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72 関係の終わり

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「……ち…がうっ! 信じてくれ! 俺が好きなのは番…………じゃ、なくてっ! アナリーズ、君なんだ! 愛してる……愛してる愛してる愛してるっ! ……アナリーズ……っ」

「番を愛することでしか維持できない。それはもう愛ではないわ。……ううん…………愛かも知れない。でもね、ジョイ。気づいている? 貴方、番と一緒に居る時にはすんなりと私を愛していると言えないの。それがジョイの本能からくるものなのか、本心なのかは私には判らない。でも、これだけはハッキリしている。横に並べて優先している方を無意識に選んでいるのよ。それに……」


 私はジョイを見た。

 大好きな大好きな……大好きだったジョイ。今でも嫌いにはなれない。でも、でもね――。


「これ以上、番と私で揺れ動くあなたを見るのは耐えられないの。解るでしょう? 既に貴方の中の天秤は傾いているわ。口づけを交わす二人を見て、ここでの声を聞いて、私は確信したわ。今の貴方がその証拠。あなたが愛しているのは間違いなくその人です。――だから、離婚しましょう」


 貴方を嫌いになる前に――。



「そん……な…」


 ジョイはパジャマを着崩した自分の姿を見て。自分に寄り添う煽情的な姿をした番の姿を見て――もう一度泣きそうな顔をしながらアナリーズを見て。

 そのままガックリとうなだれた。

 嫌だ嫌だ、愛してる愛してる……を愛しているのに――…………愛している……愛しているんだ…………。

 番の姿を目に焼き付けたからだろうか。泣きながら、呪文のように繰り返される言葉にアナリーズの名前は入らない。


 思えば、初めて離婚を切り出したときもそうだった。
 苦しそうに。絞り出すように。どうにかアナリーズへの愛を口にして必死に繋ぎとめようとしていたジョイ。

 その後の苦労や努力を否定するつもりはないけれど――あの時点で既に答えは出ていたのかもしれない。

 苦しんだ。頑張った。アナリーズも――そしてジョイも。
 だけど、この先に未来はない。


 だから、もうやめましょう?



 そんな思いを込めて。

 涙にぬれた顔をあげ、縋るような目でアナリーズを見てくるジョイに微笑むと――彼はそれまでのつぶやくような言葉を止めた。


 アナリーズを見て。
 ジョイはただ、涙を流し続けている。


 ああ、終わったな――と思った。




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