滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

１：輪廻転生、おいでませガムラン町

６：輪廻転生、空飛ぶ秘伝書

「形はそうねー、どれが良いかしらぁ？　……もぐもぐ」
　体をひねり、雷神さまの太鼓みてえのを、こっちに向けた。

　ガシャガシャガシャガシャ！
　ふたが開いた太鼓から、何本も飛び出したのは、鉄製のほそ腕。

　カチャカチャカチャ――――きょろきょろ、カチャ。
　どこまでも伸びる腕うでの先。手のひらには赤く光る眼めが付いていた。
　一本一本が独立どくりつし、連携れんけいし、食いちらかした皿を器用きように、片づけていく。

「千腕かいなに千眼まなこ……こいつぁ」
　じっとりとした汗が、全身からふきだした。

「自律型じりつがたアーティファクトの発掘例はっくつれいは、それほどめずらしくもないから、好きなのを選んでくれてかまわないわよぅ……ぱくぱく、もぎゅもぎゅ」
　なに言ってるかはわからねえ。
　だが〝めしを食うためだけに、この世界とおれを・・・・・・つくった・・・・〟なんてのが、あながち嘘うそじゃねぇのだけはわかった。

　片付いた、まる机に、腕・がならべていくのは、
　宝珠ほうじゅ、法輪ほうりん、水瓶すいびょう、宝剣ほうけん、錫杖しゃくじょう。

　形かたちの謂いわれならわかるが――実体なかみがともなわねえ。

　宝印ほういん、宝鏡ほうきょう、数珠じゅず、宝珠ほうじゅ――――ごろごろり、ごどごどん、がわらっしゃん！

「や、やかましい！　おれがおこられんだろーが！　……ひそひそ」

「だいじょうぶよ。あたしのおなかがいっぱいになるまでは、だれにも邪魔できないから……ひょいぱく、もぎゅごっくん」
　みれば、皿のほとんどが空になった。

「さあ、どれにする？　そろそろ時間切れだし、早く決めて！」
　このやろう、本当に俺のことは飯のついでじゃねーかよ。

「うーん？　じゃあ、こいつに……するぜ」
　俺は独鈷杵とっこしょみてえな、みじかい棒を選んだ。
　これがどういうものでも、小さけりゃ懐ふところにしまえるからだ。

「オッケー♪　じゃ、こまかい話は全部その子・・・に聞いてねー。それと、ここのお代だいはらっといてねぇーん！」
　どろん♪

　煙けむりがきえたとたんに――――がやがやがやがや。
　周囲しゅういの喧噪けんそうがもどった！

　　　§

「（マスター、なにかご用はありませんか？）」
　空飛ぶ棒いんてりげんすだれが、うしろ頭に張りついた。

　そして、おれだけに聞こえる声で「用事ようじはねえのか」とひっきりなしに聞いてきやがるのだ。
　こいつは聞けば何でも答える、秘伝書ひでんしょみたいな奴で、あきらめることをしらなかった。
　しかたがねえから心の中で、わからんことに対する質問しつもんを繰り返した。

　おかげで短い棒すだれの使い方と、この世界での暮らし方がわかったが――
　女神やつの食い散らかした分をよけいに・・・・稼かせぐのに、１０日もかかった。

「じゃ、がんばんな！　また困ったら、いつでもおいで」
　最後に女将が手渡したのは、何も書いてない板っぺら。
　５ヘクク（三日分のめし代）と一緒に、着なれてきた給仕服にしまう。

「魔術師をめざすんなら、それをもって、あのとんがった建物においき」
　それは町の中央。
「たしかにとんがってるな」
　強い風がふいたら、折おれちまいそうな尖とがりぐあいだった。