頓せいとんがむずかしいと聞きます」
　ギュギュギュ、ギュィィーン！

「はイ。収納しゅうノう量りょうが大きいトいうことは、物ものを選よりわケるための作業台さぎょうだイがヒろくつかえます。汚よごれをおトすことも、簡単かんたンにでキます」
　それを聞いた伯爵とのさんとギルド長が、顔を見合わせた。

「やはりそうであったか！」
「やはりそうでしたか！」
　ギュギュギュギュ、ギュィィーーーーン！

「（迅雷ジンライ、物ものをしまう魔法やつは、ひと目をひいてたみてえだな。この先さきは気をつけようぜ）」

「（了解りょうかいしました。シガミー）」

　　　§

「これが魔剣まけん〝イヤーイ〟――見れば見るほど見事みごとよのう。ふふふふ♪」
　伯爵とのさんがおれの小太刀こだちを抜ぬいて、ためつすがめつしている。
　それとイヤーイじゃなくて居合いあいだが、ソレどころじゃねぇ。

「（おおお、おい、殿とのさんが抜ぬいた刀かたなもって、そばにいるってなぁ、生いきた心地ここちがしねえんだが～）」

「（イオノファラーからの情報じょうほうでは、この世界せかいに〝切捨きりすて御免ごめん〟の制度せいどはないようですので、ご安心あんしんください）」
「（そういわれてもよう～。どうしたって、腰がひけらぁ～）」

　どかどかどか――――！

「わっ!?」
　とつぜんの靴音くつおとに、心臓しんぞうがはねあがる！

「伯爵はくしゃく。こちらが、その剣けんで切られた防具ぼうぐにございます」
　ギルド長みたいな橙だいだいいろの布ぬのを肩かたにかけた連中れんちゅうが、無遠慮むえんりょに飛びこんできた。

　お、おどかすなってんだ！
「（シガミー、彼かれらはギルド長とおなじような、〝しらべる・・・・〟ことを生業なりわいにしていると推測すいそくされます）」

　よくみれば、それぞれ手袋てぶくろや靴くつや袖そでのあたりや帽子ぼうしに、なんかギチギチうごくのがくっついてる。
　それはギルド長の〝眼鏡めがね〟についた〝摘つまみ〟とおなじモノだった。

「（よし、あいつらは危険きけんだって事だな。わかったぜ）」
「（はい。ですが脅威きょういではありません。私とおなじ、ＡアーティファクトＯオペレーティングＳシステムにより稼働かどうしているようですが、数世代すうせだい前まえのモノですので）」

「（よし、例れいによってわからんが……おまえにもあの〝摘つまみ〟ついてんのか？）」

「（いえ、最新世代さいしんせだいであるわたくしは、こうして会話かいわができるので、必要ひつようのないものです）」
　そっか、なら良かったぜ。あんなせわしねえのは、ごめんだからな。

　ギュギュィーーーー！
　ギュギュギュッ！
　ギチギチリ。
　がやがやがや――あれ？

「じつにみごとな切り口！」
「さすがは魔剣まけんですな！」
　護衛ごえいの連中れんちゅうまでいっしょになって、わめきはじめたぞ。
　こりゃ、にげたほうがいいのか？

「うふふん♪　あなたたち遅れてるわよ、聞いておどろきなさぁい――」
　レイダといっしょに、長椅子ながいすにすわって、おとなしくしてた狐耳ひめさんが立ちあがった。

「そのシルバーバックルを切ったのは、ただのなんの変哲へんてつもない普通ふつうの鉄製てつせいの剣つるぎよ！」
　うん、まあそりゃそうなんだが。

　ギュギュギュイ、ギチギチ、ななんと！

　いま目のまえに橙だいだい布ぬのを巻まいた〝しらべる〟連中れんちゅうがいるから、自慢じまん（？）すんじゃねーよ。

「電解鉄でんかいテつ……魔術まジゅつ特性とくせいを失うしなったオりハルコンは、炭素たんそヲ付加ふかする工程こウていを経へるコとで、柔やわらカく強靱きょうじんかつ硬質こウしつさモ兼かねそなえタ多た機能きのウ鉄鋼てっこうに変質へんしつします」

　ギュギュギュイ、ギチギチ、そ、そうだったのか！
　さしずめ、〝ジンライ鋼こう〟ですな！

　あー？　橙だいだい連中れんちゅうは迅雷ジンライの話しについていけてんのか？
　ならよし。居合刀いあいとうもそれなりに凄すげえってのも、自慢じまんしときゃ、おれにひと目があつまらなくていいだろ。


「ふふん、け・ど・ね。ほんとうにすごいのは、そこにいるシガミーなんだからね。棒ぼうで冒険者ぼうけんしゃギルドの鉄柱てっちゅうを切っちゃったこともあるんだからっ！」
　レイダてめえ！
　せっかくそれたひと目が、おれに戻もどるじゃねーか。
　そもそもなんでおめぇまで、狐耳ひめさんといっしょになって自慢じまん（？）してんだ。

「なんと、ではこちらのお子こ様さまが〝美の女神めがみイオノファラー様が使つかわした聖女せいじょさま〟であらせられるか!?」
　ほらみろ、おれに気づいちまった……聖女せいじょさまってなぁ……なんだ？

「（わが主神しゅしんイオノファラーの巫女みこ……もろに関係者かんけいしゃであると思われたようです）」

「（よーし、だめだ！　ずらかるぞ！　このまま、ここに居たらなにかに・・・・祭まつりりあげられちまわぁ!!）」

　斜ななめめ上うえにういてた迅雷ジンライを、ひっつかむ。
　ヴルルッ――――シュッカン！

「「シガミー!?」」
「「「聖女せいじょどの!?」」」

　のばした勢いきおいに引っぱられたおれは、おおきくあいた窓まどへ飛び込――――ふにゃぁり。

「あれ？　からだが……うごかねえ!?」
　しかも痛いてえ！

「（筋肉痛きんにくつうです。〝二にの太刀たち〟による、ふだん〝使つかいなれない筋肉きんにく〟の酷使こくしによるものです）」