滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

２９：Ｅ級冒険者（幼女）、狩りチュートリアル（角ウサギ）

「こんなもん……か？」
　獲物えものを狩るときに、狩場りょうばに溶け込むのは常套じょうとう手段しゅだんだ。
　さぁぁぁぁ――――おれも見よう見まねで。風に重心じゅうしんをあずけた。

「まったく、シガミーには驚かされるな。ぼくなんて出来るまでに一年くらいかかったのに……」
　おれだって、あのつまらねえ修行ぎょうをうけてなかったら、こうはいかねえ。

「それで、これは角つのウサギにも効くのか？」
「効くよ、ポグバードと同じようにね」
　なにかの準備じゅんびをしていたニゲルが、また何かを蒔まく。
　こんどはすこし大きな木の実。

　ギギッ――！

「来たっ！」
「しっ、しずかに」
　はしゃぐレイダを、たしなめる鬼オルコ。
　彼女かのじょの大剣たいけんの柄つかが、風かぜに揺ゆれている。

「一応説明すると、じぶんの体を一本の苗木なえぎと思って、風にまかせるんだ」
　彼の体が説明せつめいしてくれたとおりに、つよい風におおきくしなる。
　おれも振れ幅を大きくして、ニゲルのそばに、たゆたう。

「（おい、理屈りくつはわかるが、さすがに妙みょうだ。ウサギも来るのが早すぎらぁ）」

「（はい、シガミー。活力マナの通り道である龍脈りゅうみゃくのなかでも龍穴りゅうけつと呼ばれる地点ちてんに、動植物どうしょくぶつが特に群むれる傾向けいこうがあるようです）」

「（そりゃ、餌えさをまいて寄よせたら、ウサギがすぐ来た理由りゆうだろ？）」

　――――ぱぁん！
　ニゲルが革手袋かわてぶくろの両手りょうてをうちあわせた。
　跳とび上がったウサギが脱兎だっとのごとく――――ダタ、ダタ、ダタッ！

「ああ、にげちゃう！」
「だいじょうぶよ」
　たちあがるレイダたち。

　一目散いちもくさんに森へ向かって逃走とうそうしていたウサギが――――ズザザァァァァ！
　何もないところで、すっころんだ。

　　　§

「角つのウサギは罠わなで捕つかまえるのがふつうよ。そうすれば毛皮けがわや角つのに傷も付かないでしょう？」

「ギギッ、ギュギィー！」
　鬼娘オルコがもちあげたのは、細縄ほそなわで編あんだ網あみ。
　それにからまって、ひとりでに〝簀巻すまき〟にされた獲物えもの。

「そんな簡単に――!?」
「昨日きのうのおれたちの苦労くろうは――なんだったんだよ！」
　しかも、おれたちが捕つかまえたやつは、毛皮けがわは焦こげて傷きずだらけな上に、角つのが折おれちまってた。

「落とし穴でもいいけど、こっちの方が簡単かんたんだろ？」
「なんで、網あみを敷しいておくだけで捕つかまえられたの？」

「角つのウサギは、角つのが地面じめんに刺さささらないように、角つのを上に向けてはしる習性しゅうせいがあるんだよ」
「だから、足もとが見えなくて網あみにからまるっていうわけ」

「（それだけじゃねえだろう？　迅雷ジンライさっきの話はなしのつづきだ）」
「（話はなしとは？）」

「（風に溶とけこみゃあ獲物えものに気づかれなくなるのも、すぐ寄せられたのも、網あみ一枚いちまいでかんたんに捕まえられたのも、全部ぜんぶが――――雑ざつだ！）」

「（はい、シガミー。それは〝設計せっけい製作者せいさくしゃの意向いこう〟です）」
「（意向いこうだぁ？）」

「（はい、狩かりの手順てじゅんをふんだ場合は、簡単かんたんに獲物えものを捕とらえられるようです）」

「（……なんでそんな……手軽てがるに獲物えものが取れるなら助たすかるが――――あ、まさか五百乃大角いおのはらの仕込み・・・か!?）」
「（はい、シガミー。イオノファラーの食事しょくじを妨さまげることは誰だれにもできません）」

「それなら最初さいしょに教おしえてくれよ！　丸一日まるいちにち無駄むだにしたじゃねーか！」

「無駄むだじゃないわよ。きのう一日いちにちウサギを追いかけ回して、ウサギの動うごき方かたはわかったでしょう？」
　また声に出しちまったけど――「たしかに無駄むだじゃねえ」

「（迅雷ジンライ、ほかにも〝狩かりの手順てじゅん〟てのは有んのか？）」
　おれの想像そうぞうどおりなら――――前世ぜんせの修行ぎょうも、全ぜんっ然ぜんっ無駄むだじゃねえことになる。