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47 まさかの言葉

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「……そう、か。でもさ、それって本当にティアなのかな……?」

「え?」


 帰宅後。アナリーズが職場への嫌がらせと休職の件をジョイに報告したところ、そんな言葉が返ってきた。


「だってさ、何も証拠はない訳だろ? 偶然とか誤解とかで、他の誰かが犯人かもしれないじゃないか。何か思い当たることはない? 外で、アナリーズがアミティエ伯爵と親しく見えるような行動をとったりとかさ」

「まさか! この前、出勤するときに偶然エントランスでお会いして、少し立ち話をした程度だわ。ここへ引っ越してからの会話はそれだけだもの」


 まるで、アナリーズのせいだと言わんばかりのジョイの言いように、アナリーズは軽く眉を寄せる。
 しかし。


「――ほら。きっと、それを見た人がいたんだよ。他の人からしたら、君とアミティエ伯爵が接点あることなんて知らないのだから、もう少し気を付けて行動をしてもらわないと困るよ。俺だって、伯爵の部下としての立場もあるんだし」

「そんな! 貴方がそれを言うの!? 外で、何度も伯爵夫人と会っているのを知っているのよ!」

「――そ、それは! 偶然会ったら会話くらいは」

「腕まで組んで? 私は、そんなことはしてないわ」

「と、とにかく! 証拠もないのに、立場が上の相手を責めるのは良くないと言っているんだ!! 妻として俺の番のティアにヤキモチを焼く気持ちは解るけど、もう少し考えて行動してくれ」

「そん…な……」


 その日は、ジョイと仲直りすることが出来なかった。

 言いたい事はわかる。証拠はない。だけど、状況証拠だけはたっぷりとあるのだ。日々の、取り巻き達との嫌味の数々だってどうかと思う。

 それをジョイに伝えても、『本能だから』とか『番からのただのヤキモチだから』とか言って困った顔をするだけで、対処はしてもらえない。

 拗ねたように寝室から毛布を持ち出して、居間のソファーで眠るジョイ。今の彼のお気に入りは部屋に備え付けの高級ソファーだ。傷だらけで、少しくたびれていて、でも不思議と座り心地の良いあのソファーはどこにもない。

 一人、落ち着かない高級なベッドで眠りながらアナリーズは考える。

 ジョイの言う、


 『立場が上の相手』――とはいったい何を意味するのか。


『貴族』? それとも、『運命の……』?

 ――――狂い始めた現実から逃避するように、アナリーズは夢の世界へと落ちていった。




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