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3 王族の裏の仕事

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「でもさー。最後に会わなくていいの? 君、もう、いつ死んでもおかしくないでしょう」

「この仕事を受ける前に母には別れを済ませてきました。まあ、逝くときはポックリ逝くらしいし、繁殖方面で役に立てなかった分、せいぜいギリギリまでサポート業務を頑張りますよ。なので――母のこと、施設のこと、よろしくお願いします」

「ははは、任せといて。俺も施設の立ち上げには協力したからね。なあに。他種族にも受けがいいんだよ。あのオークも愛さえあればもしかして……ってね」


 そう言って笑うオークの国の第二王子。どことなく胡散臭くはあるが、何だかんだ俺への協力もしてくれた。何より残りの寿命が少ない俺は彼を信じるしかないだろう。


「最後に聞いておきたいんだけどさ。君、本当にこのまま死んでいいの? 今なら間に合うよ。王族の裏の仕事教えちゃったけど、俺の側近になってくれるならどの道知ることになるんだし。こっそり好みの人間を融通するからワンチャンかけない? 君、優秀だからこのまま死なせるの勿体ないんだよね。そうすれば、最後まで自分で自分の母親の面倒を見られるよ?」

「もう決めたことなんで」

「――そ。あーあ。悪魔のささやきにも動じないか。本当に惜しいね。オークにはなかなかそういうヤツ産まれないし、転生もしてこないから」


 胡散臭さは引っ込んで。心底そう思ってます、みたいな残念そうな顔を見せる第二王子。怪しいと思いながらも、つい仲良くなってしまったのはこういう面があるからだ。


「お世話になりました」

「うん。あーそうそう。君ね、次、人間への転生が決まっているから」

「え」

「今、ちょっとあっちの欠員少なくて順番待ち枠だから実際転生するまでには少し時間はかかるけど、そこは我慢して。そんで、言っていなかったけど、君の死んだ親父さんも人間になっているよ。んで、君の母親も寿命を終えたら正規枠で人間行きが決まっているから、運が良ければまた家族になれるんじゃない? まあ、君の母親元気だし、少し歳の差夫婦になっちゃうかもだけどね。あーあ。さっきの質問で『はい』って言ってくれれば君だけでも引き止められたのにぃ」


 ああ、もう。最後の最後でこの王子は。


「……ありがとうございます」

「礼はいらないよ。教えちゃったからにはもう、この職場から外には出せないからね。君は死ぬまで飼い殺し。せいぜい、最後まで仕事を頑張って。あー、ヤダヤダ。どんどん良いオークが減っちゃうね。頑張って繁殖しなきゃなぁ」


 ぶつぶつと、ぼやきながら去って行く第二王子。俺は頭を下げながらそれを見送った。



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