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52 邪魔な女(ティアラ視点)
しおりを挟む『結婚生活を維持する為には番と誤認させるしかない』
夫にはジョイが話してくれた。夫はやはりティアラの態度から何かを察していたようで、ジョイから事情を聞いたシュルスは迷うことなくこの方法をとる決断をしてくれた。
あたりまえだ。夫のシュルスはティアラを愛しているのだから。
そうやって『番の誤認』をさせるための交流会を始めてからは、幸せで幸せで仕方がなかった。
伯爵家が持つ建物の一室に集まって。
ティアラの右手をジョイが握り。左手は夫が握って。
ジョイと夫がお互いの残った手を繋ぐ。
本物の番と偽者の番が文字通り手を取り合って、最愛のティアラに愛を捧げるのだ。
夫の前でそこまで濃密な接触は出来ないけれど、夫を愛するために必要な行為だと言えばある程度の触れ合いは許されたし、ティアラを巡って見え隠れする夫やジョイからの嫉妬心が心地よくて堪らない。
ティアラは二人の番に求められているのだと。愛されているのだと。心からそう感じることができた。
回を重ねるごとに夫の食欲が落ちて窶れていくのが少し気にはなったけれど。
相変わらず夫はティアラに優しいし、何よりジョイと交流するようになってからは、歳が離れているせいか少し物足りなく思っていた夫との淡泊な行為が、それまでと何一つ変わっていないにもかかわらず、素晴らしいもののように感じられるようになった。
運命の番と出会ってからはいい事ばかり。いつまでもこれが続けばいいのに。
――そう、思っていた。
ジョイの妻を名乗る女が交流会に乗り込んでくるまでは。
ジョイが結婚をしているのは知っていた。けれど、ティアラだってシュルスと結婚をしているのだ。ティアラが間違えたようにジョイも間違えただけだろう、と思ってあまり気にしていなかった。
妻とはいつか別れてもらうにしても、ジョイが独身だとシュルスが警戒して今までとは対応が変わってしまうかもしれないし、この心地よい関係を続けていくには、『お互いの夫婦関係を守るため』という建前が必要なのだ。
ジョイの番がティアラなのは変わらない。
形だけの妻でしかない偽者がティアラ以上に愛される筈はないのだから、邪魔さえしなければ隠れみのとしてせいぜい利用してやろうと、そう、思っていたのに――。
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