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1:輪廻転生、おいでませガムラン町

30:E級冒険者(幼女)、魔物図鑑ととんがり屋根

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 おれの前世ぜんせ修行ぎょう体現たいげんすることに特化とっかしていた。
 体がうごきゃあ、道理どうりがとおせる。
 魔物まものに狩りの手順・・があるなら、そいつをこなすのに、おれの自在じざいにうごくからだ邪魔じゃまになるこたぁあるまい。

 そう考えたおれは、ある場所ばしょに向かった。

   §

「食える魔物まもので……ちがうな。食ったらうめえ・・・魔物まもので強えやつは居んのか?」
 ここは冒険者ぼうけんしゃギルドの書庫しょこ

「まだ該当がいとうすル魔物まものは見つかりマせん」

草原そうげんで狩れるのでも、おいしいよね。女将おかみさんの店の料理りょうりは特に」
 さいきん昼飯ひるめしは、ほとんど木さじ食堂おかみのみせで食ってる。
 かいつのウサギを納品のうひんするついでだ。
 ときどき食える草なんかも届けるけど、そっちはまったくかねにならない。

「(どうだ? なんか使えそうなのは、ねえか?)」
 大きくて重い図鑑ずかんの、ぺえじをめくった。
 見たこともない、ふざけたかたちの魔物まものが、へたくそな絵で描かれている。

「(イオノファラーの持つ情報じょうほうと照らしあわせていますが、もどってくる情報じょうほう有益ゆうえきなモノは、まだありません)」

「(五百乃大角あいつうまいかどうか・・・・・・・しか、知らねえみてえだしなー)」
 独鈷杵みじかいぼう型の迅雷ジンライが、図鑑ずかんの上をころがる。
 こうすると覚えやすい・・・・・んだそうだ。
「(イオノファラーです、シガミー)」

「高く売れたり、LVレベル上げんのに、うってつけなやつでも良いぞ」
LVレベル経験値けいけんちも高いのはやっぱり、マンドラゴーラだよ。ふつうは森のおくまで行かないと、いないはずだけど……このあいだはなんで、あんなところにいたんだろ?」
 レイダは薬草やくそうなんかが、くわしく書かれた図鑑ずかんをめくっている。

「あの大根だいこんは、そうとうめずらしい奴だったんだなー。……なんかしゃくにさわるぜ」
 おう゛ぉごぴゃぎらびゃ――――だから、うるせえよ。つい思い出しちまった。

「(〝経験値けいけんち〟ってのわぁ修行しゅぎょう成果せいかなんだっけか?)」
「(はいそうです、出来高できだかとお考えください)」

万鐃甲羅マンドラゴーラはあれから一匹いっぴきもみねえ。森んなかに取りに行けりゃいーんだがなぁ」

「シガミー、このあいダのマンドラゴーラ討伐とうバつ成功せいこうしたのは、ほかに魔物まものがイなかったからです。森の中でマンドラゴーラの攻撃こうげきにヨり行動こうどう不能ふのうにおちいった場合ばあい、まず生きてもどれないとお考え下さい」

「そうだね、『マンドラゴーラは状態異常じょうたいいじょうにした魔物まものをべつの魔物まものおそわせて、その死骸しがい養分ようぶんにする』って、ここにも書いてあるよ」
 そう聞かされると、おれもさすがに怖え。
 レイダの顔が青ざめている。

 せっかくひろった〝来世らいせ〟だ。きこのんで危ねえモンに近づくこたぁねえ。
 レイダのかいりに、おれのつのウサギりで、最低限さいていげん生きちゃあいける。

「ここらで一発いっぱつでかい獲物えものをって思ったけど……日銭ひぜにかせげるようになっただけで、よしとするかー」
「えへへ、そうだね。Fきゅうクエストがなくなっちゃって、どうしようかと思ってたもんね」
 う、そりゃ、おれのせいだから、攻められてる気がしないでもねえ。

「ぅふぇーぃ♪」と、おれはつくえにつっぷした。
 なんて覇気はきのねえ声だ。

 まどの外には荷馬車にばしゃ冒険者ぼうけんしゃたち。
 ここは冒険者ぼうけんしゃギルドだからなー、いかつい連中れんちゅうばっかりになるよなー。
 みょうに細長ほそながかげが、冒険者ぼうけんしゃたちを突き刺すようにのびている。

「なんだ、あのかげ?」
「どうしたの?」
 レイダがつくえのむこうがわで、おなじようにつくえにつっぷした。

「いや、あのかげがみょうにとんがって・・・・・んなーって思ってよ」
「あれは、この冒険者ぼうけんしゃギルドのかげだよ」
 そういや、ギルドに最初さいしょに来るときに目印めじるしにしたっけ。

「風が吹いたら折れちまいそうだけど、なんか意味いみあんのかぁ――うけけけ♪」
 いけねぇ、五百乃大角イオノファラーのがうつっちまった。

意味いみはあるよ……えーっと、たしか……なんだっけ――うけけけ♪」
 レイダにまでうつったぞ。人から聞かされるとやっぱり、魔物まものみてえなわらい方だよな。

「――今日きょうもたのしそうですね。魔物まもののマネですか?」
 背後はいご気配けはいに気づかなかった。焼きがまわったもんだが、おれぁ、いま子供ガキだからな。
「お父さん!」
 飛びつくレイダ。子供こどもか。

「いマは、ギルド施設しせつ屋根やネ形状けいじょうにツいて意味いみがあるのノかを議論ぎロんしていマした」
 説明せつめいした迅雷ジンライに、ギルド長が飛びついた。子供こどもか。

「や、屋根やねのかたちには意味いみがありますよ。ひひひひひとことで言うなら、〝カミナリが町に落ちないおまじない・・・・・〟です!」
 まだ〝宛鋳符悪党アーティファクト〟である迅雷ジンライへの興味きょうみ、尽きてねえみてえだ。

ーーー
道理/正しい道筋や理屈。
出来高/収穫した作物などの総量。
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