30 / 738
1:輪廻転生、おいでませガムラン町
30:E級冒険者(幼女)、魔物図鑑ととんがり屋根
しおりを挟む
おれの前世の修行は体現することに特化していた。
体がうごきゃあ、道理がとおせる。
魔物に狩りの手順があるなら、そいつをこなすのに、おれの自在にうごく体が邪魔になるこたぁあるまい。
そう考えたおれは、ある場所に向かった。
§
「食える魔物で……ちがうな。食ったらうめえ魔物で強えやつは居んのか?」
ここは冒険者ギルドの書庫。
「まだ該当すル魔物は見つかりマせん」
「草原で狩れるのでも、おいしいよね。女将さんの店の料理は特に」
さいきん昼飯は、ほとんど木さじ食堂で食ってる。
貝や角ウサギを納品するついでだ。
ときどき食える草なんかも届けるけど、そっちはまったく金にならない。
「(どうだ? なんか使えそうなのは、ねえか?)」
大きくて重い図鑑の、頁をめくった。
見たこともない、ふざけたかたちの魔物が、へたくそな絵で描かれている。
「(イオノファラーの持つ情報と照らしあわせていますが、もどってくる情報に有益なモノは、まだありません)」
「(五百乃大角はうまいかどうかしか、知らねえみてえだしなー)」
独鈷杵型の迅雷が、図鑑の上をころがる。
こうすると覚えやすいんだそうだ。
「(イオノファラーです、シガミー)」
「高く売れたり、LV上げんのに、うってつけなやつでも良いぞ」
「LVも経験値も高いのはやっぱり、マンドラゴーラだよ。ふつうは森のおくまで行かないと、いないはずだけど……このあいだはなんで、あんなところにいたんだろ?」
レイダは薬草なんかが、くわしく書かれた図鑑をめくっている。
「あの大根は、そうとうめずらしい奴だったんだなー。……なんか癪にさわるぜ」
おう゛ぉごぴゃぎらびゃ――――だから、うるせえよ。つい思い出しちまった。
「(〝経験値〟ってのわぁ修行の成果なんだっけか?)」
「(はいそうです、出来高とお考えください)」
「万鐃甲羅はあれから一匹もみねえ。森んなかに取りに行けりゃいーんだがなぁ」
「シガミー、このあいダのマンドラゴーラ討伐が成功したのは、ほかに魔物がイなかったからです。森の中でマンドラゴーラの攻撃にヨり行動不能におちいった場合、まず生きて戻れないとお考え下さい」
「そうだね、『マンドラゴーラは状態異常にした魔物をべつの魔物に襲わせて、その死骸を養分にする』って、ここにも書いてあるよ」
そう聞かされると、おれもさすがに怖え。
レイダの顔が青ざめている。
せっかくひろった〝来世〟だ。好きこのんで危ねえモンに近づくこたぁねえ。
レイダの貝釣りに、おれの角ウサギ狩りで、最低限生きちゃあいける。
「ここらで一発でかい獲物をって思ったけど……日銭を稼げるようになっただけで、よしとするかー」
「えへへ、そうだね。F級クエストがなくなっちゃって、どうしようかと思ってたもんね」
う、そりゃ、おれのせいだから、攻められてる気がしないでもねえ。
「ぅふぇーぃ♪」と、おれは机につっぷした。
なんて覇気のねえ声だ。
まどの外には荷馬車や冒険者たち。
ここは冒険者ギルドだからなー、いかつい連中ばっかりになるよなー。
みょうに細長い影が、冒険者たちを突き刺すようにのびている。
「なんだ、あの影?」
「どうしたの?」
レイダが机のむこうがわで、おなじように机につっぷした。
「いや、あの影がみょうにとんがってんなーって思ってよ」
「あれは、この冒険者ギルドの影だよ」
そういや、ギルドに最初に来るときに目印にしたっけ。
「風が吹いたら折れちまいそうだけど、なんか意味あんのかぁ――うけけけ♪」
いけねぇ、五百乃大角のがうつっちまった。
「意味はあるよ……えーっと、たしか……なんだっけ――うけけけ♪」
レイダにまでうつったぞ。人から聞かされるとやっぱり、魔物みてえなわらい方だよな。
「――今日もたのしそうですね。魔物のマネですか?」
背後の気配に気づかなかった。焼きが回ったもんだが、おれぁ、いま子供だからな。
「お父さん!」
飛びつくレイダ。子供か。
「いマは、ギルド施設の屋根形状にツいて意味があるのノかを議論していマした」
説明した迅雷に、ギルド長が飛びついた。子供か。
「や、屋根のかたちには意味がありますよ。ひひひひひとことで言うなら、〝カミナリが町に落ちないおまじない〟です!」
まだ〝宛鋳符悪党〟である迅雷への興味は、尽きてねえみてえだ。
ーーー
道理/正しい道筋や理屈。
出来高/収穫した作物などの総量。
体がうごきゃあ、道理がとおせる。
魔物に狩りの手順があるなら、そいつをこなすのに、おれの自在にうごく体が邪魔になるこたぁあるまい。
そう考えたおれは、ある場所に向かった。
§
「食える魔物で……ちがうな。食ったらうめえ魔物で強えやつは居んのか?」
ここは冒険者ギルドの書庫。
「まだ該当すル魔物は見つかりマせん」
「草原で狩れるのでも、おいしいよね。女将さんの店の料理は特に」
さいきん昼飯は、ほとんど木さじ食堂で食ってる。
貝や角ウサギを納品するついでだ。
ときどき食える草なんかも届けるけど、そっちはまったく金にならない。
「(どうだ? なんか使えそうなのは、ねえか?)」
大きくて重い図鑑の、頁をめくった。
見たこともない、ふざけたかたちの魔物が、へたくそな絵で描かれている。
「(イオノファラーの持つ情報と照らしあわせていますが、もどってくる情報に有益なモノは、まだありません)」
「(五百乃大角はうまいかどうかしか、知らねえみてえだしなー)」
独鈷杵型の迅雷が、図鑑の上をころがる。
こうすると覚えやすいんだそうだ。
「(イオノファラーです、シガミー)」
「高く売れたり、LV上げんのに、うってつけなやつでも良いぞ」
「LVも経験値も高いのはやっぱり、マンドラゴーラだよ。ふつうは森のおくまで行かないと、いないはずだけど……このあいだはなんで、あんなところにいたんだろ?」
レイダは薬草なんかが、くわしく書かれた図鑑をめくっている。
「あの大根は、そうとうめずらしい奴だったんだなー。……なんか癪にさわるぜ」
おう゛ぉごぴゃぎらびゃ――――だから、うるせえよ。つい思い出しちまった。
「(〝経験値〟ってのわぁ修行の成果なんだっけか?)」
「(はいそうです、出来高とお考えください)」
「万鐃甲羅はあれから一匹もみねえ。森んなかに取りに行けりゃいーんだがなぁ」
「シガミー、このあいダのマンドラゴーラ討伐が成功したのは、ほかに魔物がイなかったからです。森の中でマンドラゴーラの攻撃にヨり行動不能におちいった場合、まず生きて戻れないとお考え下さい」
「そうだね、『マンドラゴーラは状態異常にした魔物をべつの魔物に襲わせて、その死骸を養分にする』って、ここにも書いてあるよ」
そう聞かされると、おれもさすがに怖え。
レイダの顔が青ざめている。
せっかくひろった〝来世〟だ。好きこのんで危ねえモンに近づくこたぁねえ。
レイダの貝釣りに、おれの角ウサギ狩りで、最低限生きちゃあいける。
「ここらで一発でかい獲物をって思ったけど……日銭を稼げるようになっただけで、よしとするかー」
「えへへ、そうだね。F級クエストがなくなっちゃって、どうしようかと思ってたもんね」
う、そりゃ、おれのせいだから、攻められてる気がしないでもねえ。
「ぅふぇーぃ♪」と、おれは机につっぷした。
なんて覇気のねえ声だ。
まどの外には荷馬車や冒険者たち。
ここは冒険者ギルドだからなー、いかつい連中ばっかりになるよなー。
みょうに細長い影が、冒険者たちを突き刺すようにのびている。
「なんだ、あの影?」
「どうしたの?」
レイダが机のむこうがわで、おなじように机につっぷした。
「いや、あの影がみょうにとんがってんなーって思ってよ」
「あれは、この冒険者ギルドの影だよ」
そういや、ギルドに最初に来るときに目印にしたっけ。
「風が吹いたら折れちまいそうだけど、なんか意味あんのかぁ――うけけけ♪」
いけねぇ、五百乃大角のがうつっちまった。
「意味はあるよ……えーっと、たしか……なんだっけ――うけけけ♪」
レイダにまでうつったぞ。人から聞かされるとやっぱり、魔物みてえなわらい方だよな。
「――今日もたのしそうですね。魔物のマネですか?」
背後の気配に気づかなかった。焼きが回ったもんだが、おれぁ、いま子供だからな。
「お父さん!」
飛びつくレイダ。子供か。
「いマは、ギルド施設の屋根形状にツいて意味があるのノかを議論していマした」
説明した迅雷に、ギルド長が飛びついた。子供か。
「や、屋根のかたちには意味がありますよ。ひひひひひとことで言うなら、〝カミナリが町に落ちないおまじない〟です!」
まだ〝宛鋳符悪党〟である迅雷への興味は、尽きてねえみてえだ。
ーーー
道理/正しい道筋や理屈。
出来高/収穫した作物などの総量。
1
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~
なつのさんち
ファンタジー
「俺のぉぉぉ~~~ 前にぃぃぃ~~~ ひれ伏せぇぇぇ~~~↑↑↑」
その男、絶叫すると最強。
★★★★★★★★★
カラオケが唯一の楽しみである十九歳浪人生だった俺。無理を重ねた受験勉強の過労が祟って死んでしまった。試験前最後のカラオケが最期のカラオケになってしまったのだ。
前世の記憶を持ったまま生まれ変わったはいいけど、ここはまさかの女性優位社会!? しかも侍女は俺を男の娘にしようとしてくるし! 僕は男だ~~~↑↑↑
★★★★★★★★★
主人公アルティスラは現代日本においては至って普通の男の子ですが、この世界は男女逆転世界なのでかなり過保護に守られています。
本人は拒否していますが、お付きの侍女がアルティスラを立派な男の娘にしようと日々努力しています。
羽の生えた猫や空を飛ぶデカい猫や猫の獣人などが出て来ます。
中世ヨーロッパよりも文明度の低い、科学的な文明がほとんど発展していない世界をイメージしています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる